2009年8月20日木曜日

5_81 対流:テクトニクス5

 前回までに、プレートが、なぜ動くのかを紹介しました。今回は、もう少し地球の深い部分にまで目を向けて、マントル対流を見ていきましょう。マントル内に、地震波で見ると境界があります。その境界が、マントル対流に対して、どのような意味を持つものなのかが問題となります。

 マントル上部に、温度が高く、流動性をもったアセノスフェアという部分があり、その上に乗っかったプレート(リソスフェア)が動く仕組みがあることが分かりました。海嶺にマントルから上昇してきた熱いマントルの上昇流の押し広げる力と、冷えて重くなった海洋プレートがマントルに沈み込むときの引っ張る力が、プレートを動かす原動力となっています。その結果、プレートが水平方向に移動していました。これが、地球の表層の大地の営みの原理ともいうべき、プレートテクトニクスの考え方です。
 このプレートテクトニクスによって、火山や地震の原因、山脈や海底地形の形成プロセス、火成作用や変成作用のメカニズムなどが、体系的に説明できるようになってきました。プレートテクトニクスは、大きな成果を挙げてきました。今後も、地表の大地の営みは、プレートテクニクスによって解明されていくことでしょう。
 前回、海嶺で熱いマントルが上昇し、海溝で冷たいプレートがマントルに沈み込むということは、大局的に見ると、マントル対流になっているということをいいました。では、沈み込んだプレートはどこにたどり着き、熱いマントルは地球のどこから湧き上がってきたのでしょうか。このマントル対流を解明するには、地球深部を探ることになります。
 マントルは、上部マントルと下部マントルに分けられています。上下の境界は、遷移層と呼ばれる部分になります。地震波の研究から、遷移層は、深度400kmから670kmあたりにあることが分かっています。
 地球は、深部にいくに従って、温度と圧力が上がります。深度400kmは13万気圧、1450℃の条件、670kmは24万気圧、1600℃の条件になります。遷移層は、岩石の構成鉱物が、より高温高圧の結晶に変わる(相転移といいます)ためにできた、物質の違いによる境界が、地震波に現れていると考えられています。遷移層より上が上部マントル、下が下部マントルになります。
 遷移層は、物質境界であり、下部マントルから熱だけを上部マントルに伝え、上下に物質は移動しないと考えられていました。つまり、上部と下部マントルは、それぞれ別の履歴をもったマントル物質からできていると考えていました。
 上部マントルには、何度も海洋プレートとして地表付近を巡ったものが混じっていることになります。時には、地表の成分や物質がマントルを汚すこともあった(汚染といいます)と考えられています。上部マントルからは、大陸地殻となったり、海洋に溶け込んだり、大気になった成分などが、抜けていったと考えられていまる。
 一方、下部マントルは、地球ができたときのままの物質(始原物質や始原マントルとよばれています)が、そのまま残っていると考えられていました。ですから、上下のマントルは45億年も経過すると、かなり違った性質の物質になっていると考えられます。
 マントル内の熱を伝える方法は対流ですから、マントル対流も、上部マントルと下部マントルが、それぞれ別の対流をしていたと考えられています。このような上部マントルと下部マントルが性質の違う物質で、対流も上下別々に起こっているというモデルは、2層対流と呼ばれています。
 2層対流に対して、マントル対流は1層で起こるという考えもあります。1層対流は、遷移層が相転移の場にすぎず、物質が簡単に入れ替われる境界で、上下のマントルは常に物質ごと入れ替わっているという考え方です。
 この1層対流と2層対流の2つの考え方には、現在では、地震波トモグラフィという手法によって決着をみました。その内容は、次回にしましょう。

・地震波トモグラフィ・
地球深部を探るために、
地震波が重要な働きをしています。
現在も、その重要性は変わりませんが、
精度が向上して、地球内部の非常に微小な変化をも
観測することできるようになっています。
おかげで、マントル内の情報も
多く得られるようになってきました。
その情報を一つに総合化したものに、
地震波トモグラフィがあります。
トモグラフィとは断層撮影のことで、
医療でよく使われる方法です。
人体を切ることなく、人体内部の状態を探る方法です。
そのために、人体の内部を通り抜け
内部の物質や状態の変化を反映する
電磁波や粒子などが利用されます。
地球は岩石からできていて巨大なため、
人工的な電磁波は通用しません。
地震波を使って、内部を覗くことになります。
でも地震波は、自然現象ですから、
いつ起こるかわかりません。
でも幸いなことに、地球全体で見ると
多数の地震が、日々起こっています。
それを利用したものが地震波トモグラフィです。

・涼しい朝夕・
北海道は、お盆過ぎから急に
涼しい日が続くようになりました。
まだ、湿度は高く、晴れると蒸し暑くなりますが、
朝夕は、上着が欲しくなるような
日がくるようになってきました。
まだ、暑い日は来るのでしょうが、
このまま秋が来るのではという気配さえあります。
小学校が19日から始まりました。
2学期がスタートしたのですが、
大学では、まだ、前期の最後の詰めが行われています。
つまり、採点と成績評価です。
これが終わると、教員もやっと夏休みになります。
そんな夏休みが暑くないともう秋になりそうで、
なんとなく不安になります。
ですから、涼しい夏は、落ち着かなくなります。