2009年2月26日木曜日

1_76 海の蒸発の記録:メッシニアン塩分危機1(2009.02.26)

 メッシニアン塩分危機という地質学的事件が、新生代中新世末期に起こりました。それは、地中海の海水が干上がるという事件でした。この事件が意味することとは、なんでしょうか。数回のシリーズで紹介していきます。

 皆さんは、メッシニアンという言葉をきいたことがあるでしょうか。多分、ほとんど人は知らない言葉でしょう。メッシニアンとは、地名でシシリア島のメッシニアという地域があります。今回取り上げたいのは、その地域のことではありません。地質学では、メッシニアンには別の意味に使われています。
 メッシニアンとは、Messinianと書かれ、地質の時代区分の名称として使われています。メッシニアンは、新生代の中新世末期で、724.6万から533.2万年前の時期です。メッシニア期と呼ばれる階層の時代区分になります。
 マイヤーアイマー(Charles Mayer-Eymar、1826-1907)という地質学者が、シシリア島のメッシニアの石膏を含んだ、汽水から淡水で形成された地層の化石を調べました。その成果を1867年に発表した論文で、その時期をメッシニアと名づけました。以来、中新世の末期をメッシニア期と呼ばれるようになりました。
 メッシニアに注目が集まったのは、地中海において、一部もしくは全部の海水が蒸発してしまった事件があったことがわかってきたからです。その事件を、メッシニアン塩分危機(Messinian salinity crisis)と呼んでいます。
 岩塩や石膏など、海水の蒸発で形成される岩石(蒸発岩と呼ばれます)が、地中海の沿岸や島で大量にあることは知られていました。それらの蒸発岩の形成の時代が、メッシニア期であることも知られていました。しかし、それほど重要視されていませんでした。
 ところが、1961年に行われた地震波の探査で、地中海の海底下100から200mのところに、反射面(M reflectorと呼ばれた)がわかってきました。その実体を探るために、海洋底を掘削する調査(Deep Sea Drilling Program:DSDPと呼ばれる)がなされ、地中海の海底に、3kmの厚さに達すほどの蒸発岩があること発見されました。これによって、地中海全域で、海水が蒸発し、大量の塩分が形成されるという事件が起こったことが認識され、塩分危機と呼ばれるようになりました。
 さて、このメッシニアン塩分危機という事件は、果たして地中海だけに起こった地域的な出来事だったのでしょうか。それとも、世界的事件となんらかの関係があるのでしょうか。それは次回としましょう。

・ありふれたこと・
私が、地中海が干上がるという事件を知ったのは、
数年前でした。
ネイチャーという科学雑誌に2003年に発表された
"Deep roots of the Messinian salinity crisis"
という論文を見たときでした。
そのときは、地域の異常現象として
大して気にもしていませんでした。
ところが、最近、別の調べ物をしているときに、
その事件がもしかすると、
別の事件と関係するのではないかということに気づきました。
なにも、私が最初に気づいたわけではありません。
もちろん、研究者はとっくに気づいていて
その記述をみて、私も知ったということです。
それは、第一級の事件ではなく、
多数ある事件の一つに過ぎませんでした。
しかし、地質学的ありふれた出来事が、
これほどの大異変を起こすということです。
そのことに気づかせてくれました。
その事件の内容は、次回以降紹介していきます。

・Gmail・
大学のメールサーバの自分のメールボックスを整理しました。
半年に一度整理しています。
大学の研究用メールサーバーは容量に制限はないのですが、
メールの量が多くなる(300MBを越える)と、
急に反応が遅くなります。
ですから、私は、メーラーで呼んで
パソコンのハードディスクでメールを管理しています。
先日もメールボックスを削除するのに、
なんと半日かかりました。
これには参りました。
ですから、最近、メールの管理を、Gmailに移行しようと
試しているところです。
まだ、Gmailは試したばかりですが、
7GBも容量があり、無料なのが魅力です。
基本は自分のパソコンに保存しますが、
大量のデータの保存として、
Gmailを利用しようと考えています。