2005年4月21日木曜日

4_56 恐竜展2:恐竜展2005

 春休みに、東京で2つの恐竜展を見に行きました。2つ目に訪れたのは上野にある国立科学博物館でおこなわれている「恐竜博2005」でした。今回は、「恐竜博2005」を紹介しましょう。

 ティラノサウルス(Tyranosaurus)は、暴君とうい意味のティラノとトカゲとうい意味のサウルスという言葉を合わせてつけられた名前です。1905年に最初に記述されて、今年がちょうど100年目となります。そんな2005年にティラノサウルの中でも、もっと有名な標本である「スー(Sue)」というニックネームでよばれる化石が、日本で展示されることになりました。上野にある国立科学博物館でおこなわれている「恐竜博2005」が、それです。
 恐竜展2005の目玉の展示は、なんといってもティラノサウルス・レックスの「スー(Sue)」です。スーはアメリカ合衆国のシカゴにあるフィールド博物館が、紆余曲折をへて、入手して、展示しているものです。
 実物標本は、門外不出ですが、今回初めて実物標本が、一点(肋骨)だけですが、貸し出されました。また、アメリカではすでに公開されていたのですが、全身骨格の複製も、今回が日本初公開となります。「恐竜博2005」は、遠いせいでしょうか、北海道では宣伝されていませんが、地域によっては、いろいろなメディアで紹介されているのではないでしょうか。
 なぜ、この標本がすごいのかというと、実物化石として見つかった比率のためです。普通多くの動物化石は、断片や破片、よくても一本という形状で見つかるものが大部分です。まれに、いくつかの骨がくっついていることがあります。それは、ごくまれなことです。
 もちろんティラノサウルスの化石も、例外ではありません。一部しか見つからないがの普通です。ところが、この「スー」と呼ばれている標本は、もともとあった骨の90%以上が見つかっているのです。ほとんど丸ごと残っていると言っていいほどの率です。
 この化石の発見によって、新たなティラノサウルス像がいくつも作り上げられました。
 骨をスライスして年齢とともに成長してく様子をみていくと、スーは28歳まで生きてていたことが分かりました。また、10歳から20歳の間には、急速に成長して、最大では1年間で767kgも体重を増やしていたことがわかりました。そして、5トンの体重にまでなっていたことが推定されています。
 頭骨のCTスキャンから、臭いを感じる知覚神経の部分が非常に大きかったことがわかりました。その結果、スーの嗅覚は非常に発達しており、臭いで獲物を探していたと考えられます。
 骨のデータを用いたシミュレーションから、走るスピードが推定されます。時速20km程度であったと考えられています。しかし、体の大きさからすると、非常に敏捷だといえます。
 また、スーは体のあちこちに傷を負ったり、骨折していたところが治ったり、関節炎などの病気になっていたことなどが、骨に残された跡からわかります。これほど、傷を負いながら活きてきたということは、スーはかなりの老齢であったということが、現在の肉食野生動物から推定できます。ということは、ティラノサウルスの平均的な寿命が30歳程度であろうと考えられます。
 この「恐竜展2005」では、スーが目玉ではありましたが、「恐竜から鳥への進化」を最新の情報で紹介することが目的でした。1990年代から2000年代にかけて、多くの羽毛の生えた小型の恐竜化石が発見されました。これらの化石は、それまで考えられていた、恐竜が鳥類へと進化していったという説を証拠付ける重要なものとなってきています。
 科学博物館の展示はオーソドックスです。音声ガイドの貸し出しもありましたが、標本とそれを効果的に見せる演出、そしてパネルとラベルというごく普通に博物館でおこなわれている展示手法です。案内者はいなかったですが、実物の迫力が十分伝わってきました。それは大人だけでなく、子供にとっても同じだと思います。多くの子供が歓声が、それを、物語っています。恐竜は、いつの時代でも、子供たちのヒーローなのですね。

・かはく・
国立科学博物館は、通称「かはく」と呼ばれます。
私は、新館の一部できたときに、一度見学に行っていますが、
新館が全部が完成してからは、初めての見学となります。
実物標本の充実は、さすが国立科学博物館だと思わせるものがあります。
そしてなんと言っても規模が大きく、集客力があります。
古い展示場を知っている私には、いいところや悪いところが、
いろいろ見えました。
でも、新しくなったことによって、
私も常設展が初めての見学となり、楽しめました。

・スー・
ティラノサウルスの「スー」については、
いろいろな事件がありました。
発掘、クリーニングをおこなった民間研究所と
訴えた土地の持ち主、インディアンのスー族、
押収したFBI、いろいろな立場の古生物学者など
さざまな人が入り乱れ、
泥沼のような事件が起こりました。
最終的には、オークションに出されて、
フィールド博物館が競り落としました。
10億円という高値がつきました。
そのような高価なものは、
門外不出にしてもおかしくありません。
それも、やはりスーがあまりにも立派な
標本であったからでしょう。
そのいきさつは、もっとも詳しく、当事者でもある
ピーター・ラーソンとクリスティン・ドナンの著で
「SUE スー 史上最大のティラノサウルス発掘」
(ISBN4022500107)
に書かれています。
私は、現在、読んでいる最中です。

・恐竜が残った・
私たちは家族で、「恐竜展2005」に行ったのですが、
春休みなので、混雑がするだろうなと予想して、
平日を選びました。
なおかつ、9時開館なので、8時半頃にはいきましたが、
当日は天気もよく、長い行列ができていました。
午前中に特別展を見終わり、午後からは常設展をみました。
「かはく」の新館は、地下3階から地上3階まであります。
子供が興味をもちそうな階を順に見ていき、
2階は疲れて見ることができませんでした。
前日に見たも一つの恐竜の展示の疲れもあったのか、
この日も、へとへとに疲れてしまいました。
しかし、移動距離が短かったのと、
早めに見終わったので、ホテルで夕食前に一休みできました。
今回は、博物館だけを見ていたので、
疲れたのですが、いろいろな標本が頭にこびりついていました。
また、子供向けに化石のレプリカつくりもできました。
子供たちは、恐竜で頭をいっぱいにして
思い出も一杯にしてきたようです。