2004年7月8日木曜日

3_34 石灰岩とチャート2

 石灰岩とチャートはどちらも生物の遺骸からできた岩石なのに、でき方が違っていました。そんなナゾの二回目です。


 石灰岩は、サンゴなどの礁をつくる生物の炭酸塩の遺骸からできています。一方、チャートはプランクトンで珪酸の殻や骨をもつものからできています。
 造礁性サンゴ以外のサンゴの仲間は褐虫藻とは共生していません。ですから、海の条件に関わりなく、いたることに広く住んでいます。プランクトンとして漂って生活しています。このほかにもプランクトンには、石灰藻類やココリスとよばれる炭酸塩の殻や骨を持つものもいます。
 プランクトンには珪酸だけでなく、炭酸塩の殻や骨をもつものもいます。このような石灰質の微生物の遺骸は、マリンスノーとして珪藻に混じっているはずです。だとするとチャートは石灰質(炭酸カルシウム)の成分が含まれているはずなのに、岩石としてできるのはチャートという珪酸を主成分とする岩石です。不思議です。炭酸塩の成分はどこにいったのでしょうか。
 それは、深海では炭酸塩が溶けやすくなる効果があるからです。海の表面の海水は、炭酸塩が目いっぱい溶け込んでいます。ところが、深くなるに連れて、水圧が上がると、炭酸塩の溶け込む程度が大きくなります。つまり深くなるとよりたくさん溶けていきます。深くなればなるほどその効果は強くなっていきます。その他にも、水温、pHの変化などの効果も加わるとされています。
 ところが、炭酸の供給源は大気中の二酸化炭素ですから、表面にだけ炭酸がたくさんできます。したがって、海の深度が深くなるにつれて、炭酸がよりたくさん溶け込める状態になります。そんな状態のところに、炭酸塩のマリンスノーがゆっくりと沈んでいくと、溶けていくのです。
 炭酸塩が溶け始める深度を、炭酸塩補償深度(CCDと略されています)と呼びます。大西洋では、炭酸塩補償深度は4,000から5,000mで、太平洋では1,000から2,000mとされています。これは、海底の深さより、溶けたり溶けなかったりする微妙な深度です。しかし、深海底にたまったプランクトンの遺骸は、最終的には、プレートテクトニクスの営みによって、陸地に上げられます。つまり、海洋底プレートが移動して、海溝に行き着き、陸地に上がる作用となります。海底の堆積物は、少なくとも海溝ではCCDを越えてしまいます。つまり、海洋底の堆積物は、炭酸塩は溶けて、珪酸だけになっていきます。これが、チャートが珪酸だけからできている理由となります。
 堆積岩の内、20%が石灰岩だといわれています。でも、堆積岩はサンゴや層孔虫など誕生する前から石灰岩はあります。ですから、生物に関係なく、石灰岩ができる作用があったはずです。
 浅い海では、今では生物の作用で炭酸塩がつくられているのですが、かつては化学反応によって炭酸塩の沈殿によってつくられたと考えられます。深い海では今と同じように炭酸塩は溶けてしまいますが、浅い海底で溜まった炭酸塩だけが、プレートテクトニクスによって陸に持ち上げられたと考えられます。
 地球の大気と海洋、生物、そしてプレートテクトニクスというさまざまな営みが複雑に関係しあってチャートや石灰岩ができていたのです。