2003年2月27日木曜日

1_24 鉄隕石(2003年2月27日)

 鉄隕石の話題が、まだ、終わっていませんでした。隕石の最後のグループである鉄からできた隕石の話しです。鉄隕石が教えてくれることを見ていきましょう。

 現代の生活において、鉄のない生活は考えられません。工業、産業、すべての場面で、鉄は利用されています。つまり、鉄は、私たちの生活、あるいは文明社会において不可欠なものとなっています。
 このような不可欠な鉄ですが、地球の表面や地殻にある鉄は、ほとんど酸化された状態であります。つまり、さびているのです。その証拠に空気中に長く金属の鉄を放置しておくと、表面がさびてしまいます。もっと長く置いておくと、さびのためにぼろぼろになってしまいます。
 酸素の多い環境では、鉄は酸化物として存在しています。酸素の多い環境とは、大気中だけでなく、地殻の中も、川や湖、浅い海など、酸素がたくさんある環境のことです。ですから、私たちがよく見かける金属光沢をはなつ鉄は、地球表面では、特殊な状態にあると考えたほうがいいのです。
 ところが鉄が酸化した状態というのは、実は、これまた特殊な状態なのです。地球全体という視点、宇宙全体という視点でみても、酸素と結びついた鉄というのは、特殊な状態なのです。
 地球には大量の鉄があります。その鉄は、地球の中心部に金属の鉄としてあります。その量は、地球全体の重さの32パーセントを占めています。マントルや地殻にある酸化鉄の量は、地球全体の6パーセント前後にすぎません。
 また宇宙にある鉄も、酸化された状態ものは多くありません。太陽のような恒星では、鉄はイオンとしてあります。また、固体としてある鉄も隕石から見ると、酸化された状態のものより、イオウと結びついた硫化鉄(FeS)のかたちものの方が多くなっています。惑星では地球と同じように天体内部で金属の鉄としてあるものが主要なものです。
 そんなことを思い出させてくれるのが鉄隕石です。さらに鉄隕石は、いくつかの大事件が起こったことも教えてくれます。
 先ほどいいましたように、惑星の内部には金属の鉄が集まっています。ところが宇宙空間にある鉄の固体は硫化鉄です。化学的状態の違うものになっているわけです。違ったものになるには、なんらかの事件が起こっているはずなのです。
 まず、固体の硫化鉄が他の化合物の一緒に集まってきます。ただ集まるだけなら変化はおこりませ。宇宙空間でものが集まるということは、衝突しながら集まっていくことを意味します。そのときにエネルギーが放出され、集まったものは熱くなります。熱くなると、やがて、溶けやすいものから溶けはじめます。硫化鉄もその溶けやすいものの一つなのです。溶けた硫化鉄は他の固体の成分より比重が大きいので、沈んでいきます。つまり中心に集まります。中心部では、温度も圧力も高くります。すると、硫化鉄のイオウの成分は、軽い元素であること、高温高圧では硫化鉄の形では存在できないことから、鉄から分かれて、浮いていきます。イオウのなくなった鉄はますます比重を大きくなり沈んでいきます。やがて溶けた鉄は中心部にたどり着きます。それが太陽系形成の初期の天体がすべてたどった運命なのです。
 隕石として鉄隕石があるということは、かつて惑星の中心部にあった金属鉄が、ばらばらになっているといこと意味します。鉄隕石に何種類かあることから、いくつもの天体が壊されたということを意味しています。原始の惑星同士の衝突があり、大部分の天体はなくなり、今の惑星の数だけが残ったのです。そしてその破片が隕石として時々地球に落ちてくるのです。
 鉄隕石は原始惑星の形成と、その破壊の歴史を物語っているのです。

・隕石シリーズの再開と終了・
間があいていましたが、隕石シリーズをお送りしました。
再開早々ですが、私の机の中にある3種類の隕石の話は、
これで一応終わりとします。
隕石については、まだまだ面白い話題がいくつもあるのですが、
それころ止らなくなります。
そのシリーズは別の機会にしましょう。

・面白さ・
鉄隕石は上でも述べましたが
私たちの常識をつぎつぎと覆してくれます。
金属の鉄は地球の表面では特殊で、酸化鉄が普通であること。
しかし、酸化鉄も地球全体や宇宙全体からみたら特別なものであること。
このように話題が、2転、3転していきます。
この視点の変化を、私はいつも面白いと思っています。
なぜなら、自分の視点を変えると、結論が行ったり来たりするからです。
鉄という元素が、視点を変えるとともに変化していく様を、
面白いと思いませんか。
そんなことを面白いと思える人を、また、私は面白いと思います。
それを面白いと思っている私を、また、私自身が面白いと思っています。
もうやめておきましょう。
限りなく続きそうですから。

・鉄器時代以前の鉄器・
私たちが利用している鉄は、
すべて人工的に、酸化物から、酸素を取り除いて作ったものなのです。
酸化した鉄を還元するには、それなりの技術が必要です。
人類がそのような技術を身につけたのは、鉄器時代と呼ばれる時代以降です。
しかし、鉄器時代より以前の時代にも、鉄器が見つかることがあるそうです。
それは、酸化した鉄を還元したのではなく、
もともと金属の鉄の塊を当時の人は手に入れることができたのです。
それが鉄隕石です。
隕石から作られた道具、素晴らしいと思います。
そして隕石の鉄を利用しようと考えた人がいたことも素晴らしいと思います。