2021年12月30日木曜日

4_155 この2年の調査を振り返って

 このエッセイは6つテーマで構成され、そのうち4は「地球地学紀行」というテーマになっています。2020年2月からの2021年にかけては、COVID-19の感染拡大で、更新ができていませんでした。そんな2年間を振り返りました。


 「地球地学紀行」は2019年10月31日に「4_153 2019年残念シリーズ 6:知床」(2019.10.31)を書いたのですが、2020年になるとCOVID-19の感染で、更新が滞りました。それでも、2020年の夏に感染がおさまりつつあるので、自然の中へでかけました。「4_154 支笏の森で昼食を」(2020.09.03)でその様子を紹介しました。しかし、2020年には野外調査には全く出られませんでした。
 2021年になると、感染状況と大学の危機管理レベルに合わせて、調査可能な時期を見極めて、数日ずつでかけました。研究目的で公式に出かけるためには、大学内にある危機管理委員会の事前許可が必要になるためです。
 大学の危機管理レベルは、今年度一杯は遠隔授業が基本となっていますが、対面が必要な授業は許可をもらっておこなえます。研究出張も認められています。しかし、北海道や札幌の警戒ステージが高くなると、すべて遠隔授業になり出張も停止になります。危機管理レベルも、試行錯誤しながら変更され、同じレベルであっても、少しずつ緩和する方向になっていました。
 現在、感染力の強いオミクロン株が、世界的な感染爆発を起こしています。日本では水際対策をしたのですが、甲斐なく国内での感染が広まりつつあります。感染爆発がいつ起こってもおかしくありません。頼みの綱のワクチンの3回目のブースター摂取も、年明け以降になりそうです。
 2020年度に学内の競争的研究資金では野外調査を中心に申請していましたが、遠隔授業と自粛に変更され、野外調査は全くできませんでした。2021年度の競争的研究費の申請では、感染を考慮して、感染爆発が起こっているときは別の研究品目して、感染がおさまっていれば道内の野外調査をするという2段備えにしていました。7月上旬まで緊急事態宣言ででれませんでしたが、7月に一旦解除されましたので、広尾から襟裳岬を周り静内を調査にいきました。しかし、また緊急事態宣言が秋まで出されました。しかし、やむおえない校務出張があったので、それに合わせて研究出張の許可をもらい、釧路から屈斜路、知床を調査しました。その後、緊急事態宣言が終わり、10月に道北と道南に、11月中旬にはまた校務出張が釧路にあったとので、一日私用として阿寒を訪れました。
 2年間のコロナ禍での自粛生活で、街にでたり外で買い物をしたいなどという気持ちが、大きく減衰しました。多くの人も、似た気分になっているのではないでしょうか。私の自粛生活では、常に研究中心に過ごしているので、変わらず生活でき、我慢することはありませんでした。しかし、野外調査に出かけられないのはな、なかりの痛手で苦痛でもありました。2021年は、何度が調査にでましたが、都合にいい時期に、行きたい場所に出かけられず、不満が残りました。
 来年度につても、競争的研究費の申請を考えなければなりません。オミクロン株の感染を考えたら、道内だけでの調査を考えたほうが無難でしょうか。まあ、来年になってから考えましょうか。
 来年こそは、よい年になりますように。

・強い気持ちで・
最近、年末のエッセイでは、1年を振り返っています。
2020年は野外調査ができず、
今年は野外調査ができましたが、
不自由な思いをしてでかけたの不満が残りました。
2022年もコロナ禍が続きそうです。
COVID-19には負けてはいません。
だからまだまだくじけるわけにはいません。
すべは心の持ちようです。
強い気持ちで対抗していきましょう。
来年こそはCOVID-19に打ち勝ちましょう。

・年末の寒波・
北海道は12月中旬から、何度か寒波が襲いました。
年末の寒波は強烈で、室内ではストーブを一日炊いていても、
温かい室内着を重ね着をしても寒い日がありました。
ストーブの火力を上げてしのぎました。
例年のことですが、年末前まで
大学にいつものように出て仕事します。
御用納めの翌日29日以降は、
大学の暖房は入っていますが、弱くされます。
寒いので昼間で大学で過ごすことする予定です。

2021年12月23日木曜日

5_187 系外惑星の多様性 2:白色矮星

 恒星の終末には、特別な現象が起こります。終末を迎えた星を調べることで、周りの惑星の特徴を読み取ることができそうです。系外惑星の化学的特徴を知る方法が考案されました。

 系外惑星の化学組成について、直接調べる方法と間接的に調べる方法があり、それぞれ別の論文で報告されました。いずれも恒星の観測値から推測する方法です。系外惑星の化学組成を、観測値から直接推定するか、相関関係を用いて間接的に推定するかが異なっています。
 まず、直接に推定する方法からみていきましょう。ターゲットとする恒星は、白色矮星です。
 恒星が通常の核融合反応で輝いている状態(主系列星といいます)から、さらに進化していくと、終末に向かっていきます。恒星の終末には、恒星のサイズ(質量とも同じ)によって異なっていきます。大きな恒星は超新星爆発をして、中心部には中性子星かブラックホールができます。
 太陽のような小さい目の恒星は、ゆっくりと膨張しながら、温度が下がっていき、赤色巨星と呼ばれる星になっていきます。赤色巨星は膨張していき、その大きさは、地球など岩石惑星のある軌道よりも大きく膨らみます。膨らんだ中にある惑星は、赤色巨星に飲み込まれていきます。膨張がおさまると、外側にはガスの惑星状星雲が残り、中心部には白色矮星が残ります。
 白色矮星はもともと恒星であったので、水素とヘリウムを主成分としていますが、白色矮星から別の元素が観測で見つかることがあります。これはすでに知られていたことです。カルシウム、ケイ素、マグネシウム、鉄など岩石を構成していた成分も見つかっています。
 白色矮星のそれら元素組成は、主系列星で組成範囲から超えていました。このような元素は、赤色巨星が岩石惑星を飲み込んだ時に、白色矮星に取り込まれた成分が、検出されたのではないかと考えました。
 その仮説を検証するために、650光年以内にある白色矮星で、観測されていたデータ23個をもちいました。そこから恒星の周りの惑星の岩石や鉱物の組成を推定していきました。その結果、多様な岩石がありそうなことがわかってきました。
 その詳細は、次回としましょう。

・冷え込み・
北海道は先週末から
寒波の到来でかなりの積雪がありました。
積雪は苦でもはないのですが、
冷え込みがひどいです。
我が家は、1階と2階にそれぞれストーブがあるのですが、
いつもはひとつを夜も炊いているのですが
寒波のときは両方をつけていても
冷え込みが厳しく、室内が寒くかったです。
厳冬の冷え込みです。

・クリスマスでも・
大学は、25日(土)まで講義日になっています。
今週末はクリスマスですが、
関係なく講義はおこなわれています。
我が家は子どももいないので
何も特別なことはしません。
淡々と日常を過ごします。
我が家では、年末の暮と正月のほうが
いろいろ行事をおこないます。
次男の帰省する予定ですが、
雪による遅延や欠航もそうですが、
新型コロナのオミクロン株の感染も心配です。

2021年12月16日木曜日

5_186 系外惑星の多様性 1:2つのアプローチ

 系外惑星は遠くにあるため、それぞれの特徴を見分けるのが難しいです。小さいとさらに難しくなります。しかし、地球に似た岩石惑星の特徴を見分ける方法が2つも提案されました。


 多数の系外惑星の発見とその多様性が報告される中、詳細な観測に基づく研究も進められています。系外惑星とは、太陽系外にある恒星を回る惑星を、地球、あるいは地球の周回軌道にある望遠鏡などで調べるものです。
 遠くにある恒星の周りの惑星の探査なので、大きな惑星、目立った惑星から見つかります。大きな惑星で恒星の近くを回るものが、多く発見されています。だからといって地球のような岩石惑星が少ないわけではありません。見つかりにくいだけで、存在しています。
 地球に似た惑星は、小さいため、通常の観測では調べにくい天体になります。しかし、地球に似たサイズの惑星も、いくつも発見されてきました。さらに、水が存在できそうな領域(ハビタブルゾーンと呼ばれます)に存在する惑星も、いくつか見つかってきました。
 さて今回、紹介するのは、系外惑星の化学組成に関する研究です。2つの異なった方法論でのアプローチですが、似た時期に報告されました。合わせて紹介していきましょう。
 ひとつは、Nature Communicationというオープンアクセスの雑誌に、2021年11月2日に紹介されたもので、
Polluted white dwarfs reveal exotic mantle rock types on exoplanets in our solar neighborhood
(汚染された白色矮星から太陽系近傍の系外惑星の異質なマントルの岩石タイプを解明)
というタイトルです。PutirkaとXuが著者となっています。これは、白色矮星という恒星が核融合を終えて死を迎えた天体を用いて、間接的に惑星の化学組成を調べる方法です。
 もうひとつは、Scienceという科学誌に2021年10月15日に掲載された
A compositional link between rocky exoplanets and their host stars
(岩石系外惑星と恒星との間の化学的相関)
という論文で、多数の著者(20名)による共同研究です。こちらは、ハワイのすばる望遠鏡など、地上にある天体望遠鏡で観測された系外惑星の内、実測された化学的なデータを用いています。それらの直接観測されたデータを用いて、惑星と恒星との化学的な関係があることを示しています。
 この2つの系外惑星の化学組成に関する話題を、シリーズで紹介していきましょう。

・大荒れ・
北海道は週初めは大荒れという予報でした。
札幌での積もったようですが、
わが町では、風は強かったですが、
少しの積雪で済みました。
しかし、層雲峡など、ところにより
激しい積雪となった地域もありました。
飛行機の欠航便もあったようです。
このままおさまればいいのですが。

・年末年始・
12月の我が大学の講義は、25日(土)までです。
大学だけでなく、公官庁では
クリスマスなどは祝日でもなく配慮もしません。
宗教儀式は、尊重するのでしょうが配慮しないようです。
「行政機関の休日に関する法律」があるそうで
年末年始(12/29-1/3)は休日と決められています。
明治時代にもそう決めた法律があるそうです。
我が大学も年末年始は休みとなります。
年の変わり目なので、いろいろな行事があるのでしょうが、
昔からそうだからという根拠は
少々不思議な気がしますね。

2021年12月9日木曜日

5_185 酸素と自転 6:底生酸素

 自転速度の変化と酸素濃度の変化の相関がありました。その原因は、生物の酸素の生産量ではなく、海底での埋没量によるようです。今後、天文学的変動と生物活動、そして地球環境との結びつきを再考していく必要があるようです。


 この論文では、酸素の形成と地球の自転の関係を見てきました。地球史の中で、自転の変化と酸素濃度の変化の起こった時代が一致していました。では、なぜこのような一致がみられたのでしょうか。その原因を探っていきましょう。
 まず、現在生きているシアノバクテリアで、光合成による酸素の形成効率を測定します。測定値からモデルを作成して、日照時間の関係を調べていきました。シアノバクテリアも生物ですので、常に酸素呼吸をしています。昼は酸素を使用して光合成もしますが、光合成が勝ります。一方、夜は光合成はできず、酸素の消費だけとなります。シアノバクテリアの光合成の効率は、一日が長くなっても変わらず、一日の酸素の総生産量は一定でした。しかし、酸素の供給が増えることがわかりました。
 論文では、"diel benthic oxygen export"と"resultant daylength-driven surplus organic carbon burial"表現されています。訳すと「日周で底生酸素の輸出」と「結果として起こる日周期駆動の余剰の有機炭素の埋没」という意味にりますが、少々ややこしい理屈になります。
 「底生酸素」とは、本来なら海底に保存されるはずの酸素です。「日周で底生酸素の輸出」とは、日周期が長くなると「底生酸素」として海底から酸素が放出されてくることです。観測とモデル計算から、日周期が長くなると、大気中の酸素量が増えていくことがわかってきました。
 「結果として起こる日周期駆動の余剰の有機炭素の埋没」とは、酸素があれば本来なら海底で有機物を分解をしていくのに使われている酸素が、大気中に放出されていくので、堆積物中に埋没される炭素が多くなるということです。
 酸素の放出されると炭素が埋没されることになり、両者は相反する作用となります。このような原理が働いたため、前回紹介した24億年前頃の大規模な酸化イベント(Great Oxidation Event:GOE)と、6億年前(原生代後期)頃の酸素形成イベンド(Neoproterozoic Oxygenation Event:NOE)が起こったと説明しています。
 これまで、自転速度の変化は天文現象として、酸素量の変化は生物活動として捉えられてきました。その関係はあることは想定できますが、十分検討されてきませんでした。それが解明されてきたので、今後、天文学的運動と生物活動、あるいは地球の自転と大気組成変化(二酸化炭素、オゾン量など)の関係なども、考えていく必要がでてきました。
 昼の時間変化は1年でもおこっているはずです。今回の論文の結果では、酸素の生産量も変化しているはずです。二酸化炭素には季節変化が現れているのは知っていたのですが、酸素量は知りませんでした。調べると、酸素量にも季節変化がありました。また二酸化炭素の年々の増加に呼応するように、酸素量も減少していました。なかなか興味深い現象です。

・冬至・
北海道は、繰り返し積雪がありました。
日中にはすぐに溶けるので、
根雪になっていないのですが、
日に日に寒さが募ってきます。
日の出も遅くなり、日没を早くなり、
一日が短くなっていきます。
今年の冬至は12月22日で、もうじきです。

・卒業研究・
このエッセイが配信される頃には、
卒業研究の提出期間が終わっています。
4年生にとって、大学での学びの集大成となります。
大変な思いをして書き進めていくことになりますが、
長文の報告書の書き方を体験することで
研究の一端を身に着けられることを願っています。
そのため、大半の空き時間を
学生の添削に充てています。

2021年12月2日木曜日

5_184 酸素と自転 5:イベント

 地球の自転のモデル計算と、酸素濃度の変化において、重要なイベントが起こった時期がいくつかあります。それをまとめておきましょう。それらの時期が一致するかどうか、一致すとしたら、その意味を考えなければなりません。


 太古代後期は16時間、30億年前より以前は6時間という見積もりもあることは紹介しました。それらの情報をもとに、月と地球の関係から、地球の自転をモデル計算する試みは、以前からおこなれていました。その結果による、「潮汐摩擦」によって、時代を遡るにつれて、一日が短く、自転が速くなっていくことは、わかっていました。この自転の変化は、規則的のですが、7億年前に、一日が21時間となってからは、自転速度は変化しません。その状態が25億年前まで継続します。そして25億年前より以前なると、また一日が短くなっていきます。

 7億から25億年前の自転速度の変化が停止した原因は、「潮汐ロック」だと考えられています。月が地球の周りを回っているといいましたが、実際には、共通の重心を回っています。地球と月が、お互い潮汐力を及ぼしているので、潮汐摩擦によって、ある時、自転周期と公転周期が一致する状態になります。地球の自転はロックされていないのですが、月では自転と公転の周期が一致し(地球を1回公転するとき1回自転する)、潮汐ロックがかかった状態になっています。一旦、この状態になると、運動の変化が起こりにくくなります。

 しかし、それ以前は、潮汐摩擦によって、自転の速度は速い状態とななっています。

 一方、地球史において酸素の増加現象として、いくつかのイベントが見つかっています。

 4億年前ころ、古生代酸化イベント(Palaeozoic oxidation event:POE)と呼ばれ、大オルドビス紀生物多様性イベント(the Great Ordovician Biodiversity Event)に対応していると考えられています。6億年前(原生代後期)ころ、酸素形成イベンド(Neoproterozoic Oxygenation Event:NOE)が起こりました。原生代中期(18億から8億年前)、不毛の10億年(boring billion)と呼ばれる、大陸の再構成と孤立が起こり、気候変動も海洋循環も停滞して、生物進化もほとんど起こらない時期となっています。24億年前ころ、大規模な酸化イベント(Great Oxidation Event:GOE)が起こります。

 これらのイベントを考慮して酸素の量の変化が、モデル計算としてこの論文で見積もられています。このような時間軸上での自転の変化と、酸素の濃度変化を同じ図で表示すると、イベントの時期やパターンが一致します。

 そのメカニズムについては、次回としましょう。


・師走・

いよいよ師走になりました。

我が大学の学科は、卒業研究が

必修になっていますので

4年生は全員、決められた期間に提出し、

報告会で発表しなければなりません。

ですから、現在、ゼミの学生たちは

必死に完成を目指しています。

私も空き時間をすべて添削に充てています。

まさに師走ですね。


・積雪・

北海道は、11月末に寒波が来て

各地で積雪、時には豪雪がありました。

わが町でも、2日続けて少しですが

雪が積もりました。

冷え込みも厳しくなってきました。

天気がよければ昼間のは暖かくなるで

ストーブは止められますが、

ほぼ一日つけっぱなしにしています。

2021年11月25日木曜日

5_183 酸素と自転 4:自転の変化

 酸素の生産量の変化の次は、自転の速度変化です。どうすれば過去の自転速度がわかるのでしょうか。いろいろな方法で推定されています。変化しているとしたら、その原因の追求も必要です。


 酸素の形成や濃度の変化を調べる方法を見てきました。次は、地球の自転の変化をみていきましょう。自転とは、地球の運動なので、速度の変化は、過去の運動を調べなくてはなりません。過去の運動は、どのようにして調べればいいのでしょうか。

 自転の速度は、1日の時間数(24時間)で示すことができます。1日ごとに時間の変化があったとしても、それは非常に小さいものでしょうから、100年、1000年単位でみていく必要があるでしょう。

 過去の自転速度を調べるには、1日ごとに形成される記録があれば、1年分の日数がわかります。そこから調べることができます。ただし、どこかに1年の区切りがないとだめですが。

 毎日の物質として記録されるものがあれば、1年の日数を数えることができます。そのような記録がいろいろな時代にあれば、時代ごとの1年の日数が比較できます。そのような記録として、生物の化石が考えられます。例えば、貝には1日ごとに形成される成長線があり、1年の日数がわかります。

 化石が利用できるのは、カンブリア紀以降で、それ以前は生物の利用できません。しかし、シアノバクテリアがつくる同心円状の層構造をもったストロマトライトや、日輪のように潮汐の満ち引きによってできる周期性のある地層を用いるなど、いろいろな方法で推定されてきました。現在は1日は24時間ですが、古生代に向かってだんだん1日が短くなっていきます。論文によると、古生代では21時間、太古代後期は16時間と推定されています。30億年前より以前には、6時間という見積もりもあります。

 昔ほど一日が短いということは、昔ほど地球の自転が速かったということになります。これは、天文学的にみると、時間経過にともなって、地球の自転速度にブレーキがかかるような現象が起こっていることになります。その原因は、月によって海洋で潮汐作用が起こり、それが摩擦となり自転を遅らせるということがわかっています。これを「潮汐摩擦」と呼んでいます。

 潮汐摩擦による変化は、天文学的に計算可能となります。計算によると、1日は100年で約0.002秒ほど遅くなってきます。ただし、地球と月のエネルギー(角運動量と呼ばれます)は一定なので、地球の自転が遅くなった分のエネルギーは、月に渡され、その結果月はだんだんと地球から離れていきます。その速度は年間3.8cmです。昔、月は近くにあり、もっと大きく見えたことになります。

 ただし、長期に渡る自転速度の変化が実際に起っていたかは、検証しなければなりません。その検証のためのデータが、上で述べた地質学的証拠が重要となります。

 では、酸素の量と自転速度の関係については、どうなるでしょうか。次回としましょう。


・日食・

潮汐とは、一日に2回の潮の満ち引きですが、

それが地球の自転に対して

ブレーキになっていることはあまり想像できません。

かつて月が近くにあったということは

皆既日食や金環食などの

すばらしい日食はなかったことになります。

皆既日食や金環食は、

月と太陽が地球からの見かけ上の

大きさが同じになるという

絶妙なところにあるために起こっているのです。

将来は、残念ながら皆既日食は起こらなくなります。


・冬道・

先週は道東への出張がありました。

この時期、道北では荒れで、

札幌でも積雪があったようですが、

自宅しても積雪の痕跡はありませんでした。

帰りは峠道が一部凍結しており、

別の峠では雪がちらつきましたが、

無事、帰ってくることができました。

2021年11月18日木曜日

5_182 酸素と自転 3:酸素の形成

 今回は、大気中の酸素の形成、形成の仕組、量の変化をどう捉えるかを、みていきましょう。酸素の形成や変化は、過去の地層や化石から探っていくことになります。


 地球の創成時代の大気には酸素がなく、二酸化炭素を中心とした大気であることがわかってきました。現在は、酸素を20%含む大気になっています。その酸素の形成の仕組みと、変化の様子を考えていかなければなりません。
 現在の地球で、酸素は光合成をする植物がつくっています。陸上の森林や草原の植物だけでなく、海の植物性プランクトンが、大量に酸素を作り出しています。現在の酸素は、生物の光合成よって作り出されているもので賄われていることがわかっています。
 植物が地球の大気中のすべての酸素をつくりだしたのでしょうか。もしそうなら、いつ頃はじまり、どのような変化をしてきたのでしょうか。
 昔は、地球の酸素は、太陽の光分解で酸化物からできたのではないかと考えられてきましたが、もしそうなら同じような原始の大気をもっていた金星や火星でも、酸素のある大気をもつことになります。しかし、そのような証拠は見つかりませんでした。
 光合成をした微生物が誕生したときから、酸素がつくられはじめたとされてきました。光合成とは、複雑な組織で複雑な仕組みで起こるものです。地球最初の生物はもっていなかったはずです。ある程度進化した生物で光合成が起こったはずです。
 光合成を最初におこなった生物の化石は、32億年前頃のものに候補があるのですが、まだ決着を見ていない状態です。確実に酸素を、それも大量に生産した証拠は、25億から20億年前頃の地層に見つかっています。丸い同心円状の特徴的な構造をもった岩石が、世界各地に大量に見つかっています。ストロマトライトと呼ばれています。
 現在にもストロマトライトをつくっている生物が、西オーストラリアのハメリンプールの海岸にかろうじて生き残っています。この生物はシアノバクテリアと呼ばれ、光合成をしていることがわかっています。最初の光合成生物は、まだわかっていませんが、25億から20億年前に見つかっている大量のストロマトライトの地層から、その時期から大量の酸素が形成されたと推定されます。
 また、同じ頃に、縞状鉄鉱層と呼ばれる地層も大量に形成されています。縞状鉄鉱層は、海底に堆積した堆積岩ですが、酸化鉄を大量に含んだ地層です。酸素がない原始地球では、海洋に大量の鉄が酸化されることなく溶けていました。シアノバクテリアが酸素を量産すると、海の中では鉄が酸化され沈殿していきます。地球の全海洋で、鉄の酸化作用が起こったと考えらます。この時沈殿したものが、現在の鉄鉱の原料となっています。
 鉄の酸化が終わると、酸素は大気中に放出されるようになります。大気中に酸素が加わっていくと、地表の酸化が起こります。20億年前以降、鉄の酸化物を含んだ赤色砂岩が見つかってきます。この赤色は鉄が酸化した色です。これも大気中に酸素がずっとあった証拠となります。
 他にもイオウ鉱物やウラン鉱物などから、ある時代の酸素濃度が推定されています。このようないくつかの時代で酸素濃度を手がかりに、シミュレーションによって、大気中の酸素の濃度変化が推定されています。
 ここまで酸素の形成、量産、濃度変化を推定する方法を見てきました。次は自転の変化を見ていきましょう。

・見る側の気持ち・
古い時代のストロマトライトの地層は、
カナダ、アメリカ、中国などで見ていますが、
現在生きているストロマトライトを見に、
西オーストラリアのハメリンプールへは2度いきました。
一度目は満潮時で水中にある状態でした。
これが非常に残念だったので、
2度目は干潮に合わせて見学にいきました。
そこまでして見学したものは、強く印象に残ります。
同じものでも、見る側の気持ちが変わると
まったく違って見えてきますね。

・校務出張・
今週は校務出張で数日でかけます。
そのため、このエッセイも
出張の合間をぬって書いて予約配信しています。
月曜日にはミゾレ混じりの雨の中を出張しました。
そろそろ里でも雪になりそうなので、
峠越えが心配になってきました。
しかし、高速道路で越える予定なので
もっとも除雪が早いところとなるはずです。
心配してもしたがありませんが、
積もったら慎重に運転していくだけです。

2021年11月11日木曜日

5_181 酸素と自転 2:原始の大気

  現在の地球は、酸素を含んだ大気になっています。過去から現在までの酸素の濃度の変化がわかるのでしょうか。そもそも地球の創成期の大気は、どのようなものだったのでしょうか。どのように探っていけばいいのでしょうか。


 地球の酸素濃度と自転速度に関連性があるという報告がありました。そのために、まずは地球の酸素の起源を見ていきましょう。
 過去や太古、あるいはできたときの大気の組成は、もはや地球には残されていません。現在の地球の大気には、酸素が20%ほど含まれています。大気は全地球で循環しているので、組成は地球のどこでも均質な値となっています。ですから、地球の過去の大気の組成やその濃度の変化を調べることは、現在の大気からはできません。どうすれば、原始の地球の大気を探ることができるでしょうか。
 地球の原始大気はいくつかのアプローチで探求されています。ひとつは、惑星の材料となった隕石(始原的隕石と呼ばれています)からの探求です。始原的隕石のガスになる成分(揮発性成分と呼ばれます)は、二酸化炭素や窒素、水蒸気が含まれていることがわかってきました。材料からもたらされるガスの成分が、原始の大気になるはずで、その組成は二酸化炭素、窒素、水蒸気が主成分と考えられます。そこには、酸素は含まれていませんでした。
 次は、比較惑星学からのアプローチです。太陽に近い側にある隣の惑星の金星は、地球(100kPa)の100倍近い大気圧(9321.9kPa)になるのですが、その主成分は二酸化炭素です。遠い側の隣にある火星の大気は、100分の1程度(750Pa)ですが、主成分はやはり二酸化炭素です。このような地球両側の惑星は、形成時の大気が今も残されているようです。それらの惑星が大気圧は大きな差があるのですが、似た大気組成をもっています。そのような比較から、地球の創成期も、酸素がなく二酸化炭素が主成分の大気だったと推定されます。
 地球内のアプローチとして、堆積岩が利用されます。堆積岩は、海底で堆積し地層となります。海水は地球表層の環境を記録します。大気とも接しており、大気の痕跡も地層に記録しています。もし大気中や海水中に酸素があれば、酸化された鉱物や物質が地層の中に記録されることになります。古い堆積岩から、地球表層の環境を読み取っていくと、酸化された記録は見つかっていません。
 これらの推定や証拠から、地球初期の大気には酸素がなく、二酸化炭素が主成分であったと考えられています。
 では、いつ、どのように酸素ができ、その濃度はどのように変化してきたのでしょうか。それは次回としましょう。

・卒業研究のツメ・
卒業研究のツメの時期になっています。
毎日、空き時間に個別の添削をしています。
最初の文章作成の指導は大変でしたが、
全員、長文の書き方を理解してきたので、
自身で書き進めるようになってきました。
毎週、少なくとも一度は添削することにしています。
定期的に添削をしいないと、
気を抜いてストップすると、一気に遅れてしまいます。
そのためにも、毎日、だれかの添削をしています。

・里の冬も近い・
北海道は、木々の紅葉も終わり、
ほとんどの葉も落ちてしまいました。
10月に一度、各地で降雪がありましたが、
その後は、寒波がないので、降雪は少ないようです。
住んでいる街では、今シーズンはまだ降っていません。
いつ降ってもおかしくない時期になりました。
自家用車は冬タイヤにしていますが。

2021年11月4日木曜日

5_180 酸素と自転 1:関連性

 地球の大気には、酸素が20%含まれています。その酸素は、生物がつくりだし、現在も生産をしているものです。酸素の増加が、地球の自転と関連しているという報告がありました。詳しく紹介していきましょう。



 今回のテーマは、地球の酸素と自転についてです。地球の酸素の量と自転の速度が関係するという報告がありました。この報告をみて、かなり奇異な感じがしました。なぜなら、酸素量は生物が関与した現象で量は変化するはずです。一方、地球の自転は天体の運動ですから、天文学的で規則的な変化となります。両者が関係するというのというのは、どうしてだろうかと感じたからです。
 イギリスのNature Geoscienceという権威ある科学雑誌に、2021年8月2日に掲載されたので、科学的根拠や論理は十分吟味されているはずです。この報告は、ドイツのマックス・プランク海洋微生物学研究所のクラット(Klatt)氏らの共同研究で、そのタイトルも、
  Possible link between Earth's rotation rate and oxygenation
  (地球の自転率と酸素供給の間の可能な結びつき)
というものでした。
 地球大気の酸素量の変化、また地球の自転速度の変化も、これまでも研究されてきたのですが、別々のテーマとして別の分野の研究者によって進められてきました。この論文では、このような一見全く異なった両者が、関係している可能性を指摘しました。
 論文の結論としては、地球の自転が遅くなっていくと、一日の時間が長くなっていきます。それと呼応して、酸素が24億から22億年前に急激に増加してきたという主張です。どう呼応していたのかは、なかなか興味深いところです。
 論文の紹介をする前に、まず地球の自転速度と酸素の大気中の濃度変化を、それぞれ理解しておく必要があります。このエッセイでは、大気中の酸素量の変化については、以前何度か紹介をしたことがあります。例えば、「2_26 酸化地獄」(2003年12月18日)、「2_79 酸素の物語5:海洋の酸素」(2009.06.11)、「1_111 23億年前の事件 1:重なる事件」(2013.01.31)などで何度か紹介してます。ところが、地球の自転やその変化については、ほとんど紹介してきませんでした。
 まず、酸素の増加の整理をしてから、次に自転速度の変化について詳しく紹介してから、この論文の説明をしていきましょう。

・道南豪雨・
先日、今シーズン最後の野外調査をしました。
3つの目的地がありましたが、
2つは好天に恵まれて、最後の紅葉の中で調査しました。
ただし、道南では一晩激しい雨に見舞われました。
幸い移動したので、激しい雨にはなりませんでした。
しかし、道南は、翌日から記録的な豪雨と
雹などによる被害に襲われました。
幸い私は被害にあいませんでしたが、
被害地域の方にお見舞い申し上げます。

・入試シーズンへ・
大学は、いよいよ入試のシーズンとなってきました。
AO入試という制度はなくなり、
代替となる制度でおこなわれています。
11月から本格的な入試に入っていきます。
来年度の新入生からは、従来通りで
対面での授業がはじまればと思います。

2021年10月28日木曜日

3_197 核の水 5:マグマオーシャンの水

 マグマオーシャンと核の水素の分配係数が、実験的に決定されました。地球の水素は、核の軽元素の候補だけでなく、表層では酸素と結びついて海となります。分配係数から地球初期の水の量が見積もられます。



 マグマオーシャンを再現した高温高圧実験でのその場観察から、水素が液体鉄には含まれていることが判明しました。しかし固体の鉄になると、水素は抜けていきました。
 珪酸塩の液体のマグマにも、固体の岩石になっても、水素は残っていることはわかっていました。しかし、固体の岩石であっても、水素の量を測定するのが難しいため、水素の挙動を定量的に考えることができませんでした。今回の報告で、SIMSを改良した同位体顕微鏡システムで、岩石中の水素の測定することができました。
 ダイヤモンドアンビルとレーザーで高温高圧状態を発生し、SPring-8でその場観察で液体金属中の水素の量を求め、それと平衡であったマグマの水素の量を岩石中の量とみなすことで、液体金属とマグマ間での水素の分配係数を求めることができました。
 水素の金属/マグマの分配係数は、29以上となることがわかりました。つまり、水素は液体の金属鉄があると、珪酸塩より30倍もの鉄に分配されやすいことになります。つまり、水素は、親鉄(液相)元素として振る舞うことになります。
 ここからさらに推定が進められていきます。マグマオーシャンでは、とんどの水素は液体金属にはいり、核にもっていかれました。しかし、少量はマグマに残り、マントルになったはずです。現在のマントル中の水の量は、マントル由来のマグマの実測から、その量は、海水と同程度だと見積もられています。つまり、現在のマントル中に海水と同じ量の水があったことになります。
 マグマオーシャンの中には、もともと現在の海水の2倍の水の量があったことになります。もしそうであれば、マグマ中の含有量は約700ppmと見積もることができます。そこから、実験で求めたマグマオーシャンと金属鉄の分配係数から、溶けた金属鉄には3000~6000ppmの水素があったと推定できます。地球初期には、現在の海水の約30~70倍ほどの水が必要になってきます。その水のほとんどが核に取り込まれたことになります。
 この量を核の密度に換算していくと、「核の密度欠損」のうち、3~6割が水素で説明できることになります。つまり、欠損の主たる成分を水素といえることになります。
 地球初期では、マグマオーシャンに取り込まれた水は、現在の海水と固体のマントル中に残されている水の合計になります。なぜなら地球初期のマグマオーシャンがあったころは、表層も熱く、海洋などができる条件ではなかったはずです。
 地球を形成した素材には、それなりの水が含まれていたはずですが、そのほとんどが金属鉄に取り込まれ、ほんの一部がマグマオーシャンに残り、その半分が、現在の海となったのです。
 まあ、後半は仮説に仮説を重ねていますので、検証が必要ですが、いずれにしても、核には多くの水素が存在し、その水素はマグマオーシャンの時代に溶けた鉄とともに核に落ちていくというシナリオが考えられます。核の実態が明らかにされつつあるようです。

・冬タイヤ・
北海道では、各地で初冠雪の情報が届きました。
わが町では、まだ降雪は確認していません。
霜は何度も下りて、見えている近く山並みには
何度が冠雪がありました。
里の雪も、もうすぐそこまで迫ってきています。
車は冬タイヤにしました。
この冬タイヤも、だいぶ使っているため、
そろそろ交換時期だと車屋さんにいわれています。
今シーズンの野外調査を終えて、来月になったら、
新しい冬タイヤに交換したいと考えています。

・最後の調査・
今週末、今シーズン最後の野外調査にでかけます。
講義の隙間をぬっての調査です。
2週前にも、調査にでかけたのですが、
雪とミゾレにあい、非常に寒い思いをしました。
雪が降ると、地質調査はできません。
今年も、コロナの緊急事態で出かけられなかったため
雪が降る前に、少しでも補っておこうと考えています。
今回は、雪の影響を避けるために、道南地域にしました。
なんとか雪にならないことを願っています。

2021年10月21日木曜日

3_196 核の水 4:同位体顕微鏡

 岩石中の軽い元素の分析は、なかなか困難です。SIMSでも特別仕様の同位体顕微鏡という装置をもちいることで、水素の濃度を調べることができます。SPring-8と同位体顕微鏡で、これまでにない結果がえられました。



 核の金属鉄中の水素の挙動をその場観測をし、岩石(珪酸塩)中の水素の量を調べる必要がありました。それがなされたのですが、まずはその場観測をみていましょう。
 SPring-8で金属鉄中の水素は、定量的な測定はできないのですが、定性的に存在は確認できます。
 タイヤモンドアンビルでレーザーを当てて高温高圧状態にして、溶けた金属鉄とマグマの状態を出現させます。その状態をX線回折装置で調べると、水素と鉄の化合物(FeHx111と呼ばれるピーク)が見つかりました。つまり、高温高圧状態の溶けた状態の核では、水素と鉄の化合物が存在し、それが核の軽元素成分としての有力な根拠を示したことになります。
 さらに実験を続けSPring-8で温度だけを下げると、水素がなくなり固体の鉄だけのX線回折になっていることも、定性的ですがわかりました。つまり、液体金属の鉄には水素が含まれているが、固化すると水素が抜けていくことも検証されました。
 地球初期のマグマオーシャンで溶けた鉄のまま核へ落ちていくことで、水素が抜けることなく、核へ持ち込まれるというプロセスが推定できることになります。
 次は、岩石中の水素の量です。この水素の測定に同位体顕微鏡システムを用いました。この装置は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry 二次イオン質量分析計)を改良したものです。セシウムイオン(一次イオン)を分析したい試料表面に当てると、そこから分子や原子が飛び出してきます(スパッタリング)。目的のイオン(原子核だけになったもの、二次イオン)の質量数だけを分析する質量分析をします。次に、それで一つの分析点として、これを二次元的に繰り返すことで、試料を面として同位体組成を測定していきます。
 この装置は、共同研究者の北海道大学の圦本さんの研究室だけが持っている技術です。この装置では、同位体組成(質量数が異なる元素の比率)を求めることができ、水素も測定可能です。実験した最終の試料を、半分にした断面で分析すると、中心の金属鉄(固体)とその周りの岩石の同位体組成を面として見えるようにできます。
 その結果は次回としましょう。

・冬到来・
北海道は寒波の到来で寒くなりました。
大学でも暖房が入っています。
自宅でも朝夕には
ストーブを当たり前に焚くようになりました。
札幌でも山並みに冠雪が見えました。
いよいよ冬が到来です。
衣類もだんだん防寒仕様にしていきます。

・道北調査・
調査で道北にでかけました。
ちょうど寒波の襲来の時期で、
週末には、ミゾレに見舞われました。
帰路の峠越えでは、雪になりました。
着るものも冬仕様で、車も冬タイヤにしていたので
調査や移動には問題はなかったのですが、
ミゾレとアラレの間のようなものだったので、
外で調査をしていると
寒さと濡れるので、落ち着いて
露頭を見ることができませんでした。
しかし、予定通りのルートを進みました。

2021年10月14日木曜日

3_195 核の水 3:核の水素

 シミュレーションで実物試料を用いて実験をし、できた実物を分析するいう方法は、客観的検証ができます。タイヤモンドアンビル、SPring-8、その場観測、岩石中の水素分析、いろいろな技術を駆使して、探求されています。


 地球の核は、地震波と隕鉄(鉄隕石とも呼ばれています)から推定されています。隕鉄は、昔あった微惑星の核の破片だと考えられています。金属鉄とニッケルからできているので、地球の核も似た組成だと考えられます。鉄(密度は7.874)にニッケルが加わると、ニッケル(8.902)の方が密度が大きいた、その化合物の密度も大きくなります。ところが、地震波から推定される核の密度は、隕鉄や鉄より小さくなっていました。鉄と比べると、1割近く小さくなっています。核になんらかの軽い元素や成分を含んでいなければなりません。これは「核の密度欠損問題」と呼ばれています。その軽い元素が何かが未だに不明です。ケイ素(Si)やイオウ(S)などいろいろな候補がありましたが、最近では水素(H)が有力視されてきました。
 ここまで紹介してきたことは、実は次の新しい研究成果を紹介するための前提となるものでした。いよいよ、最新報告を紹介しましょう。
 イギリスの科学雑誌「Nature Communication」に、2021年5月11日に報告されました。東工大学地球生命研究所の田川翔さんと圦本さんらの共同研究者によるもので
 Experimental evidence for hydrogen incorporation into Earth's core
 (地球核への水素の取り込みの実験的証拠)
というタイトルでした。「実験的証拠」というのが、ダイヤモンドアンビルとSPring-8を用いた高温高圧実験での、その場観察によるもので、その結果から考察したものです。
 核とマントルを想定したもので、核に水素がどの程度取り込まれるかを調べたものです。ただし、実験では、金属鉄を溶かし、マントルもマグマの状態にしています。現在の地球とは異なった条件ですが、地球初期の条件を想定しためです。
 地球形成の初期には、大量の微惑星が衝突していたため、地表ではマグマの海、マグマオーシャンができたと考えられています。マグマオーシャンの内部では、溶けた金属鉄と岩石が溶融したマグマが、分離して混在していたという条件を考えています。溶けた鉄はマグマオーシャンの底にたまり、一定の量を越えると、固体のマントル物質の中を中心部に向かって落ちていきます。やがて中心で核になります。
 さて、マグマオーシャンの底には、溶けた金属鉄がたまります。マグマオーシャンの底は、温度が2800~4300℃、圧力が30~60万気圧の条件を想定しています。そこでの金属鉄とマグマとの間での水素のやり取り(分配といいます)を調べ、その比率(分配係数といいます)を実験で求めています。
 金属鉄とマグマの間で水素の分配係数を決めればいいのですが、金属鉄を常温常圧にすると、大半の水素が抜けていきます。マグマでは常温常圧の岩石にしても、水素は残っているのですが、水素の定量するのが非常に困難です。タイヤモンドアンビルで高温高圧にできるのは、非常に小さい試料(直径10μm程度)です。そのような微小部分での困難な分析が必要になります。このような困難さから、核の軽い成分が水素だと推定されていましたが、定量的に検証することができませんでした。
 マグマ中の水素の定量的測定で分配係数を求めことは、非常に困難です。それを克服するに、新たな装置「同位体顕微鏡システム」が用いられました。それは次回としましょう。

・野外調査・
今週末に調査にでかけます。
道北なので、雪が心配ですが、
秋まで調査にいけなかったので、
その分を取りもどすように、
雪が降るまでにでかけようと考えています。
できれば、もう一度でかけたいのですが、
11月になると、いつ雪が降ってもおかしくありません。
できれば、近いうちにもう一度、
今度は道南に出かけようと考えていますが、
どうなるでしょうか。

・技術の進歩・
高圧を発生するには
面積を小さくしていくことになります。
その分、できる試料は小さいものになります。
大きな試料をえるためには、
装置を大型化することや
アンビルを硬いものにすることで対処されてきました。
アンビルの物性でかけられる圧力にも上限があります。
今の所、地球の核にまで達しました。
大きな試料をえるのはなかなか克服できな課題です。
試料が小さくでも、分析技術を向上することで、
小さい部分の分析の精度を上げる。
高温高圧実験でも、いろいろ工夫されてきました。

2021年10月7日木曜日

3_194 核の水 2:高温高圧実験

 高温高圧実験は、いろいろな装置を用います。ダイヤモンドアンビル装置は、光や電磁波を通すという特徴があります。その利点を活かして、高温高圧状態での物質を、その場で観測します。日本ではSPring-8が利用できます。


 地球深部を探る方法として、高温高圧実験があります。シミュレーションの一種ですが、知りたいところの地球内部の物質を用意して、そこの温度圧力条件においたとき、どのような状態になるかを調べるものです。
 実験では、一定時間、高温高圧条件に物質をおいて、一気に常温常圧にもどして(急冷、quenchといいます)、鉱物を入手し、それを調べていきます。一定時間といいましたが、安定的(平衡状態)に鉱物が形成される間となりますが、それは経験的に求められるものです。また、急冷することで、高温高圧状態の鉱物が残ることもありますが、残らないことも多々あります。残らないとしても、残存した鉱物の形態や急冷でできた鉱物から、高温高圧状態の鉱物を推定することは可能です。このような方法で高温高圧実験が進められてきました。
 現在、兵庫県には世界に誇る大型放射光施設SPring-8があります。SPring-8は兵庫県にある、円周1400kmや140mの直線状の加速器など、多様で強力な電磁波が発生できる装置です。その電磁波を、高温高圧状態の物質に当てることで、その場で物質の状態を観測することができます。
 この実験は、ダイヤモンドを用いて実験をします。宝石のダイヤモンドのようにカットして研磨したものを用います。ただし、底を平らにしたものを2個用意して、底同士をあわせて、その間に試料をセットして、ネジを用いて締めることで、圧力をかけます。
 パンプスのヒールの面積が狭く、尖っているほど、踏まれると痛くなります。これは、同じ圧力(体重)でも力のかかる面積が狭いほど、単位面積あたりの圧力が強くなる原理です。ダイヤモンドの底の面積が狭いほど圧力が上がります。このような高温高圧装置はタイヤモンドアンビルと呼ばれています。ダイヤモンド自体が高価なので、失敗して破損すると大きな痛手となります。
 なぜそんな高価なダイヤモンドを用いるかというと、圧力かけても耐えられる硬さも重要なの条件なのですが、温度を上げるために、レーザー光を用いています。レーザー光を高圧状態にして物質に当てることで高温を発生します。ために、光を透過する物質でなければなりません。また、観測するために必要な電磁波を通すことも重要になります。そのような理由で、ダイヤモンドが用いられています。
 タイヤモンドアンビルの技術は日本が先進的で、地球中心部の条件も発生できます。SPring-8が加わることで、地球深部の研究でも、日本がリードできます。
 現実のマントルや核は調べることはできませんが、地球深部の条件で存在する物質の状態を、直接調べることができます。シミュレーションの一種ですが、条件や物質には不確かさがありますが、実物の試料を観測することで検証するという強みがあります。高温高圧実験のその場観測によって、間接的ではありますが、より実態に近い状態で地球深部を調べることができます。
 タイヤモンドアンビルとSPring-8を用いた高温高圧実験による、地球の核に関する研究成果を、次回からは、紹介していきましょう。

・高温高圧発生装置・
高温高圧発生装置は、大きなものでは、
広い実験室を占めるほどのものもあります。
タングステンカーバイトという
超硬度の合金をアンビルを用いるもの、
加圧を二段階や、油を用いるものなど
いろいろなタイプがありますが、
それぞれの長所短所がありますが、
高温圧実験に関しては、
日本が成果をリードしていました。
私が以前いた研究所にも
巨大な高温高圧発生装置がありました。
私自身は使う実験はしていませんでしたが、
よく出入りしていました。
懐かしく思います。

・職域接種・
北海道も緊急事態宣言が解除され、
店や仕事は徐々に条件がゆるくなっていきます。
大学も危機管理レベルが1になり、
対面授業が一部ですが、もどってきました。
職域接種で二回目のワクチン接種もはじまりました。
自粛生活を続けていますが、
緊急事態宣言の解除で、
精神的にはかなり楽になってきました。
感染対策はしていくことになるでしょうが。

2021年9月30日木曜日

3_193 核の水 1:間接的に

 宇宙は、探査機や望遠鏡などで、直接観測することが可能です。ところが、地球の深部は、直接観測することはできません。まして、検証作業は、なかなか難しいものです。地球内部は、身近なところにある謎なのです。


 地球は層状の構造をしています。外側から大気、海洋、地殻、マントル、核が重なっています。生命の層は示しませんでしたが、海と陸と大気中で暮らしています。層としてみると、それらの層中に混じっていることになり、区別された層とはなっていません。しかし、生命以外の層は、他の層とは、明瞭な境界で区分され、独立したものになります。
 層構造の特徴としては、軽い(密度が小さい)ものが外側、重い(密度が大きい)ものが内側にあります。これは、重力的にバランスが取れている状態になっていることになります。それぞれの層を構成しているものは、大気は気体(窒素と酸素からなる空気)、海洋は液体(H2O)、地殻とマントルは岩石(珪酸の化合物からなる鉱物の集合)、核は外側に液体、内側が固体(いずれも金属鉄)となっています。
 私たち人類は、生命ですので、地球の表層に住んでいます。そのため身近にある地殻、海洋、大気は、試料が手にしやすいため、詳しく調べることができます。しかし、生活の場から離れるにつれて、試料の入手が困難になり、調べにくくなります。
 例えば、大気も地上から離れると、人が直接行けるのは高山くらいで、より上空は気象用バルーンや観測飛行機などで調べていきますが、入手できる試料はまばらになってきます。海洋でも、海面に近ければ試料はすぐに入手できますが、深くなってくると特殊な海水の採取器や潜水艇で調べるしかありません。深海底や海溝のような深海になると、調べるのは非常に困難な場となります。大気や海洋でも、生物の生活圏から離れていくと、試料入手が困難になります。
 地殻の表層部は地質学者が調査すれば、網羅的に試料の採取はできます。しかし、深部やマントルの試料は、造山運動や火山噴火にともなって深部の岩石が上昇しててきたものが例外的に入手できますが、試料の入手は不可能です。まして、マントル深部や核からの試料は入手は不可能です。
 地球深部は、間接的に調べるしかありません。間接的に調べる方法は、地震波や重力などの観測や、シミュレーション(計算機実験)なとがあります。地震波や重力の観測では、地球で起こっている現象に由来するものですから、観測でデータが入手できます。そのデータを解析することで、深部の状態を調べる方法です。
 一方、シミュレーションではコンピュータによって、深部の条件を方程式にして、どのような物質や状態になるかを数値として計算で求める方法です。計算結果を、現実のデータと照らし合わせることで、確かさを検証できますが、可能性を指摘していくことになります。
 シミュレーションの一種に、高温高圧実験があります。計算機を用いるものではありませんが、マントルや核をつくっている物質を、マントや核の条件にして、そこで物質がどのような状態になるかを調べるものです。
 高温高圧実験については、次回以降詳しく紹介しましょう。

・可能性のひとつ・
超高速超巨大なコンピュータ、
例えば、地球シミュレータや京、富嶽など
の利用で非常に精密な
シミュレーション(計算機実験)が
できるようになってきました。
しかし、その結果は、あくまでも、
いくつかの条件である方程式や計算式に基づいて
おこなわれた、可能性のチェックです。
それが唯一の結果と、
勘違いしないようにしないように
注意しなければなりません。

・信頼の失墜・
9月も終わります。
全国的に緊急事態宣言が出されてきましたが、
本当に10月には感染は
落ち着いてくれるのでしょうか。
人流は、緊急事態宣言でも、
あまり減ることがなかったようです。
これは、政府の政策の一貫性のなさで
国民の心が、政府から離れ、
信頼をなくしたたためでしょう。
この事態はいつ落ち着くのでしょうかね。

2021年9月23日木曜日

1_198 地球内の月 4:ティアの残骸

 LLSVPが、海洋プレート由来であるという考えを紹介しました。別の考えがあります。月を形成したティアの残骸が、地球内部に残っているというものです。それはどのようなものでしょうか。


 LLSVP(大規模S波速度低速度領域)は、マントル物質が冷たいか、密度の大きな物質があれば、地震波が遅くなっていくので、説明できます。その条件を満たすものとして、沈み込んだ海洋プレートだとうまく合うので、定説となっていました。実際に、地震波で観測する(地震波トモグラフィ)と、海溝で海洋プレートが沈み込んでいる先の遷移帯には、冷たい物質の塊があることも、重要な根拠でした。前回紹介したように、マントルとコアの境界部にあるLLSVPの特徴が、海洋プレートであることで一致することが指摘されていました。

 地震波速度が小さいという事実で、そこには周りのマントル物質とは異質のものが存在することは確かですが、その由来として、温度と密度のどちらの値も変動させることで、地震波速度を説明することができます。

 例えば、温度が高くても、密度が大きければ、その速度を説明することが可能です。つまり2つの変数を恣意的に調整可能であることになります。そうなるとその物質の由来は、いろいろな可能性がでてきます。

 その可能性として、月をつくった原始惑星のティアの残骸に由来するという考えがあります。2021年の月と惑星の関する学会(52nd Lunar and Planetary Science Conference 2021)で、ユアンと共同研究者が発表したもので、

Giant Impact Origin For The Large Low Shear Velocity Provinces

(大規模低速度領域のジャイアント・インパクト起源)

というものがありました。

 これは、原始惑星ティアの原始地球への衝突をシミュレーションをしたものでした。ティアが、鉄に富んだ密度の大きなマントルをもっていれば、衝突後、ティアのマントル物質は地球のマントル下部へ、コアの境界に達することになります。それらティアの破片は、マントルとコアの境界で、長い年月が経過すると、破片が集まってLLSVPとなるという可能性がシミュレーションにて示されました。

 このシミュレーションの難点は、ティアの破片でれあれば、地球内部に長い時間おかれるので、周りのマントル物質より低温ではないという点です。

 物質の温度と密度は、いずれも未知なので、値を変化させられる境界条件となります。ユアンらのシミュレーションでは、ティアのマントルの鉄に富んだという前提をおけば、密度は周りのマントル物質と比べると、1.5%から3.5%大きくなり、温度も高くてもいいということがわかりました。低温であれは「最近」落下した海洋プレートの破片を示唆していますが、密度を大きくすることで温度が高くてもよくなり、「創成期」のティアのマントル物質でも可能性があることになります。

 ここで注意が必要なことは、あくまでもシミュレーションは、可能性を示すもので、それが事実であったことが保証するものではない点です。もちろん、条件をいろいろ変えても、シミュレーションの結果が一致しなければ、その可能性は否定できます。シミュレーションでうまくいったので、正しいと思ってしまいそうになりますが、可能性のひとつと考えておく必要があるでしょうね。


・出張・

先週、校務出張で、道東へでかけてました。

その続きで、野外調査も大学の許可がでましたので

1週間ほどに出張にでました。

幸い最終日以外は、天気にめぐまれ、快適に調査できました。

調査地は観光地でもあったのですが、

人出は、少な目となっていました。

困ったのは、緊急事態宣言のため

多くの公の施設が時間短縮や、休館しているところも多くて

なかなか予定通り進められませんでした。

しかし、野外を歩くことが優先でしたので、

いろいろ見て回ることができました。


・ガタのきた体・

この1年半、野外に出ることがほんとんどなかったのと、

自粛で運動も通勤の行き帰りくらいしか

体を動かしていませんでした。

そのため、体力と筋力の衰えを痛感しました。

少し歩いただけで、足がガクガクしてきて

翌日にはふくらはぎや太ももが筋肉痛になっていました。

高齢でもあるので、あちこちガタがきた体と

折り合いをつけながら、調査するしかないようです。

無理せず、自身の体をいたわりながら、

野外調査に進めていく必要がありそうです。

体に合わせて、頭の切り替えが必要です。

2021年9月16日木曜日

1_197 地球内の月 3:LLSVP

 マントルには、周りより暖かところと、冷たいところがあることは、知られてました。マントル物質が沈んだり上昇したりする、マントルプルームというモデルに直結していました。それをサポートするシミュレーションもあります。


 地球内部のマントルは、カンラン岩からできていますが、内部を詳しく見ると、違いがあることがわかってきました。地球内部を地震波でみる方法があります。地震波にはいろいろな種類があり、その種類の特性に応じて地球内部の物性の違いを調べるのに利用されています。

 同じ種類の地震波では、伝わるときの速度の違いがみられます。

 地震波速度が速くなるところは、温度が低いか硬い部分かです。例えば、海洋プレートが沈み込んでいるところでは、速くなります。冷たい太平洋プレートが、日本列島の下へと沈むこんでいるところでは、速くなります。

 また、地震波速度が遅いところは、暖かい部分か柔らかいところになります。暖かくなっているところでは、岩石が溶けてマグマができるような場になります。火山噴火の予知などに利用されています。

 もっと広く大規模に地震波を観測すると、マントル内部の状況を読み取ることができます。日本列島から沈み込んだ海洋プレートが集まっているところが、ユーラシア大陸の下に見えています。さらにその下部のマントルと核の境界部には、昔沈み込んだ海洋プレートの塊が落ちていったように見える冷たいところがあります。また、巨大な暖かいマントル物質が、マントルの中(遷移層深度650kmのところにある上部マントルと下部マントルの境界部)を上昇してきているようにみえるところが、2箇所ありました。

 このようにして、マントル物質の温かい部分と冷たい部分とその位置から、マントル物質の上下運動として、プルームテクトニクスという考えで説明されました。プルームテクトニクスは、プレートテクトニクスよりもっと大規模な地球全体の運動となり、全地球の運動像と考えられてきました。

 暖かいマントル物質は、深部にあるのですが、それに由来するマグマが火山として地表に噴出しているます。火山岩を調べることで、間接的ですが、暖かいマントルの状態を知ることが可能です。

 冷たい部分は、大規模S波速度低速度領域(large low-shear-velocity provinces:LLSVP)と呼ばれています。太平洋の下とアフリカの下、3000kmにありました。マントルの底で外核に近いところです。厚さが1000kmで、幅が2000から3000kmほどある巨大のものです。海洋プレートが沈み込んだものだと考えられ、シミュレーションでも確認されました。例えばmジョーンズらの共同研究で2020年で報告されました。

 Subducted oceanic crust as the origin of seismically slow lower-mantle structures

(地震波低速度の下部マントルの構造の起源としての沈み込んだ海洋地殻)

というタイトルでした。

 この報告では、この部分の最下部100から200kmでは、海洋プレートの玄武岩があり、横や上部になるとカンラン岩の成分に変わっていくと考えると、よく説明できることが示されました。

 この報告で、LLSVPが海洋プレートであるという考えを支持していました。しかし、これはシミュレーションであり、可能性のひとつではありますが、検証されたものではありません。

 別の考えが示されました。それは、LLSVPがティアに由来するのではないかというものです。


・他の可能性も・

これまで、冷たいマントルと、暖かいマントルの役割は

プルームテクトニクスにおいて、

きっちりと位置づけられていました。

そのモデルに基づいて研究は進められてきてました。

今回紹介したのは、その一部です。

しかし、検証されていないことに関しては、

他の可能性も探る必要があるでしょう。

それが次回紹介する論文となります。

また今回のシリーズのテーマでもあります。


・校務出張・

9月はじめ、北海道は緊急事態宣言でした。

その時、今週の校務出張が入りました。

道東へいくこといなりました。

その続きに、大学の許可をとって、

道東の調査をすることも許可されました。

今回のエッセイは1周間前に配信予約したものです。

緊急事態宣言が終わっているはずですが、

注意しながら調査してこようと考えています。

2021年9月9日木曜日

1_196 地球内の月 2:ジャイアント・インパクト説

 原始地球に別の原始惑星が衝突してできた、というジャイアント・インパクト説で、月は形成されたと考えられています。月と地球の類似点と相違点の両者を、うまく説明できることが、この説が支持されている理由です。


 前回紹介したように、微惑星が集まり、原始惑星に成長する段階で、大きな衝突が起こります。太陽に近い軌道域では、惑星の成長が早く、材料も少ないため、原始惑星同士の衝突は、早く終わることになります。地球の公転軌道域では、原始地球に最後に衝突した原始惑星が、月の起源となったと考えられます。これが、ジャイアント・インパクト説となります。原始地球に衝突したこの原始惑星は、ティア(Theia)と命名されています。

 月は地球と比べると、核(コア)が小さく、密度も小さく、揮発成分(気体になりやすい元素)が少ないなどの特徴があります。一方、酸素の同位体組成などの化学組成は、同一の材料からできたことを示しています。まるで別のできかたをしたように見えますが、同じ材料からできたようです。似ている点は、地球のマントル物質が月の材料になれば、解決できることがわかりました。

 そこでジャイアント・インパクト説で地球のマントル物質だけを飛び出させて、それが月の材料になればいいわけです。シミュレーションは、このエッセイでも(1_140~143)紹介しましたが、斜めの衝突であったと考えられています。衝突された地球のマントル物質だけを飛び出させるために、ティアの斜めの衝突が、シミュレーションの結果、適切であることがわかりました。

 斜めに衝で地球のマントル物質だけが飛び出して月になります。月は、原始地球やティアとは少々違った成分を持つことになります。このメカニズムで月が地球とは、似た点と違うことが説明できます。

 一方、ティア側の物質は、原始地球と合体したとすれば、衝突したティアの物質は、すべて原始地球に吸収されたとこになります。では、地球は合体して現在のような均質な姿になったのでしょうか。それとも、ティアの衝突の痕跡は、地球に残されていないのでしょうか。

 今回、地球深部からテイアの痕跡でないかという、新たな説が登場してきました。それは次回、以降としましょう。


・前のところに戻る・

9月の初頭に、いくつか手掛けていた

大きな研究上の仕事で区切りがつきました。

それで新たな研究計画を練り直し、

次の論文の構想を進めています。

その計画は、実は20数年前に、

一度取り組んだテーマと似たものになりました。

予期していなかったのですが、

私の興味は、やはり同じところを巡っているようです。

四半世紀は、科学にとっては長い時間で、

大きな進歩があるはずです。

その違いを感じていきたいと思います。

端緒についたばりですが、

似たところもかなりあるようです。

それは、進歩がないではなく、

普遍性のあるものだったからでしょうか。

そのチェックも、これからですが。


・職域接種・

我が大学でも職域接種がはじまりました。

隣の大学と共同での接種です。

先週末から今週末の4日間に渡って

大学内でワクチン接種がおこなわれます。

学生と教職員に対しての職域接種です。

デルタ変異種の特性をみていると、

これで完全とはいえそうもないですが、

集団免疫がある程度は確立されるはずです。

感染が広がらないとはいえないですが、

おさまればいいのですが。

2021年9月2日木曜日

1_195 地球内の月 1:惑星形成のシナリオ

 月はジャイアント・インパクト(巨大衝突)で形成されたことは、今では多くの人が知るようになってきました。衝突の事件は、太陽系の惑星形成の初期に起こったものです。そのシナリオを見ておきましょう。


 月の起源に関して、かつてはいろいろなモデルがありました。その多くは、科学的根拠の乏しいものでした。20世紀後半になり、アポロ計画による月の探査と、そこから持ち帰られた試料での多様な成分での、精度のよい化学分析が大量になされました。一方、地球の科学的探査、隕石の化学分析なども進んで、月と地球、隕石などの詳細な化学的データの対比などから、その類似と相違が見極められてきました。またコンピュータの発展にともなって計算機シミュレーションも進み、ジャイアント・インパクト説が有力となってきました。

 ジャイアント・インパクトの事件は、太陽系が形成された頃のできごとです。この事件は、太陽系形成の頃のシナリオに基づいています。太陽系形成のシナリオをみておきましょう。

 太陽系ができて間もない頃は、熱いガスの状態だったのですが、温度が冷めるにしたがって、ガスから固体が凝縮してきました。固体は集まりながら粒となり、小さな石となり、石同士が衝突し合体して、やがて大きな天体(微惑星と呼ばれました)へと成長していきました。微惑星同士も衝突合体して、太陽系には火星サイズの惑星(原始惑星)だけになっていきます。最終的には、太陽系の公転軌道に、現在の数ほどの惑星だけになっていきます。

 太陽からの距離によって、惑星になるための材料(固体)は、近ければ金属鉄と岩石で、遠くになるとそこに氷(H2Oの固体)が加わります。氷ができる境界は、火星と木星の間です。火星から地球の間では、H2Oは液体(水)としても存在できる領域でした。

 太陽から遠くでは氷の成分が多かったので、惑星の質量も増え、周囲も大量にあったガスを集めた巨大ガス惑星(木星、土星)ができました。離れるにつれて、惑星の成長速度が遅くなり、遠くでは惑星が成長する頃には、ガスも少なっていて、氷だけがたくさん集まった氷惑星(天王星、海王星)ができました。

 これが太陽系の惑星形成のシナリオで、惑星のおおまかな特徴が説明できます。

 さて、微惑星が集まり、原始惑星になる段階で、大きな衝突が起こります。原始地球になったあと、最後の原始惑星の衝突で、月ができたと考えられます。これが、ジャイアント・インパクト説となります。詳細は、次回としましょう。


・調査予定が組めない・

緊急事態宣言の発令で、

9月予定していた道内の野外調査も

どうなるかは不明なになりました。

12日まで緊急事態宣言の期間の予定ですが、

その直後からなら、調査ができる予定を組めるのですが、

次の週からは、授業がはじまるため、

長めの調査出張はできません。

ぎりぎりのところで調整が進みそうです。


・八方塞がり・

北海道は、3度目の緊急事態となりました。

前回までの違う点は、感染者が都市部に集中するのではなく、

都市周辺地域から地方まで広がっている点です。

そのため、以前は都市部での警戒でよかったのですが、

今回は道内の各地での自粛しなければなりません。

しかし、地方でも感染が広がっているのは、

もう、自粛や警戒が効かなくなってきているためでしょう。

長い期間におよぶ自粛と開放の繰り返しは、

多くの人から緊張感、警戒感を奪っています。

また一部の人はワクチン接種をしているので

それも警戒感の緩みを招いているのでしょう。

八方塞がりの状態ですね。

2021年8月26日木曜日

2_199 LUCA 8:生命誕生のシナリオ

 ここまで述べてきた根拠をもとに、大胆な生命誕生のシナリオが導かれます。LUCA、天然の原子炉、CPR、OD1、白馬OD1のそれぞれの特徴が、時間を遡ることで収斂されていきます。


 白馬OD1から、生命の起源、LUCAへどう迫るでしょうか。

 CPRがその候補になっていました。CPRは、初期生命であっていいほど単純(小さい遺伝子数)だからです。CPRの中でもOD1がもっとも原始的で、超還元的な環境で水素をエネルギー源とする生きることなどから、もっとも原始的な生物ではないかと考えられています。

 このようなことから、OD1はLUCAの最も近いと生物ではないかと考えられています。では、OD1がどのようなシナリオで原始の地球で誕生したのでしょうか。

 初期の大陸は、地下の温度(地温勾配といいます)も高く、カンラン岩の組成のマグマ(コマチアイト質マグマと呼ばれています)が各地で噴火していたと考えられています。そのため、地表はカンラン岩質の火山岩が広く覆われていたと推定されます。

 一方、前に紹介したように、時代を遡ると、放射性ウラン(235U)の濃度が大きくなり、天然の原子炉となるような場も、多数あったと推定されます。放射壊変にエネルギーで温められた地下水は、まわりのカンラン岩を蛇紋岩化作用を進めていくことになります。その結果、地下水は水素を多く含んだ熱水となり、超還元的熱水が供給される場が多数できます。

 冥王代の地下では超還元的条件の熱水が多数でき、そこではOD1がもっとも生息しやすい環境なので、OD1がLUCAになるのではという仮説です。その後も時代変化を考えたシナリオは続きますが、このエッセイではここでにします。

 重要な点は、OD1がもっとも原始的な生物であること、OD1が蛇紋岩化作用に由来する還元的な場で生きていることです。過去ほど天然の原子炉が多くでき、それを熱源とした熱水とカンラン岩が反応し冥王代に、OD1の好む環境が出現します。少々複雑な条件設定ですが、これがOD1がLUCAとなるというシナリオです。

 日本の白馬の温泉という身近な場ですが、特異な温泉から見つかった微生物群が、天然の原子炉、そして最初の生命、LUCAではないかというシナリオが展開されています。なによりも、白馬OD1を発見し、そこからこのようなシナリオを考えた研究者たちの発想力に驚かされます。身近なところから、新しい学問体系が生まれつつあります。

 ここまで紹介したシナリオは、仮説や推測が多々あるのですが、理詰めで進められています。疑問もあります。最初の生物は一つ生物種に収斂するのでしょうか。もしかすると、いくつもの生物らしきものが寄せ集まって(共生)できたのではないか(ウイルスの進化説)などもあります。今後もこのシナリオは練っていく必要があるでしょうね。


・集中講義・

今週は、4日間、対面での夏期の集中講義があります。

受講者は少ないので、通常の教室を用意していたのですが、

北海道のコロナ感染拡大への対処として

大きな教室を2つ用意し、交互に使うことになりました。

広い教室で感染予防はできるのでしょうが、

少人数だと広すぎる教室は少々違和感がありますね。


・職域接種・

大学の職域接種の日程がやっと決まりました。

北海道の感染拡大の時期だったので、

タイミングとしては、少々遅い感があります。

7月に申請したのですが、何度も延期の連絡があり、

なかなかワクチンの供給が決まりませんでした。

教職員や学生には、他の職域接種や地方自治体で

すでに受けている人もいるようです。

しかし、大学所属の人みんなが受けるチャンスがあれば、

大学としては、コロナ対策がかなり進んだことになります。

しかし10月上旬までかかりそうですが。

2021年8月19日木曜日

2_198 LUCA 7:白馬OD1

 ここまで、CPRのうち、OD1がもっともLUCAに近いことを紹介してきました。今回は、日本で発見されたOD1を紹介します。そればどのような特徴を持っており、どこで見つかり、どのような意義があるのでしょうか。


 生物の多くは、他の生物に依存することなく光合成で栄養をつくて生きる植物が生態系の中心にいます。これは、現在の多くの地球生物が、太陽エネルギーを利用した体系となっています。しかし、太陽光が届かない深海でも、熱水噴出孔周辺で、光合成生物を基本としない独自の生態系が形成されることが知られています。熱水の熱エネルギーと熱水内の栄養分を利用している独自の生態系です。

 実は熱エネルギーも利用できない環境で生きる生物も知られています。地下深くのカンラン岩や蛇紋岩の中を流れる水から発見されたCPRがいることを紹介しました。MK-D1は、冷水から発見されたCPRで、真核生物への進化の鍵を握っていました。カンラン岩や蛇紋岩を通った地下水から見つかったCPRの中に、OD1が発見され、それがLUCAの探求に重要な意味をもっていることがわかってきました。

 通常の堆積岩と比べると、カンラン岩や蛇紋岩は成分としての生物の栄養分も少なく、また熱水は超還元的な環境となります。そのような過酷な環境で見つかったOD1は、生命活動に必要はエネルギーをどのようにとっているのか不思議な生命でした。

 超還元場は、カンラン岩に水が通ると蛇紋岩になる作用が起こり、化学反応で水素を発生するためです。水素が定常的に存在する超還元的な環境でOD1が多数発見されているのは、この環境に適応していることを意味します。そこから、超還元的な環境で水素を生命活動のエネルギー源にしているのではないかと考えられています。

 さて、このような特徴が明らかになってきたのは、日本で発見されたOD1の研究からでした。白馬地域の温泉水からです。この温泉を調べたところ、CPRが多数見つかりました。その中にOD1の一群も見つかりました。それは「白馬OD1」と呼ばれました。

 白馬地域には、主な温泉として白馬八方、蓮華、若栗、栂池、鞍下の5つがあります。このうち、白馬八方は、50°Cほどの温泉がしています。pHが10を超え、日本でもっとも高アルカリ性の温泉となります。地下には蛇紋岩体があり、水素ガスを多く含むこともわかっています。

 このようなOD1の特異な特徴から、Ebisuzaki and Maruyama(2017)や佐藤ほか(2019)では、LUCAの誕生とその進化過程を推定しています。詳細は次回としましょう。


・第5波・

多くの国民の反対する中、開催された

酷暑の札幌でのオリンピック。

それ以降、札幌やその周辺での感染拡大が続いています。

わが町もまん延防止等重点措置がとられました。

またまた、自粛生活にもどりました。

今回の第5波は以前より大きな波になりそうです。

そしてデルタ株に置き換わっているので

感染力もさることながら、若い人を重症化させたり、

ワクチン接種者にも感染するようになってきました。

政府の対処の問題が次々とでてきます。


・豪雨と洪水・

先週から週末にかけて線状降水帯が西日本で発達して

大きな被害を各地にもたらしました。

昨年や少し前にの被害があった地域と

重なっていることも多かったようです。

被災されたかた、お見舞い申し上げます。

北海道は、今回の大雨より少し前に

一部地域で洪水の被害がありました、

広域にはありませんでした。

2021年8月12日木曜日

2_197 LUCA 6:OD1

  LUCAの候補として、最近発見されたCPRというグループが有力であることがわかってきました。CPRは種類も多く、中でもOD1というグルークが、LUCAに近いことがわかってきました。


 CPRを調べて分類する試みがなされています。ただし、CPRは、種の培養が困難なので、充分なゲノム解析ができません。一部ですが、シングルセルゲノム解析といって、単一の細胞、あるいはごく少数の細胞から、ゲノム解析する方法も開発されてきました。しかし、多くはまだゲノム解析はできず、メタゲノムミックスでの解析(ゲノムビニング、メタゲノム分別などとも呼ばれている)の状態です。

 Yellowstoneのある池ので、CPRのメタゲノムミックスのデータから、系統解析がなされました。12の系統群(candidate division)に区分され、それらはOP1~OP12と命名され、OP11はさらに5つに細分されました。OP11のうちのひとつ、OP11-Derived 1(OP11から由来した1番目ものをOD1と呼ぶ)のゲノム解析がなされました。OD1は、Parcubacteria(つましいバクテリア)と命名されました。

 OOD1の特徴を、佐藤ほか(2019)の報告にもどついて、まとめておきます。多くは、CPR全体にも通じる特徴でもあります。

 まず、ゲノムサイズが小さいことです。CPRはもともと小さい(100万塩基対,のですが、44.5万塩基対しかありません。塩基対の英語が、base pairなので、塩基対の数をbpを単位として表します。44.5万塩基対は445 kbpとなります。

 次の特徴は、膜や自己複製のための遺伝子はあるのですが、代謝の遺伝子はもちません。これは、共生を前提とし生きていることになります。ただし、この試料では、微生物の集合(叢 そう といいます)のうち、70%以上をODが占めていたので、単純な共生関係では数のバランスがとれません。

 3つ目は、高アルカリや超還元などの過酷な極限環境になるほど、OD1の割合が大きくなります。

 4つ目は、真正細菌と古細菌の両方の特徴をもっています。つまり、両者の共通祖先に近いのではないかと考えられます。

 これらの特徴のうち、上の2つは、他のCPRにも共通していますが、下の2つはOD1固有のものです。特に最後の特徴は、生物の誕生、LUCAの追求には重要な生物群であることを示しています。

 また、OD1 の生息に必要な条件として、無酸素の超還元の環境で、栄養塩の供給をどうしているのか、物質循環の駆動力は何なのかなどを解明していく必要があります。

 さて、なぜ、ここでOD1を取り上げ詳しく紹介したかというと、日本でもOD1が見つかっており、その重要性が報告されています。それは佐藤ほか(2019)の報告にあるのですが、次回としましょう。


・放散・

CPRの中のradiationは、このシリーズでも紹介してきたように

「放射線」という意味があります。

しかしCPRでは、「放散」という意味で使われています。

今回のOD1の報告からCPRの名称を見つけたので、

radiationを放射線という意味で捉えていました。

それでは意味が通じないので、

放散という意味だと判断しました。

ところが、このCPRは、次回から紹介していきますが、

放射線(radiation)と関係がでてきます。

不思議なめぐり合わせですね。


・ラテン語・

生物の分類名にはラテン語が用いられます。

ラテン語は、現在は使われてはいない言語なのですが、

ヨーロッパでは学術的な記載は

ラテン語でなされていた時代ありました。

その名残が生物分類には残っています。

生物の分類をおこなう研究者はラテン語が必要になります。

さて、Parcubacteriaのparcuは

ラテン語のparcusで

「質素な、つつつましい、節約した」

などの意味があります。

この名の由来は、遺伝子の数が非常に少ないため

つけられたのでしょうね。

2021年8月5日木曜日

2_196 LUCA 5:渾身のMK-D1

 今回紹介するのは、CPRの培養に成功した研究です。その研究には12年という長い歳月がかかりました。ドメインの誕生という生物進化に重要な情報が得られました。


 CPRは、世界各地の極限環境からも発見されています。例えば、アメリカ合衆国カリフォルニア州のpH11以上もある強アルカリの水からも、CPRが発見されました。もちろん、ありふれた場所からも見つかっています。

 現段階でわかっているCPRの特徴として、生物として必要最小限と考えられる遺伝子の数(1000個)よりかなり少ない(400個)、いくつかの重要なタンパク質や脂肪などをつくるための遺伝子がない、核酸を合成する能力もたない、などがあります。栄養源もまだよくわかっていないのですが、子孫を残せることは確かです。そのため、他の生物に依存した生き方(寄生や共生)をしているようです。

 CPRが謎となっているのは、種類が多いのですが、遺伝子解読ができないためでした。それは培養が難しいためDNAを集めることができなかったからです。しかし、MK-D1と呼ばれるCPRの培養に成功しました。

 MK-D1は、紀伊半島のコアの中から2006年に発見されました。CPRは培養が難しのですが、MK-D1は増殖のスピードが大腸菌などと比べる1000分の1ほどしかなく、大きさも0.55μmしかなく、嫌気性の生物でした。しかしアミノ酸をエネルギーとして利用していますが、他の微生物に依存しているため、その微生物を見つけて一緒に培養しなければなりません。

 このような特性から、培養は非常の困難だったのです。海洋研究開発機構(JAMSTEC)の井町寛之さんたちが、12年の試行錯誤の結果、やっと培養に成功しました。そして、MK-D1の全ゲノムの解読ができました。

 MK-D1のゲノムには、真核生物に特徴的な遺伝子(アクチンやユビキチンなど)があることがわかりました。培養によって、生態もわかってきました。MK-D1は単純な構造なのですが、成長していくと触手のようなものもを多数伸ばし、小さな粒(小胞と呼ばれます)を多数放出していていました。

 MK-D1の遺伝子解析と生態から、真核生物の誕生について、新しい進化説(Entangle-Engulf-Endogenize model)が提案されました。巻き込み(entangle)、飲み込み(engulf)、内部に発達させる(endogenize)という3つのEが特徴なので、E3 modelと呼ばれています。

 真核生物は酸素を利用できるのですが、それはミトコンドリアの祖先となるバクテリアを細胞内に取り込み、共生する過程が起こったためだと考えられています。MK-D1では、E3 modelで、この取り込み、共生が起こることがわかってきました。非常に重要な発見でした。これは2020年1月に科学雑誌「Nature」で報告されました。タイトルは、

 Isolation of an archaeon at the prokaryote-eukaryote interface

 (原核生物と真核生物の境界に位置するアーキアの分離)

というものでした。

 MK-D1は真核生物の誕生の謎に迫りましたが、CPRは他にもいろいろな種類があります。身近な日本の温泉にもいます。そのCPRが生命の誕生につながるのではないと考えられています。それは、次回にしましょう。


・渾身・

今回紹介した研究成果は、

12年という長い研究期間が必要でした。

そこから生まれた成果は、非常に意義深いものでした。

ひとつの成果ではなく、

いくつもの重要な内容をもったものになっている。

それを一つの論文として報告されました。

研究のこれまで成果を集大成した内容でした。

まさに渾身の論文だったのでしょうね。


・ワクチン接種・

札幌で実施されているオリンピックの最中ですが、

札幌ではまん延防止等重点措置が

8月2日から31日まで適用されることが決まりました。

あまりに何度も繰り返される重点措置や緊急事態に

市民はもうすっかり疲れてきました。

市民は政府のいうことに従う気が

失せているのではないでしょうか。

感染症には、ワクチン接種が重要な対策ですが、

日本では国民全員の接種には、

まだだいぶ時間がかかりそうです。

政府の対策はすべて後手に回っているように見えます。

2021年7月29日木曜日

2_195 LUCA 4:細菌ドメイン

 生物には、未発見の種が多数いることはよく知られています。生物学者も知らないような、分類も不明な生物が、大量にいることが、数年前に見つかりました。そんな生物種の発見の物語です。


 前回、天然の原子炉オクロの紹介をしました。半減期の長い放射性元素は、過去ほど多かったことになるので、ウランが濃集するような堆積場があれば、天然の原子炉、あるいは放射崩壊に伴う放射線や崩壊熱が多いところも、各地にあったと考えられます。そのような場を生命誕生の場と考えようとする仮説が最近出されました。

 この仮説は、不思議な生物のグループが多数存在していた、という報告がもとになっています。まずは、その報告からみていきましょう。2015年にBrown博士らが、Nature誌に発表した論文でした。

Unusual biology across a group comprising more than 15% of domain Bacteria

(細菌ドメインの15%以上を構成するひとつのグループの特異な生物学)

というタイトルでした。

 このタイトルの「ドメイン」とは、界より上の生物の分類の階層になります。かつて、モネラ(原核生物)界、原生生物界、植物界、菌界、動物界の「5界」が、分類のもっとも上位の区分でした。ところが、モネラ界の中で、古細菌の特徴が、他とはかけ離れていることがわかり、別の分類グループにする必要がでてきました。そのために、古細菌ドメインと細菌ドメインが区分されました。ところが両ドメインの違いは、真核生物内の4つの界より大きいもので、ひとつにまとめて、最上の分類では真核生物ドメインに一括されました。

 その細菌ドメインの中で新たな分類グループ(門)が見つかりました。全く未知の生物群があり、それらは共通して特徴をもっていました。その研究では、メタゲノミクスという方法が用いられました。

 ひとつの生物のゲノムを解析するには、その生物だけを増やし、つまり培養して一定量のゲノムを集めないと解析できません。しかし、混在(ミックス)した状態でゲノムのDNAを抽出して、そのまま分析してしまう方法がメタゲノミクスです。この方法では、個々の生物のゲノムを区別しては解析できませんが、グループ全体の概要を掴むことができます。なんといっても、培養できない生物の特徴を知ることができます。

 Brown博士らは、アメリカのコロラド川の近くの帯水層からの地下水を採取して、細菌を調べました。膨大な細菌が混在したゲノムを、メタゲノミクスとして分析をした結果、細菌ドメインの内の区分で、その下の階層として門(Phyla)があるのです、35門以上でゲノム解析をしました。そのうち8個で完全なゲノム解析をこない、789個でゲノムの概要の解読をしました。

 これらの膨大なデータを検討した結果、ひとつの特徴的なグループが見いだされました。このグループは、共通した進化をしてきたと考えられ、今回分析された全細菌のうち、15%以上が属することになりました。そのグループはCPR(Candidate Phyla Radiation)と呼ばれました。

 CPRとは、「門の候補となる放散群」とでも訳すのでしょうか。このCPRは、その後ももっとたくさん発見されており、これまで知られている細菌の種類の全体に匹敵するほどの量になのではないかと推測されています。

 今回は、CPRの発見の話でしたが、次回は、このCPRと生物進化の関係を考えていきます。


・Mathodのページ・

Brown博士らの論文は本文が4ページです。

NatureのLetterですが、Letterの論文としては長いくらいです。

しかし、付録として、研究のMathod(方法)が

4ページにわたって小さな文字が書かれています。

また参考資料が9ページ分もついています。

デジタルですので、このような方法がとれるのでしょう。

客観性を担保し、反論ができない、

つまり結果が正しいとみなせるような情報が提示されました。

これはかなりインパクのある論文となりました。


・培養困難・

Radiationには、放射線という意味もあるのですが、

生物学では「放散」という意味もあります。

このシリーズでは、放射線に関して述べているので

混乱を招くかもしれませんが、

ここでは、まだ分類が未確定なグループとなります。

生物の分類上の位置の確定は、

培養して、ゲノムを集めるという作業が必要になります。

これが、なかなか難しいものです。

詳細は次回以降に説明します。

2021年7月22日木曜日

2_194 LUCA 3:天然の原子炉

 思いもよらぬ現象が、自然界では起こっています。その現象が発見されたとしても、他への場面に適用するには、発想の転換が必要になります。その転換が正しいかどうかは、新らな検証が必要になります。


 熱水噴出孔を生命誕生の場とするのが、現在、主流の考え方です。しかし、最近、全く異なった生命誕生の場が提案されてきました。天然の原子炉を利用した誕生の場です。

 天然の原子炉とは、どういうものかを、まずは理解しておく必要があるでしょう。

 原子炉とは、制御しながら核分裂反応を起こして、核分裂で放出されるエネルギーを発電に利用するものです。ウランには核分裂する核種をいくつか含んでいます。核分裂しても、連鎖反応がおこらなければ、通常の放射崩壊になります。連鎖反応を起こすには、ウラン(235U)の濃度が大きくなっていなければなりません。

 原子力発電所では、ウラン濃度を大きくして、制御できる状態で連鎖反応を起こして発電しています。連鎖反応を起こす濃度を臨界状態といい、放射性核種(235U)の濃度が3~5%になったものです。

 現在では天然のウラン鉱石では、濃度が臨界状態に達することはないのですが、あるウラン鉱山から不思議な鉱石が見つかりました。ガボン共和国のオクロでは、20億年前に堆積したウラン鉱があります。このウラン鉱石を調べていくと、ウランの同位体組成(235U/238Uの比)が、通常の天然の鉱石は0.7202%なのですが、オクロのものは0.600%となっていました。小さな値の差なのですが、これは有意の差となっていました。他の同位体組成(NdやRu、Xeなど)でも、他の鉱石と違いがありました。

 この違いを調べていくと、1972年に天然の状態で、原子炉と同じように臨界状態で核分裂の連鎖が起こったためだとわかってきました。しかし、古いほど、天然状態で核分裂を起こすほどのウラン濃度はあった可能性は、黒田和夫さんが、1956年にすでに予測していました。予測通りの現象が発見されたのです。

 20億年前のウラン鉱床では、ウラン(235U)が3.54%もあり、そこで減速材となる水があれば、連鎖的な核分裂が可能となります。計算していくと15万年間ほど、核分裂を起こしていたことがわかってきました。その後、似たような天然の原子炉が、世界各地の16箇所で見つかっています。

 もっと古い原始地球(冥王代)ならば、ウランが20%を越えていてもいいはずだと推定されます。つまり、古い時代には天然の原子炉がもっと一杯あったことになります。丸山茂徳さんたちの研究グループは、冥王代には核分裂の熱により、温泉や間欠泉が多数あったはずだと考え、それを利用して生命が誕生したのではないかと提案しました。岩石群の中を熱水が通り抜けることで、生物誕生に必要な成分が集められ、核分裂反応で化学反応が進むと考えられました。その痕跡が現在も見つかっています。それは次回としましょう。


・猛暑・

週末に2泊3日の調査にでました。

ちょうど北海道も猛暑に当たり、

暑さでバテてしまいました。

外にいる時はいいのですが、

ホテルでの寝る時、エアコンでは寒いし

エアコンを切って窓を開けると暑いしと

調整がうまく行かなかったので

熟睡できず疲れが取れず、ぐったりと疲れました。

帰ってきたら、もっと暑い日が待っていました。


・原子爆弾・

核分裂は、放射性核種では

定常的に起こっている現象です。

核分裂を安全に連鎖反応として起こすためには、

制御する必要があります。

制御されたないものは原子爆弾となります。

臨界にならないサイズで

濃度を大きくしておいた核物質を用意しておき、

それを合体させることで臨界にして

一気に核分裂を起こすことで爆発させます。

それなりに難しさもありますが、

発電よりは簡単です。

制御して発電に利用するのは、緊急事態への対処など

難しい問題がいっぱいあります。

福島原発は制御できない状態が起こったことになります。


2021年7月15日木曜日

2_193 LUCA 2:熱水噴出孔

 地球上で生物を生み出すためには、多様な化学反応が必要になります。なおかつ、合成のために反応物が素材として安定供給され、生物が合成されるために、多数の試行錯誤ができる条件も必要です。それはどこでしょうか。


 最初の生物は、LUCA(最終共通祖先)以外にも、いくつかの呼び方をされていました。最近ではLUCAと呼ばれることが多いのですが、以前はコモノートと呼ばれていました。同じ祖先という生物になるはずなのですが、概念が少し違っています。

 現在の生物でもっとも原始的な生物である古細菌のうち、好熱性古細菌のDNAが環状になっていることがわかりました。環状DNAは、真正細菌も持っているものもいることがわかりました。各分類体系のもっとも原始的だと考えられる生物が、環状DNAをもっていました。そこで、古細菌と真正細菌の共通する祖先を「コモノート」と呼びました。一方、LUCAは、真核生物も含めてすべての生物の祖先として、細菌や古細菌、真核生物の共通の祖先と考えたものです。

 これまでの研究から、もっとも原始的な生物に共通する性質は、現在の生物と比べれば、高温の条件で生育し、遺伝子の数は少なく、DNAも小さいと考えられます。

 ここで高温とは、45℃以上、時には80℃以上を意味します。このような生物の性質を好熱性と呼びます。80℃以上などは、身近なの生物では、高温すぎて生きていけないものが多くなります。ところが、好熱性生物においては、そのような高温条件で、代謝などの生存のために必要な化学反応が、活発に起こることを示しています。

 陸地や浅海では、多様な環境があり、多様な化学反応が起こるので、生物の材料になる多様な反応物ができやすくなります。生物が誕生し、増殖するためには、反応物が継続的に形成され、生物合成のために安定した環境も必要になります。古い時代の地球で、陸地や浅海の環境は、変動が激しく不安定であったと考えられます。そのため、生物の誕生と進化には、適していなかったと考えられます。

 このような条件を満たす環境は、熱水噴出の場が想定されています。現在の海洋の海嶺や火山島などでは、熱水が噴出が活発に起こっています。原始の地球は、地球内部には現在より熱が多くあったので、もっと活発な火山活動が起こっていたはずです。海底での熱水噴出の活動で多数起こっていたと考えられます。深海底の熱水噴出孔は、当時も現在も、地球ではもっとも安定した環境でもあったはずです。

 熱水噴出孔であれば、化学が起こり、その反応物を使って生物ができ、進化できるための時間もあったと考えられます。そこで生まれたのがLUCAとなります。LUCAは深海の熱水噴出孔がもっとも大きな可能性があると考えられてきました。


・線状降雨帯・

当初、雨があまり降らない梅雨でしたが、

最近は、本州も梅雨前線の活動が激しく

洪水被害も各地で起こっています。

今年は、北海道の涼しい天候が続いています。

線状降雨帯は最近聞くようになりました。

降雨レーダーなどの観測技術の発達により

これまであった現象をより正確に捉えられるようになりました。

それによって多くの人命が救われることになっています。

COVID-19でも同様に最新科学の情報を

科学的判断として活かして欲しいものです。

政治家の政治的判断で失われた命はどうなるのでしょうか。


・無事が一番・

明日から3日間、野外調査にでます。

久しぶりの野外調査になります。

昨年はまったく調査に出ることができませんでした。

今回は少し新しい露頭を探して調査しますが、

多くは以前にも行ったことのある露頭です。

ある程度様子がわかっているところが多いので、

大丈夫だと思います。

コロナ自粛で動き回ることもままならず

体力も落ちているはずです。

無理をせず、怪我をせずに

無事に終えることを最優先しましょう。 

2021年7月8日木曜日

2_192 LUCA 1:最終共通祖先

 「私たちはどこから来たのか」ということを考えていきます。哲学的な問いですが、このシリーズでは生物のもっとも最初の種、生物の誕生を考えていきます。生物の誕生は、現在、どのような考え方があるのでしょうか。


 「私たちはどこから来たのか」という問いは、さまざまな内容が考えられます。哲学的な内容としては、人や自分の「存在意義」や「存在理由」などを問うこともあるでしょう。その問いの内容やレベルによって、求める答えはいろいろになってくるでしょう。多様な答えがありえるでしょうが、そもそも答えがあるかどうかもわかりません。そのような理由で、わかりにくい問いになってしまいます。まずは問いの意味をよく考えないといけません。

 その問いの意図を「由来」と尋ねることとした場合、自身の出生や親、祖父母、祖先などの由来、あるいは家系や氏族の由来まで、たどり着くでしょう。さらに問いを続けると、祖先を辿(たど)ることになってきます。

 私たちの祖先を辿るということは、ヒトという生物の種の祖先を辿ることになります。ヒトの祖先をもっとも古い種まで辿ると、新種として他の種(ここではA種と呼びましょう)から別れてきたはずです。A種とは、ヒトに似ているでしょうが、異なったもので、より以前から存在していた種になるはずです。では、A種の由来を尋ねていくと、より以前のB種、C種・・・とヒトに似た種を遡っていきます。それは霊長類の由来を辿ることになり、さらに遡ることは、哺乳類、脊椎動物、動物、真核生物・・・の由来は、となってきます。最終的には、生物の誕生に辿り着くことになるでしょう。

 このような祖先をたどる作業では、化石が見つかれば、祖先であったかどうかを確認できるはずです。しかし、硬い部分をもたない生物、単細胞生物にまで遡ることになり、化石は見つかるのは難しそうです。もし、「化石らしきもの」があったとしても、それが昔の生物であったかどうかの確認は難しいかもしれません。

 多分、生命の誕生、最初の生物の化石は、見つかりそうもなさそうです。直接の検証できそうな物証がないとすれば、他の方法で推定していくしかありません。

 現在の存在している生物で、もっとも原始的な種を祖先に近い種とみなす方法、その生物の遺伝子から探る方法、生物をつくるのにもっともらしい化学反応や有機物などの素材合成から考える方法、材料物質の隕石から考える方法、などいろいろなものがあります。

 いずれも、祖先となる生物として一つの種からできていたきと考えています。このような考え方を「共通祖先」といいます。その名称として、最終共通祖先(Last universal common ancestor:LUCAと略される)、コモノート、センアンセスター、プロゲノートなど、いろいろなものがあります。その意味するところも、重なっていたり、異なっていたりします。このシリーズでは、LUCAと呼ぶことにします。

 「共通祖先」は架空の生物ですが、存在するとして、それがどのようなものかを推測していこうとします。その詳細は次回にしましょう。


・危機管理レベル下がる・

大学は今週から危機管理レベルが下がり

一部対面授業がもどってきました。

これは、4月の新年度のスタートの状態に戻ったことになりました。

まだまだ、正常とはいえませんが、

学生の顔をみながら授業ができます。

大学でも職域接種と申し込んだのですが、

その結果や連絡はないそうです。

政府のワクチンの数の見込み違い、

あるいは無計画な募集だったのでしょうか、

かなりおそまつな事態です。

大学では、職域接種で後期の授業から

通常状態に戻れると期待したのですが、

まだ少し先になりそうです。

学生は、1年半、遠隔授業を強いられています。

早くなんとかしてもらいたいものです。


・野外調査の再開・

来週末に、やっと野外調査にでかけられます。

出張にあたっては、2週間前に連絡を入れて、

許可をもらってからでるようにとの指示があるので、

危機管理レベルが下る前に準備をして、

下がった直後に申請しました。

そして許可が下りたので、久しぶりの野外調査です。

5月下旬に予定していたコースにでかけます。

2021年7月1日木曜日

6_189 地球外生命 7:系外惑星からの電波検出

 うしかい座タウ星の系外惑星から、電波の放射が観測されました。人工的なものではないのですが、電波の放出のメカニズムが、解明されていくことになるでしょう。将来、地球外文明の検出の手段の確立にもなりそうです。


 電波放射を観測したという報告がありました。その論文は、Astronomy & Astrophysicsに掲載されたもので、

The search for radio emission from the exoplanetary systems 55 Cancri, υ Andromedae, and τ Boötis using LOFAR beam-formed observations

(LOFARビーム観察を用いたかに座55番星、アンドロメダ座ウプシロン星、そしてうしかい座タウ星の系外惑星系を電波放射の探索)

というタイトルでした。ニュースは2020年ですが、発表は2021年のことでした。

 このタイトルをみると、LOFARという装置を使ったということ、またうしかい座タウ星以外の天体も調べていることがわかります。

 LOFAR(LOw Frequency ARray)とは、多数の電波望遠鏡をひとつの巨大な電波望遠鏡とみなし、250MHzよりも低い周波数の電波を観測する方法です。口径が大きくなると観測の分解能が上がり、また一度に複数の方向を観測することも可能になります。

 近くの天体を、感度のよい電波望遠鏡で観測すると、非常に微弱な変化も捉えることができます。複数の位置で測定しますので、電波を重ね合わせると、干渉し合うことになりますが、周辺と天体の方向に干渉に違い生じます。その干渉の振幅と位相には、天体の位置や明るさなどの情報が含まれています。それを解析することで、天体のその波長による特徴を調べることができます。

 研究チームは、この観測方法で電波放射を検出できるかどうかを検証するために、予察として木星で事前観測をおこなっています。木星が系外惑星だとしたら、どのような電波放射になるかシミュレーションをしておき、実際の観測をして観測と比べています。その結果が、予測どおりとなり、うまくいくことを示しています(2019年1月29日)。このような準備のもと、観測がおこなわれました。

 かに座55番星、アンドロメダ座ウプシロン星、うしかい座タウ星の2つの天体で、約100時間にわたり観察がされました。その結果、うしかい座タウ星の惑星から、14~21MHzでの電波放射が検出されていることがわかり、報告になりました。

 系外惑星からの電波放射としては、はじめての観測となります。ただし、今回の観測の電波は弱く、本当にうしかい座タウ星bから放射されたかどうかも、確かではありません。研究チームはさらに観測を継続するようです。

 もしこの電波放射が事実だったとしても、天体からの電波の放射は自然現象でも起こります。事前観測で木星の電波を利用していますので、惑星から自然現象で、電波放射が起こっています。系外惑星の電波放射が発見されたら、この放射を起こした現象があったことになります。磁場が大きな要因になります。もしうしかい座タウ星bに磁場があるとすると、内部構造が推定され、大気の散逸メカニズムもわかるようになってくると考えられます。

 将来は、系外惑星での居住可能性、あるいは文明の有無をなどまで、観測できるかもしれませんね。少々、夢物語かもしれませんが。


・経過区域・

7月になりました。

北海道は、自宅も大学のある地区も

緊急事態宣言が解除されました。

ただし、経過区域となっているので、

感染防止対策をしながらの対応です。

それを受けて、大学も今週まで危機管理レベルが

以前のまま維持されることになりました。

講義も遠隔授業が継続されています。

来週からは、どうなるか未定ですが、

もし危機管理レベルが下がれば

一部、対面授業ができるかもしれません。

そうなればいいのですが、どうなるのでしょうか。


・野外調査・

来週もし大学の危機管理レベルが下ると

感染対策をしながらですが、研究出張も可能になります。

そうなれば、野外調査に出かけようと準備しています。

緊急事態宣言の発出前に予定していた調査が

中止になったので、同じコースで準備しています。

出かけるとしたら、再来週になります。

その時期は、夏休みに入りそうなので、

人出が多くなりそうです。

野外調査もどうなるか不明ですが、期待しています。

2021年6月24日木曜日

6_188 地球外生命 6:うしかい座タウ星b

 うしかい座タウ星bと呼ばれる太陽系外の惑星から、電波の放射が検出されました。この電波の放射は、知的生命の存在を意味するものでしょうか。まずは、この系外惑星の様子をみていきましょう。


 昨年の暮(2020年12月16日)に、太陽系外の惑星から発せられた電波を検出した、という報告がありました。51光年離れた「うしかい座タウ星(Tau Bootis)」にある天体を観測したものでした。天文の世界では、51光年は近くになるので、暗いところであれば、肉眼で観測できます。詳しい観測のしやいすい天体です。

 うしかい座タウ星は、連星になっています。連星とは、2つの恒星がお互いの重心を公転しているものです。大きい方を主星(タウA)、小さい方を伴星(タウB)と呼んでいます。主星は、一般的な恒星で、黄白色をしています(F型主系列星)。伴星は、赤色矮星です。

 うしかい座には、惑星(うしかい座タウ星b)が見つかっています。近いため、惑星探査のかなり初期(1996年)に見つかっています。このタウ星bは、主星(うしかい座タウ星A)の非常に近いところ(軌道長半径720万km)を、3日(3日7時間29分56秒)という高速で公転しています。また、主星の自転周期と惑星の公転とが一致していることから、潮汐ロックが起こっています。実際の観測で、系外惑星の潮汐ロックが観測されているのは、この惑星のみです。

 この惑星の軌道面は傾いて(45度ほど)おり、さらに地球から見た時、恒星の前を通過するような軌道ではありません。そのため、恒星の減光による観測はできないのですが、反射光が直接観測できてことで確認されました。これは近いためできたものです。

 質量は木星の6倍ほど(5.95倍または5.7倍)と推定されており、惑星としてはかなり大きなものとなります。恒星に近いところを公転しているため、表面温度も1377℃と高温になっています。ホットジュピター(熱い木星)と呼ばれるタイプの惑星になります。

 惑星の反射光の観測によって、大気に一酸化炭素があることがわかっています。この一酸化炭素が、面白い現象を起こすと考えられています。一般にホットジュピターの大気中で、高度が高いほど、大気の温度が高くなるという傾向(温度逆転と呼ばれる)があります。ところが、一酸化炭素があると、高度が上昇するほど大気の温度が下がるという現象が起こっていることがわかりました。

 このしかい座タウ星bから、電波が放射されているという報告がありました。これは何を意味しているのでしょうか。文明をもった知的生命がいるのでしょうか。それは、次回としましょう。


・まん延防止重点措置・

北海道の20日で緊急事態宣言は解除されました。

札幌では来週から7月11日までまん延防止重点措置へとなります。

わが町は、特別措置から経過区域となりました。

大学では、7月4日まで現状維持をして、

それ以降は危機管理レベルが下げらるかもしれません。

いずれにしても、今日から2週間は、

現状維持なので、遠隔授業が続く。


・職域接種・

市内には4つの4年制大学があります。

そのうち1つが職域接種の準備をしてます。

医療系の学部があり、医師や看護師が常勤しているため、

接種を実施できるようです。

大学の学生や教職員だけでなく、

市内の小中校、幼保の教職員にも

接種をしていくそうです。

公共のことを考えたすばらしい対処だ思います。

2021年6月17日木曜日

6_187 地球外生命 5:電波望遠鏡

 ホスフィンの発見は、大きな衝撃がありました。可能性としてですが、金星に生命の存在を示唆しているからです。生物起源ではなくても、新しい化学合成の過程が発見されることになるはずです。


 金星の大気中のホスフィンは、どうして形成されているのかは、まだ不明です。現在知られているホスフィンの合成過程は、地球の生物が関与する合成と巨大ガス惑星での高温高圧条件だけです。

 ホスフィンを合成できる巨大ガス惑星の高温高圧の条件は、金星大気にはありません。考えられる可能性としては、生物起源と未知の過程です。いずれも検証が、今のところは困難ですが。

 未知の化学反応ですが、金星の大気の条件でも合成できる過程があるかもしれません。ただし、金星の大気の特性としては、強酸性の雲があることが知られています。そのような酸性の条件が発生すると、ホスフィンはすぐに分解されてしまいます。そのため金星の大気環境を考えると、ホスフィンが常に供給されなければなりません。合成過程では常に供給されていることが束縛条件となります。

 継続的にホスフィンが形成される条件を考えると、まだ発見されていないのですが、金星には生物が存在しているという可能性もあります。地球と同じように、生物の有機物が分解されることによって、ホスフィンが合成されている可能性です。生物がいれば、常に有機物は形成され、ホスフィンが合成される可能性があります。この可能性では、現在の金星にも生物がいて、それも大量に生息しているかもしれません。今後の、探査機で検証できるかもしれません。

 しかし、そもそもホスフィンの存在は、昔の探査データを解析しなおしたものです。他の証拠はないのでしょうか。

 2017年、ハワイのジェームス・クラーク・マクスウェル電波望遠鏡で金星のガスを調べました。するとホスフィンが検出されていました。つまり、今回紹介した報告以前に、ホスフィンの存在が知られていました。

 2019年にも、チリのアルマ望遠鏡では、電波を使って精度の良い観測がされています。この観測は、金星の赤道付近の高度52~60kmに絞り込んで調べています。ホスフィンが、20ppbの濃度で検出されています。この濃度は、地球で観測されているホスフィンの1000倍もの量になっています。

 ただし、これらの観測データの解釈として、二酸化硫黄の可能性もあるそうなので、検討が必要となっていました。そんな論争中の状態のところに、今回の報告があったのです。探査機のプローブの直接観測のデータという、まったく独立した方法での解析結果が示されたことになります。金星大気中にホスフィンが存在するというデータには、信頼できそうです。

 ホスフィンの存在が確実なら、次なる課題はどうして形成されたのかです。上で述べた2つの可能性を、今後、検討していく必要がありますね。


・検証中かも・

地球外生命、それも太陽系内での証拠が提示されました。

もし、この検証作業が進めば、金星での生命の有無が判明し、

生命がないと判明すれば、

未知のホスフィンの生成過程がわかることになります。

金星の探査機がいくつかあり、今後も予定されているので

そのうち検証されるかもしれませんね。


・晴天の霹靂・

先日、将来の人生設計と研究計画に

大きな変更が起こりそうな条件が提示されました。

無視すれば、関係のない条件となります。

もし、対処すれば大きな変更が起こります。

晴天の霹靂でしょうか。

人生における条件変化は、

好んで受け入れることにしています。

環境変化が、日常に刺激を与え、

ステップアップを図ろうと考えるからです。

現在、条件を受け入れるかどうかを検討中です。

そのために、いろいろリサーチしていく必要があります。

今週中に決断し、申請手続きを進めていくことになります。

まあ、申請後、審査がありますので、

認可されるかどうかは、まだ不明ですが。

2021年6月10日木曜日

6_186 地球外生命 4:ホスフィン

 地球外生命のシリーズですが、太陽系内の惑星に話題が移ります。火星では何度か生命の痕跡に関して議論になったことがありました。今回は、生命の可能性を考えてこなかった惑星、金星での話しです。


 地球外生命のいそうな天体として、太陽系で真っ先に候補にされたのは、火星でした。火星は大気が薄いので、表面地形が見えることも、有利に働いたようです。金星は、厚い雲に覆われていて、表層の様子は全くわっていませんでした。探査が進むにつれて、金星の実態がわかってきました。

 旧ソ連のヴェネラ計画で、いくつかの探査機が送り込まれ、金星の様子が少しずつわかってきました。金星の表層は、過酷な環境でした。NASAのパイオニア・ヴィーナス計画では、軌道に入って長期に渡って観測を続けました。さらに、4つのプローブ(小さな探査装置)を下ろしました。NASAの探査機マゼランは、雲を通すレーダーで金星の表層をマッピングして、正確な地形図を作成しました。ESAのビーナス・エクスプレスは、大気の観測をして、激しい運動が起こっていることがわかってきました。日本のJAXAの金星探査機あかつきは、予定していた軌道への投入は失敗しましたが、再度の金星への軌道投入に成功し、観測を続けています。

 今回、以前のおこなわれたNASAのパイオニア・ヴィーナスのプローブに搭載されていた装置(中性ガス質量分析器)の観測データを、現在の技術で再度検討されました。その検討から、いくつかの化学成分の存在の可能性が報告されました。大気の中層には、ホスフィン、硫化水素、亜硝酸、硝酸、シアン化水素、一酸化炭素、エタンの兆候があることを検出したと報告しています。

 現在、ホスフィンに注目されています。ホスフィン(phosphine)は、分子式がPH3で表され、常温では可燃性の気体で、酸素と反応して自然発火します。吸いこむと意識不明になり死んでしまうような毒性があります。ホスフィンが金星の大気から見つかりました。

 ホスフィンは、木星の大気からも発見されています。木星のような巨大ガス惑星の大気中では、激しい乱気流があり高温になるところで合成されています。そこでは、リン酸塩を強力に還元することで、ホスフィンができます。ホスフィンの形成には、巨大ガス惑星の対流嵐のような高温高圧の条件を必要としています。

 地球でも、ホスフィンが発見されています。もちろん、地球のような薄く穏やかな大気からは、生成されることはありません。地球ではホスフィンは生命体から生成されていると考えられています。

 このホスフィンが、金星の大気から発見されました。金星の大気中には、リン酸塩を還元するような強力な還元を起こす物質は見つかっていません。もし、このホスフィンが、本当に金星大気中に存在するなら、どうしてできたのでしょうか。その仮説は、次回としましょう。


・春の嵐・

3日の夜から、4日の昼間で嵐でした。

3日の夜は家が、ガタガタと揺れて恐ろしかったです。

北海道では、まるで台風のようにでした。

最初は、風の嵐、その後雨の嵐となりました。

街路樹た倒れたり、木々の枝が多数落ちたり、

畑の植物も倒れたりと、かなり被害もありました。

5日の朝は、台風一過のような快晴となりました。

春なのに、こんな嵐は珍しいですね。


・オリンピック・

6月20日まで緊急事態宣言中ですが、

その後はおさまるのでしょうか。

そんな中、オリンピックの準備だけは

着々と進められています。

世論は、中止の意見が多数なのですが、

政府、IOCは、既成事実を作りながら、

世論を無視し決行していくようです。

一部の国だけで、ワクチ摂取は進んでいますが、

多くの国では、ワクチンは行き渡らず

まだパンデミックが続いています。

そんなときに、オリンピックをおこなって、

世界中の国々から選手が集まれるのでしょうか。

もし出場しても選手らは、楽しめるのでしょうか。

選手の気持ちは、どうなのでしょうか。

オリンピックが、政治や商業の道具に

されているように見えて仕方がありません。

2021年6月3日木曜日

6_185 地球外生命 3:プロキシマb

 潮汐ロックのかかった惑星にもハビタブルゾーンがありそうです。これは作業仮説なので、検証が必要です。検証によって、ハビタブルゾーンができなかったり、限定的だったり、広くなることもあるかもしれません。


 地球の気候モデルからメディオクリティの仮定を利用して、未知の惑星の気象を探る方法があることを、前回紹介しました。どのようなものか紹介していきましょう。

 モデルを適用する惑星は、系外惑星のプロキシマbです。前回紹介したように、地球とは全く異なった性質の惑星であることがわかっています。主星のプロキシマ・ケンタウリは、太陽とは異なる赤色矮星で、温度も低い恒星です。恒星のあまりにも近くを公転しているので、潮汐ロックにより惑星の同じ面を恒星に向けて固定されていると推定されます。そんな特異な惑星環境に、地球の気候モデルをどう適用するのでしょうか。

 プロキシマbは、夜側と昼側は固定されていることになります。そうなると、夜側では冷たくて海は永久に氷に覆われていて、昼側では暑く乾燥した大地がむき出しになっていそうです。しかし、夜と昼の境界では、液体の水が存在でき、ハビタブルゾーンがありそうです。これが検証する前の想定になります。これでも期待が持てそうですが、条件の変化によっては、水が存在できないかもしれませんし、できたとしても狭い範囲だけかもしれません。なんらかの検証が必要になります。

 現在の地球の気候変化を予測するモデルとして、大気大循環モデル(Global Circulation Model GCMと略)があります。GCMは、現在の観測データを、ある時刻の初期条件として与え、それ以降を大気の状態の方程式(偏微分方程式)をから計算(数値的な時間積分)していくものです。現在の気象予報は、このGCMを用いています。ただし、一般的に解けない方程式なので、計算可能な近似方程式にして計算機で解いていく方法です。計算を進めていくと誤差がおおきくなっていくので、実用性としては3日程度の予測しかできません。長期予報では、別の条件や方程式を用いる必要があります。

 GCMは実用性があるのですが、地球の条件に沿って気象予報のためにつくられています。GCMを、太陽放射、大気組成、気候強制力などを変更でき、3次元的に計算できるように拡張されたソフトウェア「ROCKE-3D」が開発されています。ROCKE-3Dは、過去の地球の気候変動や、他の惑星にも適用できるように作成されたものです。

 ROCKE-3Dを使って、特異な条件にあるプロキシマbの気候を、シミュレーションしたいくつかの研究がおこなわれました。その結果、液体の水が広く存在する可能性があることがわかってきました。昼側では、雲が傘のように広がり表面の温度を下け、水が存在できる可能性があること、夜側でも暖かいの大気や海洋が循環することで、水が存在できる可能もでてきました。

 シミュレーションの結果ですが、海が恒常的に存在できる可能性を示したことになります。恒常的な海の存在と変動する気候があれば、生物を生み出したり、進化を促すことができるでしょう。


・教育実習・

ゴールデンウィーク開けに、各地でスタートした

4年生の教育実習が終わりました。

教育委員会が、実習生もその学校の教員として

扱ってくださったので

実習を無事終えることができました。

実習生は2週間前からの健康管理や、

早目の帰省などでコロナ対策をしてきました。

大学教員の実習指導は受けない学校もありました。

それぞれの学校の判断になりますが、

多くの実習はできました。

後期に回された学生もいますので、

このまま事態が収まればいいのですが。


・全地球凍結・

ROCKE-3Dは過去の地球の気候の推測にも

利用されています。

地質学的証拠から、7億年前ころの地球では、

非常に寒冷な時期があり、

全地球凍結(スノーボールアース)となったと考えられています。

ROCKE-3Dを適用したところ、赤道付近では、

海が500年も安定し存在できることが計算されました。

すべての海洋が完全に凍る(スノーボールアース)ことが

なかった可能性がでてきました。

この結果は、赤道付近にも氷河あったという

地質学的証拠とは矛盾しています。

両分野で、今後の検討が必要ですね。

2021年5月27日木曜日

6_184 地球外生命 2:メディオクリティの仮定

 遠く存在で、その実態を知りたい時、身近なものを手本にして、類推していく方法があります。その類推は、正しさが保証されるものではありません。しかし、現状では知り得ないものを探る便利な方法です。


 ありふれたもの、特別なものがなにもないものの原理や規則性、特徴を、不明のものに適用していく方法を、「メディオクリティの仮定」といいます。前回紹介した生命誕生や生命進化の条件として、ハビタブルゾーンやゴルディロックスゾーンは、地球や太陽系を当たり前として、メディオクリティの仮定を適用していたことになります。

 メディオクリティの仮定を適用することには、科学的根拠はありません。なにも手がかりがない時、デタラメに探したり、総当たりで検討するよりは、見つけやすくなります。そんな研究があります。

 現在知られている、太陽系に最も近い恒星のプロキシマ・ケンタウリがあります。太陽系から約4.2光年の距離にあります。私たちの太陽系は主系列星と呼ばれるごくありふれた恒星でが、このプロキシマ・ケンタウリは、太陽の10%ほどの質量しかありません。太陽の表面温度は約6000度ほどですが、プロキシマ・ケンタウリは2800度しかありません。赤色矮星と呼ばれています。

 この恒星には、惑星プロキシマb(プロキシマ・ケンタウリbとも呼ばれることもあります)が見つかっています。地球よりやや大きいのですが、恒星のかなり近くを一周11日で公転しています。恒星の近くを公転している天体は、恒星との潮汐力によって、公転と自転が一致していく、「潮汐ロック」という現象が起こっていると考えられます。その結果、プロキシマbは、恒星に常に同じ面を向けていると考えられます。私たちの太陽や地球とは非常に異なった条件の恒星系になります。

 さらに、プロキシマ・ケンタウリは、強いフレアが度々発生していることがわかっています。恒星の近くでは、強力な紫外線が照射されることになりそうです。そんな恒星や惑星に、メディオクリティの仮定など適用できるのでしょうか。

 どんな恒星系であっても、その条件が明らかになれば、ハビタブルゾーンが設定できます。そこに惑星があれば、初期的な条件を満たすことになります。プロキシマbは、そのハビタブルゾーンにあります。ただし、通常のハビタブルゾーンではありません。潮汐ロックされた惑星では、常に夕方の地域、明け方の地域ができます。潮汐ロックのおかげで、安定したゴルディロックスゾーンが出現するかもしれません。

 それを確かめるために、地球の気候モデルをメディオクリティの仮定をつかって、プロキシマbに適応するという検討がされています。その内容は、次回にしましょう。


・潮汐ロック・

2つの天体がお互いの周りを回っている時、

天体の最も近い面と最も遠い面が、

引力で引っ張られて、膨らみ変形します。

地球では、月によって潮の満ち引きが起こり、

固体の地殻も変形しています。

これのようは変形を起こす力を、潮汐力といいます。

この潮汐力が働き続けていると、

質量の小さい天体の自転と公転が

一致するという現象がおこります。

月が常に地球に同じ面を向けているのも

潮汐ロックによるものです。

多くの天体の関係で潮汐ロックは起こっています。


・人間の考え方の癖・

このエッセイでは、メディオクリティの仮定と呼びましたが、

似た考え方はいろいろなところにあります。

統計学では、ベイズ統計があります。

科学では、斉一説もこの考え方を利用しています。

さらに進めれば、科学では、すべて仮説を立てて、

それを検証ていくという「仮説演繹法」を用いています。

仮説演繹法もメディオクリティの仮説も

共通した考え方を用いています。

多くの科学では、似たような考え方を用いています。

これは、人間の考え方の癖かもしれませんね。

2021年5月13日木曜日

1_194 カーニアン多雨事象 6:ランゲリア洪水玄武岩

 層状チャートの研究から、多雨が起こり、それが生物の大絶滅、種の誕生、海洋無酸素事件などの連鎖が見えてきました。さらに、同時代のパンサラッサでのLIPsを通じて、連鎖は続いていきます。


 北アメリカの西部に分布しているランゲリア洪水玄武岩について紹介していきます。

 ランゲリア洪水玄武岩の「洪水」と「玄武岩」という言葉は、水と岩石なので液体と固体ですから、関連づきにくい言葉です。この両者が結びきが、ランゲリア洪水玄武岩の意味することがわかってきます。

 玄武岩は火山岩ですから、マグマからできたものです。玄武岩マグマは、マグマの中でも、もっとも粘性が小さいので、「さらさら」と流れます。「さらさら」といいましたが、水よりは粘性が大きのですが、水のように流れる性質を持っています。

 「さらさら」のマグマが大量に噴出すると、マグマが洪水のように流れていきます。マグマは冷えれば岩石になるので、噴出孔の周辺に大量に、そして広大な地域で玄武岩が広がっていくことになります。マグマの量が多ければ、広い高原状となっていき、台地玄武岩とも呼ばれます。

 インドのデカン高原は、デカントラップと呼ばれる洪水玄武岩が、アメリカのワシントン州やオレゴン州に広がるコロンビア洪水玄武岩などが有名です。「洪水玄武岩」と名称がつけられるようなマグマの活動は、前回紹介したLIPsによるものが多く、その時代の地球環境に影響を与えることもありえます。ランゲリア洪水玄武岩の影響が、今回のカーニアン多雨事象を引き起こしたと考えられています。

 ランゲリア洪水玄武岩は、北アメリカ大陸の西部に分布しています。パンサラッサの海洋プレートが、アメリカ大陸に沈み込んだことで、形成された付加体の中に大量に見つかっている玄武岩類になります。同時期のカーニアン期の火成活動で似た産状をもった玄武岩が、今回調査された層状チャートが属している秩父累帯の南帯(三宝山帯)の玄武岩類にあたります。この帯の玄武岩は、海洋プレートの沈み込みによって形成された日本列島の付加体になります。

 同時代に似た機構で大陸に付加した玄武岩は、秩父帯だけでなく北上帯から北海道の渡島帯、そして極東ロシアのタウハ帯にまで断続的に連続していきます。これらすべては、パンサラッサの海洋プレートの沈み込みで付加体として形成されたものだと考えられています。3000 kmにわたって分布している長大な玄武岩帯になります。

 これらの極東地域の玄武岩帯と北アメリカ大陸のランゲリア洪水玄武岩は、分かれて分布していますが、プレート活動によって分裂してしまったためだとされています。もともとはパンサラッサ海でひとつのLIPsから形成されたと考えています。さらに著者らは、日本からロシアにかけて連続する玄武岩類と、北アメリカ大陸のランゲリア洪水玄武岩も、超海洋パンサラサ海の同一のLIPsの活動で、カーニアン多雨事象を起こしたのではないかと推定しています。

 日本の小さな露頭のチャートの中のコノドントや化学成分から、大胆な推定が生まれてきました。もちろん、今後も議論も必要ですが、足元の石ころから、過去の地球のダイナミズムが垣間見えます。


・デカントラップ・

デカントラップのトラップとは

スウェーデン語の階段を意味するそうです。

この地域観が階段状の丘から名付けられたそうです。

デカン高原を生み出したマグマです。

デカントラップのLIPsは白亜紀末に活動しているため、

恐竜の大絶滅でも重要な役割を果たしていました。

一見関係にない現象や岩石が、

関連しあっていくのも不思議ですが、

それを解明していくことが科学の醍醐味ですね。


・のんびりと・

ゴールデンウィークの1週間は、

北海道のひっそりとした田舎町で

夫婦でのんびりと過ごしました。

2年前にもいったところでしたが、

昨年もその地域に行く予定をしていたのですが、

COVID19のために中止をしました。

今回は、なんとかでかけることができました。

何もないところですが、私には快適なところです。

午前中にブラブラして、午後には温泉に入って

買い物をして、宿泊所でのんびりとしました。

道内には、しばらく滞在したくなるような

私好みの地域がいくつかあります。

しかし、希望の季節に長期滞在でき

自炊できるような手頃なところとなると

そうそうは見つかりません。

その数少ない地域で過ごしました。

2021年5月6日木曜日

1_193 カーニアン多雨事象 5:年代の一致

 今回の報告では、カーニアン多雨事象の時代を正確に決めるために、層状チャート以外で、コノドントと有機炭素同位体層序を用いていました。それはどのような方法でしょうか。


 カーニアン多雨事象の仮説で重要なのは、事象と火山活動の年代が一致するかどうかでした。それをいくつかの方法で決定しています。その方法としては、コノドントと有機炭素同位体層序でした。その概要を紹介しましょう。

 コノドントとは、リン酸塩鉱物からできた1mm程度の歯の形をした化石で、海で堆積した地層からたくさん見つかっていました。最初のころはどんな生物かは不明でしたが、最近では原始的な脊椎動物の化石であることがわかっています。カンブリア紀から三畳紀末まで見つかっていますが、突然姿を消します。

 リン酸塩鉱物は丈夫なので、化石として残りやすくなります。また、コノドントは、時代ごとの形態の変化が大きいことから、示準化石として年代決定に使えました。どんな生物かわからなくても、利用されていました。今でも、その方法は有効です。坂祝のチャート中のコノドントから求めた年代も、カーニアン多雨事象の時期と一致しました。

 もうひとつの有機炭素同位体層序は、聞き慣れない言葉です。有機炭素とは、生物が作り出した有機物を構成している炭素のことです。炭素の同位体組成とは、同位体比(12C/13C)のことです。最後の層序という言葉は、連続した地層のことです。

 層序ごとの同位体比の変化が、世界各地で調べられており、時代ごとに同じパターンを示すことが知られています。そのパターンを年代測定に利用するという方法です。この方法は、化石のない堆積物の年代を決定するために用いられています。坂祝のチャート中の有機炭素同位体層序でも、時期が一致することがわかりました。

 層状チャートのオスニウム同位体組成から海洋にまで及ぶ火山活動があったこと、カーニアン多雨事象の年代が、層状チャートのいくつかの方法での年代が一致したことがわかってきました。以上のことから、大陸の巨大な火山活動が、カーニアン多雨事象の時期に起こったことになります。カーニアン多雨事象の原因は、巨大火山活動による可能性が高くなってきました。

 火成活動の時期に、パンサラッサやテチス海など全地球の海洋へ及ぶ海洋無酸素事変、生物大絶滅、重要な生物種の誕生とも一致していました。


・LIPs・

今回で、このシリースを終わる予定をしていたのですが、

ランゲリア洪水玄武岩について

詳しく紹介していないかったことに気づきました。

ランゲリア洪水玄武岩は、

巨大火成岩岩石区と呼ばれるもので、

英語のLarge igneous provincesを略して

LIPsと表記されことが多いようです。

次回は、このランゲリア洪水玄武岩の意味することを

考えていくことにしましょう。


・予約配信・

ゴールデンウィーク中は不在につき

このメールマガジンは、予約配信しています。

なぜ不在かは、前回のメールで紹介しています。

このメールを読まれている頃には

私は、もう日常生活に戻っていると思います。

調査の内容については、機会があれば紹介します。

2021年4月29日木曜日

1_192 カーニアン多雨事象 4:海洋無酸素事変

 三畳紀の地球では、大きな大陸のパンゲアと大きな海洋のパンサラッサに分かれていました。そんな時期に、多雨事象が起こっていました。その多雨は海洋にも大きな影響を与えたようです。


 今回話題にしている「カーニアン期」は、2億3700万年前から2億2700万年前の時代でした。この時期に、世界各地で、湿潤な(雨が多い)気候であったことは知られていました。イギリスの地質学者は、このうち200万年間で激しい雨が降った時期があり、それを「カーニアン多雨事象(CPE: Carnian Pluvial Episode)」と呼びました。カーニアン多雨事象は、初期カーニアン期(ジュリアンと呼ばれています)に起こっています。

 その時期には、海洋生物の絶滅とともに、石灰質の殻をもったプランクトンや現代型の造礁サンゴも誕生しています。陸上では、恐竜の多様化や哺乳類も誕生しています。カーニアン多雨事象の時期は、生物進化に重要だったようです。

 多雨事象の原因として、北アメリカの西部で「ランゲリア洪水玄武岩」の火山活動が考えられていました。ランゲリア洪水玄武岩は、アラスカ、ユーコン、ブリティッシュコロンビアの海岸沿いに、点々と分布する付加体中の玄武岩としてあります。全体として、巨大な玄武岩の火山地帯になっています。その影響は、世界的に広がったと考えられています。

 問題は、火山活動の時代と多雨事象とが、年代として一致していたかどうかが不明な点でした。

 今回の報告に用いられたのは、岐阜県坂祝(さかほぎ)、木曽川の河原に露出している層状チャートでした。層状チャートの年代は、カーニアン前期ものです。坂祝の層状チャートが堆積したのは、当時もっとも広い海洋(パンサラッサと呼ばれています)の赤道付近だったと考えられています。

 坂祝の層状チャートのオスミウム同位体組成は、低い値がでした。オスニウム同位体比が低いのは、マントル物質の特徴に一致します。そこから、いろいろ推測してされていきます。

 層状チャートでマントルの特徴を持つということは、マントル由来の物質が地球全体、もしくは坂祝の層状チャートが堆積したいパンサラッサに持ち込まれたことになります。当時の地球の陸と海の分布は、超大陸パンゲアと大きな海パンサラッサという状態でした。パンサラッサに火山物質が広がるには、大規模な火山活動が起こったいてことになります。

 活発な火山活動とともに、海洋では無酸素事変も起こっていることもわかっています。無酸素事変とは、海水中の酸素が極度に少なくなったり、なくなったりする異変です。無酸素事変という海洋環境の変化により、生態系に大きな変化(大絶滅)を起こしたと考えられています。

 層状チャートで、色が黒っぽくなったり、チャートの堆積がなくなり黒っぽい粘土層になったりしています。チャートの赤は酸化された鉄の色で、チャートの欠如はプランクトンの大絶滅を意味しています。これは、無酸素事変によるものだと考えられています。

 この時期の海洋無酸素事変は、パンサラッサだけでなく、別の内湾域であったテシス海でも見つかっています。テチス海では、黒色頁岩や有機物に富む堆積物が堆積しています。黒色頁岩や有機物が分解されずに地層に残ったということです。その原因は、海洋底で酸素の供給がなくなっていた可能性があります。

 全地球の広域で、無酸素事変が起こっていたと考えられます。このような海洋無酸素事変は、これまで何度か起こったことがわかっていますが、その原因については確定していません。

 カーニアン多雨事象の研究では、年代を正確に決定されていませんでした。年代決定を正確におこなうことが重要で、この報告ではコノドントと有機炭素同位体層序という方法を用いて、年代のチェックされています。その詳細は次回としましょう。


・桜の花・

今年は暖かくて、北海道でも1週ほど

桜の開花が早くなっています。

日本各地の感染拡大地域では、

花見の自粛も強いられています。

花を見るだけならいいのでしょうが、

花の下での密集や宴会が

感染拡大を起こすことになるのでしょう。

田舎では人出がないところもあり、

そこではひっそりの身内だけで

花を愛でることもできるでしょう。

私も、人気のないところで花見をしようと考えています。


・待避旅行・

ゴールデンウィークに入りました。

幸い私の街は、感染拡大地域ではないので外出も可能です。

田舎にしばらく待避しようと考えています。

1週間ほど家内も一緒に滞在します。

その時、少し調査もしようと考えています。

1年半ぶりの野外になります。

まあ、家族での待避旅行でもあるので、

のんびりしてこようと考えています。

2021年4月22日木曜日

1_191 カーニアン多雨事象 3:層状チャート

 カーニアン多雨事象の検証に用いられたのは、層状チャートと呼ばれる岩石でした。層状チャートは、どのようにできたのか。層状チャートのオスニウムの同位体組成を調べると、どんなことがわかるのでしょうか。


 前回は、オスニウムがマントルに多く含まれており、大陸地殻にはほとんど含まれていないこと、オスニウム同位体組成を調べると量にかかわりなく由来をわかる、ということを紹介しました。

 報告には海洋の素材として、層状チャートが用いられていました。層状チャートとは、どのようなものかをみていきましょう。

 層状チャートは、淡い青色から灰色や、赤色がかっていることもあります。多くは10cmほどの層が繰り返されています。層は珪質の硬い部分(チャート)が厚くなっており、間に1cmに満たない薄い粘土の層が挟まれています。ときに層は、激しく曲がっていることがあります。

 日本列島では各地に見られますが、多くはブロック状になっています。ただし、そのサイズが地形図で示されるほど大きいときもあるので、一見通常の地層に見えることもあります。ただし、通常の土砂が固まった地層と比べると、かなり特異なものになっています。

 厚い珪質(チャート)の部分と薄い粘土(ほんとんど挟まなこともあります)の繰り返しという、特徴的な構成物からできています。珪質のチャートの部分で、再結晶をしていない場合には、小さい化石が見えることがあります。通常は、非常に小さい化石なのでなかなか見ることはできませんが、珪質部が化石の集まりになっていることが特徴です。

 チャートを化学的処理をする方法があり、多くの化石を取り出せます。化石は、海洋に住んでいるプランクトンで、珪質の殻をもった放散虫です。放散虫は動物性プランクトンなので、植物性プラントンを餌にしています。放散虫の殻の成分は、海水に溶けている成分や他の生物(植物性プランクトン)から取り込んだものです。放散虫もその殻も、海洋由来の成分からできていることになります。

 プランクトンが死ぬと、遺骸は沈んでいきます。遺骸の沈んでいく様子が、マリンスノーと呼ばれる現象です。沈みながらプランクトンの体の有機物は分解されていき、海洋底では時間が経てば、硬い殻の部分だけが残ります。珪質殻だけが溜まったものが珪質粘土と呼ばれています。赤道付近の海洋底で、広く、厚く堆積していることが、深海掘削調査でわかっています。

 この厚い珪質粘土が固まったものが、チャートとなります。放散虫は、カンブリア紀から現在まで生きている生物種なので、形態の変化を利用して、時代区分に利用されています。陸上の層状チャートは、放散虫化石から時代決定でき、古い時代ものであることがわかります。

 層状チャートは、形成された時代の海洋の化学成分の特徴を反映していることになります。また、前回紹介したように、オスニウムは、大陸には稀で、マントルに含まれている成分でした。マントルの成分が海に来ることはあるのでしょうか。それが、マントルに由来するマグマが形成され、それが火山噴火すれば、地表にもたらされます。また、オスニウムの同位体組成を調べれた由来も確認できます。

 海洋のプランクトンに取り込まれるような火山活動があれば、そればどんなものでしょうか。次回としましょう。


・春の嵐・

先週末の土曜の午後から月曜まで、

北海道は嵐になっていました。

週末の土曜の午後から日曜までどこにもいかず、

自宅でじっとしていました。

外が荒れていると思いましたが、

気になりませんでした。

ところが、月曜の早朝、歩いてくるときは、

風が強く、雨も時おり激しく降りました。

風がずっと強く、傘を横にむけて歩いてきました。

しかし、ずぼんがしっとりと濡れました。

久しぶりの雨による春の嵐でした。


・講義はじまりの時期は・

大学の講義がはじまって、2週目になります。

しかし、先週末が履修登録の締切だったので、

1回目の課題が締め切りが終わっているので、

それを再度、提出可能にして、

誰でもが課題が提出できるようにしました。

最初の頃は、いろいろトラブルがあります。

今週以降は、通常状態になるはずなのですが・・・

2021年4月15日木曜日

1_190 カーニアン多雨事象 2:オスニウム同位体

 後期三畳紀のカーニアン期に雨が多かったという報告がありました。海洋のオスニウム同位体を用いて調べているとのことでした。オスニウム同位体とは、どのようなものでしょうか。


 「カーニアン多雨事象」では、オスニウム同位体がキーワードになっていることは、前回、紹介しました。今回は、そのオスニウム同位体についてみていきましょう。

 オスニウムは、Osという原子記号で、周期律表では6列目にある原子番号76です。オスニウムの左側(質量数の小さい側)にレニウム(Re)が、右側にイリジウム(Ir)があります。これらは、白金(プラチナ、Pt)の近くにあり、化学的挙動も似ているので、白金族(5列目にRe、Rh、Pdが、6列目がOs、Ir、Ptが属する)に区分されています。

 地球化学的に考えると、金属で「鉄(Fe)」と挙動を共にしやすい元素です。地球化学的に考えるとは、地球を構成している元素で、量の多いもので、重要な化学的指標になるものを中心に見ていくことになります。ですから、鉄が移動、濃集しているところに、オスニウムも移動、濃集することになります。

 オスニウムには質量数が、184、186、187、188、189、190、192の7つの同位体があります。同位体とは、原子番号は同じで、質量数が異なっているものです。オスニウム同位体の組成は、188Os/187Osの比のことを意味します。岩石中のオスニウム同位体組成を調べて、その由来を調べる方法です。ただし、含有量は、それを同位体組成で比べると、量に左右されることなく、由来の違いを検討できます。

 オスニウムは、地球化学的に鉄と挙動を共にしますので、地球中心部の核(コア)やマントルの多く含まれていますが、大陸地殻の岩石にはほとんど含まれていません。白亜紀と古第三紀の時代境界(K-Pg境界)で、恐竜の大絶滅を示す根拠となったイリジウム(Ir)と同じ白金属です。

 オスニウム同位体による研究方法は、共同研究者の佐藤さんたちが、すでに確立され、利用されているものです。以前「2_141 三畳紀の大絶滅 4:層状チャート」(2016.11.17)で紹介しました。時代境界で、隕石の証拠となる小さな金属粒(宇宙塵)を見つけています。その時、岩石のオスニウムの同位体組成を調べて、隕石の根拠としていました。

 今回は、隕石の証拠ではなく、海洋の特徴を調べようとするものです。そのため、海の素材を入手しなければなりません。過去の海水は、手に入らないので、それに変わるものを用意しなければなりません。その素材とはなんでしょうか。海洋と密接な関係をもった岩石を調べることで、海の特徴を調べることになります。それは、その時代にできた層状チャートでした。層状チャートは、深海底で堆積したものだとされています。

 層状チャートが、海の特徴をどう反映しているのでしょうか。次回としましょう。


・芽吹き・

先週は、北海道は寒波に襲われて雪が降りました。

週末には暖かくなったので、

今週には春の陽気が戻ってきました。

週末に我が家の車も、

冬タイヤから、夏タイヤに交換しました。

このまま暖かい日が続くと、

春の芽吹きが、一気にはじまりそうです。

森の中を散策したくなります。


・講義開始・

大学は新年度になり、各地で講義もはじまりました。

多くの大学でも同じだと思いますが、

対面授業と遠隔授業が混在していると思います。

ただし、対面授業もあるので、

キャンパスで学生たちが多数みられます。

生協の購買や食堂も賑わっています。

私も、半分は対面講義なので

学生の顔を見ながら講義ができるのはありがたいですね。

以前まで、それが当たり前だったのですが

それがなくなることで、

はじめて重要性、大切さを思い出せますね。

2021年4月8日木曜日

1_189 カーニアン多雨事象 1:時代区分

 今回から、新しいシリーズになります。「カーニアン多雨事象」という聞き慣れない言葉がテーマとなります。カーニアンとは、地質時代の区分名です。そこで起こった事件です。時代区分から紹介していきましょう。


 今回のエッセイは、熊本大学の大学院生の冨松さんと九州大学、海洋研究開発機構(JAMSTEC)などの共同研究による報告をもとにしています。「全地球惑星変化」(Global and Planetary Change)の2020年11月に掲載されました。タイトルは、

Marine osmium isotope record during the Carnian “pluvial episode” (Late Triassic) in the pelagic Panthalassa Ocean

(パンサラッサ海のカーニアン「多雨事変」(後期三畳紀)における海洋のオスニウム同位体の記録)

というものでした。

 この報告で、キーワードとなるのは、「カーニアン多雨事象」と呼ばれる現象(事象)とオスニウム同位体です。

 「多雨事象」とは、雨の多い気象現象で、「カーニアン」という聞き慣れない固有名詞がついたものです。カーニアンというは、時代名称です。この時代名称を時代区分について概要を紹介しておきましょう。

 時代区分は、さまざまな階層でおこなわれています。例えば、中生代や白亜紀などは、有名なので聞いたことがあると思います。専門的には他にも、いろいろな時代区分が用いられています。もっとも大きな時代区分の階層としては、隠生代と顕生代があります。隠生代は生物が隠れている時代、顕生代は生物が顕(あらわ)れる時代という意味です。隠生代は、冥王代、太古代、原生代に、顕生代は古生代と中生代、新生代に区分されます。「代」というのをよく聞くのですが、これはかなり大きな時代区分となります。

 次に「代」より下位の区分を、中生代を取り上げて考えていきましょう。中生代は、三畳紀、ジュラ紀、白亜紀に分けられます。「代」と次は、「紀」という区分になっています。三畳紀は、さらに前期、中期、後期に分けられていますが、まだ正式名称は確定していませんが、正式に区分名がつけられたら、「世」が付きます。後期は、カーニアン期、ノーリアン期、レーティアン期に区分されます。「期」がこの階層には付きます。

 さらに細分は続きますが、今回のテーマに用いられている「カーニアン期」は、この階層にあります。年代では、2億3700万年前から2億2700万年前になります。

 この時代に雨の多い気象現象が起こっていたということです。多雨の現象がこの時期に起こっていたことは、以前から知られていました。しかし、その原因がよくわかっていませんでした。今回の論文は、カーニアン期の多雨事象の原因を、海洋のオスニウムの同位体の記録から検討したというものです。オスニウムの同位体については、次回にしましょう。


・新学期・

いよいよ学校では、新学期がはじります。

我が大学では、4月1日の入学式から6日まで、

短期間でガイダンスがおこなわれます。

そして、7日からは、授業がはじまります。

今年度も、遠隔授業が混在した状態でのスタートです。

在学生や教職員は馴れてきたのですが、

新入生は戸惑うはずです。

ガイダンスも、対面は最小限にされているので、

十分な準備ができないままではないでしょうか。

遠隔授業も充分理解できずに、

スタートする新入生もいると思います。

新生活の不安の上に、

遠隔授業の不安も重なのではないでしょうか。

案ずるより産むが易しであればいいのですが。


・野外調査の再開・

学内の競争的研究費が採択されました。

今年こそは、野外調査を再開したいと考えています。

ただし、今年度は、道内を中心にしています。

5月下旬から出かける予定をしています。

コロナ感染の第4波が起こりそうで、

少々心配ですが、行政の指示に従いながら

判断していこうと考えています。

2021年4月1日木曜日

5_179 周期的大量絶滅 4:ダークマター

 大絶滅には2750万年の周期性がありました。この周期性の原因は、謎のままです。地球外の隕石の衝突では説明できませんが、地球外に原因を求めています。その原因はどんなものでしょうか。


 10回の陸上生物の大絶滅のうち3回では、巨大隕石の衝突の証拠がありました。しかし、すべての絶滅で衝突が起こっているわけではないので、衝突が周期性の原因ではないようです。また、10回のうち8回は、海洋生物の大絶滅を伴っており、大規模な火山活動LIPsも起こっていました。ここには、なにか必然性があるのでしょうか。

 大絶滅の周期性は2750万年でしたが、天文学にそれと似た周期がありました。太陽系の公転周期です。太陽系の公転とは、太陽系が銀河系の中心を回っていることです。多くの銀河は回転しており、回転で生じる構造ができています。

 銀河の構造は、約2000億 - 4000億個の星が織なしている模様となります。私たちの銀河は、平たいディスクと呼ばれる円盤状で、中心部が円柱状になっています。また、円盤状のところには、4本の太い腕状のものと、2本の小さい腕状のものがあり、それが巻き付いたような構造をもっています。その腕の巻き付きは、銀河の回転運動によってできたものです。太陽系は、小さいオリオン腕と呼ばれるところに含まれています。このような銀河の形は、「棒状渦巻銀河」に分類されています。

 銀河全体の回転運動と一緒に、太陽系も公転しています。その一周に要する期間は、2億5000万年となっています。ただし、太陽系の公転は、公転面に平行に巡っているわけではなく、ディスクに対して上下運動をしながら回っています。その上下の周期が、3000万年程度とされています。

 3000万年ごとに、銀河のディスクの面を横切ることになります。銀河のディスクは、星が多く、チリやガスなども多くなっています。ディスクを太陽系が、周期的に通り抜けていきます。ランピーノたちも、このような周期と大絶滅に関連したのではないかと考えました。

 以前にも大絶滅の周期性が見いだされ、太陽系の公転周期とが結び付けられていました。近年、ディスクには、ダークマターも多いことがわかってきました。ダークマターの実態は不明ですが、重力として周囲に影響を与えているため、間接的ですが、その存在や分布がわかってきました。

 見えている以上にディスクには、重力源が多いということになります。ランピーノたちは、太陽系がディスクを通過するとき、ダークマターの重力が太陽系の小天体の軌道を乱したり、地球の核へ影響を与えマントル全体に及ぶような巨大火山活動を起こしたのではなかいと考えています。

 巨大火山活動は、マントルプルームと呼ばれるマントルと核の境界にあるD"層から、物質が上昇してくることが原因だとされています。ダークマターの重力が、D"層の上昇のきっかけとなってのではないかと考えたわけです。

 大絶滅の周期性を解析して、それを太陽系の銀河のディスクを横切る周期と関係づける考えは、以前からありました。しかし、それをどう検証するのかが難しい問題でした。ダークマターは、傍証が多数あり、存在は明らかになっていますが、その実態は不明です。今回はダークマターが関与してD"層を上昇させ、LIPsの発生と結びつけた点が、新しいアイディアです。それを周期性の原因とするには、まだまだ研究が必要ですね。


・入学式・

4月になりました。

今日は大学の入学式の日です。

事前にこのメールマガジンは配信しているので、

その様子を紹介する書くことはできません。

しかし、札幌市内のイベントホールを借りて

大きいホールで全体の入学式典が開催されます。

その後、学科ごとのガイダンスを会議室でおこなれれます。

学科のガイダンスでは、教員の紹介をされるので、

全員参加となります。


・ワクチン接種・

北海道は日一日と暖かくなり、春めいてきました。

そろそろ春の芽生えも、はじまりそうです。

季節のめぐりは進んでいますが、

コロナ禍は一進一退ですね。

ワクチン接種が進んでいくことが、一番の対策でしょう。

ただし、ワクチンを海外に依存しているため

なかなか進まないのが、まどろっこしいですね。

2021年3月25日木曜日

5_178 周期的大量絶滅 3:絶滅の連鎖

 陸上生物の大絶滅の周期性が、海洋生物の大絶滅と連動していました。海洋とともに陸上でも異変があったことになります。それは、どのようなものだったのでしょうか。推測していきましょう。


 この報告は、陸上生物の大絶滅も対象にして解析した結果でした。以前にも海洋生物での周期性が見つかっていたことも紹介していましたが、今回、陸上生物でも、大絶滅に周期性が見つかったことになります。海洋生物と陸上生物との大絶滅とは、どのような関係になるでしょうか。

 陸上生物の大絶滅は、地球表層での現象となります。海洋生物の大絶滅であれば、海洋全体の異変に起因します。海洋生物を大絶滅させる方が、大きな異変が必要になるはずです。なぜなら、陸上域より海洋域の方が、安定した環境(変化しづらい条件)になっているためです。もし、大気中で大きな異変が起これば、地球の表層全体に影響が及びます。その影響は海面付近にも及び、海面付近で暮らしている海洋生物にはダメージを与えるでしょう。

 海水は液体の水の粘性が大きいので移動がゆるやかで、深度もあるので、循環したとしても海洋全体への影響は遅くなります。特に深海底での海水循環は数千年の周期になっています。そのため、かなり大きな異変で、なおかつ長期間続くものでないと、深海生物まで巻き込むような大絶滅は起こりません。

 海洋循環に比べて、大気循環は速く起こります。例えば、巨大火山の噴火や隕石の衝突で、大気の上空に大量のチリが舞い上がり、太陽光が遮られたら、光合成生物は大きな打撃を受けます。この光合成生物への打撃は、数十年、あるいは数年間継続することで、生態系は破壊されてしまいます。

 このような異変は、海洋で光合成をする生物にも及びます。ところが、大気中の異変が、深海に及ぶには時間がかかります。深海にも底生生物がいます。深海の生物の中には、独自の生態系をもっているものがいます。光には依存しない生き方をしているものです。光合成生物ではなく、湧水や熱水噴出孔のエネルギーや栄養を利用する、独自の代謝機能をもった生物を基礎にした生態系があります。

 そのよう特異な生態系にまで影響を及ぼすためには、深海底に及ぶ大きな異変でなければなりません。長期間影響を継続するような異変か、短期間であっても、非常に大きな異変で深海にまで及ぶもの(海水を多くを一旦なくす、大規模にかき混ぜるなど)でなければなりません。

 さて、この報告では、10回の陸上生物の大絶滅のうち、8回は海洋生物の大絶滅と同時に起こっていることを指摘しています。さらに、その時期には、いずれもLIPs(巨大火成岩区)が起こっています。巨大火山活動と、なんらかの因果関係がありそうです。つまり、大絶滅の多くは、海洋と陸上の両方に影響を及ぼしているものになります。

 そして、そこに周期性が見つかったのです。絶滅の周期性の意味するものは何でしょうか。次回としましょう。


・学位記授与式・

先週、大学で学位記授与式がおこなわれました。

ただし、コロナ禍なので、対策をとった上で行われました。

大人数を集めることができないので、

学長の挨拶もビデオでした。

授与式は、学科ごとに、少人数で大きな教室での挙行でした。

保護者の方も出席できない状態でした。

4年生とは、遠隔授業でパソコン越しでの

対話しかしていませんで、

久しぶりの対面となりました。

学位記授与式での対面が、最後のものになりました。

昨年と比べれば少しはましですが、残念ですね。


・新キャンパス・

我が大学は、都市部に、新キャンパスができ、4月から動きだします。

春から再編、新設された学部が、

次の年にはもう一つ学部が移転します。

現在、在学生への対応が始まっています。

準備は整いつつあります。

一度見に行ってきました。

新しい施設の1、2階のフロアーは

4月から市民に開放されます。

2021年3月18日木曜日

5_177 周期的大量絶滅 2:周期性の検出

 絶滅に周期性が見つかるという説は、以前からありました。数学的手法を使えば、周期性は導き出せます。その信頼度はさまざまなので注意が必要です。それより周期性の原因究明が重要です。


 前回までは、大絶滅の概要を見てきました。K-Pg境界(白亜紀末と新生代古第三紀の境界)で起こった大絶滅は、隕石の衝突が原因でしたが、それ以外のものは隕石の衝突が原因になっていませんでした。大絶滅の時期に対応するクレーターが見つかっていても、十分な証拠にはなっていませんでした。

 最近、大絶滅に周期性が見つかったという報告がありました。ランピーノたち(Rampino、CaldeiraとZhu)の共同研究で、2020年12月に報告されました。そのタイトルは、

 A 27.5-My underlying periodicity detected in extinction episodes of non-marine tetrapods

というものでした。訳すと「非海洋性テトラポッドの絶滅事件において検出された2750万年の潜在的な周期性」となります。この中で、「周期性」はわかると思いますが、「非海洋性」という不思議な言葉を使っていますが、陸上という意味です。また、「テトラポッド」とは海に置かれるテトラポットの意味もあるのですが、ここでは陸上生物の両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類の4つの分類群を表すための比喩として用いられています。つまり、大絶滅の周期性が陸上生物群でも見つかったという報告になります。

 2億6000万年前以降をみると、生物の分類群の属や科のレベルで海洋生物での大絶滅は、2670万から2730万年の周期(もっとも最適な値2750万年)があるという報告があります。ただし、これは海洋生物であり、陸上生物では明瞭ではありませんでした。その点を、この論文では、陸上生物で周期性が見えてきたというものです。

 周期性の発見は、まず10個の陸上生物の絶滅事件を取り上げ、そこから周期性を検出する数学的手法として、フーリエ解析をしています。フーリエ解析とは、周期性がありそうな現象に対して、周期関数(三角関数)を近似させていく方法です。三角関数の項には、それぞれに周期性とその強度という離散的な値に変換できます。

 その周期の値を、もとの時系列データとどの程度一致しているかを、統計的に検討した結果、明瞭な(99%の信頼度)2750万年の周期性があることがわかりました。

 10個の陸上生物の絶滅の時代のうち、8個で海洋生物の絶滅事件も同時に起こしています。この8つには、LIPsも起こっており、それが大絶滅を引き起こしている原因になりそうです。

 ところが、8つのうち3つの大絶滅は、直径100km以上の衝突クレーターを形成するような事件と対応しています。つまり衝突事件の3つは、2億6000万年前以降の大絶滅事件と対応しているということです。

 大絶滅と対応したクレーターの存在と、それらが大絶滅の周期性の解析からえられた2750万年周期と関係していることから、大絶滅にも周期性があったと推定します。では、その周期性が何を意味しているのでしょうか。次回としましょう。


・学位授与式・

今週末に、大学で学位授与式(卒業式)が

1年ぶりに開催されます。

ただし、短時間で三密をさけての開催となります。

保護者は出席できず、リモートで見学するだけです。

最後に学生との歓談は、短時間ですが取られるようです。

開催できるありがたさがの方が先に立ってますね。


・フーリエ解析・

周期性があれば、グラフにすれば目で見えます。

ただし、スケールのとり方で、

周期性が見えやすくなったり、見えにくくなったりします。

その点、フーリエ解析は便利で、

データさえあれば、周期性を定量値として計算できます。

その値を、現実のデータに当てはめれば検証できるはずです。

フーリエ解析の問題は、解析の手段なので

現実に周期性のない現象でも、

計算上、周期性が算出されてしまいます。

でも、闇雲な適用には要注意ですね。


2021年3月11日木曜日

5_176 周期的な大絶滅 1:べき乗則

 大絶滅の多くは、地球内部に原因がある考えられています。大絶滅に周期性があるという考えは、以前からありましたが、あまり注目されていませんでした。最近、周期性を主張する報告があり、再び注目されてきました。


 天文現象が生物の大絶滅を起こすということは、今や、多くの人が知っています。中生代の末、恐竜が大絶滅した事件が、科学番組や映画などで紹介されたことで、知れ渡っているためでしょう。

 恐竜の大絶滅は、直径10kmほどの隕石がユカタン半島に落下したことで起こったと考えられています。その衝突で、すべての生物が一気に絶滅したのではなく、衝突を契機にして、さまざまな現象が連鎖して起こったためだと考えられています。衝突に関連する現象は、いろいろ見つかっていますが、時系列に沿った現象で、それぞれの連鎖の状況や、因果関係の解明など、まだ不明な点も多々あります。

 衝突は、隕石のサイズを考えなければ、多数起こっています。落下する隕石のサイズは、大きいものほど頻度は少なく、小さいものほど多くなっています。このような規則性は、「べき乗則」と呼ばれるもので、多くの自然現象で見つかっています。

 隕石の衝突が、べき乗則にそって起こっているのであれば、10kmサイズの衝突は、地球史上、中生代末だけの出来事だったとは考えにくいものになります。他の時代の大絶滅が起こった時期にも、隕石の衝突が起こっていたのではないでしょうか。その証拠を探すとどうなるでしょうか。

 大絶滅の原因を隕石衝突と考え、その時代対応した巨大なクレーター(直径100km以上)を挙げている研究もあります。しかし、多くの大絶滅では、隕石の衝突の痕跡は、必ずしも見つかっておらず、地球内で起こる現象が原因だとされいます。

 例えば、古生代と中生代の境界で起こった大絶滅は、生物史上最大ものだったと考えられています。その大絶滅の原因は、巨大な大陸(超大陸と呼ばれる)が、分裂していくときに起こった大規模な火山活動(巨大火成岩区、Large igneous provinces、LIPsと略されています)が原因であったと考えられています。

 LIPsとは、マントルから上昇してきた温かい物質が起こしていると考えられています。マントルプルームと呼ばれるもので、マントル対流の現れたものです。そのため長期に渡って火成活動が起こっている。現在では、南太平洋とアフリカ大陸に上昇してきています。

 マントル対流が定常的に起こっているはずなので、何度もLIPsの活動が起こっていることになります。現在活動しているLIPsだけでなく、過去に活動したものもわかっています。そのため、大絶滅に関係したLIPsが対応させられており、それを原因とするのが現在の考え方となっています。ただし、その火山現象からどのような連鎖が起こったかは、まだよく変わっていませんが。


・LIPs・

現在のマントルプルームによって、

起こっているLIPsは、アフリカ大陸ものは、

アフリカの大地溝帯を形成した火成活動です。

南太平洋のものは、海洋の多数の火山や

ハワイの火山列を生んだ活動だと考えられています。

過去の海底でのLIPsは、1億年前までならば

海底に残っていることがあります。

それより古いものは、海溝に沈み込んでいいます。

大陸では、それらの痕跡が残っています。

ですから、全てを把握することはできませんが、

なんらかの手がかりは、残されています。


・面接授業・

今週は、面接授業で、教育実習の事前指導をおこなっています。

ひさしぶり対面での授業となります。

通学の混雑対策、換気対策、60分未満の授業時間など、

あれやこれやの三密対策をしていきます。

以前の授業より、たくさんの時間が費やさなけばなりませんが

Withコロナとして、対処していく必要があります。

大変ですが、大学で決めたルールですので従います。

それでも面接授業が戻ってきたので、楽しみです。

2021年3月4日木曜日

6_182 千葉の新鉱物 3:房総石

いよいよ房総石の紹介です。房総石は千葉石の中に混じっていました。この新鉱物の発見は、メンタンハイドレートやシリカクレスレートの研究だけでなく、天然ガスの起源や付加体の実態解明などの新しい展開を予感させます。


 「房総石」は、2011年の千葉石の研究の過程で見つかったそうです。千葉石を詳しく調べていくと、量は少ないですが、異なった結晶構造をもっている鉱物があることがわかってきました。それが新鉱物であることが明らかになり、2020年に「房総石」と名付けられて報告されました。

 前回紹介した千葉石は、メタンハイドレートに見つかっている3つの構造(I型、II型、H型)のうち、II型の構造をもっていました。調べていくと、II型の構造の中に、H型の結晶があることがわかりました。この構造をもったシリカクラスレートは、これまで見つかっていませんでしたので、新鉱物になります。

 房総石の「カゴ」のサイズは、千葉石よりもっと大きいものでした。「カゴ」が大きいと、より大きな分子が入ることになります。千葉石では入っていたのがメタンでしたが、房総石にはメタン(CH4)も入ることができます。より大きな分子として、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)などのガス分子がありますが、結晶構造の解析から、さらに大きな分子も入っている可能性もあることがわかっていました。

 一般に天然ガスでは、温度や圧力が上がってくると、分子が分解されてサイズが小さくなっていきます。千葉石の中から見つかってのですから、房総石は本来なら分解されてしまう、より高温高圧の条件に置かれていたはずです。しかし、分解を免れた状態の鉱物が残ったと考えられます。報告者は、房総石を天然ガスの「タイムカプセル」と呼んでいます。

 これまで、シリカのクラスレート鉱物として、I型の「メラノフロジャイト」が見つかっていました。そして、II型の千葉石が2011年に見つかりました。今回、H型の新鉱物「房総石」が見つかったことになります。これらの発見によって、シリカクラスレート鉱物も、メタンハイドレートの結晶構造と同様の多様性があることが明らかになりました。

 天然ガスは、本来地層の間にガスとして溜まっています。しかし、天然ガスが、海底に上昇してきたとき、冷たい海水に接触することで、メタンハイドレートができます。メタンハイドレートが、長く地層中で地下水にさらされていると、水の分子がシリカに置き換わっていきます。つまり、シリカクラスレート鉱物になっていく可能性があります。地層中の石英脈がよく見つかります。もしかすると、その石英脈の中に、千葉石や房総石が含まれているのではないと考えられます。

 今後そのような展開が起こると、多くのところで、千葉石や房総石が見つかってくるかもしれませんね。


・タイムカプセル・

天然ガスの「タイムカプセル」という意味は、

房総石のカゴ中に、天然ガスの成分が残されているためです。

房総石の量は少ないのですが、

「あった」という証拠を提示したことが重要になります。

存在の証明がされれば、

そこから推測される仮説の説得力もでてきます。

今回見つかった地層に似た環境、

つまり付加体中の過去の冷湧水の痕跡には

石英脈が多数があります。

その中には、今回報告されたようなシリカクラスレートが

形成されているのかもしれません。

問題は、鉱物の中のガスの種類を

それも微量のものを、どう検出していくかでしょうか。

これは、なかなか難しいでしょうね。


・アイディアが・

新しい発見があると、その応用が可能になります。

発見のための場所や方法などがわかったことになります。

さらに、これまで探査されなかったところかも

新たに見つかるかもしれません。

その方法論は、他の鉱物などの探査に

利用できるかもしれません。

あとは探索のための技術的な困難さでしょうか。

普及した装置であればいいのですが

特別な装置なら、それを利用できる人だけが

調べることができることになります。

しかし、重要なのは、どんなアイディアで

調査研究を進めていくでしょう。

その場で、なぜシリカクラスレートを探すのか

という点が重要でしょうね。

2021年2月25日木曜日

6_181 千葉の新鉱物 2:千葉石

 千葉で最初に見つかった新鉱物の「千葉石」の紹介をします。2011年のことでした。千葉石は、不思議な特徴をもった鉱物で、新エネルギーとして注目されているメタンハイドレートと関係があります。


 千葉石(chibaite)は、2011年2月15日に報告され、新鉱物として認められました。もとは、アマチュアの鉱物研究者が発見していたものですが、実際の新鉱物と認定されるのに不十分でした。最大長径が5mmほどの結晶が見つかっていました。目で見えるサイズの結晶だったのですが、変質を受けて別の鉱物(石英)に変わっていました(仮晶といいます)。仮晶だったため、鉱物学的データを出すことができませんでした。その後、別のアマチュア研究者が、変質していない結晶を発見しました。その結晶を研究者が調べることができ、新鉱物であることが確認されました。

 千葉石は、前期中新世(約1800万年前)の保田(ほた)層群の堆積岩の中から見つかりました。保田層群は、大陸斜面でメタンなどの成分が多く含まれていた冷水が湧いているところでできた推定されています。メタンなどを含む冷湧水があったことは、深海の湧水地で特徴的にみられるシロウリガイ類などの化石が見つかっていること、千葉石にはメタンやくエタン、プロパン、イソブタンを含んでいることからわかります。

 千葉石の特徴は、二酸化珪素(SiO2、シリカといいます)が「カゴ」状の構造をもっているところです。「カゴ」の中に、メタンなどのガス分子がひとつ入っています。ひとつのカゴのサイズは、1nm(ナノメール、10億分の1メートル)程度です。

 このようなシリカの構造を「クラスレート(clathrate)」といます。クラスレートは、包摂化合物(包接とも書かれます)という術語があてられています。化合物(この場合はシリカ)が、立体的に三次元の網目構造をつくっており、その中に他の分子や原子が閉じこめている化合物をいいます。

 シリカクラスレートの構造は、メタンハイドレートと似たものでした。メタンハイドレートとは、水の分子に囲まれたメタン(包接水和物ともいいます)が固体になったものです。メタンハイドレートには3つの構造のタイプがあり、I型(等軸晶系)、II型(等軸晶系)、そしてH型(六方晶系)と呼ばれています。

 メタンの起源は、海底堆積物中の微生物によってつくられるものと、有機物の熱による分解によるものがあります。メタンハイドレートのI型は微生物起源で、II型とH型は熱分解によると考えられています。

 メタンは、石油や石炭より二酸化炭素の排出量が半分ほどしかありません。また、メタンハイドレートとして、海底に大量に埋蔵されていることがわかってきて、新エネルギーとして期待されています。

 さて、これまでのシリカクラスレート鉱物は「メラノフロジャイト」と呼ばれるものが見つかっており、I型の結晶構造でした。千葉石は、II型になっています。ですから、通常のI型のメタンハイドレートより、もっと深い堆積場で熱分解作用が起こる条件が想定されます。今後、千葉石とメタンハイドレートとの関係も検討されていくと考えられます。

 次回は、2つ目の結晶の房総石の説明です。


・報道・

新鉱物の発見は、稀なことではなく、

年に100個ずつほど見つかっています。

国内でも、年に1、2個は発見されています。

このような情報は、新鉱物は学界内の出来事で、

ニュースにはなかなかなりません。

一般の市民が知ることがありません。

千葉の新鉱物は首都圏に近いところの発見で、

地層名のチバニアンでも有名になったため

報道されたのでしょうね。

市民向けのニュースの影響は大きいですね。

メディアも横並びに同じものだけでなく、

もう少し多様な報道をしてもらいたいですね。


・三寒四温・

2月も、いよいよ終わります。

三寒四温になっているようで、

寒暖が繰り返されています。

今年は積雪は少なかったようです。

3月になったら、コロナ禍も

少しは治まっているでしょうか。

長い自粛をしてきたのですが、

春とともに自粛も少しは改善すればと思います。

2021年2月18日木曜日

6_180 千葉の新鉱物 1:新鉱物の承認

 千葉から、2020年12月に新鉱物「房総石」が発見されました。これまで、千葉はあまり新鉱物は見つかっていなかったのですが、2011年の「千葉石」に続いて2つ目となりました。


 千葉から新鉱物が発見されました。2020年12月に、房総石(ぼうそうせき Bosoite ボソイトと発音)と命名されました。千葉では、2011年に千葉石(ちばせき chibaite)という鉱物が見つかっていて、それに続いての新鉱物の発見でした。

 新鉱物の説明の前に、新鉱物とは、どのように認定されるのかを、見ていきましょう。

 これまでに知られていない鉱物であることを示すために、記載データを揃える必要があります。しかし、記載データが揃っただけではだめで、その鉱物が新鉱物と承認されるためには、日本の学会の新鉱物に関する委員会(新鉱物・命名・分類委員会)で承認を受けてから、国際的な新鉱物に関する委員会(国際鉱物学連合(IMA)の新鉱物・命名・分類委員会)に申請書を提出して、審議を経た後、承認を受けるという2段階になっています。最後のIMAの委員会では、記載データだけでなく、国代表の委員の投票による審議となります。なぜ、投票をするのでしょうか。科学的事項なのに、投票による決定というのは、少々奇異な気がします。

 それは、新鉱物の記載データには、定量値が含まれているのですが、その定量値が既存の鉱物と微妙な違いしかない場合や、技術的に厳密に決定できない場合などがあるためです。

 例えば、今回の房総石の化学組成は、SiO2の含有量が86.38重量%(wt%と書きます)ですが、測定された範囲は、85.10~87.36wt%の範囲があります。同様に、Al2O3は1.63wt%(1.14~1.96wt%)、Na2Oは0.34(0.32~0.37wt%)、そしてCH4は11.65wt%で、合計が100wt%となっています。ただし、メタンは直接測定できないので、他の測定できる成分を決めてから、足りない量をメタンとみなして組成を決定しています。技術的な限界があることなので、この方法で推定することは、学術方法として認められています。

 房総石の構造式は、Na0.01 (Si0.98 Al0.02)1 O2 0.5O・CH4となっています。本来は、元素の比率は、元素の右下に小文字(下付き文字)で表記されます。この鉱物の一単位の結晶の元素の比率は、Na(ナトリウム)が0.01、Si(ケイ素)が0.98、Al(アルミニウム)が0.02で、SiとAlを合わせて1.00となり、O(酸素)が2、CH4(メタン)が0.5、という比率になっています。ただし、その元素の比率は、測定できない元素でもあるO(酸素)を2として計算した値としています。

 このような化学組成から、鉱物の結晶を構成している元素の比率(鉱物構造式と呼ばれます)が推定されます。元素を実測した数値には幅があり、理想的な構造式にも不正確さができます。

 このような不確かさがあるため、新鉱物としていいかどうかが、採決で決められることになっています。


・地震・

2月13日23時ころ大きな地震がありました。

私は、すでに寝ていたのですが、

揺れには気づき目が覚めめました。

私の地域では震度が3程度で

あまり大きな揺れではありませんでした。

気象庁の2011年の3.11の余震とのことです。

この地震による津波はなかったのですが、

被害が大きいようなので心配です。

今のとこと、数名の東北在住の友人には

被害はないとのことです。


・春を待つ・

北海道は、急激に暖かい日がきて、

一気に雪解けが進みました。

この時期は、春と冬がせめぎ合いをはじめるときです。

北国の人間には、春の待ち遠しさもあるのですが、

ベチョベチョの雪解けの状態の大変さが気になります。

ですから、春は待ち遠しいのですが、

嫌な季節の到来でもあります。

また16日から荒れて雪なりそうです。

(なおこのメールは2/15に配信しています)

2021年2月11日木曜日

2_191 恐竜の新知見 6:ベロキラプトル

 ベロキラプトルは、多くの人が名前を知っている恐竜ではないでしょうか。そのイメージは、映画の影響を受けているようです。化石での研究が進み、実態が明らかになってくると、イメージとはなかり違うことがわかってきました。


 ベロキラプトルは、映画「ジュラシックパーク」で一躍有名でになり、多くの人が知っている恐竜ではないでしょうか。白亜紀後期に現在の東アジアに生息していました。当時の東アジアは、他の大陸とは別れていたと考えられているので、独自の進化をしていった恐竜と考えられています。

 オオカミほどの大きさで、体重が45kgほどで、ほっそりとした体型で、恐竜としては小型になります。獣脚類(ティラノサウルスも属しているグループ)で、頭蓋骨は大きく、多数の歯がありました。肉食に適した歯で、肉を食いちぎっていたのでしょう。後肢に大きな鉤爪(かぎづめ)がありました。鉤爪は、狩りしたり、獲物をつかむのに適していました。後ろ足は、すねが長く、筋肉も発達していたようで、速く走ることができたと推定されています。

 そのような化石の特徴から、ベロキラプトルは「俊敏な略奪者」という意味の学名が与えられました。映画では、群れで狩りをする様子が描かれていましたが、科学的根拠はありませんでした。

 2020年8月には、デイノニクス(ベロキラプトルの仲間)の歯の化石に関する研究が報告されました。大人と子どもの歯を調べることで、食物が年齢とともに変わっていたことがわかりました。群れで暮らしていたとすると、大人も子どもも同じ食べ物を摂るので、化石からの情報とは異なります。群れで狩りをすることはなかったと、考えられます。そこから、同じグループに属するベロキラプトルも、単独で狩りをしていたと推定されています。

 ベロキラプトルの頭は、鳥に似ているように見えますし、叉骨も存在しました。そしてなにより、羽毛が生えていたと考えられます。2007年には、前腕の骨にコブが並んている化石を発見されました。この骨のコブは、鳥類に見られる特徴で、羽を固定する飛羽瘤と呼ばれています。しかし、ベロキラプトルの体型は、前足が短く飛行できたとは考えられず、叉骨も翼を支えられるような形ではありません。ですから、地上生活をしていたと考えられます。

 2011年には、ベロキラプトルの頭骨には、大きな強膜輪(きょうまくりん)が見つかっています。眼球を押さえるための組織として眼球の周囲に強膜板があり、それを支えるために丸く薄い強膜輪と呼ばれる骨があります。強膜輪が大きいということでは、目が大きかったとことがわかります。そのため、ベロキラプトルは、夜行性ではなかったかと考えられます。さらに匂いを感じる嗅球という組織があるのですが、それを支える頭骨のくぼみも大きく、形も、匂いを感じる能力が優れていたと推定されています。

 恐竜は、化石しか残されていない生物種ですが、それらを詳しく調べることで、いろいろな実態がわかってきました。今後も、研究が進むことで、新たな恐竜像が生まれてくるでしょう。


・建国記念の日・

2月11日は「建国記念の日」です。

玄関に国旗を掲揚している家もあります。

法律で定められた祝日なので、

国ができた日という意味に思えまが、そうではありません。

建国されたということを記念するという意味だそうです。

そのため、「の」が入っているとか。

かつては「紀元節」と呼ばれていました。

古事記や日本書紀で、神武天皇の即位日が

この日ということで定められました。

今日は祝日ですから、

たまにはそんな古(いにしえ)のことに

考えを馳せるのもいいかもしれませんね。


・集中対策期間・

北海道は緊急事態宣言は出ていませんが、

2月15日まで「集中対策期間」になっています。

現在、感染者は減少していますが、

感染地域への不要不急は自粛するよう要請されています。

大学もレベル2の状態ですが、後期の授業が終わったのですが

面接授業は全面禁止の状態です。

ただし、資格などで面接が必要な授業では

申請して許可をもらって実施することになっています。

来年度の授業のシラバスを書いているところですが、

一部面接授業可能のレベル1を想定して執筆をしています。

ただし、急なレベル2への切り替えも

考えておくように指示されています。

2021年2月4日木曜日

2_190 恐竜の新知見 5:幼形進化

 恐竜から鳥への進化の難点は、両者のサイズの違いでした。その困難さ克服するための仮説が、幼形進化という考えでした。幼形進化は、生物進化では、時々起こることが知られています。


 鳥にはクチバシがあります。恐竜には一般には見られない特徴です。しかし、恐竜の化石では、前に口が伸びているものや、クチバシを持ったものも見つかってきました。ここまで述べてきた鳥と恐竜の違いは、いろいろな化石の発見で、それほどないことがわかってきました。ただし、両者の大きさの違いだけが、問題としてのこっていました。

 前回、鳥類へは、小さくなった恐竜から進化してきたという説を紹介しました。しかし、小さな恐竜でも、現在の鳥と比べると、かなり大きなもので、そこからの進化は困難でした。

 恐竜は卵から生まれ、卵は恐竜よりかなり小さなものです。そして、その卵から生まれたばかりの恐竜は、卵サイズしかないはずです。そこから、「幼形進化」という考えを取り入れることで、サイズの問題を説明しようとする仮説がでてきました。

 幼形進化とは、ある生物種で、祖先の幼い時にみられる特徴が、成長したときにも現れることをいいます。動物には時々みられるものです。幼形進化は、ネオテニー(幼形成熟や幼態成熟とも呼ばれます)という現象がその典型とされています。幼体の特徴を残しながら、性的な発達が進み、成体となることです。

 例としては、ウパールーパーが有名です。ウーパールーパーはサンショウウオの仲間で、両生類です。両生類は、子ども(幼体)ときは、水中でエラ呼吸をして生活しています。幼体の時に持っているエラを、大人(成体)になっても残っているのがウーパールーパーです。1920年には、人類もネオテニーだという仮説も出されました。チンパンジーの幼形がヒトに似ている点が多いことことから、サルの幼形をもったまま、性的に成熟したということです。

 鳥の頭をみると、恐竜と比べて、頭が丸く、目が大きく、口も小さくなっています。このような特徴は、恐竜の幼体に見られる特徴でもあります。恐竜から鳥への進化、ネオテニーがあったとすれば、鳥の特徴も説明できます。

 実は、恐竜にも幼形の特徴をもったものがいます。小型の恐竜、ベロキラプトルです。ただし、それが鳥の祖先ではないようです。映画の「ジュラシックパーク」で群れで狩りをしていたのが、恐ろしいベロキラプトルでした。最近、ベロキラプトルの認識が、化石の研究から変わってきました。続きは、次回としましょう。


・ジュラシックワールド・

映画「ジュラシックパーク」は続編が、何作もつくられ

全5作になっています。

第4作まで見ていたのですが、

第5作目は2018年に作成されたもので

「ジュラシック・ワールド/炎の王国」というものです。

見ていませんでしたので、このエッセイを書いたことで

興味がわき、先日、見ました。

なかなか面白かったです。

これまでのシリーズでは、

恐竜に対する科学の進歩があるため、

CGでの表現や動きも変わってきてきました。

きっちりと科学的考証をして作成されていますね。

そして、過去のシリーズを彷彿とさせる部分が

各所に盛り込まれていました


・自粛要請・

さて2月になりました。

全国的にCOVID-19の感染はなかなかおさまりそうにありません。

緊急事態宣言の出されている地域では、

その延長も考えられているようです。

大学も後期途中からずっと遠隔授業になったまま

後期が終わりました。

北海道には緊急事態宣言は出されていませんが、

道内独自に、設定してる自粛状態が

11月からずっと継続しています。

札幌、小樽では複数のクラスターが起こっており

より上のレベルになっています。

全道的な自粛要請は2月15日までとなっています。

現在の状況を見ると、その期間の延長もありそうです。

2021年1月28日木曜日

2_189 恐竜の新知見 4:恐竜から鳥類へ

新しい化石のが発見されると、新たな仮説が生まれてくることがあります。仮説の多くは、検証が難しく、検証できないものもあります。そんなとき、どう対処すればいいのでしょうか。


 進化に関する考え方として、ある時、突然大きな変化が起こるというもの(突然変異)と、小さいな変化を繰り返して、やがては大きな変化になるというものがあります。いずれも、遺伝子の配列変化が起こる必要があります。大きな突然変異(例えば、前足が羽に変わるなど)は、一度の変化が起こればいいわけです。しかし、その突然変異を子孫に残せるかという問題があります。

 一方、小さな変化を繰り返して進化していくものは、少しの変化でよく、その変化がある方向に向かうために、自然淘汰(自然選択)の力(飛べることが有利になる)が強く働けばよくなります。ただし、自然淘汰によって遺伝子の変異が、一定の目的に向かっていく必要があります。そんな都合のいい変化がおこるかという問題があります。

 鳥類は、羽毛や翼だけではなく、比較的体のサイズが小さいことも特徴になります。かつては、鳥類への進化は、大きな突然変異が起こったという考えをとっていました。その時は、100kgもある恐竜類から、スズメほどの鳥類に変化したと考えられていました。どう考えても、乱暴な仮説なので、「希望的な怪物理論(Hopeful Monsters)」と呼ばれていました。支持があまりない仮説でした。

 2019年に、コエルロサウルス類(ジュラ紀中期)の化石の研究から、短期間に恐竜から鳥に進化したわけではないという仮説がでてきました。その仮説では、二足歩行、羽毛、叉骨(さこつ、鎖骨と同じ読みです)、そして翼の獲得という順で進化してきたとするものです。叉骨とは、聞き慣れないものですが、鳥が翼で飛ぶために必要な器官です。鳥類と一部の恐竜にだけ見られる二股状の骨で、鎖骨とその間の骨が癒合したものです。

 しかし、この仮説の問題は、飛ぶため、鳥になるため、という目的があって急激に進化してきたように見える点です。自然淘汰によってそんなに都合よく、飛ぶという目的を達成するように進化が向かうのでしょうか。少々、無理があるように見えます。

 2014年の報告から、始祖鳥の化石より5000万年ほど前の時代から、恐竜が小さくなっていたという仮説が示されました。現在の鳥類は比較的小さいものです。それは飛ぶには、大きなこと、重いことがハンディになるためでしょう。ですから、恐竜が小さくなった時期に、鳥への進化が起これば、有利な条件となります。

 現在では、多くの化石の研究から、二足歩行していた獣脚類の仲間から進化したと考えられています。もっとも鳥類と近縁の獣脚類の体重は、40~200kgにもなり、最小として40kgはかなり重いと考えられています。また、大きな鼻や歯もあり、頭も丸くなく、鳥らしくありませんでした。

 大きな恐竜から鳥へ進化していたような証拠、また進化にはなんらかの方向性を示す条件も必要になるようです。このような課題に対する解決策として、「幼形進化」という考えがあります。その説明は次回としましょう。


・断続平衡説・

化石では、突然、それまでの系統とは

全く異なった種類の化石が見つかることがよくあります。

多くの系統で、化石からは、急激に変化(進化)する期間と

ほとんど変化しない期間があるように見えます。

そのような状況を断続平衡説と呼んでいます。

私が尊敬してやまない故S. J.グールドと

教え子で共同研究者のエルドリッジが唱えた説です。

断続平衡説を前提とすると、進化における大きな変化は、

突然変異によってできたように見えます。

化石から過去を調べるということは、

化石として残りうるものしか見ていないこと

進化の一部しかみていないこと、

などを心しておくことが重要です。


・大学入試・

大学は、いよいよ後期の講義が終わり

本来なら定期試験の時期となります。

講義によっては、リモートでの

試験を実施されるものもあるのでしょう。

多くは、学期中に提示した課題やレポート、

制作したものなどで評価します。

大学は、これからは入試のシーズンとなります。

2021年1月21日木曜日

2_188 恐竜の新知見 3:恐竜と鳥類

 白亜紀末の隕石の衝突によって、恐竜の仲間の大部分は絶滅しました。しかし、鳥類は、大絶滅を生き延びてきました。恐竜の新知見の2つ目の話題は、鳥類への進化についてです。


 近年、恐竜の化石の発見に伴って新しい知見も増えてきたので、恐竜類にも多様性が大きいことがわかってきました。恐竜と鳥類の関係を見ていきましょう。

 鳥類は、爬虫類の祖先(恐竜の仲間)から進化してきたと考えられます。しかし、現在生きている爬虫類と比べて、翼をもっていることが一番の違いですが、他にも羽毛を持ち、恒温性を持っていることなども、大きな違いとなります。しかし、新しい化石の発見で、そのような違いがあまりないことがわかってきました。

 以前から、恐竜の仲間には翼竜の化石が見つかっており、空を飛ぶ恐竜がいたことは知られていました。ただし、翼竜の翼は、羽毛の生えた羽ではなく、膜でした。膜の翼で飛ぶ恐竜だと考えられていました。ですから、鳥類とは、直接、結びつかないと見なされていました。哺乳類でも空を飛べるコウモリと位置づけのようなものです。収斂進化と呼ばれるものです。

 他にも始祖鳥と呼ばれる化石が見つかっていました。羽毛の生えた羽があり、飛ぶ能力をもっていたと考えられました。名前のように、鳥類の特徴をもっていたので、鳥の祖先に当たると考えられていましたが、始祖鳥と鳥類の関係については、多くの議論もありました。羽が偽物説まででてきました。

 新しい恐竜化石の発見があったり、研究に大きな進展があると、恐竜の認識が大きく変わることがあります。1990年代には、恐竜化石から、羽毛の生えているものが発見されました。恐竜にも毛が生えていたことも、化石の証拠からわかってきました。恐竜に羽毛や毛があったことは、確かになってきました。

 恐竜に羽毛や毛があるということは、体を寒さをから守る必要があるということです。そして寒いとき、寒冷地でも通常の動きができたということになります。恐竜には恒温性をもったタイプもいたのではないかということが、いくつかの根拠からわかってきました。これは現在生きている爬虫類にはみられない特徴でした。

 例えば、極地(北極圏)での恐竜の化石の発見があります。白亜紀は温かい時代であったとされています。しかし、極地では冬になると降雪もあります。しかしなんといっても、冬には一日、太陽が登らない「極夜」となります。冬は、変温動物にとては、非常に厳しい環境となります。もちろん長期間、氷点下になることもあるでしょう。そこに恐竜が定住していて、子育てをしていたことが、化石からわかってきました。変温性だと、極地で越冬をすることができないので、傍証ですが、恒温性があったと推定されています。

 恐竜の仲間にも羽毛や翼、恒温性があったとすれば、恐竜と鳥類はそんなにかけ離れたグループではなさそうです。絶滅前から、鳥類の仲間がいたとすれば、絶滅前に恐竜から鳥類が進化していたことになります。では、どのように進化したのでしょうか。次回としましょう。


・共通テスト・

センター試験は長年続けられてきたのですが、

問題点もあり、いろいろ議論されました。

英語の業者試験の導入や記述式などの導入も議論されましたが、

これまでのセンター試験の形式を踏襲すること落ち着きました。

問うべき能力を変更しておこなわれました。

そんな、はじめての大学入学共通テストも終わりました。

我が大学も会場になっていて、全教職員で対応しました。

コロナ対策でいろいろ配慮がありましたが、

大きなトラブルもなく、終えることができました。

稚内の会場では、初日が吹雪で実施ができなかったことや

マスクの着用でのトラブルもニュースになりました。

当事者は大変だったこととだと思いますが、

とりあえずは、初回が終わりました。


・緊急事態宣言・

共通テストが終わりましたが、

各大学での入試が本格的にはじまります。

COVID-19の方も猛威を奮っています。

11の都府県で2月7日まで緊急事態宣言が発出されました。

北海道も、独自に集中対策期間として2月15日まで対応しています。

出口のみえない状況ですが、2月末ころから、

日本でもワクチンの接種がはじまりそうですが、

市民にまわってくるのは、だいぶ先のようです。

多くの市民がワクチン接種をすれば、

市中感染がおさまる可能性が高くなります。

期待したいですが、どうなるでしょうかね。


2021年1月14日木曜日

2_187 恐竜の新知見 2:世界最小の恐竜卵

 恐竜の卵の化石は、あまり聞き慣れないのですが、丹波では多数の発見されてきました。多数の卵の化石があったということから、恐竜たちの営巣地ではないかと考えられます。丹波が世界でも有数の産地となりました。


 丹波では、丹波竜だけでなく、歯だけですが6種類の化石が発見されてきました。丹波には多数で多種の恐竜がいたところだと考えられます。また、大量に見つかってきた卵の殻の化石から、それを生んだ親の推定されていきました。

 卵のサイズの違いから、これまで見つかっていた恐竜と比べると、もっと小型の恐竜であることが推定されました。さらに、卵化石だけのサイズの違いから、6種類に分けられていました。そのうち1つのグループを、2015年に新属新種のニッポノウーリサス・ラモーサスと命名されました。他の卵化石は鳥脚類恐竜が1種と、獣脚類恐竜(鳥類を含見ます)3種類に分けられています。

 その後も卵化石の研究は続けられ、兵庫県立人と自然の博物館の田中康平さんたちの同研究で、2020年7月に論文が報告されました。タイトルは、

Exceptionally small theropod eggs from the Lower Cretaceous Ohyamashimo Formation of Tamba, Hyogo Prefecture, Japan

(兵庫県丹波市、下部白亜系篠山層群大山下層より発見された極めて小さな獣脚類恐竜の卵化石)

というものでした。「極めて小さい」と表記されていますが、ニュースでは、「世界最小の恐竜卵の化石」となっています。卵は、長さ4.5cm、幅2cmほど(ウズラの卵)の細長いものでした。

 なお、卵の化石は、直接、親の恐竜を知ることができないので、卵化石独自の分類がされています。しかし、この卵の殻の化石を詳しく調べることで、親は獣脚類ですが、2kg弱ほどの体重しかなく、鳥に似て羽毛を持ち、翼があったと推定されています。その結果、新種と判定され「ヒメウーリサス・ムラカミイ(Himeoolithus murakamii oogen. et oosp. nov.)」と命名されました。

 他の卵の化石から、新種1種が見つかっており「サブティリオリサス・ヒョウゴエンシス(Subtiliolithus hyogoensis oosp. nov.)」と命名されています。サブティリオリサスは、モンゴルとインドで見つかっていましたが、日本では初めての報告になります。

 大規模な発掘調査で、卵化石が4個、卵殻の化石約1300個を発見されています。この地からは多数の卵の殻が見つかっているため、丹波の篠山層群が堆積したところは、小型恐竜が群れとなり、卵を生む「営巣地」ではないかと考えられていました。

 卵や卵の殻では、すでに記載されていた4種の獣脚類の卵化石に加えて、新種の2種が加わったので、6種の卵の化石が見つかりました。スペインのテルエル州では5種の卵化石が見つかっていて最も多く産出しているところだったのですが、丹波が世界最多の発見地となりました。丹波は、恐竜の化石でも卵や卵から、あるいは営巣地としても、有数の産地となりました。

 小型の恐竜化石は小さいために、残りにくいのですが、卵は条件によっては残りやすい場合もあるようです。営巣地が見つかると、小型恐竜の研究や生態も明らかになってくるでしょう。


・学名・

生物の学名は、その特徴や関わった地域や人に

敬意を表してつけられることがあります。

ヒメウーリサス・ムラカミイは

ヒメが小さくかわいらしいこと、

ウーリサスは卵の石、

ムラカミは丹波竜発見者の村上茂さんに由来しています。

サブティリオリサス・ヒョウゴエンシスの

サブティリオリサスは繊細な卵の石という意味で、

ヒョウゴエンシスはもちろん兵庫県に由来しています。


・大学入学共通テスト・

今後、大学は入試期間に入ります。

今週末には、センター試験に変わり

新しくなった大学入学共通テストが実施されます。

これまでニュースで、記述式を取り入れるとしてはなくまり

業者によるリスニングもなくなりました。

形式的にはこれまでのセンター試験と似たもととなります。

ただし、これまでの知識や技能だけでなく

思考力や判断力、表現力を重視した出題形式になっています。

この方針を受けて、大学の一般入試の内容も変化してきます。

2021年1月7日木曜日

2_186 恐竜の新知見 1:丹波竜

 化石は、地層があるかぎり、次々と新しいものが見つかります。化石は有限ですが、地球は広大で長い時間を経ているので、今後も見つかってくるでしょう。昨年、報告された恐竜の話題を紹介していきます。


 まずは、2020年7月に、日本で発見された恐竜化石とそこから新しい知見が報告されたものを紹介していきます。日本でも、恐竜の化石が各地で見つかるようになり、恐竜化石が見つかりそうなところ、見つかったところは、今後も発掘を進めていくと、さらに見つかる可能性があります。

 そんな恐竜の産地として、兵庫県丹波市があります。この地域は、前期白亜紀の篠山層群があり、もともと生痕化石(巣穴)が見つかっているところでした。この地域で、2006年に化石愛好家の市民2名によって発見され、兵庫県立人と自然の博物館に持ち込まれたものが最初の発見になります。

 化石は、恐竜の肋骨の尾椎であることがわかりました。その結果を受けて、翌年から発掘調査が開始され、6回の発掘が繰り返され、同じ恐竜のものと思われる保存状態のよい歯、背骨、頭蓋骨の一部などを見つかりました。

 発見から、発掘と研究が進められてきました。2014年に新種の恐竜として報告され、丹波竜(タンバティタニス・アミキティアエ Tambatitanis amicitiae)と命名されました。丹波竜は、竜脚類でプティタノサウルスの仲間で新属新種とされました。10数mを越える全長の恐竜で、長い首と長い尾をもった獣脚類です。これまで発見されている獣脚類としては小型になりますが、日本で見つかった恐竜化石では最大級の大きさになります。

 発掘によって他にも恐竜類の歯化石、卵殻化石、カエル類やトカゲ類の小型脊椎動物化石など、多数が発見されています。それらに関して研究が進められ、順次報告されています。

 中でも特徴的なものとして、卵殻の化石が90個ほど発見されていました。いくつかに分類され、そのうち1つ(8枚)が、新属新種(卵の殻なので新卵属新卵種となる)とされ、2015年にニッポノウーリサス・ラモーサス(Nipponoolithus ramosus)と命名されました。他の卵殻には、別種の小型の恐竜だと考えられるもの含まれています。多くの卵殻の発見されることから、恐竜の営巣地ではなかったかと考えられます。

 そして昨年、新たな卵の種類が記載されました。それは次回としましょう。


・新年・

明けまして、おめでとうございます。

年末から正月にかけて、日本中が寒波に見舞われ、

寒い日々を過ごされたことと思います。

我が家は、COVID-19で家族も帰省もできませんした。

電話での新年の挨拶となりました。

夫婦で自宅にこもっていました。

連日、真冬日で酷寒の日が続いたので、

ストーブの火力をかなり強くして

過ごすしかありませんでした。

我が家も初詣と雪かきで少々外に出ましたが

三が日は自宅内で寒い正月を過ごしました。


・寒い研究室・

4日から大学の研究室に来ています。

授業は7日からはじまります。

それまでは、大学は最低限の暖房しかないので

大学全体が冷え切っています。

寒波のせいもあるので寒さも一段と厳しいいです。

耐えきれないほどの寒さではないのですが、

じっとしているので、厚着のみが頼りになります。

大学でないと仕事ができません。

講義がはじまるまでは、

寒さに耐えながら研究を進めることにします。