2011年2月24日木曜日

4_99 トゥファ1:西予2月

 西予市城川町古市を流れる中津川のさらに支流にトゥファと呼ばれる石があります。その石は、地下水から沈殿してできたものです。そのトゥファには、一年の気候変動の記録が残されていました。

 「トゥファ」というものをご存知でしょうか。英語では「tufa」と表記されます。西予市城川町古市の中津川には、「トゥファ」と呼ばれる石があります。
 トゥファは、石灰分をたくさん含んだ地下水から地表で炭酸カルシウムが沈殿した石です。一種の石灰華のようなものですが、温泉地帯のもととは区別されています。温泉地帯の石灰成分の沈殿物は、トラバーチン(travertine)とよばれています。
 石灰分を多く含んだ地下水は、石灰岩層があるところを流れているものです。石灰成分の多い地下水が、地表に出てきて大気にふれると、二酸化炭素が抜け出てきます(脱ガスといいます)。すると地下水の炭酸カルシウムは水にとけていることができず(過飽和といいます)、沈殿してきます。このようにしてできた石が、トゥファです。
 水の流れが滞りやすいとことでは、二酸化炭素が抜けやすくなります。そのようなところが、比較的水がたまるため、山間の沢では、段差のあるとこになります。そこに、トゥファはできやすくなり、トゥファのすぐ下は、小さな滝のようになります。
 トゥファの表面には、フィラメント状のシアノバクテリアが生育しています。シアノバクテリアもトゥファの形成に関係があります。
 城川には大きな石灰岩体がいくつかあり、鍾乳洞も見つかっています。石灰岩からの湧き水があればどこもでトゥファができるわけではなく、それなりの条件を満たす必要があるようです。西予市で、トゥファをつくる条件を満たしていたのは、中津川の支流だけでした。
 中津川のさらに小さな支流ですが、そこで1年以上にわたって、水質や水量などを調べた研究結果があります。広島大学の狩野彰宏さん(現在九州大学)たちが調べられたものですが、この研究から、トゥファの形成において、季節変化が起こっていることがわかりました。そしてそこから古気候解析まで話が進みます。その詳細は次回としましょう。

・継続こそ力・
狩野さんたちの研究は1999年と2000年に報告されています。
調査は、1997年3月から、1998年4月まで
ほぼ月に一度14回にわたってなされました。
その結果、ローカルの現象にとどまることなく、
グローバルな現象へと展開できることに気づかれました。
なかなか面白い研究だと思います。
その発想の原点が、1年以上に渡る
非常に地道で継続的な努力によっています。
継続こそ力となるのでしょうか。
成果の詳細は次回とします。

・紅梅・
先日春を思わせる陽気の快晴の日に、
富士山(とみすやま)へ行きました。
つつじが有名ですが、
先日は梅を見に行きました。
梅園もあり、紅梅がもう盛を過ぎていました。
白梅が一本だけで咲いていましたが、
ほかの木はまだでした。
山里の城川は梅はこれからですが、
いろいろ春が来ました。
残された一ヶ月は、時間が許す限り
出歩こうと思っています。

2011年2月17日木曜日

6_87 観測手法:ケプラー2

 太陽系外惑星を探す方法を紹介します。いくつかの方法があるのですが、ケプラー宇宙望遠鏡が採用した方法は、トランジット法というものです。目的を絞って、効率のよい方法、そして後の研究につながる成果を目指しているようです。

 ケプラー宇宙望遠鏡は、多数の恒星を定期的に観測して、惑星の発見と、その特徴を調べようというものです。ケプラー宇宙望遠鏡をもっててしても、それは、なかなか大変な作業なのです。なぜなら、惑星は光を出していないので、母星からの光の反射を検出しなければならないからです。ですから、母星の影響をどう取り除くかということが重要になります。
 いくつかの方法があります。一番わかりやすいのは、がんばって惑星の光を母星の光から分離して直接観測する方法です。
 2008年9月にこの方法で、やっと発見されました。これは地上の望遠鏡(ハワイのジェミニ天文台)を用いて、見つけられました。惑星ができたてで発光していたためと、母星との距離がはなれていたため、別の観測のときに、たまたま見つかったものです。ついで、ハッブル宇宙望遠鏡が2008年11月に別の惑星を発見しました。数ヶ月違いの差でした。
 コンピュータによる画像処理が進んできているので、昔の画像データを用いれば、新たな惑星の発見ができるかもしれません。
 間接的な方法として、母星の位置変化を観測するという方法があります。これは、大きな惑星が母星の周りを公転していると、母星の位置がぶれます。そのブレを観測する方法です。この方法でも2009年に、地上望遠鏡で発見されています。
 母星の位置変化を、光の波長変化(視線速度法とかドプラー偏移法と呼ばれています)で見つけようというものです。現在、一番採用されている方法です。そしてこの方法で、たくさんの惑星が見つけられています。
 ケプラー宇宙望遠鏡は、トランジット法を用います。トランジット法は、上で述べた方法とは違うものです。惑星が母星の前を通過するとき、明るさの変化があります。その変化を観測しようというものです。この方法は、惑星が母星の前を通過するときしか使えないこと、惑星の公転面が地球から並行でなければならない、などの欠点があります。
 ケプラー宇宙望遠鏡は、この欠点を、大量の天体(10万個)の天体を、長期間観測すること(3年半)でカバーしています。それに、明るさの変化を観測するだけですから、それほど難しい技術を要しません。つまりメインテナンスがそれほど必要ないということです。宇宙での観察ではこの点は重要です。
 さらにトランジット法のメリットは、惑星の質量を正確に決めることができる点です。質量は、惑星の特徴として最も重要なものです。
 大量の天体の探査から、太陽系外惑星カタログができ、次なる観測目標が設定できます。大量のデータが得られますから、統計的な処理ができます。このようなデータは私たち人類、あるいは生命の存在確率を左右するものとなるはずです。
 ケプラー宇宙望遠鏡の最終目標は、地球型惑星の発見と地球外生命の存在の可能性の探査ではないでしょう。それについては、次回としましょう。

・重要事項・
毎日論文に取り組んでいます。
それに専念したいところですが、
なかなかままならないのが実態です。
先日投稿した論文の校正ももどってきました。
これは数日猶予があるので先回しです。
時に重要事項が、優先事項とは一致しないこともあります。
社会人だから仕方がありませんが、
大切なことは、自分にとっての重要事項を忘れないことでしょう。
毎日をなんらかの優先事項に追われて過ごしているのでしょうが、
重要事項を常に頭に置いておくこと大切なのでしょう。
私のとって愛媛での残された時間が
少なくなってきました。
重要事項の忘れないようにしながら、
優先事項もこなしていきましょう。

・春はまだ・
先日、大雪が降りましたが、
ベチョベチョの雪でした。
春が近付いているのでしょうか。
でも晴れた朝はやはりまだ冷え込みます。
春は、まだまだ浅いようですが、
春になれば北海道にもどることになります。
今年の春はいつもの春とは違います。

2011年2月10日木曜日

6_86 宇宙望遠鏡:ケプラー1

 新しい宇宙望遠鏡としてケプラーとよばれるものがあります。この望遠鏡は、地球型惑星を探すという目的に絞られています。しかしその目的あるいは成果は、好奇心を刺激するものです。今回は、その一連の成果を見ていくシリーズとなります。

 今、「ケプラー」が次々と成果を上げています。「ケプラー」というと、天文学者の名前を思い浮かべるでしょうが、今では宇宙望遠鏡として、活躍しています。もちろん、この宇宙望遠鏡は、天文学者のケプラーからとったものです。宇宙望遠鏡として、ハッブルが有名ですが、ケプラーは、ハッブルとは違った目的をもったものです。
 ハッブル宇宙望遠鏡は1990年に打ち上げられ、もう20年以上にわたって使われています。なんども修理、補強が行われ、2009年5月には、スペースシャトルによって、最後のサービスミッションがおこなれました。その結果、「今までで最高の性能」をもつ宇宙望遠鏡となり、少なくとも2014年まで寿命が延びるようになりました。
 2014年以降は、後継機としてジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、2011年の打ち上げ予定でしたが、2014年に延期されました。それまでハッブル宇宙望遠鏡が使われる予定です。ただし、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、高性能ですが、近赤外線・赤外線での観測のみで、なおかつ地球と太陽のラグランジュ点(注)での観測となります。それは地球近傍のホコリの影響を抑え、より高精度が観測をするためにです。
 さて、ケプラー宇宙望遠鏡です。この望遠鏡は、NASAが2009年3月6日に打ち上げて、2009年5月から運用が始まっています。その目的は、「太陽系外惑星の観測」です。太陽系以外の天体で惑星を見つけようというものです。以前から「太陽系外惑星」は報告されてきましたが、今回は、それを精度よく体系的におこなおうというものです。
 ケプラーは3年半にわたって10万個の恒星を定期的に観測して、惑星の有無やその特徴を調べようというものです。従来の観測では、大きな惑星しか見つけることができませんでしたが、ケプラーでは、地球型惑星(太陽近傍の小さい天体)を見つけられると期待されています。
 ケプラー宇宙望遠鏡の目的は、非常に知的好奇心を刺激するプロジェクトです。その目的を考えると、ターゲットは地球に近い天体となります。地球に近い天体を網羅的に調べカタログができたとしたら、次なるステップへと、興味は進んでいくことしょう。地球型惑星が見つかったとすると、次なる期待は、その惑星が生命誕生の条件を満たしているかどうか、そして条件を満たしているなら生命が誕生しているかどうか、誕生しているとするとそこには知的生命がいるかどうか・・・。そのために基礎となる観測になるはずです。
 電力低下による不具合が今も起こっているようですが、順調に観測は進んでいます。今年になって、地球型惑星の発見の報が相次ぎました。それについては次回以降としましょう。

(注)ラグランジュ点とは
 天体力学での安定した位置を意味します。2つの天体(今回の場合は太陽と地球)が重心の周りを円運動しているとき、小さな物体(宇宙望遠鏡)が、2つの天体と位置を変えずに回れる場所(ラグランジュ点)があります。その場所は5つあり、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、地球の夜側、あるいは地球からみて太陽の逆側(L2と呼ばれています)に置かれます。

・NASA・
ハッブル宇宙望遠鏡は、多くの目的をもっていました。
地球の大気の影響のない条件で観測するというのが
第一の目標でもあったいえます。
ハッブルの成果が多大なものであったのは、
いうまでもありません。
そしてNASAが積極的に成果を公開したので
私たちの宇宙のイメージは大変豊かなものになりました。
そして現在では、宇宙望遠鏡は、
もっと目的が絞られたものになりました。
その延長線としてケプラー宇宙望遠鏡もあります。
詳しい情報は、
http://www.nasa.gov/mission_pages/kepler/main/index.html
にあります。
そこでは、最新情報も逐次公開されています。

・大雪の帰省・
京都から帰ってきたら、
城川も暖かくなっていました。
城川を発つ日は、大雪で予定通り出発できませんでした。
一旦は出発を諦めて、翌日の積もりでいました。
友人と連絡をしたら、
翌日だと道路が凍り余計に通行が
困難になるかもしれないということでした。
ですから、交通量が一段落した昼前に出発することにしました。
なんとか宇和のJRの駅までたどり着きました。
雪はありましたが少なく拍子抜けするようでした。
そして瀬戸内海から山陽道にはいると
そこには雪の痕跡も見られないような
穏やかな好天でした。
そして夕方には無事、京都の実家にたどり着くことができました。

2011年2月3日木曜日

2_89 反論:GFAJ-1 その4

 一回間があきましたが、今回がGFAJ-1シリーズの最終回です。このヒ素を利用している生物については、その重要度のせいでしょか、反論も多数出ています。政治的な反論もあるようですが、科学的な反論もあります。科学的な反論に答え対処することは、科学の進歩を促すことになります。

 いつのことでもあるのですが、新しい成果が出て、それがある研究者の成果に影響するようなことがあれば、反論が出ることがあります。あるいは、その成果の重要度が高ければ、多くの研究者がその論文の成否を論じることになります。逆にいうと、学界で話題になるほど、その重要度が高いということになります。
 重要な成果がでれば、その研究の実験方法やデータ、解釈、結果に問題がないかが問われます。当の研究者自身も、いろいろな手法でその信頼度を高める努力をします。その成果を評価する仕組みとして、学界の査読制度があります。査読とは、その内容に詳しい研究者数人が論文を読んで、問題がないか、この雑誌に掲載してよい内容かどうかを検討する制度のことです。
 査読が厳しい雑誌ほど、掲載される研究の評価が高くなります。科学の世界では、イギリスのNature誌、アメリカのScience誌が最高峰に位置しています。今回の研究は、Science誌に掲載されました。また、NASAも後押しをするように、「宇宙に生命体が存在している!」というもったいぶった記者会見までしました。Science誌は間接的にNASAのプロパガンダをサポートすることになりました。NASAがScience誌のネームバリューを利用したとも考えられます。
 そこには、政治的な思惑があるのかもしれませんが、今回の結果が、本当であれば、今回のエッセイのシリーズの述べたように、生物学上重要な成果であることは確かです。
 重要な成果となれば、反論も出てきます。重要なほど、反論も多く激しくなります。研究内容だけでなく、この研究を掲載したScience誌への非難があるようです。これは、もはや科学ではなく学界政治ですので触れないことにして、科学的反論をみていきましょう。
 ウルフ-サイモンたちは、ICP-MSやNanoSIMS、μXANESという放射光分析などの先端分析機器を利用しています。それによる成果です。先端機器だからといって、結果や解釈が正しいとは限りません。また、ヒ素がDNAなどの生体分子と置き換わる仕組みや、その働きはよく分っていなことは、ウルフ-サイモンたちも認めています。ですから、このGFAJ-1には、まだ不確定な部分が多いことも確かです。
 まず反論の一つ目は、ヒ素があると細胞が1.5倍になったことが示されていますが、GFAJ-1は、ヒ素を摂取しているのではなく、ヒ素を細胞内に取り込んで太っているだけなのではないかというものです。これは、ヒ素が細胞内のどこにどのような形であるのかが問題です。ウルフ-サイモンたちそれを放射性ヒ素や先端分析装置で示しています。しかし、実際に正確に生体の内の器官や分子での位置を決めたわけでありません。今後の課題となります。
 また別の反論は、実験ではDNAの洗浄が適切に行われておらず、ヒ素はDNAではなく細胞外のゲルに含まれていた可能性があるというものです。これは、分析方法、分析精度に関する問題です。
 このような反論は、追試や再現実験を、できれば別の研究者が別の研究室で行うことが公正な判断ができます。ウルフ-サイモンたちは、彼らの見つけたGFAJ-1を提供することになったそうです。そして、クレームをつけている研究者が追試をできるようになっているようです。その結果に期待したいものです。
 本当にヒ素を活用する生物がいるかどうかは、地球生命の進化、宇宙生命の可能性において重要な影響をあたえることになります。そして、そんな生物が、いつか、どこかの天体で見つかることがあるかもしれませんから。

・成果と教訓・
私は、生物に関していは、専門ではありません。
しかし、反論が各所にニュースとして
取り上げられているのをみると、
コトの重大さが感じられます。
成否、どちらに決着をみるかはわかりませんが、
より精度の高い分析おこなわれるはずです。
そして、それは、GFAJ-1に関する知見だけにとどまらず、
より高次の成果を残すことに違いありません。
そして、教訓も残すことでしょう。

・京都に・
現在、私は、京都にいます。
実家に里帰りしています。
このメールマガジンは予約配信しています。
これが、四国滞在中では最後の京都への帰省となります。
今まで京都の実家にはあまり帰りませんでしたが、
四国に滞在するようになって、
時間が自由にできるようになり、
料金も安くいけるので、今まで2回帰りました。
でも、今回が最後となります。
寒い時期かと思いますが、
京都をめぐろうと思っています。
そして、なにより年老いた母に
顔を見せる少ないチャンスです。
今まで母を北海道に呼んでいました。
年齢とともにこれからは難しくなるかもしれません。
親族は近くにいるのですが、
独居をしている母は心配になります。
携帯電話やメール、見守りポットなど
いろいろ利用して連絡を絶やさないようにしていますが、
直接会うこと、直接話すことが
大切だと思っています。
でもそれがままならないのが現実でもあります。