2022年1月27日木曜日

5_191 系外惑星の多様性 6:鉄の含有量

 系外の恒星の化学組成と惑星の質量と半径の観測値から、いくつかの仮説から、個々の惑星の鉄の含有量が推定されました。系外惑星の鉄の含有量に、相関関係とギャップが見えてきました。


 系外の恒星の組成と惑星の質量と半径の観測データがそろいました。そこから惑星の化学組成を推定していくことになります。
 惑星の質量と半径がわかっているので、平均密度が計算できます。太陽系の惑星を参考にして、平均密度から内部がどのような物質が分布しているかを、構造モデルを作成していきます。
 同じ分子雲コアから形成された恒星と惑星は、似た化学組成、もしくは化学組成になんらかの相関があると考えられます。私たちの太陽系では、太陽と惑星の化学組成で、ケイ素、鉄、マグネシウムなどが相関があることがわかっています。これらの元素は、岩石惑星の主成分となっています。
 これら2つの情報、惑星の構造モデルと恒星と惑星の鉄の化学組成の相関関係から、惑星の主成分となる鉄の含有量を見積もっていきます。
 次に、その結果を考察されています。恒星の鉄の含有量が近いもの同士で、系外惑星の特徴を比べていくと、恒星の鉄含有量と、系外惑星の鉄含有率には相関(傾き4程度)があることがわかりました。ただし、推定された鉄の含有量には、多様性があることがわかってきました。つまり、同じ鉄の含有量の恒星でも、惑星の鉄の含有量には幅があり、多様であることがわかりました。
 また、鉄の含有量の多い恒星には、少ない恒星との相関を越えてかなり鉄の含有量が多い惑星も存在していることがわかってきました。鉄の含有量は、連続することなく、鉄の多いものへとジャンプするようなギャップがありました。
 以上ことから、恒星の組成が似ていても、惑星の鉄の含有量には多様性があること、そして特別に鉄が多い惑星もあることがわかってきました。鉄の含有量で系外惑星をみると、非常に多様性があることがわかってきところになります。
 しかし、このような多様性は私たちの太陽系にありました。これについては、次回としましょう。

・豪雪・
わが町や札幌は豪雪が続いて積雪が多く、
除雪、排雪が間に合っていません。
道の脇には除雪された雪がうず高くなり、
道幅も半分以下になってきました。
車がすれ違えないところもあり、
深い雪の轍で埋もれるような道もありました。
幹線道路がかろうじて排雪はなされてきましたが、
公共のバスも2週間ほど運休の路線もあります。
これまで雪が少なかったので
突然の豪雪で対処しきれないようです。

・自粛・
家内は、豪雪なので買い物も最低限にしています。
また、できるだけ食料も備蓄するようにしています。
そこにオミクロン株です。
札幌だけでなく、わが町、わが大学でも
感染が広まっています。
コロナでの自粛も重なります。
またまた不自由な生活が続きそうです。

2022年1月20日木曜日

5_190 系外惑星の多様性 5:恒星と惑星の化学的相関

 恒星とその系外惑星の観測された情報から、惑星の特徴を考えていく方法が提案されました。いくつかのモデルをおいていますが。直接の観測データから考えている点が重要です。


 これまでのシリーズでは、白色矮星の化学組成から、その周囲にあった惑星の化学組成のうち、体積が多く化学組成を反映しやすいマントルを、間接的に探った結果を紹介しました。その結果より、太陽系の地球のマントルのような組成の岩石は珍しいものでした。
 このシリーズでは、もうひとつ直接調べた論文があり、それも一緒に紹介していくことにしていました。2021年10月15日のScience誌に多数の著者(20名)によって
A compositional link between rocky exoplanets and their host stars
(岩石系外惑星と恒星との間の化学的相関)
という報告がされていました。次に、これを紹介していきましょう。
 ハワイのすばる望遠鏡やチリ、カナリア諸島などの世界各地の望遠鏡を用いて観測されたデータを分析した結果です。太陽系外の恒星と惑星の化学組成に関係があるという報告でした。
 とはいっても、直接、系外惑星の化学組成を調べることは未だにできていません。では、どうして調べていくのでしょうか。
 恒星系は、分子雲コアという場で恒星も惑星も一緒に形成されていきます。回転する分子雲コアの中心に恒星が、その周囲の円盤状のところ(原始惑星系円盤と呼ばれています)に惑星ができていきます。惑星に使われなかった材料は恒星に落ちていき、ガスは吹きはらわれていくと考えられます。
 恒星も惑星も、もともとは同じ材料で形成されたはずです。形成環境や形成過程によって、それぞれ違いは生じたでしょうが、恒星と惑星の間には化学的に何らかの関係があったはずです。そのような化学的関係を前提にして考えていきます。
 今回研究には、系外惑星で岩石の表層をもっていると考えられ、観測が進んでいる21個の惑星が用いられました。観測でわかっているのは、恒星のスペクトル分析から推定された化学組成と、系外惑星で質量と半径です。これらの観測データのセットをもとに、いくつかの仮説(モデル)を立てて、系外惑星の化学的特徴を調べたという報告です。
 詳細は、次回以降としましょう。

・暴風雪・
大学入学共通テストが先週末にありました。
初日は、北海道では暴風雪でJRは運休だらけでした。
二日目も少し運休便がありましたが、
かなり復旧していました。
初日は、会場によっては、
繰り下げ開始や別室受験などの
対処がなされたところもありました。
一部支障がでましたが、北海道は
大雪に慣れていて、対処法もできているため、
なんとなったかと思います。
コロナ禍や津波警報、東大の事件の影響を
直接受けた受験生にとっては、
大きなストレスになったと思います。

・積雪量・
今年の北海道は地域によって違いがあるでしょうが
降雪量や総積雪量が例年になく多くなっています。
わが町の雪情報では、
過去5年平均の積雪量と比べて倍になっているとのことです。
道路も除雪による雪山が高くなり、
道幅も半分になっています。
そのため、車の通行だけでなく、歩行者も危険です。
雪の事故が多くなりそうです。
注意して外出しなければなりません。

2022年1月13日木曜日

5_189 系外惑星の多様性 4:形成と履歴の多様性

 系外惑星を構成していたマントルの岩石は、地球とは異なったものであることがわかってきました。そして、多数派であることも明らかになってきました。そこから見えてきたことは、地質学がより普遍性を求めていく必要性でした。


 前回、白色矮星の化学的特徴の違いから、系外惑星のマントルの岩石としては、石英+斜方輝石の組わせか、ペリクレース+カンラン石の組み合わせになると想定されました。著者らは、このような岩石を、石英輝石岩(quartz pyroxenites)とペリクレイスダナイト(periclase dunites)という名称を提唱しています。
 いずれも、すでに知られている鉱物です。そして、稀ではありますが、地球にも存在している岩石です。しかし、マントルなどを構成する主要な岩石ではありません。地球では、カンラン石+斜方輝石の組み合わせでした。似た鉱物からできていますが、系外惑星の方が、マグネシウムが多く、ケイ素が少いことを反映した鉱物組み合わせとなっています。
 このような組成の異なった惑星が形成されるのは、その恒星系の誕生時の履歴を反映している可能性があります。白色矮星に飲み込まれる惑星は、恒星の近くにあったものです。恒星近傍に、材料物質が集まる時、そこで起こる化学的分化に、太陽系とは、違っていたことを匂わせています。
 調べた23個の白色矮星の中で、地球に似たものが1つで、それ以外がすべて石英輝石岩かペリクレイスダナイトとなるようなマントルを持ったものになっていました。つまり、私の太陽系の惑星形成とは異なった形成プロセスが多数派、普遍的であり、地球が例外のようです。
 地球と異なったマントルの岩石があるということは、形成された惑星でも、地球とは異なった特徴や履歴を持つ可能性があります。
 著者の一人のPutirkaは、地球のマントルよりは多くの水を取り込めた可能性があり、その惑星の海洋の起源に影響を与えた可能性があると考えています。また、地球のマントルより低温で溶けやすくなるため、マグマが大量に形成され、厚い地殻をもっていた可能性もあると考えています。そうなると、プレートテクトニクスも異なった様相を呈することになりそうです。
 地質学、あるいは岩石学、火成論などは、地球をモデルにして、その仕組みを調べ、一般化してきました。その一般論を、他の惑星へと適用してきました。しかし、今回の系外惑星の多様性がわかってきたことで、どうもこれまでの地球でのモデルは、多様性の一つに過ぎないことになりそうです。

・大きな普遍性へ・
このエッセイの最後でも述べましたが、
今回の論文が示した可能性が、
もし多くの惑星系における典型だとすると、
地質学の立ち位置を考えなおさければなりません。
今回の石英輝石岩かペリクレイスダナイトは
地球も存在する岩石です。
根拠をもって、地球とは異なったマントルが推定されたのなら
その惑星は、どのような形成過程があるのか、
またできた惑星でどのような地殻形成やテクトニクスが働くのか、
などを考えていく必要がありそうです。
これは地質学において、より大きな普遍性を探っていく
チャンスかも知れませんね。

・排雪・
北海道は年末から年始にかけて、
繰り返された寒波の到来で
個々数年の冬よりは、積雪は多くなっています。
歩道と車道の間にうず高く積み上がった雪は
道路を横切る時、見通しが悪く危険です。
また、車道の幅も狭くなっており、
車の通行も細心の注意が必要です。
こんな時は、自治体による早目の排雪作業が必要です。
しかし、年ごとに雪の量は異なりますので、
経費のかかる作業で、
自治体としても悩ましい問題でしょうね。

2022年1月6日木曜日

5_188 系外惑星の多様性 3:特異なマントル

 白色矮星の化学的特徴から、もとの恒星の周りに存在していた、惑星の特徴を読み取ろう、という試みを紹介しています。その結果、どのような惑星であったのでしょうか。


 これまで、白色矮星は、大陸地殻(花崗岩)を構成する元素を取り込んでいるのはないかという考えがありました。しかし、今回の研究で、花崗岩の痕跡を示す成分はみつかりませんでした。考えれば、地球全体で大陸地殻が占める割合は、核とマントルと比べると微々たるものです。ですから、地殻の痕跡が見つからないのはあたりめに思えます。岩石型惑星は、質量の比率からみると、マントルと核の成分が主となっているはずです。
 核は鉄を主成分としているので、その核とマントルの比率さえ推定できれば、核の影響は補正可能です。したがって白色矮星の化学組成の特徴から惑星のマントルの特徴を読み取ることが可能になります。
 その結果、白色矮星では、マグネシウムが多く、ケイ素が少くなっていることがわかりました。これは取り込んだ惑星の特徴を反映していると考えられます。
 地球のマントルはカンラン岩からできています。カンラン岩は、カンラン石(olivine)と輝石(斜方輝石 orthopyroxene)が造岩鉱物となります。カンラン石はマグネシウムとケイ素から、輝石はマグネシウムとケイ素、カルシウムからできています。両鉱物ではマグネシウムは鉄と置き換わることにがあります。両者の鉱物の化学組成は、珪酸と鉄+マグネシウムの比率が異なっています。
 このような鉱物の特徴から、マグネシウムとカルシウム、ケイ素の比率を考えていくと、地球のマントル(カンラン岩)の特徴をもっているものは、23個のうち1つしか見つかりませんでした。多くは太陽系の惑星とは異なったマントルの特徴をもっていることがわかってきました。
 その特徴は、石英(quartz)と斜方輝石の組み合わせの岩石か、酸化マグネシウム(ペリクレース periclase)とカンラン石の組み合わせの岩石からなると考えられました。
 このような岩石をもった惑星は、太陽系には見つかっていません。非常に特異な惑星となります。では、そのようなカンラン岩からできたマントルともった惑星とは、どのようなものだったのでしょうか。次回としましょう。

・系外惑星への興味・
明けまして、おめでとうございます。
前回は、2021年最後のエッセイになるので、
コロナ禍の2年間を振り返るものにしました。
今回は、それまでシリーズで進めてきた
系外惑星の多様性の続きをお送りました。
天文学者も系外惑星への興味が高まっているようです。

・寒波・
北海道は、年末年始は、冬型の気圧配置が続き
寒波が繰り返し遅い、
大雪と交通の乱れが続きました。
次男も12月29日に帰省して1月3日に戻りました。
いずれも便に遅延がありましたが
ぎりぎり飛ぶことができてよかったです。
元旦は、千歳で多くの便で発着できず欠航となりました。
翌日以降の空席も埋まり全便満席となっていました。
寒波の厳しい年末年始となっています。