2018年7月19日木曜日

1_159 大陸の形成 4:地球初期へ

 大陸形成の仮説は、今までの常識をくつがえすものでした。しかし課題もありそうです。この仮説を地球初期に延長していくと、大陸形成の物語にも、答えが出せる可能性を秘めているようです。

 田村さんたちは、厚い地殻(厚さ30km以上)では玄武岩質マグマが、薄い地殻では安山岩質マグマが活動するということを、伊豆小笠原とアリューシャンの海洋島弧のデータを用いて示しました。島弧固有だと考えられる安山岩質マグマは、海洋のできたての島弧で形成され、それが大陸地殻になっていくという仮説を提示しました。今までの常識と反していますが、事実に基づく、大胆な仮説でもありましたが、根拠が明瞭なので説得力があります。
 ある程度の厚さで安山岩地殻が形成されると、今度は玄武岩質マグマが形成されるようにな島弧になっていき、玄武岩質マグマによる島弧地殻の溶融が起こることになります。もしそれが成熟した島弧で、多様な岩石類を多量にあるようならば、島弧の成熟を促すことになるはずです。もし海洋島弧のような環境だったら、玄武岩質マグマが島弧地殻を溶かすので地殻の成長を抑制することになります。この作用の境界や違いは、何に由来ているかは、次なる課題になるでしょう。しかし、今後の検討で、近うちに検証されていくでしょう。
 この普遍性を地球初期に適用すると、もし現在のようなマントルの物理条件であれば、地殻が形成される時は、安山岩からなる薄い大陸地殻の形成が起こり、大陸地殻が一気に大量に形成されることになります。もし地球初期のマントルが現在より高温の条件であったなら、安山岩質マグマはできず、最初から玄武岩質マグマの活動が起こり、玄武岩の海洋地殻が厚くできていくだけで、安山岩質の大陸地殻は形成されることがなかったかもしれません。どちらが起こってい方は今後の課題でしょう。しかし、地球初期の温度条件がある程度精度良く推定できれば、決着を見ることになるでしょう。
 この仮説の検証や議論に今後期待したいものです。もうひとつ大陸の移動に関する報告もあったので、続けてシリーズとして紹介していく予定です。

・危機意識・
北海道もなかなか気温も上がらず、
日照不足も心配されます。
短い梅雨や大雨など、平年とは違った天候が各地で起こっています。
天気予報もなかなか当たらないようです。
いくら科学が進んでも、複雑系の含まれている事象は
不確実な要素があります。
それも含めて予報として聞く必要があります。
でも今回のように警報や特別警報が出るような時は
危機意識を持ち、行動することが重要です。
これが、今回の大きな教訓となりそうです。

・協力体制・
今回の大雨の被害は、広範囲に及ぶもので
被害地域が広く、被害者の数も多くなりました。
災害復旧の目処がまた立たない地域もあるようです。
私の知り合いの地域でも大きな被害がでました。
私は、以前お世話になった地域へ、
寄付をさせていただきました。
その時ふるさと納税でするシステムをはじめて用いました。
そのシステムは、知り合いの地域に対して
他の市がいち早く名乗りを挙げて
事務処理を早急に代行する仕組みが整っていました。
このような協力体制がすぐに整うことは
非常心強いかぎりですね。

2018年7月12日木曜日

1_158 大陸の形成 3:新仮説

 これまでの常識は、実は漠然としたデータに基づくものであるかもしれません。データを、整理したら、新たな事実が判明し、これまで誤解に基づいて常識が構築されてた。そんな実例が、今回の田村さんたちの報告です。

 これまで安山岩質マグマは、厚い島弧地殻のあるところで形成されると考えられてきました。しかし、今回のシリーズで紹介している田村さんたちの報告では、伊豆小笠原とアリューシャンの両海洋島弧では、地殻の薄いところで安山岩質マグマが活動していることを見出しました。これは、今までの常識とは違った結果となりました。
 田村さんたちは、自分たちが見つけた事実、
  地殻の厚い地域(厚さ30km以上)では玄武岩質マグマ
  地殻の薄い地域(厚さ30km未満)では安山岩質マグマ
が活動する、という前提を置きました。つまり、安山岩質マグマが薄い海洋島弧地殻ででき、厚いところでは玄武岩質マグマが活動します。これまでの地質学の常識に反しますが、これが事実です。そのため、島弧のマグマ形成に、新たな考え方(仮説)を導入する必要がでてきました。
 沈み込み帯では、海洋プレートから水分が陸側のマントルに供給されていきます。そのため、マントルの溶融とマグマ形成は、含水量の多い条件で起こることになります。沈み込み帯は、すべて同じ条件となるはずです。
 岩石溶融の高温高圧実験では、圧力が低い条件では、含水マントルでは安山岩質マグマが、高圧条件では玄武岩質マグマが形成されることがわかっています。低圧条件は地殻の薄い海洋島弧(厚さ30km未満)下のマントルで、高圧条件は厚い島弧(30km以上)の条件に相当する、と田村さんたちは指摘しています。これで海洋島弧の事実は説明できました。
 次なる問題は、成熟した島弧の安山岩質マグマの活動の事実をどう説明するかです。高温高圧実験では、高圧条件では玄武岩質マグマができ、マントルを上昇してくると、すでに形成されていた海洋島弧地殻を構成する安山岩、あるいは成熟した島弧地殻の岩石に突き当たります。
 成熟した島弧では、安山岩だけでなく堆積物や花崗岩もあり、玄武岩質マグマによる溶融作用でデイサイト質マグマの形成が定常的に起こます。そして、玄武岩質マグマとデイサイト質マグマのマグマ混合が起こり、島弧の安山岩質マグマができていると考えられています。伊豆小笠原弧では玄武岩質マグマが島弧地殻を溶かすことが知られています。
 今回に報告で私が考えた重要な点があります。海洋島弧に安山岩や玄武岩が活動していることは、すべての地質学者は知っていました。今回の田村さんたち論文は、海洋島弧の地殻の厚さとマグマの関係を調べ、相関があることを示して、それが今までの常識に反していたのですが、事実に基づき、新たな大陸の形成メカニズが地殻に薄い海洋島弧でおこっていると提案しました。
 かつて、同じようなことがあったことを私は思い出します。島弧を代表する、あるいは平均値がマグマが安山岩質だということを多くの地質学者が知っていました。大陸も平均すると安山岩質の組成なることもしっていました。それらを結びつけて、島弧の安山岩が大陸地殻の形成につながることが指摘され、多くの地質学者は目からウロコでした。
 今回の同じような驚きがあり、非常に重要な指摘です。今後慎重に検証していく必要がありますが。
 西之島という海の中の新しい火山が安山岩ばかりだという事実と、なおかつそこで新しい大陸の形成が始まっているのでは、という指摘もなされました。これだけでも、興味深い仮説なのですが、この報告には、もう少し大きな可能性を示しています。それは次回としましょう。

・雨の中の調査・
本州の大雨の頃、
私は道南の4回目の調査にでていました。
北海道も降ったりやんだりの天気で、
なかなか思うように調査ができませんでした。
道路が通行止で予定通りにコースを
進むことができないところもありました。
でも、目的としていた露頭をみつけ、
ざっとですが見ることもできました。
やはり予想通りの露頭でした。
でも、海岸に降りれずに次の機会にしました。

・前期も終盤・
7月になり、大学は前期の授業が
終盤に差し掛かっています。
授業の最後の詰めになっています。
学生はそろそろ期末の試験やレポートなどが
気になってきているようです。
大学の授業評価のアンケートなどもあり、
学生にはいろいろ手間をかけていますが、
これもよりよい授業、学生が望む授業に
近づけるための基礎データとなります。

2018年7月5日木曜日

1_157 大陸の形成 2:常識に反し

 安山岩は島弧を特徴づける岩石です。そして一般論として島弧は、大陸に成長していく、大陸形成の場と位置づけられています。しかし、西之島の安山岩は常識に反していました。その意味することは・・・。

 海洋にできている列島(未成熟な島弧、海洋島弧と呼ばれる)や海の中の火山(海洋島)では、玄武岩マグマの活動が一般です。一方、安山岩は大きな列島(成熟した島弧)の特徴です。地殻の厚くなっている、成長、成熟した日本列島のような島弧での活動が主です。島弧でも、いろいろマグマが活動していますが、一番多い、平均的なものとして、安山岩マグマになっています。これが島弧の特徴だとされていました。
 以上のことから、一般論として、地殻の薄いところ(海洋域)では玄武岩マグマが、地殻の厚いところ(大陸域)では、安山岩マグマが活動すると考えられていました。さらに、島弧が成長していくことで、大陸地殻になっていくと考えられています。
 前回、西之島の火山を紹介したとき、以前の活動も、今回の活動も安山岩マグマであることを示しました。西之島は、もちろん海洋域での活動になります。西之島の安山岩マグマは、これまでの常識とは違っていました。その特徴を説明するためには、地下の様子を調べ、マグマの形成機構なども考えていく必要があります。田村芳彦さんたち海洋研究開発機構の研究グループは、この不思議な事実を解明するために、西之島のある伊豆小笠原弧全体と、同じく海洋島弧であるアリューシャン列島を合わせて検討していきました。
 2つの海洋島弧を詳しくみていくと、地殻にはいろいろな厚さがありました。地殻の厚さと活動しているマグマの関係を詳しく検討していきました。すると、地殻が30km未満の薄いところでは安山岩質マグマが噴出し、30km以上の厚いところでは玄武岩質マグマが噴出していたことがわかりました。これまでの一般論とは、逆の結果がでてきたのです。
 これまで成熟した島弧で大陸地殻が形成されていくという常識ができていました。地殻が薄い海洋島弧での安山岩マグマの形成が起こっているのです。西之島だけなら特別な条件での活動となるかもしれません。2つの島弧での、いくつも火山、マグマを調べた結果なので、一般論となりそうです。つまり、海で大陸ができるかもしれないという可能性でてきたわけです。その仕組みはどのようなものしょうか。田村さんたちの仮説の紹介は、次回としましょう。

・蒸し暑さ・
7月になりました。
6月末から全国的に雨がちの天気です。
台風の影響もあるのでしょうが、
北海道でも蒸し暑い日が続いています。
久しぶりの蒸し暑さに、ぐったりとしました。
でも夜は涼しくなるので、
なんとか寝付けるの助かっています。

・腰痛・
腰痛がでています。
先週の木曜日の夜から痛みがでだし、
金曜日の夜にひどくなり、歩くのもつらくなりました。
土曜日に治療院へいき、
少しましになったのですが、一時的のことでした。
土・日曜日は動かずに、自宅でじっと寝ていました。
月曜日には、大学に来ていたのですが、
曲げ伸ばしすると痛みます。
でも、少しずつは、回復しています。
今週末には調査にでるので、無理できません。