2026年10月15日木曜日

3_230 付加体の蛇紋岩 3:メランジュ

 沈み込み帯では圧縮力が働いており、付加体には多数の断層が形成されます。大きな断層では、マントルに達するものがあります。断層から水が供給されると、マントルの岩石が蛇紋岩になります。蛇紋岩に秘密があります。


 沈み込み帯では、2つのプレートがぶつかっているため、圧縮する力が常にかかっている場となります。その力によって、島弧側に堆積物が集められ、付加体ができることを、前回、紹介しました。また、付加体にメランジュというものができることを示しました。
 付加体では、剥ぎ取りが起こる時、強い力がかかり、断層とともに岩石が激しく変形していくところができます。大きな断層帯で、複雑な変形した構造をメランジュと呼んでいます。
 大きな断層には、深部のマントルに達するものもあります。そして断層にそって水が、マントル物質に加わりますと、マントルのカンラン岩と水が反応して、蛇紋岩と呼ばれる岩石ができます。
 蛇紋岩は、マントルのカンラン岩や地殻の岩石と比べても密度が小さく、そして滑りやすい性質を持っています。メランジュの中に蛇紋岩ができると、断層帯の中を蛇紋岩が上昇してきます。その時断層帯周辺にあった岩石を持ち上げてきます。メランジュは、蛇紋岩に伴ってこのような起源の異なった多様な岩石が見つかることが特徴となります。
 メランジュ中の岩石には変成岩もあり、そこから変成作用の条件(温度や圧力など)を調べることができます。変成作用の内、もっとも高温高圧の条件より深いところから、蛇紋岩が由来したことになります。また、蛇紋岩でも、カンラン岩にあった鉱物が残っていることもあるので、そのような残存鉱物からもマントルの性質を調べることもできます。
 では、蛇紋岩のもととなったマントルは、大陸プレート由来か海洋プレート由来かどちらでしょうか。その由来について検討した論文が報告されました。名古屋大学の志村さんたちの共同研究で、2026年7月のTectonics誌に、
 Shimura et al 2026 Origin, Tectonic Processes, and Metasomatism of Serpentinite in the Shimanto Accretionary Complex, SW Japan: Possible Diapiric Intrusion of Serpentinized Oceanic Lithosphere
(西南日本、四万十付加体における蛇紋岩の起源、構造過程、および変成作用:蛇紋岩化した海洋リソスフェアのダイアピル貫入の可能性)
というタイトルで掲載されました。少々長いタイトルですが、次のような意味があります。
 西南日本には、海側から新しい時代の付加体から古いものへと順番に分布しています。海に近い四万十帯は、新しい付加体から形成されています。その中にメランジュとして蛇紋岩があります。上昇してきた蛇紋岩をダイアピルと呼んでいます。志村さんたちは、紀伊半島中央部の四万十帯中の蛇紋岩の分布や産状を調査し、その蛇紋岩のもととなったカンラン岩が、海洋マントル由来だと判明したという論文になります。
 その詳細は、次回としましょう。

・体力の衰え・
先日帰省して、墓参りとともに、
いくつかの打ち合わせをしてきました。
術後はじめての遠出となりました。
体力が落ちてい上に、
久しぶりの大移動や運動で、
体力的には厳しいものでした。
弱い腰痛がでて、術部に痛みがでてきましたが、
あまり大事には至りませんでした。
今後は、日々の運動で体力と筋力の回復に
努めていきたいと考えています。

・奇縁・
先日、弟の連絡をとったら、
実家の裏の親戚の家が
ある有名な映画の撮影に使われていると聞きました。
早速その映画を見ました。
食堂、仏間、脇道なども撮影に使われいました。
そして実家の裏も移っていました。
監督が、親族と知り合いであったため
撮影場所として使うようになったそうです。
奇縁ですね。

2026年10月8日木曜日

3_238 付加体の蛇紋岩 2:付加の仕組み

 今回のシリーズで取り上げるのは、付加体の中にある蛇紋岩と呼ばれる岩石の由来です。付加体は、このエッセイでも何度も取り上げていますが、まずはその概要を説明しておきましょう。


 付加体とは、プレートの境界部で、海洋プレートが別のプレート(大陸、島弧、海洋プレートでもいずれでもいい)と沈み込むところに形成されます。大陸プレート、あるいは島弧プレートと海洋プレートなら、海洋プレートの方が密度が大きいために、沈み込んでいきます。海洋プレート同士ならば、古い海洋プレートの方が、海底で冷され、密度も大きくなっているので、新しいプレートの下に沈み込んできます。沈み込まれるプレートにはいろいろな想定ができますが、以下では、沈み込まれるプレートを成熟した島弧としましょう。
 沈み込み起こっているところは、海溝となります。海溝では、海洋プレート本体の大部分は沈み込んでいくのですが、一部の岩石が沈み込まずに剥ぎ取られていきます。海洋プレートの上に堆積した海洋底堆積物(珪質粘土が固まった層状チャート)や、海山の岩石やその周辺のサンゴ礁(石灰岩)、もっと深部の海洋地殻の上部の火山岩(玄武岩、ドレライト、斑レイ岩)なども、剥ぎ取られることがあります。
 剥ぎ取られた岩石は、沈み込まれたプレート側(大陸、島弧、新しい海洋地殻)に、押し付けられています。プレートが運動し、沈み込みが続く限り、この現象は継続していきます。このような沈み込まれたプレート側に加わっていく堆積物を付加体といいます。
 沈み込まれたプレートが島弧や大陸であったら、陸地で侵食され、海に運搬された土砂からなる堆積物も海溝付近まで達します。このような陸源の堆積物からできた地層をタービダイト層と呼びます。その堆積物も付加体に追加されていきます。大陸や島弧のプレートに沈み込みが起こると、付加体が大量に形成されていきます。
 付加する前の海洋プレートは、上から順番に陸源砕屑物、層状チャート、海洋地殻、マントルからなる岩石の並びができます。そのような地層の並びを海洋プレート層序といいます。この海洋プレート層序が、島弧側に付加していくことになります。
 浅いところで剥ぎ取られた地層は、島弧プレートに押し付けられ、海側へと積み重なっていきます。剥ぎ取られた地層は、もともとの層序が断層で切れて斜めに陸にくっついていきます。付加が継続していくと、断面がくさび型をした堆積物の集まり(付加プリズム)になっていきます。付加プリズムが、次々と海側に成長していきます。
 さらに、海洋プレートが島弧プレートの下に沈み込んでからも、剥ぎ取られることもあります。その時、逆断層によってスライス状に切り取られて、島弧プレートの底に、下から押し付けられていく現象が起こります。これを、底付け付加(アンダープレーティング)と呼びます。底付け付加が起きると、付加体の下に新たに二重構造(デュープレックス構造)付加体が形成されていきます。
 沈み込みが形成されていくと、古い付加体が陸に押し上げられていき、陸地に顔を出すことになっていきます。日本列島が複雑な島弧になっているのは、過去の古い付加体から、現在進行中の付加体まで、何度も繰り返し島弧形成が起こる場です。付加体の成長は海側に島弧(大陸)地殻が成長していくことを意味します。
 日本列島では、いろいろな時代の付加体を観察することができ、地の利があります。

・帰省・
このエッセイは、京都に帰省、直後なので
予約配信しています。
京都はオーバツーリズムがいわれ久しいです。
交通手段が常に混んでいます。
移動には、路線を選ぶ必要があります。
食事をする場所も注意しないと
高価な店も多いので、
庶民的なところを探す必要があります。
昨年の帰省でも、それらで苦労しました。
今回も苦労しそうです。

・術後の回復・
先日、術後の回復治療を終えました。
治療直後から1、2日は不調でしたが、
3、4日したら体調がもどってきました。
2ヶ月ぶりに体調が戻りつつあります。
おおかげで、京都への帰省もなんとかできます。
ただし2ヶ月も安静にしていたので
体力や筋力が明らかに落ちています。
帰省中は急に体力を使うことになるので、
無理をしないようにしたいと思います。

2026年10月1日木曜日

3_237 付加体の蛇紋岩 1:島弧とは

 付加体と呼ばれる地質体が、日本列島のような地域には特徴的になっています。そこには蛇紋岩も見つかることもよくあります。今回は、付加体中の蛇紋岩の話題です。


 日本列島は、地質学的に特徴的な地域になります。多くの列島が共通してもっている特徴と、日本列島だけがもっている固有の特徴もあります。ここでいう列島とは、地質学では「島弧」と呼ばれるものとします。
 島弧が持っている特徴とは、列島に並行して、多数の活火山をともなった列島からなり、全体の地形が弧状になっています。本州は島弧の典型となり、成熟した島弧と呼ばれ、伊豆から小笠原諸島(伊豆・小笠原弧)や南西諸島(琉球弧)は、未成熟な島弧(あるいは海洋島弧)と呼ばれています。
 列島の大地には、古い岩石から新しい岩石まであり、岩石の種類も堆積岩、火成岩、そして変成岩と多種になっており、その地質学的構造も多数の断層で切られた複雑なものになっています。堆積岩が断層で規則的に切られて並んでいる付加体も、島弧を構成する典型的な地質体となります。
 海側には、海溝が列島と並行してあります。列島の海と反対側には、小さな海(縁海)を挟んで、大陸があります。時には、縁海がなく、島弧が大陸の縁に形成されていることもあります。チリの太平洋側が、その典型となり、陸弧と呼ばれています。
 以上が、多くの島弧に共通した特徴となります。次に、日本列島固有の特徴を見ていきましょう。それは、非常に多様な島弧が、複雑につながっている点です。
 本州はフォッサマグナを境にして、西側を西南日本弧、東側から日高山脈までを東北日本弧と呼びます。これらは成熟した島弧となります。伊豆・小笠原弧、琉球弧は海洋島弧となり、北海道の日高山脈の東側は千島弧となり、成熟島弧から海洋島弧と変化します。そして、丹沢周辺は伊豆島弧が本州に、日高山脈は東北島弧と千島弧が衝突したところとなっています。
 このように日本列島は、島弧として典型的なものがいくつかあり、多様なものが複雑に絡み合っているという固有性ももつとこにとなっています。日本列島で島弧の研究をすることは、日本の地質学者がにとっては、非常に地の利をえていることになります。実際に、日本の地質学者が中心なり、島弧の実態を明らかにするために研究を進めてきました。ただし、概略はわかってきたのです、詳細はまだまだ不明なところがあります。
 今回は、付加体の内部の蛇紋岩と呼ばれる岩石の研究を紹介していきましょう。

・経過観察・
術後の回復期が長引いています。
現在、最終処理の経過観察の時期です。
1週間ほど様子を見ていくことなっています。
週末から来週にかけて
京都へ帰省する必要があるのですが
もし問題がなければ、いけるはずです。
でかけたとしても、
無理することはできそうにありませんが。

・妻の里帰り・
妻が、現在、1週間の里帰りをしています。
一人暮らしとなりました。
まあ、無理はできないので、
淡々と日々を過ごすことになります。
ただし、授業や人間ドックがはいっているので
どうしても、それぞれで半日は
外出することになりますが。

2026年9月24日木曜日

1_251 スノーボールアース 9:レヒュージア

 全球凍結で、すべての海面が凍った環境でも、生物は生き延びてきたはずです。全球凍結の後に、カンブリアの大爆発と呼ばれる生物の激しい多様性の形成が起こったからです。生物の多様性は、どのように維持されたのでしょうか。


 全球凍結時に、鉄鉱層が各地で形成されていたということは、鉄イオンの沈殿が起こったことになります。鉄が化学的に沈殿するには、海氷の下に液体の海水があったことになりますが、その海水の温度が-15℃であったと推定されました。塩分濃度が非常に高かったため、このような低温でも凍ることなく液体として存在していたと考えられました。ただし、すべての海の水が塩分濃度が高かったのではなく、プール状に濃い部分が存在したと考えられました。
 凍らない塩水プールが各地に存在したということは、別の意味をもっています。生命進化において、全球凍結の期間、生命が生き延びるための重要な場になってくる可能性があるからです。
 38億年前に生命が誕生しました。また、20億年前には酸素を発生するシアノバクテリアが大量発生し、それまでの還元的な環境から、酸化的な環境へと大きくかわりました。そんな激変も生命は生き延びました。原生代の全球凍結の前には、多くの種類の生物の痕跡が見つかっており、20億年以上の長い時間をかけて、多様な生物種が多様な生態系ができていたことになります。
 全球凍結が終わり、温暖な状態が訪れた時(カンブリア紀がはじまるころ)、爆発的に生物進化(カンブリアの大爆発)が起こりました。全球凍結ですべての生物が絶滅して、新たに生命誕生から繰り返される時間はありません。ですから、全球凍結の時代も、生物の多様性は、なんとか保たれたと考えられます。
 すべての海洋が厚い氷に覆われた状態で、生物多様性を保存できる場所があったはずです。そのような避難場所をレヒュージア(refugia)と呼んでいます。レヒュージアの候補として、これまで海洋島などの海域での火山地帯が考えられました。海面に活火山があれば、全球凍結時にもその周辺には凍ることのない海が維持されると考えられます。そのような火山が100個程度あれば、生物多様性が保たれるというシミュレーションもありました。しかし、そのような地質学的証拠は見つかっていませんでした。
 今回、全球凍結時に形成された鉄鉱層で海水プールの存在が明らかになり、そこが新たなレヒュージアの候補にできるのではないかと提案されました。ただし、問題もあります。まず、高濃度の塩分のプールで生き延びられる、特別な生態系が必要です。さらに全球凍結が終わってすぐに、通常の光ある温暖で塩分濃度が今のような低い状態になった海水に適応して、一気に海洋全体に生物多様性が広がっていき、カンブリアの大爆発できるのかという、生物進化のための期間の短さへの疑問もあります。なにより、証拠が必要になるのですが、幸い鉄鉱層という地層があるので、そこで化石や生物の痕跡を探すことで、証拠がえられるかもしれません。それは今後の課題です。

・多様な環境・
全球凍結の時代において
レヒュージアは不可欠な条件です。
カンブリア紀の大爆発という生物の多様性と
全球凍結終了後の短い期間を考えると
生物進化が一気に起こる必要があります。
そのため、火山や塩水プールなど多様な環境での
レヒュージアがあったのかもしれませんね。

・術後・
術後の経過がよくなく
再度、治療を受けています。
今週末には、その治療の結果を確認していきます。
その後、数日間、様子をみながら、
体調を整えていく必要があります。
なんとか、これで治まればいいのですが。

2026年9月17日木曜日

1_250 スノーボールアース 8:鉄鉱層

 次の論文は、新しいものです。全球凍結時に残されていた海水温を推定したものです。その時代の海水をどこで見つけ、どのように推定していったのでしょうか。そして、海水温はどのような温度だったのでしょうか。


 もうひとつ、新しい論文を紹介します。これは、2026年のNature Communications誌に掲載されたLuさんたちの共同研究での報告です。
Extremely cold ocean temperatures in iron formation brine pools of snowball Earth
(全球凍結の鉄鉱層の塩水プールにおける極めて冷たい海水温)
というタイトルでした。この論文では、全球凍結時の海水の温度を推定しています。
 全球凍結時の海水を調べるには、その時代の海水の手に入れなければなりません。ただし、過去の海水は残っていないので、海水と密接に関係した地層を見つけ、そこから温度を推定していくことになります。
 原生代後期(クライオジェニアン紀 Cryogenian 7億2000万から6億3500万年前)には、鉄鉱層(Cryogenian Iron Formation CIFと略されています)が広く分布していことが知られています。鉄鉱層は、海水に溶けていた鉄イオンが条件変化によって化学的に沈殿してできました。全球凍結時、海洋はすべて凍結していたので、海氷に下に残っていた海水の状態を調べること素材となります。これが、タイトルの「全球凍結の鉄鉱層」の意味です。
 鉄鉱層は、主に菱鉄鉱(シデライト、FeCO3)や赤鉄鉱(Fe2O3)などの鉄鉱物が沈殿してできています。酸素の多い環境では、Fe3+が赤鉄鉱として沈殿し、酸素が少ないとFe2+が多くなり菱鉄鉱が沈殿します。氷床下の海洋がFe2+が多く、還元的な状態であったことになります。これは、全球凍結によって海面に海氷ができ、光合成ができず、還元的環境になり、Fe2+が増えていったと考えられます。
 水温は、鉄鉱層を構成している鉄鉱物の同位体組成から推定されました。一般に、溶液と沈殿した結晶(鉱物)の間の同位体比の差を調べることで、結晶が形成されたときの温度を逆算できます。結晶が沈殿するときは、温度が低いほど、軽い同位体のほうが取り込まれやすくなります。このような変化を同位体分別といいます。この性質を利用して計算したものを、同位体温度計と呼んでいます。
 【軽い同位体/重い同位体】という比を取ることで、温度が低いほどこの値が高くなります。標準の試料と試料の値の比(比)の1からのズレ(偏差)を計算します。ズレの桁によって、100分率(% パーセントで表す)、1000分率(‰ パーミル)、1万分率(ε イプシロン)などで表します。
 鉄には主に54Feと56Feの安定同位体があります。海水から鉄イオンから、鉄鉱物が沈殿するときは、温度が低いほど、軽い同位体(54Fe)のほうが取り込まれやすくなります。鉄の場合は、偏差を1000分率(‰)にしたδ56Feは、温度が低いほど高くなります。
 今回測定された鉄鉱層のδ56Feは、+0.94‰と非常の高い値となり、そこから-15.0±7℃という低い温度が計算されました。つまり、鉄鉱層を沈殿させた海水温が-15℃であったということを意味します。
 通常の海水はマイナス1.9℃ほどで凍ります。ところが、非常に塩分濃度の高い塩水(ブライン brine)では、凍ることなく液体の状態が維持できます。そのような海水がプール状にあることで、鉄鉱層が沈殿したと考えられます。これがタイトルの後半「塩水プールにおける極めて冷たい海水温」の意味するところです。
 このプールの存在は、別の大きな意味ももっています。それは次回としましょう。

・後期の準備・
大学では、来週から後期がはじまります。
後期は、前期とは別のキャンパスでの講義です。
これまでいた馴染みのあるところです。
ところが、退職してからは、
組織体制に伴い部署の改編があり
部屋も大幅な配置替えがありました。
そのため、非常勤講師の部屋や
仕組みも変更になっています。
新しい体制になってから一度もいっていないので
一週間前に一度訪れて、様子を見がてら
レジメの印刷をしておこうと考えています。

・不調の改善・
術後の調子がまだよくないので、
先日医者にいって、薬を処方してもらい
それを飲んだら一気に楽になりました。
不調が残っていますが
体調がだいぶ楽になりました。
ところが、数日して薬が合わないことがわかってきました。
再度診察を受けることにします。
まだ無理はできませんね。

2026年9月10日木曜日

1_249 スノーボールアース 7:衝突原因説

 このシリーズでは、全球凍結の発見やその原理に関する研究を紹介してきました。以降は、最近発表された論文を2編紹介していきます。まずは、その発生原因についての新しい仮説の論文です。


 全球凍結への契機を、超大陸分裂による二酸化炭素の減少、巨大火山の活動や生物による急激な酸素形成など、いろいろな仮説がありました。
 それぞれに課題がありました。風化による二酸化炭素の減少による寒冷化モデルでは時間のかかりすぎ、巨大火山も年代が必ずしも一致してない、ケイ酸塩の風化は寒冷化へ向かわない(負のフィードバック)、また低緯度の大陸配置は条件を整えるだけで直接原因ではないとうい可能性もあることなど、いろいろ課題があることも指摘されていました。
 巨大衝突によって地表全体の反射率(アルベド)が急激に変化すれば、全球凍結が起こる可能性が示唆されていました。今回紹介する論文では、全球凍結に至る原因として、天体の衝突のモデルでのシミュレーションがなされました。フー(Fu)さんたちの共同研究で、2024年のScience Advances誌に掲載された
Impact-induced initiation of Snowball Earth: A model study
(衝突によって誘発されたスノーボールアースの発生:モデル研究)
というタイトルの論文です。
 天体としては、K-Pg境界で恐竜などの大絶滅を起こした天体(直径10km程度)が衝突したと想定しています。衝突で、硫黄を含む岩石の成分が、成層圏へと吹き飛ばされ、日光を反射する硫酸塩エアロゾルが形成されます。その結果、太陽光の入射量が減ります。その状態を前提として、その後の変化を、4つの条件でシミュレーションがおこなわれています。
 4つの条件とは、工業化がおこなわれる前(前工業期)の状態、最終氷期のもっとも寒冷な状態(最終氷期最盛期)、白亜紀のような高い二酸化炭素の濃度の温暖な状態、そして原生代後期(7億2000万年前)頃の高い二酸化炭素濃度(1500 ppm と 750 ppm の2つ)の状態で、それぞれでシミュレーションがなされています。
 もともと地球が温暖な時期(前工業期や白亜紀など)であれば、熱容量が大きいため深海は温暖なままで、海洋全体が凍結温度に達することなく、異変も10年ほどで回復することがわかりました。原生代後期でも二酸化炭素が多ければ、全球凍結には至りませんでした。低緯度の大陸分布状態でも全球凍結に至らないという結果は、大陸分布よりも海洋温度が支配的要因であることになりそうです。
 また、最終氷期最盛期の寒冷な時期や原生代後期で二酸化炭素が少なければ、全球凍結に至ります。その暴走冷却は速く、わずか10年足らずのうちに、海氷が赤道まで到達します。いったん海洋全体が氷で覆われると、太陽光の大部分(60%程度)が、宇宙へ反射されてしまいます。天体衝突に舞い上がった塵が収まっても、極寒の状態が維持されます。数100万年以上にわたる全球凍結へと突入します。
 このような主張に対して、大型天体の衝突の確率が低いこと、新期原生代には隕石衝突の痕跡がない、などの反論が想定されます。それに対して、論文で事前に説明しています。
 衝突の発生確率については、直径5km以上の天体は4000万年に1回は起こると推定されています。衝突は珍しい現象ではないことになります。衝突の地質学的痕跡ですが、海洋で衝突したらその痕跡は残りませんし、クレーターができても浸食や沈み込みなど地質学的改変で失われる可能性が高いはずです。もっとも確実な証拠となる、衝突で飛び散った放出物は、発見されていません。これは、大きな問題点となります。
 硫酸塩や炭化水素に富む岩石は、地表では13%程度を占め、そこに衝突すればエアロゾルとなって強い冷却を起こせます。顕生代には、5000万年ほどの氷期となっている条件があるので、それを地球史でみれば、33億年に1回は氷期の起こる確率となり、25億年前以降に少なくとも53%の確率で、1回はなっていた考えられます。
 全球凍結の他のメカニズムと比べると、衝突によって誘発されると、堆積物の蒸発から、大気中の二酸化炭素が急増しますが、1000 ppm程度が増加しても、海氷形成に影響しないという結果がでてきました。そして、全球凍結が一気に進むことで、中緯度の氷河堆積物が乏しい可能性が指摘されています。
 これまでスノーボールアースの原因は、超大陸の分裂による二酸化炭素の減少と巨大火山活動などが主流でしたが、天体衝突という要因の可能性が提唱されたことになりました。

・確率の値・
この論文の条件では、第四紀の更新世で、
もし10kmの天体の衝突が起きていれば
全球凍結にになった可能性が指摘されています。
その確率は250分の1だとのことです。
この確率は低いのでしょうか。
数値を示されても判断できるのでしょうか。
これは、地震の発生確率の提示と
似た状況ではないでしょうか。

・風邪の不調・
術後の体調不良がある上に
風邪による体調不良も加わりました。
わが町では、インフルエンザが流行っているようですが
ここ2週間、自宅を一歩もでていません。
熱もでていませんし、筋肉痛もありません。
インフルエンザではなさそうです。
ただ、風邪気味での不調です。
まあ、無理をせず、安静にしていくしかないようです。

2026年9月3日木曜日

1_248 スノーボールアース 6:原生代前期の全球凍結

 全球凍結に関する研究の精度が高くなってくると、一度ではなく、二度の氷期があったことがわかってきました。また、原生代前期にも大規模な氷期があったかもしれないこともわかってきました。


 全球凍結の時期は、地質学的証拠から、7億から6億年前の間におこっていました。地質時代としては、原生代後期のクライオジェニアン(Cryogenian 約7億2000万〜6億3500万年前)と呼ばれる時期でした。この時期には、超大陸ロディニアが赤道付近に広がっており、海がそれ以外の極地まで広がっていました。そして、超大陸が分裂をしていくという特別な状態にありました。そんな時、全球凍結が起こりました。
 全球凍結の研究が進んていくと、年代測定の技術の進歩で年代分解能が上がってきたことで、この時期に、全球凍結が2回起こっていたことがわかってきました。最初はスターティアン氷期(Sturtian)で、後はマリノアン氷期(Marinoan)と名付けられています。
 スターティアン氷期は、7億1700万から6億6000万年前に起こった、非常に規模な氷河期だと考えられています。マリノアン氷期は、6億5000万から6億3500万年前で、こちらの全球凍結は確実性が高いと考えられています。
 そして、もうひとつ、もっと古い時代にも、全球凍結があったあったのではないかと考えられています。それは、原生代前期の24億4000万から23億年前に起こった、ヒューロニアン氷期と呼ばれています。
 20世紀初期に、カナダ(オンタリオ州周辺)の地層の研究で、氷河性堆積物(氷堆積物、モレーン様堆積、氷成砕屑など)や氷河に伴う層序などが発見され、大規模な氷期があったと考えられました。その後、1970年代までには、氷河性堆積物が、カナダだけでなく南アフリカや西オーストラリアなどでも発見されたことから、広域に分布することが明らかになり、「原生代前期の大規模氷期」としてヒューロニアン氷期が提唱されてきました。
 1980年代には、ジルコン年代やより詳細な層序の研究が進み、少なくとも3回の氷期が繰り返されたと考えられるようになってきました。さらに、この時期以前までは、二酸化炭素が主となっていた大気から、急激に酸素が増える出来事(大酸化事変:GOE Great Oxidation Event)が起こっていました。そのような大規模な環境改変が、冷却のきっかけのひとつとなったと考えられました。
 21世紀になるとGOEと氷期の関連が詳しく調べられてきました。関連は強くあったようなのですが、それだけが原因でなく、大陸配置、火山活動、海洋循環などが複合的に関与していたと考えられるようになってきました。現状では、完全な全球凍結であったかは議論中です。局所的か半全球くらいの氷床の広がりであったという証拠もあるようで、未解決です。
 シリーズで全球凍結に関する研究を見てきました。現在の地球を調べる斉一説では、説明できない出来事が、過去には起こっていることがわかってきました。地質学では、ある時代の地層が証拠として存在するために、斉一説にとらわれることなく、詳細に調べていくことができます。それが過去の実物を対象とする学問の強みです、ただし、証拠がない時代や地域については、検証不能です。

・未踏の領域・
1837年にアガシーが氷河期を提唱して、
190年ほどしか経過していません。
そこから、氷河期と間氷期の繰り返し、
また現在の氷期を遥かに越える全球凍結、
そしてその繰り返し、
さらに20億年も前にも起こっていた
全球凍結らしきものまでわかってきました。
地質学は地球の過去を探求してきました。
その探求はまだまだ未踏の領域が
多くありそうです。

・安静中・
9月になりました。
予想以上に、術後の回復が長引いています。
まだ、不調が続いています。
退院後、ウォーキングにて体調を崩して以降、
デスクワークを無理せずみして、
疲れたすぐに横になるようにしています。
2週間は、自宅で安静にしています。
多分体力が落ちているのでしょうね。