2026年10月29日木曜日

3_241 付加体の蛇紋岩 5:アウターライズ断層

 今回は、紀伊半島の限られた地域の研究です。そこから一般的な仮説を見いだせれば、その仮説はいろいろな地域、時代へ、そして他分野への適用できます。科学の仮説にはそのような効力があります。


 四万十帯は、島弧の海側のできた付加体で、浅いところにできたものでした。そこに海洋マントルに由来した蛇紋岩が、上昇してきていることにがわかってきました。どのようにして上昇してきたかも、論文では考えています。
 中央部の高見山地の周辺での地質調査が進められました。調査地域の蛇紋岩は、付加体の地質構造を切って貫入しています。これは、付加体が形成された後(より新しい時代)に、断層で割って蛇紋岩が入ってきたことになります。これは、重要な情報になります。
 露頭を観察すると、蛇紋岩が付加体に長さ150m以上、最大幅10mの板状の岩体として貫入しています。貫入の接触部に沿って、激しい交代作用により滑石岩(マグネシウムを含む粘土鉱物)が形成されています。この滑石も蛇紋岩とともに、付加体の地質構造を切っており、蛇紋岩が付加体形成後に貫入し、そのとき滑石も形成されたことになります。
 滑石の形成は、付加体の玄武岩から蛇紋岩に向かって、珪酸(SiO2)と二酸化炭素(CO2)が多く、そしてカルシウムも少し入りこんでいることになります。このような元素の移動は、通常の変成作用では起こりません。滑石は、蛇紋岩の中にできた網目状の割れ目にも形成されています。ですから、ケイ素と炭素を多く含んだ流体が、外部から流入したことになります。
 境界部にできた、網目状の割れ目を解析したところ、沈み込むプレートの境界に沿って起こる力(応力と呼ばれる)でできる断層(逆断層)だと分かりました。そこから、海洋マントルが蛇紋岩化して、上にあった付加体の中に、いくつもの流動的岩石として上昇した(ダイアピルと呼んでいます)と考えました。
 このような多数の断層ができる場は、沈み込む直前に海洋プレートで定常的に形成される断層(外縁隆起断層、あるいはアウターライズ断層)と考えられるとしています。そのような場には流体も多くあり、それに伴った変質作用も起こるとはずです。
 断層群の解析から、断層の形成は、水平圧縮力定常的にかかっていた場であることがわかってきました。流体が入り込んで交代作用がおこれば、体積も増えていったはずです。それにもかかわらず、断層群は沈み込む海洋プレートが押しているような場であったことを示しています。
 このような考察の結果、志村さんたちの論文では、次のようなモデルを提案しています。海洋プレートが沈み込む直前に曲げられるために、「アウターライズ断層」が形成されます。その断層に沿って流体が海洋プレートの深部まで入っていきます。そして海洋マントルのカンラン岩が蛇紋岩化していきます。これは、すでに知られていることです。
 この蛇紋岩が、アウターライズ断層に沿って上昇していき、海洋プレートが沈み込んだ島弧プレートの前面の付加体にまで貫入していったと考えました。
 この論文は、紀伊半島の四万十帯という限られた地域の地質調査の結果から書かれた論文です。しかし、えられた結果を新しい付加体と一般的な仮説とすること、地球全体へと敷衍できることになります。その仮説は、他地域で検証することで確かめることができます。また、付加体を地震探査などの別の手段での検証もできるでしょう。また、蛇紋化や滑石化の仮説も提示されているので、地球化学的な敷衍や検証もできることになります。
 事例からの抽象による仮説、その仮説の別事例での検証という科学の営みのひとつの例になりますね。

・秋深し・
北海道は、秋が深まってきました。
先日、冷えた日がありました。
その日には北海道の各地で初雪や
峠の積雪のニュースが流れてきました。
その翌日、わが町から見える手稲の山並みに
初冠雪がありました。
里の木々も多くは紅葉が終わりつつあります。
秋が深まってきました。

・QOLを目指して・
今月も医者通いが続いています。
人間ドックの再検査で内科にいき
インフルエンザのコロナのワクチン接種しました。
先週はコロナワクチンの副反応には
3、4日ほど苦しみました。
今週は、眼科、泌尿器科、内科での精密検査と
たくさんの医者にいっています。
しかし、これも今後のQOLをよくするために
常用薬を減らすのに繋がっていくはずです。

2026年10月22日木曜日

3_240 付加体の蛇紋岩 4:クロムスピネル

 付加体中にある蛇紋岩は、カンラン岩が変質したものです。カンラン岩はマントルを構成している岩石ですが、大陸と海洋のマントルでは異なった性質をもっています。どちらのマントルに由来した蛇紋岩でしょうか。


 志村さんたちの論文は、紀伊半島中央部の四万十帯中の蛇紋岩がどのようなマントルに由来したかを検討していました。
 島弧には、付加体として海洋プレートと、陸側には島弧として厚い地殻をもった大陸プレートもあります。島弧の地下には、海洋と大陸の両方のマントルが地下に存在しています。ですから、付加体の蛇紋岩には、両方からのマントルから由来している可能性があります。
 四万十帯の付加体より陸側には、三波川変成岩類があります。三波川変成岩類も、じつは付加体であることがわかってきました。ただし、付加体が深いところまで(地下20 km以深)持ち込まれて、高温低圧変成作用を受けたものが上昇してきたものです。四国の三波川変成帯の研究では、その中にある蛇紋岩が、大陸のマントルに由来していることが示されていました。
 今回は、四万十帯の中にある蛇紋岩が、海洋マントル由来だと判定したという報告でした。ただし、四万十帯のような浅い場所で形成された付加体に伴う蛇紋岩が、どのようなマントルから、どのようにして付加体に取り込まれたのかはわかっていませんでした。浅いところで形成された付加体は、多くの島弧で観察されていて、そこには蛇紋岩があります。その蛇紋岩の由来が解き明かせることにもつながります。
 蛇紋岩は、リザルダイトと呼ばれる粘土鉱物からできています。この鉱物には、蛇紋岩になる前のカンラン岩中に形成された鉱物(クロムスピネル)が残っていました(relict、レリクトと呼ばれます)。
 クロムスピネルは、その化学組成から、由来したマントルや火成作用できた玄武岩が区分できることがわかっています。クロムスピネルの主成分である、クロム(Cr)、鉄(Fe3+)とマグネシウム(Mg)で、海洋マントルと島弧の前のマントルが推定できます。そして、副成分であるチタン(Ti)の比率から、玄武岩(成熟した島弧、未成熟の島弧、中央海嶺)のなどが区分できます。さらに、変質作用で動きにくい岩石の微量な化学成分(ジルコン、イットリウム、ニオブ、ヴァナジウム)などを利用して、同様に由来したマントルが区分されてます。
 四万十帯の蛇紋岩のクロムスピネルと岩石の化学組成の区分から、海洋マントルのカンラン岩から起源だと判定されました。これは、浅いところに形成される付加体の下には、海洋プレートがあるので、そのマントルのカンラン岩が蛇紋岩化したことになります。
 四万十帯の付加体は、弱い変成作用しか受けていないので、それほど深部には持ち込まれていません。浅いところに形成された付加体に、どのように蛇紋岩が上昇してきたかの機構も不明です。この論文では、上昇機構も推定しています。それは次回としましょう。

・秋の深まり・
北海道は一気に秋が深まっています。
紅葉は不揃いに進んでいますが、
かなり葉を落としてきました。
10月上旬は、もう大雪山では
初雪、それも吹雪の報告がありました。
北海道はいよいよ秋も深まってきました。

・体力拡幅のため・
術後の回復のため、
ウォーキングを再開しています。
最初は、以前の半分以下の2、3kmほどからはじめ、
様子をみんながら少しずつ距離を伸ばしています。
最近、やっと4、5kmほどへと伸ばしてきました。
衰えた筋肉も少しずつ回復させるべく
少しですが筋トレもしています。
しかし、まだプールにいくほどには体調は戻っていません。
無理せず、少しずつですね。

2026年10月15日木曜日

3_230 付加体の蛇紋岩 3:メランジュ

 沈み込み帯では圧縮力が働いており、付加体には多数の断層が形成されます。大きな断層では、マントルに達するものがあります。断層から水が供給されると、マントルの岩石が蛇紋岩になります。蛇紋岩に秘密があります。


 沈み込み帯では、2つのプレートがぶつかっているため、圧縮する力が常にかかっている場となります。その力によって、島弧側に堆積物が集められ、付加体ができることを、前回、紹介しました。また、付加体にメランジュというものができることを示しました。
 付加体では、剥ぎ取りが起こる時、強い力がかかり、断層とともに岩石が激しく変形していくところができます。大きな断層帯で、複雑な変形した構造をメランジュと呼んでいます。
 大きな断層には、深部のマントルに達するものもあります。そして断層にそって水が、マントル物質に加わりますと、マントルのカンラン岩と水が反応して、蛇紋岩と呼ばれる岩石ができます。
 蛇紋岩は、マントルのカンラン岩や地殻の岩石と比べても密度が小さく、そして滑りやすい性質を持っています。メランジュの中に蛇紋岩ができると、断層帯の中を蛇紋岩が上昇してきます。その時断層帯周辺にあった岩石を持ち上げてきます。メランジュは、蛇紋岩に伴ってこのような起源の異なった多様な岩石が見つかることが特徴となります。
 メランジュ中の岩石には変成岩もあり、そこから変成作用の条件(温度や圧力など)を調べることができます。変成作用の内、もっとも高温高圧の条件より深いところから、蛇紋岩が由来したことになります。また、蛇紋岩でも、カンラン岩にあった鉱物が残っていることもあるので、そのような残存鉱物からもマントルの性質を調べることもできます。
 では、蛇紋岩のもととなったマントルは、大陸プレート由来か海洋プレート由来かどちらでしょうか。その由来について検討した論文が報告されました。名古屋大学の志村さんたちの共同研究で、2026年7月のTectonics誌に、
 Shimura et al 2026 Origin, Tectonic Processes, and Metasomatism of Serpentinite in the Shimanto Accretionary Complex, SW Japan: Possible Diapiric Intrusion of Serpentinized Oceanic Lithosphere
(西南日本、四万十付加体における蛇紋岩の起源、構造過程、および変成作用:蛇紋岩化した海洋リソスフェアのダイアピル貫入の可能性)
というタイトルで掲載されました。少々長いタイトルですが、次のような意味があります。
 西南日本には、海側から新しい時代の付加体から古いものへと順番に分布しています。海に近い四万十帯は、新しい付加体から形成されています。その中にメランジュとして蛇紋岩があります。上昇してきた蛇紋岩をダイアピルと呼んでいます。志村さんたちは、紀伊半島中央部の四万十帯中の蛇紋岩の分布や産状を調査し、その蛇紋岩のもととなったカンラン岩が、海洋マントル由来だと判明したという論文になります。
 その詳細は、次回としましょう。

・体力の衰え・
先日帰省して、墓参りとともに、
いくつかの打ち合わせをしてきました。
術後はじめての遠出となりました。
体力が落ちてい上に、
久しぶりの大移動や運動で、
体力的には厳しいものでした。
弱い腰痛がでて、術部に痛みがでてきましたが、
あまり大事には至りませんでした。
今後は、日々の運動で体力と筋力の回復に
努めていきたいと考えています。

・奇縁・
先日、弟の連絡をとったら、
実家の裏の親戚の家が
ある有名な映画の撮影に使われていると聞きました。
早速その映画を見ました。
食堂、仏間、脇道なども撮影に使われいました。
そして実家の裏も移っていました。
監督が、親族と知り合いであったため
撮影場所として使うようになったそうです。
奇縁ですね。

2026年10月8日木曜日

3_238 付加体の蛇紋岩 2:付加の仕組み

 今回のシリーズで取り上げるのは、付加体の中にある蛇紋岩と呼ばれる岩石の由来です。付加体は、このエッセイでも何度も取り上げていますが、まずはその概要を説明しておきましょう。


 付加体とは、プレートの境界部で、海洋プレートが別のプレート(大陸、島弧、海洋プレートでもいずれでもいい)と沈み込むところに形成されます。大陸プレート、あるいは島弧プレートと海洋プレートなら、海洋プレートの方が密度が大きいために、沈み込んでいきます。海洋プレート同士ならば、古い海洋プレートの方が、海底で冷され、密度も大きくなっているので、新しいプレートの下に沈み込んできます。沈み込まれるプレートにはいろいろな想定ができますが、以下では、沈み込まれるプレートを成熟した島弧としましょう。
 沈み込み起こっているところは、海溝となります。海溝では、海洋プレート本体の大部分は沈み込んでいくのですが、一部の岩石が沈み込まずに剥ぎ取られていきます。海洋プレートの上に堆積した海洋底堆積物(珪質粘土が固まった層状チャート)や、海山の岩石やその周辺のサンゴ礁(石灰岩)、もっと深部の海洋地殻の上部の火山岩(玄武岩、ドレライト、斑レイ岩)なども、剥ぎ取られることがあります。
 剥ぎ取られた岩石は、沈み込まれたプレート側(大陸、島弧、新しい海洋地殻)に、押し付けられています。プレートが運動し、沈み込みが続く限り、この現象は継続していきます。このような沈み込まれたプレート側に加わっていく堆積物を付加体といいます。
 沈み込まれたプレートが島弧や大陸であったら、陸地で侵食され、海に運搬された土砂からなる堆積物も海溝付近まで達します。このような陸源の堆積物からできた地層をタービダイト層と呼びます。その堆積物も付加体に追加されていきます。大陸や島弧のプレートに沈み込みが起こると、付加体が大量に形成されていきます。
 付加する前の海洋プレートは、上から順番に陸源砕屑物、層状チャート、海洋地殻、マントルからなる岩石の並びができます。そのような地層の並びを海洋プレート層序といいます。この海洋プレート層序が、島弧側に付加していくことになります。
 浅いところで剥ぎ取られた地層は、島弧プレートに押し付けられ、海側へと積み重なっていきます。剥ぎ取られた地層は、もともとの層序が断層で切れて斜めに陸にくっついていきます。付加が継続していくと、断面がくさび型をした堆積物の集まり(付加プリズム)になっていきます。付加プリズムが、次々と海側に成長していきます。
 さらに、海洋プレートが島弧プレートの下に沈み込んでからも、剥ぎ取られることもあります。その時、逆断層によってスライス状に切り取られて、島弧プレートの底に、下から押し付けられていく現象が起こります。これを、底付け付加(アンダープレーティング)と呼びます。底付け付加が起きると、付加体の下に新たに二重構造(デュープレックス構造)付加体が形成されていきます。
 沈み込みが形成されていくと、古い付加体が陸に押し上げられていき、陸地に顔を出すことになっていきます。日本列島が複雑な島弧になっているのは、過去の古い付加体から、現在進行中の付加体まで、何度も繰り返し島弧形成が起こる場です。付加体の成長は海側に島弧(大陸)地殻が成長していくことを意味します。
 日本列島では、いろいろな時代の付加体を観察することができ、地の利があります。

・帰省・
このエッセイは、京都に帰省、直後なので
予約配信しています。
京都はオーバツーリズムがいわれ久しいです。
交通手段が常に混んでいます。
移動には、路線を選ぶ必要があります。
食事をする場所も注意しないと
高価な店も多いので、
庶民的なところを探す必要があります。
昨年の帰省でも、それらで苦労しました。
今回も苦労しそうです。

・術後の回復・
先日、術後の回復治療を終えました。
治療直後から1、2日は不調でしたが、
3、4日したら体調がもどってきました。
2ヶ月ぶりに体調が戻りつつあります。
おおかげで、京都への帰省もなんとかできます。
ただし2ヶ月も安静にしていたので
体力や筋力が明らかに落ちています。
帰省中は急に体力を使うことになるので、
無理をしないようにしたいと思います。

2026年10月1日木曜日

3_237 付加体の蛇紋岩 1:島弧とは

 付加体と呼ばれる地質体が、日本列島のような地域には特徴的になっています。そこには蛇紋岩も見つかることもよくあります。今回は、付加体中の蛇紋岩の話題です。


 日本列島は、地質学的に特徴的な地域になります。多くの列島が共通してもっている特徴と、日本列島だけがもっている固有の特徴もあります。ここでいう列島とは、地質学では「島弧」と呼ばれるものとします。
 島弧が持っている特徴とは、列島に並行して、多数の活火山をともなった列島からなり、全体の地形が弧状になっています。本州は島弧の典型となり、成熟した島弧と呼ばれ、伊豆から小笠原諸島(伊豆・小笠原弧)や南西諸島(琉球弧)は、未成熟な島弧(あるいは海洋島弧)と呼ばれています。
 列島の大地には、古い岩石から新しい岩石まであり、岩石の種類も堆積岩、火成岩、そして変成岩と多種になっており、その地質学的構造も多数の断層で切られた複雑なものになっています。堆積岩が断層で規則的に切られて並んでいる付加体も、島弧を構成する典型的な地質体となります。
 海側には、海溝が列島と並行してあります。列島の海と反対側には、小さな海(縁海)を挟んで、大陸があります。時には、縁海がなく、島弧が大陸の縁に形成されていることもあります。チリの太平洋側が、その典型となり、陸弧と呼ばれています。
 以上が、多くの島弧に共通した特徴となります。次に、日本列島固有の特徴を見ていきましょう。それは、非常に多様な島弧が、複雑につながっている点です。
 本州はフォッサマグナを境にして、西側を西南日本弧、東側から日高山脈までを東北日本弧と呼びます。これらは成熟した島弧となります。伊豆・小笠原弧、琉球弧は海洋島弧となり、北海道の日高山脈の東側は千島弧となり、成熟島弧から海洋島弧と変化します。そして、丹沢周辺は伊豆島弧が本州に、日高山脈は東北島弧と千島弧が衝突したところとなっています。
 このように日本列島は、島弧として典型的なものがいくつかあり、多様なものが複雑に絡み合っているという固有性ももつとこにとなっています。日本列島で島弧の研究をすることは、日本の地質学者がにとっては、非常に地の利をえていることになります。実際に、日本の地質学者が中心なり、島弧の実態を明らかにするために研究を進めてきました。ただし、概略はわかってきたのです、詳細はまだまだ不明なところがあります。
 今回は、付加体の内部の蛇紋岩と呼ばれる岩石の研究を紹介していきましょう。

・経過観察・
術後の回復期が長引いています。
現在、最終処理の経過観察の時期です。
1週間ほど様子を見ていくことなっています。
週末から来週にかけて
京都へ帰省する必要があるのですが
もし問題がなければ、いけるはずです。
でかけたとしても、
無理することはできそうにありませんが。

・妻の里帰り・
妻が、現在、1週間の里帰りをしています。
一人暮らしとなりました。
まあ、無理はできないので、
淡々と日々を過ごすことになります。
ただし、授業や人間ドックがはいっているので
どうしても、それぞれで半日は
外出することになりますが。

2026年9月24日木曜日

1_251 スノーボールアース 9:レヒュージア

 全球凍結で、すべての海面が凍った環境でも、生物は生き延びてきたはずです。全球凍結の後に、カンブリアの大爆発と呼ばれる生物の激しい多様性の形成が起こったからです。生物の多様性は、どのように維持されたのでしょうか。


 全球凍結時に、鉄鉱層が各地で形成されていたということは、鉄イオンの沈殿が起こったことになります。鉄が化学的に沈殿するには、海氷の下に液体の海水があったことになりますが、その海水の温度が-15℃であったと推定されました。塩分濃度が非常に高かったため、このような低温でも凍ることなく液体として存在していたと考えられました。ただし、すべての海の水が塩分濃度が高かったのではなく、プール状に濃い部分が存在したと考えられました。
 凍らない塩水プールが各地に存在したということは、別の意味をもっています。生命進化において、全球凍結の期間、生命が生き延びるための重要な場になってくる可能性があるからです。
 38億年前に生命が誕生しました。また、20億年前には酸素を発生するシアノバクテリアが大量発生し、それまでの還元的な環境から、酸化的な環境へと大きくかわりました。そんな激変も生命は生き延びました。原生代の全球凍結の前には、多くの種類の生物の痕跡が見つかっており、20億年以上の長い時間をかけて、多様な生物種が多様な生態系ができていたことになります。
 全球凍結が終わり、温暖な状態が訪れた時(カンブリア紀がはじまるころ)、爆発的に生物進化(カンブリアの大爆発)が起こりました。全球凍結ですべての生物が絶滅して、新たに生命誕生から繰り返される時間はありません。ですから、全球凍結の時代も、生物の多様性は、なんとか保たれたと考えられます。
 すべての海洋が厚い氷に覆われた状態で、生物多様性を保存できる場所があったはずです。そのような避難場所をレヒュージア(refugia)と呼んでいます。レヒュージアの候補として、これまで海洋島などの海域での火山地帯が考えられました。海面に活火山があれば、全球凍結時にもその周辺には凍ることのない海が維持されると考えられます。そのような火山が100個程度あれば、生物多様性が保たれるというシミュレーションもありました。しかし、そのような地質学的証拠は見つかっていませんでした。
 今回、全球凍結時に形成された鉄鉱層で海水プールの存在が明らかになり、そこが新たなレヒュージアの候補にできるのではないかと提案されました。ただし、問題もあります。まず、高濃度の塩分のプールで生き延びられる、特別な生態系が必要です。さらに全球凍結が終わってすぐに、通常の光ある温暖で塩分濃度が今のような低い状態になった海水に適応して、一気に海洋全体に生物多様性が広がっていき、カンブリアの大爆発できるのかという、生物進化のための期間の短さへの疑問もあります。なにより、証拠が必要になるのですが、幸い鉄鉱層という地層があるので、そこで化石や生物の痕跡を探すことで、証拠がえられるかもしれません。それは今後の課題です。

・多様な環境・
全球凍結の時代において
レヒュージアは不可欠な条件です。
カンブリア紀の大爆発という生物の多様性と
全球凍結終了後の短い期間を考えると
生物進化が一気に起こる必要があります。
そのため、火山や塩水プールなど多様な環境での
レヒュージアがあったのかもしれませんね。

・術後・
術後の経過がよくなく
再度、治療を受けています。
今週末には、その治療の結果を確認していきます。
その後、数日間、様子をみながら、
体調を整えていく必要があります。
なんとか、これで治まればいいのですが。

2026年9月17日木曜日

1_250 スノーボールアース 8:鉄鉱層

 次の論文は、新しいものです。全球凍結時に残されていた海水温を推定したものです。その時代の海水をどこで見つけ、どのように推定していったのでしょうか。そして、海水温はどのような温度だったのでしょうか。


 もうひとつ、新しい論文を紹介します。これは、2026年のNature Communications誌に掲載されたLuさんたちの共同研究での報告です。
Extremely cold ocean temperatures in iron formation brine pools of snowball Earth
(全球凍結の鉄鉱層の塩水プールにおける極めて冷たい海水温)
というタイトルでした。この論文では、全球凍結時の海水の温度を推定しています。
 全球凍結時の海水を調べるには、その時代の海水の手に入れなければなりません。ただし、過去の海水は残っていないので、海水と密接に関係した地層を見つけ、そこから温度を推定していくことになります。
 原生代後期(クライオジェニアン紀 Cryogenian 7億2000万から6億3500万年前)には、鉄鉱層(Cryogenian Iron Formation CIFと略されています)が広く分布していことが知られています。鉄鉱層は、海水に溶けていた鉄イオンが条件変化によって化学的に沈殿してできました。全球凍結時、海洋はすべて凍結していたので、海氷に下に残っていた海水の状態を調べること素材となります。これが、タイトルの「全球凍結の鉄鉱層」の意味です。
 鉄鉱層は、主に菱鉄鉱(シデライト、FeCO3)や赤鉄鉱(Fe2O3)などの鉄鉱物が沈殿してできています。酸素の多い環境では、Fe3+が赤鉄鉱として沈殿し、酸素が少ないとFe2+が多くなり菱鉄鉱が沈殿します。氷床下の海洋がFe2+が多く、還元的な状態であったことになります。これは、全球凍結によって海面に海氷ができ、光合成ができず、還元的環境になり、Fe2+が増えていったと考えられます。
 水温は、鉄鉱層を構成している鉄鉱物の同位体組成から推定されました。一般に、溶液と沈殿した結晶(鉱物)の間の同位体比の差を調べることで、結晶が形成されたときの温度を逆算できます。結晶が沈殿するときは、温度が低いほど、軽い同位体のほうが取り込まれやすくなります。このような変化を同位体分別といいます。この性質を利用して計算したものを、同位体温度計と呼んでいます。
 【軽い同位体/重い同位体】という比を取ることで、温度が低いほどこの値が高くなります。標準の試料と試料の値の比(比)の1からのズレ(偏差)を計算します。ズレの桁によって、100分率(% パーセントで表す)、1000分率(‰ パーミル)、1万分率(ε イプシロン)などで表します。
 鉄には主に54Feと56Feの安定同位体があります。海水から鉄イオンから、鉄鉱物が沈殿するときは、温度が低いほど、軽い同位体(54Fe)のほうが取り込まれやすくなります。鉄の場合は、偏差を1000分率(‰)にしたδ56Feは、温度が低いほど高くなります。
 今回測定された鉄鉱層のδ56Feは、+0.94‰と非常の高い値となり、そこから-15.0±7℃という低い温度が計算されました。つまり、鉄鉱層を沈殿させた海水温が-15℃であったということを意味します。
 通常の海水はマイナス1.9℃ほどで凍ります。ところが、非常に塩分濃度の高い塩水(ブライン brine)では、凍ることなく液体の状態が維持できます。そのような海水がプール状にあることで、鉄鉱層が沈殿したと考えられます。これがタイトルの後半「塩水プールにおける極めて冷たい海水温」の意味するところです。
 このプールの存在は、別の大きな意味ももっています。それは次回としましょう。

・後期の準備・
大学では、来週から後期がはじまります。
後期は、前期とは別のキャンパスでの講義です。
これまでいた馴染みのあるところです。
ところが、退職してからは、
組織体制に伴い部署の改編があり
部屋も大幅な配置替えがありました。
そのため、非常勤講師の部屋や
仕組みも変更になっています。
新しい体制になってから一度もいっていないので
一週間前に一度訪れて、様子を見がてら
レジメの印刷をしておこうと考えています。

・不調の改善・
術後の調子がまだよくないので、
先日医者にいって、薬を処方してもらい
それを飲んだら一気に楽になりました。
不調が残っていますが
体調がだいぶ楽になりました。
ところが、数日して薬が合わないことがわかってきました。
再度診察を受けることにします。
まだ無理はできませんね。