2026年8月6日木曜日

1_244 スノーボールアース 2:全球凍結

 よく知られている氷河期を、はるかに凌駕するものが、かつての地球にはありました。わかったのは1998年のことで、まだ30年もたっていません。地球の歴史には、未知のことがまだまだありそうです。


 アガシーが氷河期を唱えてから、まだ200年足らずですが、その氷河期とは比べ物にならないほどの寒い時期が、あったことがわかってきました。
 その時期の地球を宇宙から見たら、真っ白な雪玉に見えたであろうと推定されています。そのためスノーボールアース(Snowball Earth)、日本語では「全(地)球凍結」とも呼ばれています。スノーボールアースは、地球表層の水がすべて凍ってしまうような状態です。
 最初に見つけたのは、ハーバード大学のポール・ホフマンでした。ホフマンは、アフリカ南東部のナミビアを調査していました。そこには、不思議が地層がありました。約7.2億〜6.4億年前、赤道付近で堆積した地層があったのですが、その中には直径1mくらいの巨大な丸い石が多数ありました。その石は、地層を構成している岩石や周辺の岩石とは、全く異なった関係のないものでした。このような岩石は、「迷子石」と呼ばれていました。通常の堆積作用では決してできないものでした。
 また、迷子石を含む地層の上には、50mの厚さの炭酸塩の地層が重なっていました。キャップカーボネイト(日本語では縞状炭酸塩岩)と呼ばれています。海水中に大量に炭酸塩が溶け込んで、それらが化学的に沈殿してできた地層です。これも不思議な地層でした。
 ホフマンは、赤道付近の海底に溜まった地層内に、迷子石ができたのは、氷河が海に流れ込んで流氷となり、氷が溶けたことで、中に含まれていた岩石が海底に落ちてできたと考えました。
 この地層は赤道付近でたまったものだったので、流氷が赤道まで流れてくるということは、当時赤道まで寒かったことになります。そこからホフマンは、スノーボールアース、全球凍結があったと考えました。
 ホフマンは炭素同位体組成を測定して、生物活動の程度も調べました。炭素同位体の値が低いと生物活動が低下し、高いと活発であることになります。氷河期の前には、値は上昇していたので、この時期、活発な生物活動が起こっていたことになります。
 氷河期直前から値が低下しはじめ、やがてマントル起源(火成活動によって海洋へ炭素が流入)の値に近づいていきました。そして、氷河期終了後も、低い値のままになっていました。氷河期とその終了後には、全地球的に海洋の生物活動がほぼ完全に停止していて、しばらくは回復できなかったことを意味しています。
 温かさがもどって海氷が溶けると、大気中に大量に蓄えられた二酸化炭素が海洋に溶け込んでいきます。海洋の炭酸塩濃度が高くなると、炭酸塩の化学的沈殿が起こり、キャップカーボネイトができたと考えました。
 1998年にホフマンが発表した当時は、信じる人は少なかったのですが、議論や論争を通じて、浸透していき、だんだん信じられるようになってきました。そして、地球史上最大の氷河期として、スノーボールアース、全球凍結が認知されるようになりました。
 認知されるまで、長い時間がかかったのは、科学的に困難さがあったからでした。その問題は時間としましょう。

・ホフマンの業績・
ホフマンの地質学的業績は多数あります。
1988年の論文は、「United Plates of America」というものでした。
プレートテクトニクスで20億年前まで遡ったもので
地質学的には重要な論文でした。
しかし、最初投稿した学術誌では不採用となりましたが、
別の学術誌では高く評価されて掲載されました。
1991年の論文は通称「inside-out」論文と呼ばれています。
3~2 億年前に出現した超大陸パンゲア以前に、
複数回の超大陸の形成・分裂が繰り返される
超大陸サイクルがあることを示しました。
そして、1998年には「Snow Boll Earth」論文が発表されました。
ここでは、大量の地質学的データに基づいて示しされました。
ホフマンは、その業績により
2024年に京都賞を【基礎科学部門】で受賞しています。

・予約配信1・
現在、入院中です。
予定としては、一昨日手術を受けているはずです。
自由に動けているかと思います。
病院でもインターネット環境があるので、
配信可能かもしれませんがどうなるかは不明です。
このメールマガジンは、
事前に予約配信しています。

2026年7月30日木曜日

1_243 スノーボールアース 1:アガシー

 氷河期があったことは、今では誰もが知っています。氷河期の存在がわかったのは、200年足らず前の1840年ころに過ぎません。氷河期が受け入れられるには、いろいろな人が関わってきました。


 ここ1500万年ほど、地球は寒冷化が進んでいることが地質学的にわかっています。そして、数100万年間は、氷河期と暖かい間氷期が繰り返されています。現在は間氷期にあたり、縄文時代(約1万6000年前〜約2300年前)の約7000〜6000年前が最も暖かい時期になっており、年の平均気温が現在より2℃ほど高かったことがわかっています。その結果、日本では、縄文時代に海進(縄文海進と呼ばれています)が進み、海面が現在より約2〜4mも上昇していたことが、関東平野の貝塚の遺跡でも示されています。
 現在は、縄文時代より、平均気温は下がっていますが、まだ間氷期の時期になっています。
 一方、氷河期は、生物にとっては過酷な時代となります。暖かいところへ移動するか、寒さに適応していくしかありません。人類も火を利用して乗り越えました。もし、現在の社会に氷河期が訪れた、文明社会は、深刻なダメージを受けることになっていくでしょう。
 このように氷河期の話題をしても、多くの人は基礎知識として知っていため、理解できます。ところが、かつて氷河期があったことがわかってきたのは、それほど昔ではありません。
 スイスアルプスの民間技師のヴェネツ(Ignaz Venet)は氷河期の証拠を集めていました。中でも迷子石(erratic boulder)の由来が大きな問題となっていました。迷子石とは、周囲の地質とは全く異なった巨大な岩塊が、本来あるはずのない場所に、まるで迷子のようにぽつんと存在しているます。ヴェネツは、迷子石から氷河期説を唱え、報告しましたが、誰にも信じてもらえませんでした。
 ヴェネツは、鉱山技師のシャルパンティエ(Jean de Charpentier)を、最初に説得しました。そして、1836年夏、ヌーシャテル大学教授のアガシー(J. L. R. Agassiz)が、アルプスを訪れた時、シャルパンティエとおそらくヴェネツも同行して、周辺を案内をしました。そして、アガシーに氷河期説を納得させました。
 アガシーは、自身でも野外調査を開始して、先行研究などもまとめ、1837年のスイス自然科学界の年次総会で氷河期について発表しました。その発表は、北半球全体が一つの巨大な氷河で覆われていたという内容でした。発表を聞いた会場は騒然とし、反対意見が多く、論争は3日間続いたとされる「ヌーシャテルの講演」として伝説となっています。
 ヴェネツが正しい説を唱えた時は、だれも見向きもしせず、普及することはありませんでした。ところが、当時すでに著名であったアガシーが発表したため、このように大きな反響が起こり、多くの議論が生まれ、最終的には水戸ラメれることになりました。科学にも、名声が必要ば場面があるようです。
 アガシーは、1840年に「氷河の研究(Étude sur les glaciers)」を出版して、氷河期を理論化や体系化を進めました。この著者は、氷河期を世に広める重要な役割を果たしました。アガシーが野外調査で集めた証拠とは、氷河が下流に向かって移動する時、周囲の岩盤を削ったり(氷河擦痕)、流路の周囲には氷河が溶けて土砂が残ったり(モレーン)、溶けた周辺の地質とが全く異なった迷子石がありました。これらさまざまな証拠から、かつては大陸全体を巨大な氷床が覆っていた時代(氷河期)があったとしました。
 アガシーが氷河期を唱えてから、まだ200年もたっていません。それでも、多くの人は、氷河期が繰り返すことも、現在は間氷期で、もっとも暖かい時代が過ぎたことも知っています。ところが、現在繰り返されている氷河期とは比べ物にならないほどの寒い時期があったことがわかってきました。その詳細は次回としましょう。

・斉一説・
かつて西洋では「大洪水(ノアの箱舟)」などの
聖書に示された考え(激変説)が主流でした。
激変説は、宗教的背景が強くありました。
科学は、観察事実に基づく帰納によって、
現在には想像もできないようなことも証明できる
科学的方法論を構築しました。
これは、斉一説による発見と呼ばれるもので、
近代地質学の基礎ともなりました。
科学による斉一説は、激変説との長い論争を経て
確立されてきました。
氷河期も斉一説に基づく科学的証明でした。

・来週から入院・
来週から、手術のために1週間から10日ほど入院します。
そのため、エッセイを書きだめしています。
2回分は予約配信していくつもりです。
現在の症状は、薬を飲み続ければ対処できます。
しかし、手術でほぼ完治するそうです。
手術は高齢者でも負担が少ないとのことで
講義のない時期に受けることにしました。
現在、常用している薬をやめられる日が
早く来ること願っています。

2026年7月23日木曜日

2_234 アスガルド古細菌 5:marumarumayae

 新たに培養されたアスガルド古細菌は、marumarumayae(マルマルマヤエ)と呼ばれています。MK-D1と似た形態や共生をしていました。より短期間に、より高精細な形態を明らかにし、一歩進んだ解明となっていました。


 ストロマトライトのマットの下層のアスガルド古細菌に着目して、培養されました。2026年4月、ノブス(Nobs)さんたちによって、Current Biology誌に
An Asgard archaeon from a modern analog of ancient microbial mats
(太古に類似した現代版の微生物マットからのアスガルド古細菌)
として公表されました。
 ノブスさんたちも、井町さんたちと同様に、苦労して培養に成功しています。嫌気性の環境で、さまざまな炭水化物やアミノ酸、微量栄養素に、抗生物質も加えて、5年にも渡って培養されてきました。その結果、アスガルド古細菌が濃縮されてきました。その中に、ロキ城の熱水噴出孔でみつかったアスガルド古細菌(MK-D1)と似ているものが見つかり、Loki-ASV2と命名されました。
 また、新種となるアスガルド古細菌(Nerearchaeum marumarumayae)も見つけて、最大89%の高濃度で培養することに成功しました。この新種は、Nerearchaeum marumarumayaeと命名されました。
 Nerearchaeum(ネレアルカエウム)がギリシャ神話の海神Nereusと、古細菌を意味するarchaeumを組み合わせたもので、marumarumayae(マルマルマヤエ)は、シャークベイ地域の先住民であるマルガナ人(Aboriginal Malgana)の言葉で「古代の故郷、または古代の家」を意味しています。
 そして、このmarumarumayae古細菌は、硫酸還元バクテリアと共生していることも明らかになりました。marumarumayaは、水素(H2)、酢酸、ギ酸、亜硫酸などがつくれました。共生している硫酸還元バクテリアは、アミノ酸やビタミンを合成していることもわかりました。
 電子線クライオトモグラフィーという手法が用いて、marumarumayaeの形態も、明らかにされました。この手法は、液体窒素や液体ヘリウムで、生きた状態のままの細胞や高分子を氷で包み込み、電子顕微鏡で三次元的に撮影して立体構造として表現していきます。ナノメートルスケールで、細胞と構造体を可視化しました。
 前に紹介したMK-D1と同様に、marumarumayae古細菌は、小胞を多数放出し連なり、繊維状の突起が小胞とつながっていました。新たにmarumarumayae古細菌と硫酸還元バクテリアが「細胞間ナノチューブ」で直接つながっていることもわかってきました。これは、両者が細胞間の管状繊維を通じて、硫酸還元バクテリアが、直接相互作用できることが明らかになりました。
 そこから上記のmarumarumaya古細菌は水素や亜硫酸などを与え、バクテリアはアミノ酸やビタミンを供給していると考えられるようになってきました。共生の実態が、より詳しくわかってきました。
 井町さんたちが示した、アスガルド古細菌が真核生物へと進化していく途上の姿を示しているというモデルを考えました。井町さんたちのモデルでは、ミトコンドリアを取り込むタイミングや必然性が未解決でした。ノブスさんたちのモデルなら、ストロマトライトのマットがあるので、好気性と嫌気性の境界付近には酸素が少量存在する環境(微好気性)があります。そこでは、ミトコンドリアの祖先となるバクトリア(アルファプロテオバクテリア)が生存可能となり、アスガルド古細菌と共生すれば、真核生物へと進化できます。
 後発のノブスさんたちのモデルが有力そうに見えますが、まだまだわからないこともあります。しかし、今回紹介したように、現生の生物を用いて、大きな進化の過程を明らかにできるのは、非常に興味深いですね。

・資金力・
電子線クライオトモグラフィーという手法は
使ったことはありません。
論文に示された図を見ていると、
高解像度で、まるで生きている状態で
観察しているような写真が
多数掲載されています。
すいごい説得力のある画像となっています。
しかし、このシステム本体も高額で
維持費も膨大になるそうです。
いい研究にも資金力がものをいう場合もありますね。

・マンパワー・
古細菌の培養には、大学院たちのチームとして
長年培養を続けてきたそうです。
このようなチームワークのおかげで、
5年で単離できたのかもしれません。
井町さんは、ほぼひとりで培養を継続していたので、
12年以上かかっています。
研究を一気に進めるには
マンパワーも重要ですね。

2026年7月16日木曜日

2_233 アスガルド古細菌 4:ストロマトライト

 新たにアスガルド古細菌の培養に成功例が報告されました。その古細菌は、西オーストラリアに生きているもので、ストロマトライトと呼ばれる生物マットの中にいました。ストロマトライトは不思議な生態をもっています。


 前回、MK-D1と呼ばれるアスガルド古細菌の培養には成功していましたが、他の種でも成功したという報告がなされました。その古細菌は、西オーストラリア海岸のシャーク湾内のハメリンプールと呼ばれる海岸に生息していていました。ストロマトライトと呼ばれる微生物マットの中にいました。
 ハメリンプールのストロマトライトについて、まずは説明しておきましょう。
 西オーストラリアの北に位置するシャーク湾は、湾の北側がインド洋に開き、南に長く伸びた内湾で、水深が浅くなっています。西オーストラリアの内陸は乾燥した気候で、気候も亜熱帯で、海水の蒸発が激しく、もっとも内側に位置するハメリンプールの海水の濃度は7%ほどで、通常の約2〜3倍の濃度になっています。このような濃い海水には、生物の生息しずらく、限られた生物しか住めなくなっています。
 そんな過酷な場所に、ストロマトライトと特異な堆積構造をもった微生物のマットが多数形成されていました。マットは、直径50cm、高さも50cmほどのマッシュルームのような形状となっています。このようなマットが、浅い海岸にマッシュルームのように多数生えています。非常に不思議な光景の海岸になっています。
 マットの上面は、満潮には海面下になり、干潮になるとマッシュルームの頭の部分が海面から頭が出てしまいます。マット全体は農い緑青色のものが覆っています。それは、光合成をして酸素を出すシアノバクテリアです。シアノバクテリアとは、光合成をする生物で、太陽光を浴びて酸素を出します。また、海水に巻き上げられた砂を捕まえて粘液で固定します。長い年月を経ると、成長によって薄い層が同心円状に成長していって層状構造をもった岩石となっていきます。
 マットをさらに詳しくみていくと、シアノバクテリアの下には、嫌気性バクテリア(硫酸還元バクテリア、メタン生成バクテリアなど)や古細菌(各種のアスガルド古細菌)がいることがわかってきました。下層は、嫌気性環境(酸素濃度が低く)、硫酸還元バクテリアが生息できる硫酸塩濃度が高い条件となっていることになります。
 ストロマトライトという名称は、20億年前ころ、海岸付近で形成された堆積岩の中によくみられた岩石につけられました。マッシュルーム状の形態をもちち、その内部にはマッシュルームの上面の形に沿って同心円状の層構造がありました。マッシュルームの周りは、それらが壊れた破片が埋めていました。
 非常に変な構造の岩石でしたが、世界各地で大量に見つかっていました。その正体や成因はよくわかっていませんでした。ところが、ハメリンプールで「生きているストロマトライト」が見つかったことで、微生物の集合体マットが、ストロマトライトになっていったことかわかってきました。
 20億年前に大量のストロマトライトが形成されたことから、その頃に、急激に酸素の生産され、大気中に加わっていたと考えられました。太古代に海洋や大気が、還元的(酸素が少ない状態)から酸化的環境へと、急激に変わったと考えラえます。
 現在のハメリンプールのマットの構造として、表層は好気性(酸素を好む)で内部には嫌気性(酸素が少ない状態を好む)の生物がいることから、太古代に酸素が形成されつつあるころの海の環境に似ていると考えられます。
 このストロマトライトのマットの下層のアスガルド古細菌の培養をして、詳しく調べられましょうた。その詳細は次回に。

・運動と睡眠・
北海道もやっと気温が上がってきました。
やっと半袖になりました。
昼間は、窓を開けるとちょうどいいのですが
夜には窓を閉めて寝ています。
夜も過ごしやすく、熟睡できるのでいいです。
最近、やっと妻も私も体調が整ってきたので
プールにいって、ウォーキングだけでなく
水泳も少々するようになりました。
それもあって、ぐっすりと眠ることができています。

・ハメリンプール・
西オーストラリアのハメリンプールには
これまで2度訪れています。
一度目は、妻と一緒に観光ツアーでいきました。
ガイドに頼んで少々長めに滞在してもらいましたが
満潮時だったので、海水の中にいる状態での観察となります。
よく見ることができませんでした。
二度目は、調査でいったので、
海水が引いた干潮時間も調べていったので、
じっくりと見ることができました。

2026年7月9日木曜日

2_232 アスガルド古細菌 3:バクテリアとの共生

 アスガルド古細菌で培養に成功したMK-D1は、他の生物と密接な共生をしており、特異な形態変化をしていました。そこから、古細菌から真核生物が進化してきたのではないか、と考えられるようになってきました。


 環境DNA解析で、古細菌にも、ロキ古細菌(Loki archaeota)などの新しいタイプの古細菌が、多数見つかってきました。それらを特異な生物群をアスガルド古細菌と呼ぶことにしました。
 そららの実態は不明でした。実態を知るには、目的の種の個体だけを集めて(単離といいます)、その性質やDNAを調べていかなければなりません。ところが、古細菌などの微生物では、他の微生物と共生しているものも多く、単離が難しいものが多く、詳しく調べることができませんでした。
 2020年に海洋研究開発機構(JAMSTEC)の井町寛之さんたちの研究グループが、培養に成功しました。2020年のNature誌に、
Isolation of an archaeon at the prokaryote–eukaryote interface.
(原核生物-真核生生物の境界の古細菌の単離)
として報告されました。その概要は、このエッセイの「2_196 LUCA 5:渾身のMK-D1」(2021.08.05)で紹介したことがありました。再度、概要を紹介しておきましょう。
 2006年、紀伊半島沖の2500メートルの海底から採取した「アスガルド古細菌」の一種を、井町さんたちは、培養に挑戦していました。ひとつの種だけでの培養はできず、共生させたままの状態で他の種の減らして培養(共濃縮培養)をしていきました。そして、なんと12年以上の歳月をかけて、分離することに成功しました。
 培養された古細菌はMK-D1と命名されました。培養によって、MK-D1の形態の明らかにかってきました。増殖しているときは、単独の球やそれらが集まった塊をつくっていました。増殖が終わると、触手のような長い突起をつくり、細胞外に小胞を放出していました。
 また、MK-D1は、メタン生成バクテリアや硫酸還元バクテリア(真正細菌)と共生していました。MK-D1は、自身でつくれないアミノ酸を硫酸還元バクテリアやメタン生成古細菌がつくったものを利用していました。硫酸還元バクテリアやメタン生成古細菌は、MK-D1がつくった水素を受け取って利用していました。
 MK-D1は、真核生物に近いことがわかっていたので、井町さんたちは、観察された形態の変化と共生関係から、進化モデル(Entangle-Engulf-Endogenize:E3モデルと略されています)を提唱しました。
 E3モデルでは、あるアスガルド古細菌が、酸素を代謝し栄養をつくれるバクテリアを取り込んで共生をはじめたと考えました。そのバクテリアを長い突起で巻き込み、のみ込み、内部で発達させる、というモデルです。その間、バクテリアと共生しながら、バクテリアを取り込んで一体化していきます。取り込まれたバクテリアは酸素を代謝し栄養をつくるミトコンドリアとなりました。そして、真核生物になったというモデルです。
 アスガルド古細菌は真核生物へと進化する前段階で、MK-D1は、その途上の過程をいまだに留まっていると考えました。ただし、これはMK-D1という一種のみでの結果からの推定なので、他のアスガルド古細菌でも検証していく必要があります。

・雑草との戦い・
今年から、妻とともに家のメインテナンスに
力を入れることになりました。
夏は雑草との戦いになります。
以前は妻が一人でやっていたのですが、
大変なので、すべてアスファルトにして
雑草を生えないように対処しました。
ところが、アスファルトを割って
スギナが次々と生えてきています。
新しくはったアスファルトの至るところで
何度も対処したことで、
だいぶ抑えることことができました。
ところが古いアスファルトには
長年生えていたスギナが、
何度抜いても、除草剤をまいても生えてきます。
繰り返し戦うしかないのでしょうね。

・快適な夏空・
6月の北海道は涼しいようでした。
7月になるとだいぶ夏らしくなってきましたが、
昨年の暑さと比べると
今年はまだまだ快適な北海道の夏の状態です。
先日、近所の大学の大学祭に出かけました。
昨年は暑くて、エアコンのある室内へ避難しました。
今年は、外にあった模擬店やキッチンカー
行事などに参加しながらも
快適に過ごせました。
これからは暑くなっていくのでしょうが、
今は快適さを味わっていましょう

2026年7月2日木曜日

2_231 アスガルド古細菌 2:環境DNA

 かつての分類は、形態などの目に見える特徴で分類されてきました。RNAなどを用いた遺伝子レベルの分類は、分析データでの類似性や差異から、分類していきます。微小な生物にも適用できる分類法となりました。


 RNAによると、古細菌(Archaea)は、細菌(Bacteria)と真核生物(Eukarya)より、かなり異なっていることがわかり、それぞれがドメインとされました。3つのドメインのうち、古細菌と細菌がモネラ界に入っていました。これは、真核生物内で見られる違いより、古細菌と細菌が大きことがわかってきました。これまでの目に見える違いによる分類とは、明らかに異なったレベルの分解能をもった分類体系となっていきました。もちろん、私たちヒトは、真核生物ドメインに属することになります。
 分類された生物がどのように分岐してきたかを考えることは、生物の進化過程と大きく関わっていました。もっとも大きな分類体系となるドメインが、どのような順に分岐(分岐分類学)してきたかは、最初の生命(共通祖先と呼ばれています)から、どう進化してきたかに直結していきます。
 古細菌ドメインが、分岐において重要な鍵を握っていることがわかってきました。これまでは、共通祖先から、まず細菌が分岐し、その後古細菌と真核生物が分岐したと考えられていました。つまり、古細菌と真核生物は、細菌よりあとに分岐、進化したという考えです。
 ところが、新しい技術である環境DNA解析(eDNA解析、メタゲノム解析とも呼ばれます)技術の発展により、新しいタイプの古細菌が多数見つかってきました。環境DNAとは、環境(海水、土壌、河川水、大気など)に散らばっている多様な生物のDNAだけを調べる方法です。環境から採取した試料から、フォルターや薬品でDNAだけを回収していきます。そのDNAから、特定の遺伝子をもった部分を選んで、増殖させていきます(PCR装置)。それを解析装置(次世代シーケンサー)で配列を読み取ります。読み取った膨大なDNAデータは、コンピュータでデータベースと照合作業をしながら、生物種を特定していきます。環境DNA解析のが可能になった背景には、このような分析装置とコンピュータの発展がありました。そのおかげで、簡便に迅速できるようになってきました。
 2015年以降、環境DNA解析で、これまで知られていなかった地域から、新種らしき古細菌が多数発見されました。
 そのうち、新しいタイプの古細菌を、まとめてアスガルド古細菌(Asgard archaea アスガルド上門)と呼ばれるものが区分されました。アスガルド古細菌が区分されたのは、古細菌なのに、真核生物の特徴と考えられていた固有のタンパク質(Eukaryotic Signature Proteins、ESPsと略されています)を多数含んでいました。そこから、アスガルド古細菌から真核生物が分岐したのではないと考えられるようになりました。
 これは、真核生物が古細菌の一部、つまり古細菌は真核生物をも含むような多様性がある可能性がでてきました。そこから、2ドメイン説が提唱されるようになってきました。その詳細は次回としましょう。

・台風と地震と・
九州は本州では、2つの台風が
相次いで通過したため、
場所によっては激しい風雨で
被害もあったようです。
大きな地震もありました。
被害に合われた方、お見舞い申し上げます。
北海道は、台風ではないのですが、
低気圧が連続して通過していったため、
雨が続きました。
そのため、涼しい日が続いています。
6月を通じて、涼しかったです。
エアコンは、今もカバーがかかって
まだ一度も使うこともなく、休眠中です。
でも、7月になったばかりです。
これから暑い日がくるのでしょうね。

・市営プール・
いよいよ7月になりました。
通っている市営プールでは、
市内の小学校で、プールがないところが2つあり
水泳学習を市営プールで実施します。
その日は、一般解放がなくなります。
6月中旬から7月中旬まで
市営プールは週に2回休みとなります。
体調が許し、所用がない限り
平日は毎日でかけるようにしています。
それでも、平均すると3、4日程度になります。
そこに週2日いけなくなると
ますますいけなくなりそうですね。
まあ、夏はしかたがありません。

2026年6月25日木曜日

2_230 アスガルド古細菌 1:ドメイン

 アスガルド古細菌(Asgard archaeon)という種類の生物がいます。近年、注目され、研究も進んできました。最新研究の紹介をする前に、まずは、古細菌とは区分を見ていましょう。


 私たち人類は、ホモ・サピエンス(Homo sapiens)という生物種に分類されます。この名前の付け方は、リンネが提唱した生物学の分類では共通の方法となっていて、属名(属名の頭文字は大文字)・種小名(すべて小文字)で書くことになります。印刷物ではイタリック体(斜体)で表記されます。ですから、Homo sapiensは、ホモが属名、サピエンスが種小名で、合わせて種名となります。
 属から上の分類体系をヒトを例にしてみていきましょう。ホモ属(Hom)、ヒト科(Hominidae)、霊長目(Primate)、哺乳綱(Mammalia)、脊椎動物亜門(Vertebrata)、脊索動物門(Chordata)、動物界(Animalia)となります。
 最後の界は、動物界、植物界、菌界、原生生物界、モネラ界(原核生物界)の5つに分けられています。ところが、最近では、さらに上の分類体系としてドメインが設けられてきました。5界のうち、モネラ界以外の4つは、すべて真核生物で、モネラ界は原核生物となります。
 真核生物とは、DNAが核の中に幕(核膜)で囲まれて、まとめられています。原核生物は、DNAが細胞全体にあります。これの違いに伴って、細胞が分裂する時、真核生物は、細胞だけでなく核も分裂(有糸分裂)していきます。また雌雄がある真核生物では、DNAが半分になって分裂(減数分裂)していきます。これ以外の違いとして、真核生物は、大きくなり、細胞内に各種の小器官(ミトコンドリア・小胞体・ゴルジ体など)が多数あります。ですから、4界ごとの違いよりも、モネラ界との違いが大きいことになります。
 界までの分類は、形態などの類似性で分類されていたのですが、微小な生物を観察分析できる分子生物学の発展により、より詳しく分類できる可能性ができてました。そこから、モネラ界も、細菌と古細菌に区分できることがわかってきました。
 遺伝子レベルで分類を考える分野が生まれました。1977年、カール・ウーズが、RNA(16sリボソーム)の配列を比較して、3つの大きな違いで区分でき、その区分としてドメイン(domain)が導入されました。ドメインという分類を詳しくしらべていくと、生物進化に重要な意味があることがわかってきました。それは次回としましょう。

・網戸張替え・
現在、我が家では、網戸の張替えを少しずつ進めています。
以前、ひどくなっているところは
3分の1ほど変えました。
それ以外のところが、破れがでてきました。
今回、古い網戸を全部交換することにしました。
夫婦でのんびりと、
一日、一枚ずつ交換しています。
ほぼ終わりましたが、網が余りそうなので、
以前変えたところで古そうなところ、
今回交換したのですが、
端っこが破れたところなども
張り替えられればと思っています。

・筋肉痛・
朝のウォーキング、午後のプールと
日々、運動してきました。
ただし、あまり無理せずに、のんびり、
ゆっくりと、継続していくことにしていました。
ところが、網戸の張替えには、
1時間から1時間半ほどかかります。
いつもの運動量と変わらないのですが、
腹筋や背筋で筋肉痛がでてきました。
多分、違う筋肉を使っているためだと思いますが、
妻は、筋肉痛はでていないようです。
いつも家事で複雑な作業をしているので
体を常に鍛えている状態のようです。
家事は重要な運動だったのですね。
体で味わいました。