太陽系は、銀河系の中を公転しているでなく、内側から外側に移動していると推定されてきました。その様子を確かに示すため、膨大なデータを用いた研究が進められてきました。
前回のエッセイで、太陽系が銀河の中を公転していること、その移動速度から一周に約2億2500万から2億5000万年ほどかかっていることから、これまで約20〜25周していることになると紹介しました。
ところが、太陽系が、円軌道や楕円軌道であることは確かめられてはいません。ですから、不確定な仮定の上の推定となっていました。太陽系の形成場が、現状の軌道(銀河からの距離)をとっていれば、上の推定が正しいことになります。
前回紹介したように、銀河を構成している星は、形成年代や化学組成には、その位置に系統的な違いありそうでした。太陽と、他の恒星の形成年代や化学組成(重い元素の比率)を比べて、銀河系のどのような位置でできたかを推測していきます。もちろん大雑把にしか推定しかできませんが。
これまでの推測では、太陽系は、現在よりもっと銀河の中心に近いところ、おおよそ中心から約2万光年より内側の軌道で形成されたと考えられてきました。もしそうであれば、現在の公転軌道が2.7万光年なので、1万光年ほど、内側から外側へ移動したことになります。では、いつ、どのようなメカニズムで起こったのかを明らかにしていく必要があります。
その方法を、東京都立大学の谷口さんと国立天文台の辻本さんたちの共同研究で示しました。その方法とは、銀河系の恒星に対して、形成年代や化学組成を、精度を上げて大規模におこなっていくことでした。太陽と似た形成年代と化学組成の恒星のデータ大量に集めて、比較検討していこうという研究です。
ガイア(Gaia)衛星の観測データを用いました。ガイア衛星とは、欧州宇宙機関(ESA)が2013年に打ち上げた観測衛星で、目的は銀河系の最も精密な3次元地図をつくることでした。それぞれの恒星の位置と運動と、同時にスペクトルも観測していました。
ガイア衛星のデータから、表面温度、重力、大気の化学組成(主に重元素量に着目)など比べていき、太陽に似ている星(論文では太陽双子星と呼んでいます)を見つけていきました。
ガイア衛星の成果として、大規模なカタログが作成されています。運用期間で観測した恒星は、20億個ほどになります。2022年版のカタログ(DR3、EDR3)では、約18億個の恒星の位置と明るさが精密に測定され、約14億7000万個が太陽からの距離とその運動も詳しくわかりました。他にも、銀河系外の天体(クエーサーなど)が約155万個、太陽系内の小惑星の数も約15万個も観測しました。これまでの観測とは桁違いの膨大なデータベースとなっています。
現在公開されているデータは、観測データの一部に過ぎません。今後も解析が進み、数も増え、精度も上がっていくことになるでしょう。予定では、2026年12月にDR4が公開され、2031年以降に最終版としてDR5が出る予定です。
現状の大規模カタログから、谷口さんたちは、太陽双子星をピックアップしていきました。その結果、太陽系から1000光年以内で6594個が抽出され、年齢も正確に求められ、その精度も格段によくなっています。
その内容は次回としましょう。
・データ解析中・
ガイア衛星以前にも、ヒッパルコス衛星が
似た観測をしていました。
ガイア衛星は、100倍以上の精度をもっていましたが、
2025年に観測活動を停止しました。
10億個以上の恒星を観測する予定でしたが、
20億個以上も観測しました。
予定以上の成果を上げました。
データ解析は、現在も進行中で、2026年12月には
DR4として66か月分(前半の約5.5年分)のデータが
まとめて公開されるはずです。
DR3の約2倍の観測期間にあたります。
DR5では、10.5年の全期間のデータが
網羅されて公表されるはずです。
・ラグランジュ点・
ガイア衛星は、ラグランジュ点(L2)と
呼ばれる地点で観測していました。
太陽、地球、月、衛星が一直線に並ぶ位置で、
なおかつ重力的に釣り合っているとこです。
太陽や地球の影響を受けないため、
宇宙望遠鏡を置くには適したところとなります。
現在、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡も
この軌道で観測をしています。
この軌道上は貴重なところになるので
そこでデブリになることを防ぐために、
使用が終わった衛星は太陽周回軌道に移動ます。
ガイア衛星も活動を停止したので、
この位置からはずれて、地球から少し離れた
公転軌道をめぐることになりました。
今後100年間は、地球から
1000万km以内には近づかない
安定した軌道に投入されました。