2026年9月3日木曜日

1_248 スノーボールアース 6:原生代前期の全球凍結

 全球凍結に関する研究の精度が高くなってくると、一度ではなく、二度の氷期があったことがわかってきました。また、原生代前期にも大規模な氷期があったかもしれないこともわかってきました。


 全球凍結の時期は、地質学的証拠から、7億から6億年前の間におこっていました。地質時代としては、原生代後期のクライオジェニアン(Cryogenian 約7億2000万〜6億3500万年前)と呼ばれる時期でした。この時期には、超大陸ロディニアが赤道付近に広がっており、海がそれ以外の極地まで広がっていました。そして、超大陸が分裂をしていくという特別な状態にありました。そんな時、全球凍結が起こりました。
 全球凍結の研究が進んていくと、年代測定の技術の進歩で年代分解能が上がってきたことで、この時期に、全球凍結が2回起こっていたことがわかってきました。最初はスターティアン氷期(Sturtian)で、後はマリノアン氷期(Marinoan)と名付けられています。
 スターティアン氷期は、7億1700万から6億6000万年前に起こった、非常に規模な氷河期だと考えられています。マリノアン氷期は、6億5000万から6億3500万年前で、こちらの全球凍結は確実性が高いと考えられています。
 そして、もうひとつ、もっと古い時代にも、全球凍結があったあったのではないかと考えられています。それは、原生代前期の24億4000万から23億年前に起こった、ヒューロニアン氷期と呼ばれています。
 20世紀初期に、カナダ(オンタリオ州周辺)の地層の研究で、氷河性堆積物(氷堆積物、モレーン様堆積、氷成砕屑など)や氷河に伴う層序などが発見され、大規模な氷期があったと考えられました。その後、1970年代までには、氷河性堆積物が、カナダだけでなく南アフリカや西オーストラリアなどでも発見されたことから、広域に分布することが明らかになり、「原生代前期の大規模氷期」としてヒューロニアン氷期が提唱されてきました。
 1980年代には、ジルコン年代やより詳細な層序の研究が進み、少なくとも3回の氷期が繰り返されたと考えられるようになってきました。さらに、この時期以前までは、二酸化炭素が主となっていた大気から、急激に酸素が増える出来事(大酸化事変:GOE Great Oxidation Event)が起こっていました。そのような大規模な環境改変が、冷却のきっかけのひとつとなったと考えられました。
 21世紀になるとGOEと氷期の関連が詳しく調べられてきました。関連は強くあったようなのですが、それだけが原因でなく、大陸配置、火山活動、海洋循環などが複合的に関与していたと考えられるようになってきました。現状では、完全な全球凍結であったかは議論中です。局所的か半全球くらいの氷床の広がりであったという証拠もあるようで、未解決です。
 シリーズで全球凍結に関する研究を見てきました。現在の地球を調べる斉一説では、説明できない出来事が、過去には起こっていることがわかってきました。地質学では、ある時代の地層が証拠として存在するために、斉一説にとらわれることなく、詳細に調べていくことができます。それが過去の実物を対象とする学問の強みです、ただし、証拠がない時代や地域については、検証不能です。

・未踏の領域・
1837年にアガシーが氷河期を提唱して、
190年ほどしか経過していません。
そこから、氷河期と間氷期の繰り返し、
また現在の氷期を遥かに越える全球凍結、
そしてその繰り返し、
さらに20億年も前にも起こっていた
全球凍結らしきものまでわかってきました。
地質学は地球の過去を探求してきました。
その探求はまだまだ未踏の領域が
多くありそうです。

・安静中・
9月になりました。
予想以上に、術後の回復が長引いています。
まだ、不調が続いています。
退院後、ウォーキングにて体調を崩して以降、
デスクワークを無理せずみして、
疲れたすぐに横になるようにしています。
2週間は、自宅で安静にしています。
多分体力が落ちているのでしょうね。

2026年8月27日木曜日

1_247 スノーボールアース 5:暴走冷却

 全球凍結は、地球の大陸配置が、特別な状態であった時に向かうと考えられます。すべての大陸が赤道付近にひとつに集まり、海もひとつで広がっている状態です。そのような陸と海の配置で、暴走冷却が起こっていくようです。


 シミュレーションでは、全球凍結にはいけるが、そこからは戻れないという結果でした。しかし、地球の歴史では、全球凍結になり、それが溶けていき、氷床がないか少しだけの状態に戻ったという地質学的証拠と、そのメカニズムがあることを紹介しました。
 今回は、なぜ、全球凍結へと進めるのかについて考えていきます。もし、簡単に全球凍結へいけ、簡単にもどってこられるであれば、地球史において、もと頻繁に起こっていていいはずです。例えば、現在の氷河期と間氷期の繰り返しがあるように、全球凍結の繰り返しも起こっていてもいいはずです。しかし、全球凍結は、稀な現象であったようです。
 なぜ、原生代後期に全球凍結が起こったのでしょうか。
 まず、大陸と海の配置が重要となります。極地域に海があり、その海が赤道付近までつながっている必要があります。
 現在は、繰り返し氷河期が訪れていますが、高緯度に氷床ができるだけです。それは、南極には大陸があり、北極に海がありますが陸地に囲まれています。このような極地に海がなかったり、大陸に囲まれていると、海全体が一気に凍っていくことはないようです。
 全球凍結に至るには、極地から赤道まで海がつながっている必要があるようです。そのような状態になっていると、海面が凍りはじめると、暴走冷却が起こり、一気に全球凍結状態に向かっていきます。
 原生代後期、一つの巨大な大陸(超大陸と呼ばれます)としてロディニア(Rodinia)が、赤道付近にありました。大部分の陸地は、ロディニアに集まっていたので、周辺は大きな海洋として原始パンサラッサ海(Proto-Panthalassa)がありました。このような特別な状況が、全球凍結へ向かわせました。
 熱帯域に大陸が分布していると、化学風化が強まりCO2が大量に消費されていき、温暖化の効果が弱まっていきます。
 そして、超大陸が、7億7000万年前ころから、分裂をはじめました。大陸プレートの分裂によって、多数のリフト帯ができました。そこには、浅い海ができ、塩分や温度の分布が不安定になります。海洋全体として、海流の大規模な再編成されていきます。また、深海での循環もが弱まり、極域への熱輸送が減少し、極域が冷えやすくなり、暴走冷却が起こっていきます。
 また、多数のリフトができる時、そこには多数の火山が形成されます。分裂当初は、火山活動が増えたことでCO2が増加しますが、分裂後期には、風化の方が勝り、このバランスの乱れが、気候の不安定化が起こります。
 大陸に氷床ができ、海洋の凍結が起こると、地球表層が氷に覆われ、白っぽくなります。そうなると、太陽光は、大陸や海を温めることなく、はね返され、寒冷化に拍車をかけます。この連鎖(正フィードバック)が、暴走冷却を起こします。
 超大陸の赤道付近での分布と、その位置での分裂が、全球凍結へと進めました。ですから、現在はこのような大陸配置ではないので、全球凍結には向かわないと考えられます。
 では、そのような大陸配置は、地球史において一度だけだったのでしょうか。実は・・・・

・震度3・
先日、寝入りばなに
地震がありました。
震度3だったのですが、
寝ていたのに目が醒めました。
幸い、周辺や自宅には、
大きな被害はありませんでした。
2018年の北海道胆振東部地震の時は
夜中でしたが、その時のことを
一瞬思い出しました。
近年、日本各地で
大きな地震が起こっています。
不安ですね。

・体調不良・
退院後、ウォーキングすると
自覚症状はないのですが、
不調になっていました。
ウォーキングも止め、
無理をしない生活をしています。
そのため朝起きるのも遅くなり、
最近、8時間以上寝ています。
体調が戻るまで無理しないようしています。

2026年8月20日木曜日

1_246 スノーボールアース 4:二酸化炭素の蓄積

 理論的では、全球凍結から戻れないことがわかっていました。地質学的証拠は、全球凍結が起こったことを示していました。全球凍結から、どのようにして戻ってきたのでしょうか。その証拠はあるのでしょうか。


 全球凍結が理論的に可能であったとしても、そこから如何に、氷河がない、もしくは部分的にしかない状態に戻ってくるかが問題となりました。
 ホフマンは、全球凍結を火山活動による二酸化炭素(CO2)の大気中への濃集することによって、温室効果が働いて脱出すると考えました。
 現在の火山活動で噴出されるガスにはCO2が含まれています。ところが、火山噴火による、大気中へのCO2の蓄積することはありません。なぜなら、大気中のCO2を、海水が吸収したり、CO2が溶け混んだ雨水や河川水が大陸の岩石を風化する時に使われているためです。
 全球凍結状態になっていると、海洋は凍っているため、海水中へのCO2の吸収が起こりません。また、水蒸気が発生せず雨も降るともなく、陸地も氷で覆われているため、岩石の風化にも使われません。そのため、火山噴火で放出されたCO2は、使われることなく、そのまま大気中に蓄積されていきます。現在の火山噴火から推定すると、数100万年かけて、CO2の大気中の濃度が、0.1から1気圧(現在の数100倍)になる見積もられています。
 そうなると、強烈な温暖化へと向かっていきます(暴走温暖化と呼ばれます)。海氷や氷床の溶融が進んでいきます。いったん、融解がはじまり、海面が広がると、太陽熱が吸収され、一気に温暖化が進みます。暴走温暖化は、シミュレーションでも推定されていたことです。
 ここまでは、仮説に基づいた推定なのですが、融解が起こったあとの状態を示す証拠が見つかっています。ホフマンが、ナミビアで発見した、「迷子石」を含む地層や、その地層の50mの厚さの縞状炭酸塩岩の地層(キャップカーボネイト)などです。迷子石などは流氷による堆積物です。赤道付近にも流氷が流れてきたことは、急激な温暖化を示しています。また、世界中で、急激な温暖化を示すものとして、氷河堆積物(ティライト)や、蒸発岩(ドロマイト、方解石)が急激に堆積します。また、粘土鉱物などの風化堆積物もみつかります。
 ホフマンが示した炭素同位体組成(δ13C)の異常(大きな負の値)は、海洋循環が急速に再開したことで、それまで海中に蓄積されていた有機物が急激に分解していき、海洋の化学組成の再編成が起こった証拠となります。
 全球凍結状態の直接の地質学的証拠はないのですが、全球凍結から急激な温暖化で回復した時期の証拠が見つかっています。そこから、全球凍結から案外簡単に回復できることがわかってきました。
 では、なぜ、そもそもその時期にだけ、全球凍結へと向かったのでしょうか。それは、次回としましょう。

・入院中は・
入院中は、横になっていることが多く、
することがないので、読書をしていました。
これまでなかなか読めなかった
本を一気に読みました。
Kindleにてマンガも一気読み、
長編小説もかなりの冊数を読むことができました。
また、病室で動けるようになったら、
PCとWIFIも使えたので、30分や1時間ほど、
論文のためのデータ集めをしていました。
ただ、あまり集中はできなかったので
単調な作業が向いていたようです。
それが、現在執筆中の論文のデータとして活きています。

・回復期・
手術入院のため、前回までの2回分は
予約配信としていました。
無事、先週の水曜日の午前中に退院しました。
10日間の入院となりました。
退院してすぐに、通常生活に戻しました。
当日から、食事も通常に戻し、仕事もはじめました。
翌日からはウォーキングを再開しました。
すると、体調不調になりました。
ウォーキンを中止し、食事も脂っこいものや
消化に悪そうなものは止めました。
体調に注意しながら、無理せずに
少しずつ生活を戻していこうと考えています。

2026年8月13日木曜日

1_245 スノーボールアース 3:理論的課題

 全球凍結は、理論的には可能であることは、気象学のシミュレーションからわかっていました。ところが、全球凍結にはならなかったと考えられていました。それも気象学的に推定されていました。


 スノーボールアースが、科学的に課題があると、前回述べました。その課題についてみてきましょう。課題は、気象学の理論によるものでした。
 地球の気象条件をシミュレーションしていくと、無氷床状態、部分氷床状態、そして全球凍結状態の3つが安定していることがわかっていました。
 まずは、「無氷床状態」とは、地表にまったく氷床が存在しない状態です。ここでいう「氷床」とは、夏になっても残っている氷のことです。中生代の白亜紀や新生代前半が、この状態になっていました。極地でも、夏には氷が溶けていました。恐竜が越冬でき、南極では森林があったと考えられています。
 次が、「部分氷床状態」で、高緯度(極地付近)や高山には、氷床や氷河が存在します。現在は、この状態です。氷河期と間氷期の繰り返しは、この部分氷床のできる緯度が、赤道に向かって、周期的に変動していることになります。周期性はあっても、気象学的には安定しています。
 過去の地質学的証拠から、現在は、氷河期になっても、また間氷期に戻ってきているので、部分氷床状態だと考えられます。その原因は、ミランコビッチ・サイクルと呼ばれる地球の天体としての運動の周期性に依存していると考えられています。
 3番目が「全球凍結状態」です。地球全体が氷床で覆われた状態となります。地表の水がすべて凍っている状態で、赤道までも氷床で覆われています。海も、海面から1000mを越える厚さの海氷に覆われると推定されています。陸上にも氷床や氷河ができた状態となります。
 現在は、もっとも暖かい間氷期からだんだん寒冷化が進んでいることがわかっています。
 現在の大陸と海の配置で、寒冷化が進むとしてシミュレーションをしていくと、だんだんと氷床が低緯度まで形成されていきます。そして、緯度30度くらいまで氷床でができてくると、一気に赤道まで凍る全球凍結状態へと進みます(気候ジャンプと呼ばれます)。
 全球凍結状態になると、太陽光と地球の自転で、地球表層の温度を平均化する役割を果たしてきた海洋が、その機能を果たさなくなります。いったん海が凍ると、水蒸気もほとんど形成されることがなく、雲もなくなります。海洋から、大気への水蒸気の供給はほとんどなくなり、雨や雪も降らなくなります。そして、大気は、乾燥していきます。
 昼間は雲がないので、常に太陽光に照らされる状態ですが、地球は氷で真っ白で、太陽光を反射してしまい、地球の大気を温めることなく、宇宙空間に逃げてしまいます。夜は、放射冷却で熱が宇宙空間に放出されていき、ますます冷えていきます。平均気温-40℃のごく低温の状態へとなっていくと推定されています。
 いったん全球凍結状態になると、抜け出すことができなくなります。ですから、理論的には存在しえても、現実的には起こらないと考えられていました。
 地質学的記録では、どの時代にも、海があり、堆積岩が形成されていたことがわかっているからです。シミュレーションと地質学的記録から、過去に全球凍結状態にはならかなったと考えました。
 ところが、ホフマンは、全球凍結があったと提唱しました。そのためには、全球凍結状態から脱する方法を考えて、地質学的証拠があることを示さなければなりません。次回としましょう。

・長男の帰省・
今年も、長男が帰省しています。
1週間ほど滞在する予定です。
2日間はフェスにいくので不在となります。
夜は帰ってくるかはと思いますが、
どうなるのかは不明です。
長男がいる時には、
いつも訪れている中華料理屋さんには
顔をだそうかと考えています。
年に一度の顔見世のようなものです。

・予約配信2・
これも予約配信としています。
予定では、退院しているはずなのですが、
術後の回復は不明で、
病院や自宅で作業できるかどうかわからないので
事前に配信しておきます。

2026年8月6日木曜日

1_244 スノーボールアース 2:全球凍結

 よく知られている氷河期を、はるかに凌駕するものが、かつての地球にはありました。わかったのは1998年のことで、まだ30年もたっていません。地球の歴史には、未知のことがまだまだありそうです。


 アガシーが氷河期を唱えてから、まだ200年足らずですが、その氷河期とは比べ物にならないほどの寒い時期が、あったことがわかってきました。
 その時期の地球を宇宙から見たら、真っ白な雪玉に見えたであろうと推定されています。そのためスノーボールアース(Snowball Earth)、日本語では「全(地)球凍結」とも呼ばれています。スノーボールアースは、地球表層の水がすべて凍ってしまうような状態です。
 最初に見つけたのは、ハーバード大学のポール・ホフマンでした。ホフマンは、アフリカ南東部のナミビアを調査していました。そこには、不思議が地層がありました。約7.2億〜6.4億年前、赤道付近で堆積した地層があったのですが、その中には直径1mくらいの巨大な丸い石が多数ありました。その石は、地層を構成している岩石や周辺の岩石とは、全く異なった関係のないものでした。このような岩石は、「迷子石」と呼ばれていました。通常の堆積作用では決してできないものでした。
 また、迷子石を含む地層の上には、50mの厚さの炭酸塩の地層が重なっていました。キャップカーボネイト(日本語では縞状炭酸塩岩)と呼ばれています。海水中に大量に炭酸塩が溶け込んで、それらが化学的に沈殿してできた地層です。これも不思議な地層でした。
 ホフマンは、赤道付近の海底に溜まった地層内に、迷子石ができたのは、氷河が海に流れ込んで流氷となり、氷が溶けたことで、中に含まれていた岩石が海底に落ちてできたと考えました。
 この地層は赤道付近でたまったものだったので、流氷が赤道まで流れてくるということは、当時赤道まで寒かったことになります。そこからホフマンは、スノーボールアース、全球凍結があったと考えました。
 ホフマンは炭素同位体組成を測定して、生物活動の程度も調べました。炭素同位体の値が低いと生物活動が低下し、高いと活発であることになります。氷河期の前には、値は上昇していたので、この時期、活発な生物活動が起こっていたことになります。
 氷河期直前から値が低下しはじめ、やがてマントル起源(火成活動によって海洋へ炭素が流入)の値に近づいていきました。そして、氷河期終了後も、低い値のままになっていました。氷河期とその終了後には、全地球的に海洋の生物活動がほぼ完全に停止していて、しばらくは回復できなかったことを意味しています。
 温かさがもどって海氷が溶けると、大気中に大量に蓄えられた二酸化炭素が海洋に溶け込んでいきます。海洋の炭酸塩濃度が高くなると、炭酸塩の化学的沈殿が起こり、キャップカーボネイトができたと考えました。
 1998年にホフマンが発表した当時は、信じる人は少なかったのですが、議論や論争を通じて、浸透していき、だんだん信じられるようになってきました。そして、地球史上最大の氷河期として、スノーボールアース、全球凍結が認知されるようになりました。
 認知されるまで、長い時間がかかったのは、科学的に困難さがあったからでした。その問題は時間としましょう。

・ホフマンの業績・
ホフマンの地質学的業績は多数あります。
1988年の論文は、「United Plates of America」というものでした。
プレートテクトニクスで20億年前まで遡ったもので
地質学的には重要な論文でした。
しかし、最初投稿した学術誌では不採用となりましたが、
別の学術誌では高く評価されて掲載されました。
1991年の論文は通称「inside-out」論文と呼ばれています。
3~2 億年前に出現した超大陸パンゲア以前に、
複数回の超大陸の形成・分裂が繰り返される
超大陸サイクルがあることを示しました。
そして、1998年には「Snow Boll Earth」論文が発表されました。
ここでは、大量の地質学的データに基づいて示しされました。
ホフマンは、その業績により
2024年に京都賞を【基礎科学部門】で受賞しています。

・予約配信1・
現在、入院中です。
予定としては、一昨日手術を受けているはずです。
自由に動けているかと思います。
病院でもインターネット環境があるので、
配信可能かもしれませんがどうなるかは不明です。
このメールマガジンは、
事前に予約配信しています。

2026年7月30日木曜日

1_243 スノーボールアース 1:アガシー

 氷河期があったことは、今では誰もが知っています。氷河期の存在がわかったのは、200年足らず前の1840年ころに過ぎません。氷河期が受け入れられるには、いろいろな人が関わってきました。


 ここ1500万年ほど、地球は寒冷化が進んでいることが地質学的にわかっています。そして、数100万年間は、氷河期と暖かい間氷期が繰り返されています。現在は間氷期にあたり、縄文時代(約1万6000年前〜約2300年前)の約7000〜6000年前が最も暖かい時期になっており、年の平均気温が現在より2℃ほど高かったことがわかっています。その結果、日本では、縄文時代に海進(縄文海進と呼ばれています)が進み、海面が現在より約2〜4mも上昇していたことが、関東平野の貝塚の遺跡でも示されています。
 現在は、縄文時代より、平均気温は下がっていますが、まだ間氷期の時期になっています。
 一方、氷河期は、生物にとっては過酷な時代となります。暖かいところへ移動するか、寒さに適応していくしかありません。人類も火を利用して乗り越えました。もし、現在の社会に氷河期が訪れた、文明社会は、深刻なダメージを受けることになっていくでしょう。
 このように氷河期の話題をしても、多くの人は基礎知識として知っていため、理解できます。ところが、かつて氷河期があったことがわかってきたのは、それほど昔ではありません。
 スイスアルプスの民間技師のヴェネツ(Ignaz Venet)は氷河期の証拠を集めていました。中でも迷子石(erratic boulder)の由来が大きな問題となっていました。迷子石とは、周囲の地質とは全く異なった巨大な岩塊が、本来あるはずのない場所に、まるで迷子のようにぽつんと存在しているます。ヴェネツは、迷子石から氷河期説を唱え、報告しましたが、誰にも信じてもらえませんでした。
 ヴェネツは、鉱山技師のシャルパンティエ(Jean de Charpentier)を、最初に説得しました。そして、1836年夏、ヌーシャテル大学教授のアガシー(J. L. R. Agassiz)が、アルプスを訪れた時、シャルパンティエとおそらくヴェネツも同行して、周辺を案内をしました。そして、アガシーに氷河期説を納得させました。
 アガシーは、自身でも野外調査を開始して、先行研究などもまとめ、1837年のスイス自然科学界の年次総会で氷河期について発表しました。その発表は、北半球全体が一つの巨大な氷河で覆われていたという内容でした。発表を聞いた会場は騒然とし、反対意見が多く、論争は3日間続いたとされる「ヌーシャテルの講演」として伝説となっています。
 ヴェネツが正しい説を唱えた時は、だれも見向きもしせず、普及することはありませんでした。ところが、当時すでに著名であったアガシーが発表したため、このように大きな反響が起こり、多くの議論が生まれ、最終的には水戸ラメれることになりました。科学にも、名声が必要ば場面があるようです。
 アガシーは、1840年に「氷河の研究(Étude sur les glaciers)」を出版して、氷河期を理論化や体系化を進めました。この著者は、氷河期を世に広める重要な役割を果たしました。アガシーが野外調査で集めた証拠とは、氷河が下流に向かって移動する時、周囲の岩盤を削ったり(氷河擦痕)、流路の周囲には氷河が溶けて土砂が残ったり(モレーン)、溶けた周辺の地質とが全く異なった迷子石がありました。これらさまざまな証拠から、かつては大陸全体を巨大な氷床が覆っていた時代(氷河期)があったとしました。
 アガシーが氷河期を唱えてから、まだ200年もたっていません。それでも、多くの人は、氷河期が繰り返すことも、現在は間氷期で、もっとも暖かい時代が過ぎたことも知っています。ところが、現在繰り返されている氷河期とは比べ物にならないほどの寒い時期があったことがわかってきました。その詳細は次回としましょう。

・斉一説・
かつて西洋では「大洪水(ノアの箱舟)」などの
聖書に示された考え(激変説)が主流でした。
激変説は、宗教的背景が強くありました。
科学は、観察事実に基づく帰納によって、
現在には想像もできないようなことも証明できる
科学的方法論を構築しました。
これは、斉一説による発見と呼ばれるもので、
近代地質学の基礎ともなりました。
科学による斉一説は、激変説との長い論争を経て
確立されてきました。
氷河期も斉一説に基づく科学的証明でした。

・来週から入院・
来週から、手術のために1週間から10日ほど入院します。
そのため、エッセイを書きだめしています。
2回分は予約配信していくつもりです。
現在の症状は、薬を飲み続ければ対処できます。
しかし、手術でほぼ完治するそうです。
手術は高齢者でも負担が少ないとのことで
講義のない時期に受けることにしました。
現在、常用している薬をやめられる日が
早く来ること願っています。

2026年7月23日木曜日

2_234 アスガルド古細菌 5:marumarumayae

 新たに培養されたアスガルド古細菌は、marumarumayae(マルマルマヤエ)と呼ばれています。MK-D1と似た形態や共生をしていました。より短期間に、より高精細な形態を明らかにし、一歩進んだ解明となっていました。


 ストロマトライトのマットの下層のアスガルド古細菌に着目して、培養されました。2026年4月、ノブス(Nobs)さんたちによって、Current Biology誌に
An Asgard archaeon from a modern analog of ancient microbial mats
(太古に類似した現代版の微生物マットからのアスガルド古細菌)
として公表されました。
 ノブスさんたちも、井町さんたちと同様に、苦労して培養に成功しています。嫌気性の環境で、さまざまな炭水化物やアミノ酸、微量栄養素に、抗生物質も加えて、5年にも渡って培養されてきました。その結果、アスガルド古細菌が濃縮されてきました。その中に、ロキ城の熱水噴出孔でみつかったアスガルド古細菌(MK-D1)と似ているものが見つかり、Loki-ASV2と命名されました。
 また、新種となるアスガルド古細菌(Nerearchaeum marumarumayae)も見つけて、最大89%の高濃度で培養することに成功しました。この新種は、Nerearchaeum marumarumayaeと命名されました。
 Nerearchaeum(ネレアルカエウム)がギリシャ神話の海神Nereusと、古細菌を意味するarchaeumを組み合わせたもので、marumarumayae(マルマルマヤエ)は、シャークベイ地域の先住民であるマルガナ人(Aboriginal Malgana)の言葉で「古代の故郷、または古代の家」を意味しています。
 そして、このmarumarumayae古細菌は、硫酸還元バクテリアと共生していることも明らかになりました。marumarumayaは、水素(H2)、酢酸、ギ酸、亜硫酸などがつくれました。共生している硫酸還元バクテリアは、アミノ酸やビタミンを合成していることもわかりました。
 電子線クライオトモグラフィーという手法が用いて、marumarumayaeの形態も、明らかにされました。この手法は、液体窒素や液体ヘリウムで、生きた状態のままの細胞や高分子を氷で包み込み、電子顕微鏡で三次元的に撮影して立体構造として表現していきます。ナノメートルスケールで、細胞と構造体を可視化しました。
 前に紹介したMK-D1と同様に、marumarumayae古細菌は、小胞を多数放出し連なり、繊維状の突起が小胞とつながっていました。新たにmarumarumayae古細菌と硫酸還元バクテリアが「細胞間ナノチューブ」で直接つながっていることもわかってきました。これは、両者が細胞間の管状繊維を通じて、硫酸還元バクテリアが、直接相互作用できることが明らかになりました。
 そこから上記のmarumarumaya古細菌は水素や亜硫酸などを与え、バクテリアはアミノ酸やビタミンを供給していると考えられるようになってきました。共生の実態が、より詳しくわかってきました。
 井町さんたちが示した、アスガルド古細菌が真核生物へと進化していく途上の姿を示しているというモデルを考えました。井町さんたちのモデルでは、ミトコンドリアを取り込むタイミングや必然性が未解決でした。ノブスさんたちのモデルなら、ストロマトライトのマットがあるので、好気性と嫌気性の境界付近には酸素が少量存在する環境(微好気性)があります。そこでは、ミトコンドリアの祖先となるバクトリア(アルファプロテオバクテリア)が生存可能となり、アスガルド古細菌と共生すれば、真核生物へと進化できます。
 後発のノブスさんたちのモデルが有力そうに見えますが、まだまだわからないこともあります。しかし、今回紹介したように、現生の生物を用いて、大きな進化の過程を明らかにできるのは、非常に興味深いですね。

・資金力・
電子線クライオトモグラフィーという手法は
使ったことはありません。
論文に示された図を見ていると、
高解像度で、まるで生きている状態で
観察しているような写真が
多数掲載されています。
すいごい説得力のある画像となっています。
しかし、このシステム本体も高額で
維持費も膨大になるそうです。
いい研究にも資金力がものをいう場合もありますね。

・マンパワー・
古細菌の培養には、大学院たちのチームとして
長年培養を続けてきたそうです。
このようなチームワークのおかげで、
5年で単離できたのかもしれません。
井町さんは、ほぼひとりで培養を継続していたので、
12年以上かかっています。
研究を一気に進めるには
マンパワーも重要ですね。