2019年9月26日木曜日

4_148 2019年残念シリーズ 1:三瓶山

 以前、EarthEssayの「地球地学紀行」を、やめることにしました。今年の夏の調査は、天候に恵まれず、断念した場所が多数ありました。それを「2019年残念シリーズ」として紹介していくことにしましましたので、復活します。

 8月下旬、1週間ほど山陰地方へ調査にでかけました。今年は、校務の都合で1週ほど早くでることになりました。残念ながら、今回の調査では、天候の悪い時期と重なり、予定してたコースを周ることができませせませんでした。
 8月下旬に北九州で大洪水の被害を出した前線は、中国地方西部にも大雨を降らしました。この大雨による河川の増水により、山口県や島根県西部各地で、警報や避難勧告がでました。その頃、調査をしていました。8日間のうち、晴れたのは1日、曇が2日でした。ですから、ほとんど目的を果たせませんでした。
 今回、昨年の4月から中止していた「地球地学紀行」を復活させることにしました。GeoEssayで紹介できるような調査ができなかったところを、本エッセイで紹介していくことにします。このエッセイで残念な結果に終わった調査を救えるのではないかと思っています。
s さて、最初は三瓶山です。事前にリフトが故障によって運休しているのは、ホームページでも知っていました。しかし、小さな山なので、30、40分ほどで登れるはずなので、朝一番に登れば、いくつかの円頂丘を観察できるだろうと考えていました。
 三瓶山は5kmほどの直径のカルデラがあり、その中に6つの峰があります。太平山は噴火によって破砕物と火山砕屑物が積もった山ですが、それ以外はカルデラ内で噴出した火山で、溶岩円頂丘となっているます。
 活火山に指定されていますが、現在は噴火の兆候はないようです。しかし、過去、1万3000~1万2900年前、5600~5500年前、3870年前、1400~1300年に噴火活動があったことがわかっています。これらの火山活動は主にデイサイト質のマグマによるもので、火山灰を放出し、火砕流が発生し、溶岩も噴出、火砕丘を形成、火山泥流も発生しています。火砕流や火山泥流は遠くまで到達しています。
 登山をする予定をしたので、麓に宿泊していたのですが、前夜から明け方にかけて雨が降っていました。翌朝7時前、登山道がぬかるんでいそうだなと心配しながら、リフトがある大きな駐車場にいきました。するとそれまで曇っていたのですが、雨が降り出したので諦めました。
 登山を諦めたのが7時過ぎでした。他の施設を見て周ろうと、麓にあった埋没林を見に行きました。そこも、施設として管理されているところなので、掃除の人がいただけで、開館したおらず、2時間以上の待つことになるので、諦めて次の目的地に向かうことにしました。
 そこは、世界遺産の石見銀山でした。世界遺産センターは開館時間なのに閉まっていました。中から人が関係者が出てきたので聞くと、月に一度の休館日であることを教えてくれました。パンフレットをいただき、駐車場と案内所を教えてくれました。もちろん、石見銀山も雨でした。野外の見る場所がいくつもあったので、早くてもみることができましまた。石見銀山については、GeoEsseyで紹介します。

・夏休み中の調査・
秋の調査は台風に悩まされます。
タイトな予定でいくと、校務などに支障をきたすと困るので
数日の予定をもって出かけるようにしています。
今年は、9月以降に余裕がなかったので、
8月最後の週になりました。
夏休みが終わっていないので、
家族連れが多いかなと思ったのですが、
それほどではありませんでした。
ただし、有名所の観光地はやはり多かったです。
団体が続々とバスを連ねてということはなかったので
落ち着いて石をみることができました。

・秋の訪れ・
9月は次々と調査、帰省、公務出張などが続きました。
気持ちはリフレッシュしていたのですが、
体は無理をしていたようです。
連休の日曜日に胃炎になり、食事を摂ると腹痛に襲われます。
食べることを抑えて無理をしないようにしています。
北海道は涼しくなってきたので、
過ごしやすくなりました。
先週末からストーブを何度から焚きました。
いよいよ北海道は秋です。

2019年9月19日木曜日

3_184 北磁極の移動 5:移動速度と逆転

 磁極の移動速度が大きくなっています。これは何を意味しているのでしょうか。もしかしたら、地磁気逆転の前兆現象かもしれません。文明社会は、逆転現象を経験をしていません。科学技術では、大きな混乱が起こるかもしれません。

 外核の液体の金属鉄が対流することが、地磁気の発生原因でした。地磁気は流体の流れに由来しているため、不安定で、変動が起こり、時には磁気のN極とS極が反転するようなことも起こります。地磁気の逆転は、過去に何度も起こっており、今後も起こると推定されます。
 現在の北磁極はカナダのエルズミーア島の西の北極海にあり、1900年頃にカナダ本土のすぐ北にあったことは、すでに紹介しました。その移動距離は、100年ほどで1100kmになります。平均すると年間10kmほどになります。しかし、長期間、詳しく観測していると、移動速度が変動していることもわかってきました。
 1970年には年間9kmであった移動速度ですが、2001年から2003年までは年間41km、近年では年間55kmほどになってきました。移動速度がだんだん大きくなっていることがわかってきました。
 地磁気の観測は、地理作成や移動、交通など現在の社会では重要な情報になっています。ですから、定期的に観測をしてデータが公開されています。アメリカ海洋大気局(NOAA)は、通常5年毎にデータを更新しているます。しかし、NOAAは、2019年1月に1年前倒して4年でデータを更新しました。それは「北極地方における予期せぬ変化のため」としています。
 上でも紹介しましたが、北磁極の移動は、外核の対流の変動のためだと考えられています。ですから、現状のまま変動し続けると、もっと大きな異変が起こる可能性もあります。その異変とは、磁極の逆転です。
 過去に磁極の逆転は何度も起こっているので、今回の北磁極の移動のその前兆かもしれません。もっとも最近の逆転事件は、これも前に紹介しましたが、258万1000年前から77万年の松山期と呼ばれる、現在とは逆磁極期がありました。詳しくみると松山期にも、短い期間(数万年)での正磁極期になる逆転現象が、5回ほど起こっていますが、全体としては逆磁極期が長いため一括して松山期とされています。他の磁極期でも、同様に短い逆転現象が、多数起こっています。
 77万年前から現在までは、「ブリュンヌ正磁極期」と呼ばれています。不思議なことに、ブリュンヌ正磁極期には、逆転現象が全く起こっていません。この77万年間、地磁気が非常(異常?)に安定している時期となっています。外核の対流を考えると、いつ逆転現象が起こってもおかしくはありません。今回の移動速度の変化が、磁極の逆転につながる前兆かもしれません。
 逆転は少なくとも数百年、数千年の期間かけて起こるでしょう。その間、地磁気が弱まったり、なくなったりすることになるはずです。70万年以上逆転現象がないので、現在起こると、どのようなことが起こるかは、記録もなく不明です。
 その時を推定できる小規模な現象が、時々起こっています。太陽のフレアの激しい活動で、地球に磁気嵐が起こります。磁気嵐では人工衛星の故障や通信障害などが起こりました。現在社会は、ますます電波や電子機器に依存しています。もし逆転現象が起これば、地磁気が長期間なくなることになります。そこで、大きな混乱が起こかもしれません。
 たとえ今回の移動速度が逆転現状の前兆ではなくても、やがて地磁気の逆転現象が起こるはずです。その時の対処も考えていてもいいのではないでしょうか。

・休日への配慮・
月曜日休日が2回、連続します。
大学は夏休み期間の終わりなので、
23日の秋分の日だけが休講になっています。
曜日ごとの週間スケジュールでものごとでは
この月曜日の休日のシステムは、大きな影響があります。
しかし、国には祝日を多くすることのほうが重要なようなので
学校教育などの不都合は顧みられません。
まあ、今の国は、国民、庶民への配慮は少ないようです。

・校務出張・
今週後半は、1泊で校務で出張します。
宿泊の出張は、頭さえ切り替えておけは、
気分転換となります。
早朝の出発なので自家用車ででかけます。
そのため、体力的は疲れそうなので
無理をしないように早目にでて
休み休み行こうと考えています。

2019年9月12日木曜日

3_183 北磁極の移動 4:地磁気の逆転

 内核の対流が不安定であることが、ここ100年ほどの間に徐々にわかってきました。逆転では、日本の科学者の先駆的な業績がありました。逆転は、プレートテクトニクスの重要な証拠ともなりました。

 地球の地磁気は、内核の液体鉄の対流が起こり、磁気が発生する地球ダイナモ説で説明できることを、前回、紹介しました。液体鉄の対流は、内核の熱分布や地球の自転などが原因だと考えられています。内核の熱分布は、核の化学組成のムラやマントルの対流(プルームテクニクス)による影響を受けることになるでしょう。また、地球の自転は、大陸配置や衛星の月の運動、公転や歳差運動などの影響を受けそうです。特に、地殻からマントルまでの大きな対流となるプルームテクトニクスは、内核の対流に大きな影響を与えそうです。
 内核の対流は、液体の運動によるため安定したものではなく、地磁気も不安定になります。そのような証拠が、100年ほどかけて、見つかってきました。
 マグマは地表付近で、液体(マグマ)から固体(結晶)になります。その時、磁気が岩石に記録されます。火成岩の残された磁気を測定する技術が開発されました。岩石に残された磁気は、残留磁気と呼びます。岩石の磁気の記録は、磁性をもった結晶(磁性鉱物)ができるとき、その時点での地磁気の方向に沿って並び、固まっていきます。岩石の残留磁気気を調べると、マグマが固まった時の地磁気を読み取ることができます。このような岩石に残された昔の磁気は、古地磁気と呼んでいます。
 京都大学の松山基範(まつやま もとのり)さんが、玄武岩(兵庫県玄武洞)の古地磁気を調べたところ、地磁気が反転していることがわかり、1929年に報告しました。これは磁気が反転しているということを初めて検証したものです。玄武洞の玄武岩は、約160万年前のマグマが固まったものです。この磁気が反転していた時期は、もっと長く(249万~72万年前)、後に「松山逆磁極期」と呼ばれるようになりました。この研究以降、地球の磁気が何度も反転していることが判明してきました。
 磁気が繰り返し反転していることを利用して、大きな成果も出てきました。
 海嶺ではマグマが貫入し、噴出して、海洋底が拡大しています。これがプレートテクトニクスの重要な原理となっています。海洋底の玄武岩には、古地磁気が記録されているはずです。海洋底の残留磁気を、船から精密に観測する技術が開発されました。その技術によって、海嶺に対称的な古地磁気の正逆の模様があることが観測されました。その観測事実は、海嶺でマグマが形成され、拡大していることの重要な証拠となりました。
 繰り返される地磁気の反転は、地磁気が不安定であることを表しています。地磁気の不安定さは、内核の対流も不安定だと推測させます。この不安定さは、過去だけから、現在そして未来にも続きそうです。

・松山基範・
松山さんの報告は、1929年におこなわれましたが、
世界の学界では、その重要性が
ほとんど理解されていませんでした。
1950年代になると古地磁気学が発展したことで、
松山さんの地磁気の逆転が正しいことが認識されてきました。
先見性があったのでしょう。
この松山さんの功績から「松山逆磁極期」と命名されています。
この逆転は、最新のもの(最後の逆転)となっています。

・家族集合・
現在、京都に帰省しています。
子どもたちはふたりとも関西にいるので、
帰省がバラバラになっています。
今回は夫婦で母の実家に帰るので、
子どもたちも集まって来るようにしています。
彼らの忙しいようで、スケジュールがありません。
さてさて一堂に会することは可能でしょうか。
なかなか難しいようですが、
いってみるまでわかりません。

2019年9月5日木曜日

3_182 北磁極の移動 3:コアの対流

 地球の北磁極の移動について考えています。地磁気の北極と南極の位置が、地球の中心を通る反対側にないことを、前回紹介しました。今回はその理由について説明していきましょう。

 地球の磁場は強力で、表層だけの現象ではなく、大気圏外にもその影響は及び、太陽や銀河の中心付近から高速で飛んでくる、電荷を持った粒子(プラズマと呼ばれます)を弾いてしまいます。このプラズマ粒子は一種の放射線でもあるので、生命体には危険な存在です。地球磁場のおかげで、地球の外からの粒子が表層に降り注ぐことなく、安全に保たれています。
 では、そもそも地球の磁場は、どのようにして発生しているのでしょうか。地球の内部に原因はありそうです。しかし、地球内部は、直接見ることができないので検証は難しく、間接的証拠で、一番もっともらしい仮説で考えていくしかありません。
 まず、地球の地殻やマントルでの発生の可能性はどうでしょうか。地殻もマントルも岩石からできています。岩石には、磁気をもった鉱物(磁鉄鉱など)があります。磁鉄鉱を多く含む岩石(ある種の花崗岩)でも、方位磁針を近づけると、少し揺らすことができるほどの磁力しかありません。ほとんどの地殻の岩石は、地球の磁力の発生源にはなりません。また、マントルのカンラン岩には、磁性をもった鉱物はほとんど含まれていません。
 地殻やマントル以外のところとなると、核しかありません。地震波などの観測、天体物理的推定、隕石の類似性などから、核は金属鉄(少量の金属ニッケルも含む)からできていると考えられています。また、地震波から、内核は固体ですが、外核は液体であることは、間接的ですが検証されています。以上のことから、外核に液体の金属鉄、内核が固体の金属鉄となっていると推定されます。金属鉄は磁力を伝えやすく、またもし電気が流れて、その電流の媒体が動いていれば、磁場を発生することはができます。
 外核が液体の金属鉄で、温度にムラがあれば対流するでしょうし、地球の自転でも動くことが考えられます。このような金属鉄の対流によって電流が生じれば、磁場を発生することにできます。外核は、地球に占める体積でも質量でも非常に大きな割合になっています。外核が磁場を発生するとなれば、内核は磁石として働きます。その磁力は地球全体にも及ぶほどのものになるはずです。このような対流による発電は、「地球ダイナモ説」と呼ばれています。地球ダイナモ説は仮説ではありますが、理論的にかなり究明されているので、地磁気の原因が、外核の対流によるものだとされています。
 対流による磁力なので、永久磁石のように安定したものではありません。外核の温度もムラも均質とは限りませんので、対流も複雑なものと考えられます。そのようなことから、地球の磁場の全体としては、自転軸にそっているようですが、正確に地球中心を通るものではないことも理解できます。これが、地磁気のずれの説明となります。
 地球磁場の不安定さによって、今回のシリーズである北磁極に移動や、もっと不思議な現象が起こったことも知られています。

・大洪水・
山陰地域の調査から、今週はじめに帰ってきました。
今回の調査は、ほとんど目的を達成できませんでした。
九州に災害をもたらした大雨は
中国地方西部でも激しく降りました。
ちょうど、調査予定地の津和野、山口市、萩、美祢などにいる時、
洪水警報、避難勧告などが次々と出ていました。
調査の8日間の内、移動日の2日(曇り)以外、
晴れは1日、曇が1日で、あとはすべて大雨でした。
泊まるところが大丈夫かどうか、不安になるほどでした。
安全第一を考えて行動しました。

・バタバタと・
北海道は帰ってきた日は少々蒸し暑かったですが、
翌日からは秋晴れになりました。
今週は、週末には出張、日曜からは帰省となるので、
バタバタしています。
調査のデータを十分まとめることが
できないうちに、次々とすべきことがあります。
まあ、長期の調査のあとには
付きもののことですが。