2020年7月30日木曜日

3_188 地磁気とマグマの海 4:地球進化へ

 基底マグマオーシャンとは、地球創生時、マントルの底にあったものです。このマグマオーシャンが、地球磁場とどのように関係するでしょうか。シミュレーションが、過去の地球に適用できるのでしょうか。

 スティクスルードらの論文では、地球の初期の磁場の発生は、基底マグマオーシャン(basal magma ocean)が、その役割を果たしていたことを想定しています。
 その想定にいたる過程をみていきましょう。最近、10億年間ほどは、外核の金属鉄が対流することで生じていることは、確かです。現在は、内核が成長、つまり地球の冷却が進むことで、内核と外核の間で対流が起こり、熱が移動することで磁場が発生しています。ところが、10億年前以前は、内核の成長速度が、地球ダイナモとして、磁場を発生するには十分ではないという説があります。ところが、地球には少なくとも34億年前から磁場が存在していたという説には根拠があります。この矛盾を解決するために、スティクスルードらは、外核の金属鉄以外で地磁気の発生の可能性を探りました。どのようなものがあれば、磁場が発生するかをシミュレーションしました。
 地球創生時には、マグマオーシャンがあったことは、前回紹介したように証拠がありました。マグマオーシャンは珪酸塩の溶けたもので、固まったら岩石になります。高温高圧下でマグマが、どのような電気的な性質を持つかはわかっていませんでした。マントルの底に、「基底マグマオーシャン」があった時に、どのような電気的性質をもっていたかを、シミュレーションしました。
 天体表層のマグマオーシャンと比べ、マントルの底のような高温高圧の条件では、100倍以上の電気伝導度を持つことがわかりました。その値は、地球ダイナモを起こす値を、十分に超えていることがわかってきました。さらに、電気伝導度から計算された磁場の強度は、太古代で観測された古地磁気の値と同じになることがわかりました。これは、シミュレーション結果をサポートする証拠となります。
 以上の論理で、基底マグマオーシャンが地球創成期からの地磁気を発生していたという仮説が提唱されました。
 しかし、問題もありました。基底マグマオーシャンが存在できる期間は、10億年から20億年と考えられています。その後は磁場が働くなり、10億年前くらいから外核の地球ダイナモが働くことになります。都合よく、地磁気の発生源が切り替わるのかという問題です。その切り替わりの時期や空白期間があれb、古地磁気に変化が記録されているはずです。ところが、そのような事件は、古地磁気からは見つかっていません。
 今回の論文では、重要なことがあります。これまで、多くの地球物理学的観測や高温高圧での実験は、現在の地球を知るため、現状を解明するために、研究がおこなわれていました。しかし、今回のように、過去のある時代、状態を想定して、観測や実験をおこなっています。このような考え方で、地球の形成、進化の仮説を提唱したり、検証できることも可能であることがわかってきました。これは重要な視点です。

・不作と不策・
7月も終わりです。
7月は天候不順が目に付きました。
日本、特に西日本は、梅雨前線の活発化で
各地が大雨になりました。
北海道の7月は、天候不順の日々が続きました。
大雨や天候不順で農林水産業は、
大丈夫なのでしょうか。
特に農業の不作にならないかが気になります。
そんなさなかにおいて、
中国、北朝鮮の外交、防衛の動き
米中の関係悪化、
日本政府や東京都のコロナ対策への不策。
心配事が多すぎます。

・その時代の生き方・
新型コロナウイルスに押さえつけられながら
日本じゅうの人が生活を続けています。
こんな日常に慣れていくことでいいのでしょうか。
それとも「かつて」の生活を取り戻すために
手を打たなければならないのでしょうか。
以前のように、娯楽、観光、楽しみを
享受してはいけないのでしょうか。
私はバブルの頃を経験しています。
大学生から大学院生時代に
アルバイトでそのおこぼれで
研究生活を継続できました。
しかし、バブルはある時代のものです。
別の時代には、そのときに合った生き方、
暮らし方を確立していくしかないのでしょう。

2020年7月23日木曜日

3_187 地磁気とマグマの海 3:マグマオーシャン

 地磁気は、現在の生物にとってはバリアとなっています。昔は、地磁気が生物にどのような影響を与えていたのでしょうか。地磁気と生物の関係に対して、新しいアイディアが提案されました。

 地磁気のはじまりついてですが、実はいつから始まったのかは、はっきりとはわかっていません。34億年前からあったという説から最近できたという説まで、いろいろあります。外核の熱対流を大きく左右する固体核ができたのが10億年前だという説、あるいは地球ダイナモが働き出したのが10億年前からいう説まで、地磁気の原因に関する考えもさまざまです。古い磁気の強度の検出が難しいので、未解決のことも多いようです。
 現在の地球生物は、地磁気のバリアに守られているのですが、地磁気のバリアがない時、生物にはどのような影響を受けるのでしょうか。カンブリア紀以前、生物は海水中で暮らしていたので、有害な宇宙線は海中深くには入り込まず、問題はなかったと考えられます。水がバリアになっていました。
 地球の磁場は、海水中に暮らしていた生命には関係がなかったのでしょうか。2020年2月に発表された報告で、重要な役割を果たしていたのではないかという説がでてきました。スティクスルードと共同研究者が、「Nature Communications」という科学雑誌に報告した、
 A silicate dynamo in the early Earth
 (初期地球内での珪酸塩ダイナモ)
というシンプルなタイトルです。
 この報告では、地球初期からダイナモが働いて地磁気があったとしています。珪酸塩ダイナモが重要です。ここまで述べてきたように、地球のダイナモは、金属鉄の流動によるダイナモがその由来となっていました。金属鉄ではなく珪酸塩がダイナモ(発電)しているというのです。
 この報告によれば、地球形成から数10億年間の磁場を生み出していたのは、地球初期に形成されていたと考えられるマグマオーシャンだと主張しています。マグマオーションとはいっても、基底マグマオーシャン(basal magma ocean)と呼ばれる液体の層が磁場を生み出していたと考えています。
 そもそもマグマオーシャンとは、どんなものでしょうか。マグマオーシャンとは、月の観測から提唱され、そこから一般の天体へに適用されたものです。
 天体は、小天体が衝突合体しながら成長していくと考えられています。小天体が衝突すると膨大なエネルギーが放出されます。その時、気体成分も放出され、主な成分は二酸化炭素で、原始天体の大気となります。二酸化炭素の大気があると、温室効果も起こります。激しい衝突が続くと、天体表面は溶けてマグマの海ができたまま維持されます。この状態がマグマオーシャンと呼ばれています。月では、マグマオーシャンで形成されたと考えられる岩石が月の高地をつくっている岩石だと考えられています。月は惑星形成の初期の様子を残しています。
 やがて、公転軌道上の小天体は、一番大きな天体にすべて衝突合体されてしまうと、冷却がはじまります。それぞれの天体は、独自の進化がはじまっていきます。
 では、基底マグマオーシャンとは、どんなものなのでしょうか。次回としましょう。

・梅雨前線・
本州は、まだ梅雨前線が居座っているようで
今年の梅雨明けは遅れそうです。
北海道も、すっきりとしない天気が続いています。
晴れたり、曇ったり、雨が降ったり、蒸し暑い日など
一日で目まぐるしく変わります。
体調を壊してしまいそうです。
新型コロナウイルスの収まらない流行の中なので
感染にも注意しなければなりません。
心の重い日々が続きますが、
皆様も体調にはご注意ください。

・論文の完成・
7月は論文にかかりきりになっていました。
なんとか当初の目標を達成して
書き終わることができました。
文章量が、投稿規定の2倍以上になってしまいました。
一応投稿しますが、編集委員会がどう判断するでしょうか。
デジタル出版なので文章量の制限は不要だと思うのですが。
論文は、一連の内容となっているので、
分割するのは困難です。
まあ、投稿してからの判定を待ちましょう。

2020年7月16日木曜日

3_186 地磁気とマグマの海 2:外核の流動

 地球の磁気(地磁気)について紹介しています。地磁気は、現在生きている生物に対してのバリアの働きをしていことは前回紹介しまた。今回はその地磁気の由来について見ていきます。

 地球の磁気の起源について考えていきましょう。地球の内部には、岩石できた地殻の下に、やはり岩石からできたマントルが深くまであります。マントルより、さらに深部は鉄からできていることが、地震波の研究でわかっています。地震波の研究より、核の内部は、内側(内核と呼ばれる)に固体の鉄があり、外側(外核)には液体の鉄があることがわかっています。核は、同じ鉄できているのに、なぜ固体と液体がきれいにわかれているのでしょうか。
 一般の物質では、液体より固体の方が密度が大きくなります。そのため、液体中で結晶化がはじまると、できた結晶は固体として沈降していきます。これが、内側に固体鉄、外側に液体鉄が存在している理由です。(ただし、水だけが例外です)
 核で、鉄が液体から結晶化する時、潜熱の放出が起こります。外核内で熱の不均衡が生じ対流が起こります。また放出された熱は、マントルを温める役割も果たしています。これがマントル対流の駆動力となっています。
 熱による対流と地球の自転により、液体鉄が流動を続けます。金属鉄は電気の伝導体でもあり電磁誘導体でもあります。金属鉄が流動することで、電流が発生して、電流で磁場が生成されます。流動が続く限り、磁場形成が続くと考えられています。このような地球内部の金属鉄の流動による磁場の発生を、地球ダイナモ理論と呼んでいます。ダイナモとは発電機のことなので、地球が自家発電をしながら、磁場も維持していることになります。
 地球の磁場は、N極とS極が存在する磁気双極子となっています。一見安定しているように見えますが、地球が過ごす長い時間でみると、しょっちゅうN極とS極が入れ替わり、つまり地磁気の逆転が起こっています。一旦、磁場が逆転が起こると、しばらくは安定しています。今から77万年前は、逆転していました。その発見者である松山基範の名前をとって「松山逆磁極期」と呼んでいます。松山逆磁極期は258.1万年前まで続いていました。
 さて、この地磁気ですが、いつから始まったのでしょうか。それは次回以降としましょう。

・人とは対面で・
大学は、まだ静かです。
リモート講義が決定しているためです。
しかし、用事があれば学生も出入りできるので、
時々学生をみかけます。
また、生協も一部再開しているので、
昼食時になると、学生が出入りします。
先日、ゼミの学生が突然、書類を渡しにきました。
驚きましたが、久しぶりに生でゼミ生を見ました。
リモートでは顔はみていたのですが、
やはり、人とは対面で会ったほうが
お互いの存在感を感じますね。

・梅雨前線・
九州から本州にかけて、停滞した梅雨前線が
大きな洪水被害を出しています。
今年は、例年になく梅雨前線が
活発になっているようです。
北海道も、どんよりした天気が続いています。
雨も時々降りますが、晴れたり曇ったり、
雨だったりと変化が激しいです。
湿度も高いので、蒸し暑い日もあります。
しかし、夜は涼しいので、
窓を閉めて寝なければ風邪をひきそうです。
どうも今年は気象が例年とは異なっているようです。

2020年7月9日木曜日

3_185 地磁気とマグマの海 1:バリア

 地球の磁気は、目で見ることはできません。その力は弱いのですが、方位磁針などの磁石で知ることができます。磁気は、私たち人類にどのような影響を与えれているのでしょうか。思わぬ影響がありそうです。

 地球には磁場があります。日常生活をしていて、磁場を意識することはありません。では、磁場は不必要なものなのでしょうか。
 例えば、方位磁針は地磁気によって、北南を指すようになります。かつて、旅をしたり航海をしたりするとき、方位磁針は不可欠な道具でした。しかし、現在の人類には、GPSがあるので、方位磁針は使わなくなりました。スマートフォンでは、現在位置を地図上に表示し、目的地までどのように進めばいいか、ナビゲーションをしてくれます。
 GPSは地球の周回軌道上にある人工衛星で、かつてはアメリカ合衆国が軍用に使用していたのですが、民間が自由に使えるようになっています。日本は独自に日本上空を周回する衛生を打ち上げて、精度を上げるようにしています。
 現在では、GPSが普及したので、方位磁針は使わなくなりました。地質学学者など一部の専門家用の道具になってきました。では、地球磁場は方位を知るため以外に、日常生活では不要なのでしょうか。そうではありません。実は地球磁場は、重要な役割があります。
 磁場が地球を覆っているので、地表へのバリアになっています。磁場があると、電荷をもった粒子が外から来ると、磁場の影響を受けてまっすぐ進めなくなりました。太陽からは、電子と原子核がばらばらになった状態の粒子(プラズマといいます)が、大量に飛び出しています。このようなプラズマ流を太陽風と呼んでいます。太陽風は電荷をもっているので、地球磁場の影響を受けて、地球の大気圏には入ってこれません。大半の太陽風は磁場の影響で、地球を回り込んで、太陽と反対(地球の夜側)に吹き流しのように長く伸びた形になっています。太陽風の一部は、地球に入ってこようとします。その時、地磁気の磁力線に沿って南極や北極から入ってきます。南極や北極で大気圏に突入した時、大気の分子がプラズマと衝突して励起されて発光します。これが、オーロラとして光っています。
 軌道上では、大気圏のバリアがありません。ですから、長く軌道上に滞在すると、プラズマ粒子が電子機器に影響を与えます。太陽風が強くなると、人体にも影響を与えます。地表では、地球磁場と大気のおかげで、太陽風は地表には影響を与えません。そんな条件があったからこそ、地球で生命が誕生し、人類も進化できたのでしょう。そして、科学技術に支えられた文明も発展できたのでしょう。
 ではなぜ、地磁気は、そもそも地球にあるのでしょうか。それは、次回、紹介しましょう。

・天候不良・
北海道は7月になっても天候不順です。
晴れたり、雨が降ったりと
一日で目まぐるしく変化しています。
気温の低い、涼しい日々が続いていきます。
低温と日照時間の少なさは、
農業に影響がでなければいいのですが。
私は、暑いより、涼しいのが助かるのですが、
体調を崩しそうです。
新型コロナウイルスに加えて、天候不順ですので、
精神的にダメージが大きいのではないでしょうか。

・洪水被害・
先週、九州では、何度も大雨があり、
多くの地域で被害がています。
被災された方、お見舞い申し上げます。
コロナ禍の続く中での避難は
不安も、躊躇もあったでしょう。
生命を一番に考えなければならない事態は、
大きな心労のことと思います。
政府や行政の素早い、手厚い
救援、援助を願いたいものです。
こんな時にこそ、政治の力を示して欲しいものです。