2023年5月25日木曜日

3_210 核の成長 1:金属の鉄

 地球の中心にある核に関する論文が、いくつか集まってきましたので、今回から、まとめて紹介していこうと考えています。まずは、核の基礎的な知識からはじめていきましょう。


 地球内部は、地震波から探ることができます。地震波から、構成している岩石の密度や状態(液体か固体か)、温度などを推定することができます。その結果、地球の内部は、外側から、地殻、マントル、核(コア)に区分されました。地殻とマントルは岩石ですが、両者の密度が違っていました。それは、岩石の種類が異なっていることになります。
 核は、金属の鉄からできています。核の内部の状態から、同じ金属鉄でも融けている液体の部分と固体の部分があることがわかってきました。核では、マントルの温度が低いため、核の上部を冷やすことになります。そこでは、結晶化が起こり、液体より固体のほうが密度が大きいので結晶は沈んでいきます。固体が沈み、中心部にたまり、内核となっていきます。
 結晶の沈降や低温の液体鉄の密度差によって下降流が生じ、外核では年間1mほどの速度で対流しています。さらに、地球の自転によって対流が変化して、南北に細く伸びた円筒形がいくつも並んで回転している様子もわかってきました。
 このような回転する対流では、磁場が発生します。対流が継続するので、磁場の中を伝導体の金属鉄が流動することで、大きな電流の流れができ、地球全体がひとつの磁石のような磁場(双極磁場といいます)をもつことなると考えられています。このようは仕組みは、地球ダイナモと呼ばれています。地球の最深部の運動が、地球の外側の磁場を生み出していることになります。
 液体の核で固化が続けば、外核はだんだん減少していき、固体の内核は成長を続けていることになります。では、成長している内核は、きれいな球状になっているのでしょうか。それに関して、2021年6月のNature Geoscienceに次のようなタイトルの論文が掲載されました。
Dynamic history of the inner core constrained by seismic anisotropy
(地震学的異方性によって制約された内核の動的歴史)
カリフォルニア大学バークレー校のフロストさんたちの共同研究となっています。この論文によると、どうも核の成長に偏りがあるようです。その内容は、次回としましょう。

・3度目の調査・
3度目の野外調査にでています。
淡路島と香川を中心に調査していきます。
淡路島ははじめて訪れるところです。
四国の西側に住んでいるので
四国を東西に縦断することになります。
高速道路がつながっているので
一気に進めるのですが、
距離があるので、疲れないように、
休み休みいくしかありません。
このエッセイは、現在調査中なので、
予約送信をしています。

・時間と忍耐と・
あれよあれよという間に
サバティカルに来て、2ヶ月近くも経過しました。
目的を達成するには、調査もさることながら、
研究も進めていかなければなりません。
予定していたことを、
少しずつ進めていますが、
地道な努力が必要な作業なので
時間だけでなく、忍耐も必要です。
今は、淡々と文献を読むこと、
原稿の推敲を進めていくことになります。

2023年5月11日木曜日

4_174 西予紀行 1:黒瀬川の地で

 西予市城川町にて、2度目のサバティカルを過ごしています。ふと思いついたのですが、現在滞在している西予やその周辺の様子を、月に一度ほどお送りすることにしました。5月になって思いついたのですが、4月にいったところを、一伸目としてお送りしましょう。

 2022年4月に四国西予ジオミュージアムが開館しました。その結果、もともとあった地質館が閉館してしまいました。地質館の建設や、運営に協力していたこともあり、30年来通っていたところです。
 城川でも、かなり奥まった地に地質館がありました。この地は、黒瀬川帯、あるいは黒瀬川構造帯と呼ばれるものに属する岩石類がでているため、地質学では有名な地となっています。この地を流れる黒瀬川、あるいは黒瀬川村にちなんで命名されています。他にも地層や岩石名にも、この地の地名が多数用いられています。
 さて、四国の東西を走る大断層である中央構造線(北側)と仏像構造線(南側)があります。その間には、秩父帯とよばれる地層が広く分布しています。黒瀬川帯は、秩父帯の中に、点々と分布しています。秩父帯は、海洋プレートの沈み込みによって形成される特徴的な地層群(付加体と呼ばれます)からできています。秩父帯が付加した時代は、北側(秩父帯北帯)はジュラ紀で、南側(秩父帯南帯)はジュラ紀から白亜紀前期となっています。
 黒瀬川帯が区別されるのは、秩父帯とは明らかに異なった性質もっているためです。黒瀬川帯にも、付加体の地層(長崎層群、野村層群相当層、窪川累層)がありますが、秩父帯のものより古い時代(古生代ペルム紀)のものです。また、中生代(ジュラ紀)の地層(宮成層群、土居層群、河内ヶ谷層群、嘉喜尾層群、成穂層)もありますが、大陸棚でできた地層で、形成場は形成機構が異なっています。
 なにより、黒瀬川帯の中には、黒瀬川構造帯と呼ばれる、さらに異質な岩石群があります。黒瀬川構造帯は、より古い大陸の岩石や大陸起源の砕屑岩類からできています。大陸起源の岩石にはいろいろな種類の岩石があり、火成岩(三滝火成岩類)、変成岩(寺野変成岩類)、堆積岩(岡成層群)が見つかっています。三滝火成岩類は4億4000万年前頃(オルドビス紀)の大陸の花崗岩類(少し斑レイ岩類)、寺野変成岩類は4億5000万年前頃(デボン紀)の大陸の片麻岩類、岡成層群は4億2000万年頃(シルル紀~デボン紀)に赤道付近で堆積した石灰岩や陸の酸性火山活動に由来する岩石です。
 このような黒瀬川帯の岩石の実態が、戦後すぐに調べられました。物資もまた不十分な時代に、地質学者が、のべ400日以上かけて、城川周辺(当時は黒瀬川村)で野外調査をしました。地元の人たちの協力もあったと、論文の謝辞には書かれています。
 黒瀬川流域は、日本の地質学で重要な役割を果たしてきました。だから地質館ができ、今では四国西予ジオパークに認定され、四国西予ジオミュージアムもできました。そんな地で2度目のサバティルを過ごしています。

・城川ロッジ・
今回のサバティカルには、家内も同伴しています。
夫婦で近隣を回ることにしています。
現在住んでいるのは、城川町土居ということろです。
先日、土居からほど近い、
窪野(くぼの)の小学校の跡地にある
城川ロッジのレストランでかけました。
土曜日にだけ営業しているところで
昼食をとりにでかけました。
このレストランは、もともとは城川ロッジという宿舎に
併設されたものでした。
宿舎には、なんども宿泊したことがあり
懐かしかったですが、
今では荒れていて、中を見ることもできませんでした。

・日本地質学の古戦場・
地質学で日本の地質史を学ばれた方は、
古い地層や古い岩石として、
黒瀬川帯、あるいは黒瀬川構造帯と呼ばれるものを
聞いたことがあると思います。
日本では「最古」の化石や岩石、地層がでることで
城川は有名な地でした。
日本でも古くから研究されてきたのですが、
詳細が明らかにされてきたのが
城川の黒瀬川流域の地だったのです。
日本の地質学の戦後すぐの古戦場ともいうべき地です。

2023年5月4日木曜日

6_202 ターミネーター・ゾーン 4:少ない可能性と多数

 ターミネータ・ゾーンで、ハビタブルゾーンの存在の可能性は、少ないながらもでてきました。M型恒星の数が多いので、少ない可能性であっても、生命誕生が起こったかもしれません。



 M型恒星の周囲を潮汐ロックされて巡る惑星には、夜明けや日没のところには、ターミネーター・ゾーンができます。潮汐ロックされていますので、安定した領域となります。その環境のシミュレーションは、長期的には水が安定に存在できないことわかってきました。しかし、ロボさんらの研究では、水が存在できる可能性が示されました。
 シミュレーションで重要になる初期条件は、恒星からの距離(放射量)と水と氷の割合、大気圧であることが判明しました。
 水が少ない状態でスタートすれば、水蒸気の発生が抑えられ、放射量が多くても暴走温暖化は起こらないことがわかってきました。そして、ターミネーター・ゾーンで、温度が0~50℃の範囲になり水が存在できることがわかってきました。
 水が多い状態で惑星がスタートすると、海から大量の水蒸気が発生して暴走温室効果が起こることになります。そんな状態であっても、もしかすると水が再度形成される可能性も指摘しています。例えば、いったん夜の側に移動して凍った水も、その量が多ければ氷床が厚くなり流動しはじめ、もしターミネーター・ゾーンまで流れる氷河があれば、そこで融けて水になり川や湖ができることになります。ただし、このシミュレーションはなされていません。
 M型恒星で、地球のように7割が海のような水の多い惑星では、特別な条件を満たさないと、ターミネーター・ゾーンに水が存在できません。水が少ない陸が多い惑星では、ターミネーター・ゾーンに海が位置していれば、ハビタブル・ゾーンが安定して存在できるかもしれません。
 まだまだM型恒星の惑星におけるハビタブル・ゾーンの存在については、不明な点が多いのですが、可能性は残されたことになります。M型恒星は数が多く、寿命も長いため、近くを巡る惑星があれば、安定期的なハビタブル・ゾーンが存在するかもしれません。そこには、生命誕生の可能性もあるはずです。そんな期待を残す報告でした。

・明浜の段々畑・
ゴールデンウィークは出歩くことは控えています。
動くときは、休日や祝日ではなく平日にしています。
先日も昼前から、明浜にでかけました。
快晴の空の暑い日でしたが、
みかんの段々畑と石灰岩のコントラストが綺麗でした。
地域のイベントがあれば参加するようにしています。
大きなイベントがあった先日の土曜日は
あいにくの雨なので出かけるのを諦めました。
残念なので町内で
土曜のみ開かれるレストランにいきました。
昔よく泊まった施設を利用しています。
今はレストランだけが使われています。
地質館も使われなくなりましたが、
鍵を借りて中をみてきました。
それほど傷んではいなかったのですが、
いい施設なのでもったいないでした。

・土佐清水ジオパークへ・
来週から2度目の野外調査にでることにしています。
今度は高知県西部を中心に回る予定です。
高知ではジオパークが2つあります。
室戸は世界ジオパークとして有名ですが、
新しく2021年9月に土佐清水ジオパークが
日本ジオパークとして認定されました。
そこを中心に見て回ろうと考えています。
もともと地質学では、土佐清水の竜串の三崎層群や
白山龍門のラパキビ花崗岩で有名な地域でした。
何度が訪れていますが、
再度、見て回ろうと考えています。