2022年11月24日木曜日

3_204 下部マントルの鉱物 1:地球内部を調べる

 地球深部の様子を調べる方法を考えていきます。深部の探究では、実証できない困難さもあります。実証は空から降ってきます。そんな不思議な研究手法をシリーズで紹介していきます。


 地球深部を調べる方法はいくつかあります。ただし、直接調べられるのは少しだけです。直接調べる方法とは、深部にある試料をその状態のまま調べることです。しかし、それは不可能です。人が深部にいって、そこの温度や圧力の条件で調べることできません。深部になるほど、高温高圧となるためです。
 そもそも、それほど深部にはいけません。深部の高温高圧の条件下での調査はあきらめて、深部にある岩石をとってきて、実験室で調べることになります。
 深部の岩石をとってくるには、穴を掘って取り出してくる方法があります。ボーリングと呼ばれます。ところが、その深さは数kmから、せいぜい10km程度までです。地球の半径6400kmと比べると、あまりにもささやかです。
 ほっと他の方法を考えなければなりません。もともと深部にあった岩石を用いる方法です。地球の営みで深部から地上に持ち上げれた岩石が見つかります。変成岩では変成作用の条件から深度を推定できますが、地殻の深部からです。火成岩はもっと深部のマントルを構成していた岩石が、造山帯では見つかっています。マントルですから、数10kmの深さからもたらされています。
 特別な岩石ですが、もっと深部からもたらされた岩石も見つかっています。キンバーライトと呼ばれる火山岩です。深部から高速で上昇してきたマグマであることがわかっています。この岩石にはダイアモンドが見つかります。ダイアモンドは、150kmより深いところでないと安定に存在しません。圧力が下がると、同じ炭素からできた鉱物で石墨にかわってしまいます。ダイアモンドのまま地表に上昇するには、急速な圧力低下(クゥンチ quench)が起こらなければなりません。そのため、キンバーライトマグマの高速での上昇という現象が推定されています。それでも深度150kmです。マントルの上部までです。
 もっと深部を調べるためには、直接では無理です。となると、間接的な方法となります。地震波を用いた方法があります。この方法であれば、地球の中心まで推定することができます。岩石でできた地殻とマントル、鉄でできた核があることわかってきました。地震波を詳しくみると、岩石の密度や温度などを推定することができます。なかなか強力な方法です。
 しかし、間接的ですが実物を入手する方法があります。次回としましょう。

・初雪・
先週、冷え込みがあった日
平野部のわが町でも雪となりました。
ベチョベチョの雪ですが、
2日ほど降りました。
平年より初雪が遅いようですが
これで、北海道もいよいよ冬到来となります。

・時代の流れ・
現在の学科の4年生は卒業研究の作成に
かかりきりになっています。
ひとそれぞれで取り組み方が違います。
熱心だったり、生き絶え絶えだったり、
最小限で済まそうなど
その取り組む姿勢はさまざまです。
指導する側では一定のレベルを設けているのです
最近、苦労している学生が
ポツポツですが増えているようです。
時代の流れでしょうかね。

2022年11月17日木曜日

6_194 多様な系外惑星 5:特異な条件での海

 近くの系外惑星でハビタブルゾーンがありそうなことが、シミュレーションでわかりました。特異な条件での特別な環境で出現しそうです。しかし、近いところにあることが重要です。


 2021年12月5日、日本の点もが学会の雑誌に
TOI-2285b: A 1.7 Earth-radius planet near the habitable zone around a nearby M dwarf
(TOI-2285b:近隣のM矮星の周りのハビタブルゾーン付近で1.7地球半径の惑星)
という論文が報告されました。東京大学の福井さんらの共同研究となっています。
 このTOI-2285bと呼ばれる系外惑星は、太陽系から約138光年とかなり近いところにあります。半径は地球の1.74±0.08倍で、地球型惑星としてはぎりぎりの許容範囲内にあります。質量は19.5倍ほどで、海王星に近いサイズになります。公転周期も27日ほどになり、とても生命が誕生し住めそうもない惑星です。恒星からの距離は、太陽と地球の距離の1/7ほどしかなく、その位置はハビタブルゾーンの外になります。
 ところが、恒星の温度が3200℃と低いことから、恒星からの日射量が少なく、地球の1.54±0.14倍程度におさまります。恒星からのエネルギー照射は多くはありませんが、もし岩石惑星で薄い大気しかなければ、表層の海はすぐに蒸発してしまいします。
 なかなか厳しい条件の惑星です。ところが、福井さんらはシミュレーションによって、海王星のように氷とガスの惑星であれば、海が存在できる可能性を示しました。もし、核の外側に氷の層が存在し水素の大気があれば、氷の一部が溶けて、大気下の氷層の表面には、液体の海が存在できる可能性があることを示しました。
 かなり特異な条件での海の可能性なので、生命探査としては有望とはいえません。もっと近いハビタブルゾーンにも有望な天体も見つかっています。近ければ、性能のいい望遠鏡があれば、大気組成を調べることができます。しかし、生命探査には、ある程度の数の天体を調べなければなりません。多数の候補の系外惑星が必要です。
 液体も水が存在する条件や可能性を知っておくことが重要になるでしょう。比較的近いところで系外惑星の候補を、多数、ストックすれば、そんな中から、確実な海の存在が検証されるかもしれませんね。

・諦めない人たち・
否定的条件が出てくると
それ以上の探究をしなくなります。
否定的条件とは、
先入観に捕らわれているから
そう見えるのでしょう。
それでも諦めずに可能性を追求していくと
少しの僥倖に恵まれることもあります。
そんな僥倖は、先入観を排除した人にしか訪れません。
僥倖を逃さないのは、諦めなかった人たちでしょう。

・嵐のあと・
週末は北海道は激しい嵐になりました。
道内各地で、被害を受けたところがありました。
幸いにもわが町は、
風だけで雨はひどくありませんでした。
週末の夜の風だけですみました。
寒気が入ってきたので寒さは増しました。

2022年11月10日木曜日

6_193 多様な系外惑星 4:ハビタブルゾーン

 太陽系以外の天体は離れているため、生命を見つけるのは難しいことです。そこで、ハビタブルゾーンと呼ばれる生命が存在できる条件をもうけて、その範囲に存在する地球に似た惑星を探すことになります。


 系外惑星の探査で、重要な目的になっているのは、地球外生命の発見でしょう。文明をもたない生命の探査は、困難です。文明があれば、電波を用いて通信をしているでしょうから、電波ならば遠くからも検知できます。しかし、文明もたない生命ならば、存在を知ることはできません。
 ですから、地球外生命の探査には、生命が住めそうな惑星を探すことになります。その前提として、地球の生命の誕生し、進化するための必要条件として水の存在を仮定します。
 系外惑星で海の存在を直接調べるのは難しいので、恒星の特徴と惑星の軌道の位置から、水が存在できそうな場(ハビタブルゾーン Habitable zone、あるいはゴルディロックスゾーン Goldilocks zoneとも呼ばれる)にあり、表層に水が存在できることが必要条件になります。系外惑星のうち、ハビタブルゾーンに存在する天体を探すことで、間接的に海が存在できる条件を見つけていくことになります。
 惑星にも条件が必要になります。表面がガスではなく固い地表(岩石)があり、液体の水を維持できる(海が継続的に存在できる)地球に似た惑星(地球型惑星)でなければなりません。惑星の半径としては地球の0.5~1.6倍、質量として0.1~6倍までは可能性があるとされています。そのような系外惑星が、現在いくつも発見されていますが、決定的な海の証拠はまだ見つかっていません。それは、遠くなので、海の証拠を検出するのが困難になるためです。
 海の存在を検出するためには、できるだけ近いところにあるものが望ましくなります。約138光年のところに、限定条件をつければ条件を満たしそうな系外惑星が見つかりました。その詳細は次回としましょう。

・雪近し・
北海道は平地での積雪のニュースを
何度か聞くようになりました。
幸いわが町ではまだ初雪は降っていません。
寒い日で降りそうな日があったのですが雪は免れました。
まあ、季節としても、気象条件としても
雪の降るのは時間の問題でしょうが。

・帰省・
先週、次男が帰省していました。
変な時期ですが、講義の都合でこの時期になったそうです。
長男も学会が札幌にあったので、
一晩だけ自由時間ができたたので、
夕食を食べにくる時間があると、
当日連絡があったそうです。
私もその日は出張から帰宅した日にあたり、
次男の帰省する日でもありました。
いくつかの偶然が重なって
家族が揃うことになりました。

2022年11月3日木曜日

6_192 多様な系外惑星 3:連星系での系外惑星

 次に紹介するのは、連星系で直接撮影による系外惑星の発見です。それも質量の大きな恒星の周りでの発見でした。今回の報告では、直接撮影なので確実に存在が証明されました。


 ガイドス(Gaidos)らの報告では、惑星の特異性が重要でした。その惑星を接撮影されました。最近、直接撮影による報告はいくつも出されています。
 ガイドスらの論文では、地球から420光年ほどの位置でした。今回紹介するジャンソン(Janson, M)らの報告では、325光年のところで発見しました。ケンタウルス座b星は、連星となっています。連星とは恒星がお互いの周りを巡っている状態のものです。連星系で系外惑星(ケンタウルス座b星b)を、直接撮影しました。直接撮影されるということは、確実に存在するという証拠となります。
 2021年のNature誌に掲載された論文のタイトルは、
A wide-orbit giant planet in the high-mass b Centauri binary system
(連星系での質量の大きなケンタウルス座bでの広い軌道の巨大惑星)
というものでした。
 連星系での発見であること、質量が木星の約10.9倍もあること、主星から約550AU(天文単位)という非常に離れた軌道(太陽ー木星の距離の100倍のところ)を公転しているます。系外惑星として、かなり大きな質量をもった天体で、軌道も最も遠くにあるという特徴を持っています。
 もっとも特異なのは、連星全体としては太陽の6~10倍ほどの質量があり、表面温度が高い、重い方の恒星(B型星と呼ばれています)での発見でした。太陽の3倍以上の質量をもっている重い恒星の周りで、系外惑星が見つかったのは、はじめてのことでした。大きな恒星の周りでは、惑星を形成するのが困難だと考えられていました。なぜなら、これまでのモデルでは、質量の大きな恒星では、温度も高く激しい放射をするため、周囲のガスが短時間で蒸発されてしまうため、惑星を形成するのが困難だからです。
 このような環境で惑星が発見されたので、その形成として、別のところで形成された惑星が重力による相互作用によって移動させられた可能性、または周囲のガス円盤が自身の質量でつぶれることで、重力の不安定が起こり、短期間で惑星を形成できるようなメカニズムが働いた可能性、などが指摘されています。連星系という特殊な環境では、これくらい遠くでないと惑星は生き残れないのかもしれません。
 形成モデルに関しては、今後も検討が必要ですが、比較的近いところなので、より高性能の望遠鏡で観測すれば、詳細がわかれば新たな可能性がるのではと、期待されています。

・科学の進歩・
系外惑星で多様なものが見つかっています。
その多様性に驚かされます。
これまで太陽系で構築されてきた惑星形成モデルが
太陽系の説明には使えなくなってきました。
多様な惑星系には、これまでのモデルで
大幅な修正が必要になってきたことを意味します。
修正でどこまでやっていけるのでしょうか。
それとも全く新しいモデルを
考える必要があるのでしょうか。
特徴のある惑星ごとに、
固有のモデルの調整が必要になるのでしょうか。
このような多様性の発見と説明の努力は、
きっと科学の進歩に貢献できるはずです。

・日常が戻る・
昨日まで校務出張をしていました。
ですから、このエッセイは出かける前に
事前予約して発行しています。
11月はいろいろと校務や出張が重なっています。
落ち着かない日々が続きます。
講義や校務、出張などが、
通常通りにこなせるようになってきたためしょう。
日常が戻ってきた証なのかもしれませんね。