2021年3月18日木曜日

5_177 周期的大量絶滅 2:周期性の検出

 絶滅に周期性が見つかるという説は、以前からありました。数学的手法を使えば、周期性は導き出せます。その信頼度はさまざまなので注意が必要です。それより周期性の原因究明が重要です。


 前回までは、大絶滅の概要を見てきました。K-Pg境界(白亜紀末と新生代古第三紀の境界)で起こった大絶滅は、隕石の衝突が原因でしたが、それ以外のものは隕石の衝突が原因になっていませんでした。大絶滅の時期に対応するクレーターが見つかっていても、十分な証拠にはなっていませんでした。

 最近、大絶滅に周期性が見つかったという報告がありました。ランピーノたち(Rampino、CaldeiraとZhu)の共同研究で、2020年12月に報告されました。そのタイトルは、

 A 27.5-My underlying periodicity detected in extinction episodes of non-marine tetrapods

というものでした。訳すと「非海洋性テトラポッドの絶滅事件において検出された2750万年の潜在的な周期性」となります。この中で、「周期性」はわかると思いますが、「非海洋性」という不思議な言葉を使っていますが、陸上という意味です。また、「テトラポッド」とは海に置かれるテトラポットの意味もあるのですが、ここでは陸上生物の両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類の4つの分類群を表すための比喩として用いられています。つまり、大絶滅の周期性が陸上生物群でも見つかったという報告になります。

 2億6000万年前以降をみると、生物の分類群の属や科のレベルで海洋生物での大絶滅は、2670万から2730万年の周期(もっとも最適な値2750万年)があるという報告があります。ただし、これは海洋生物であり、陸上生物では明瞭ではありませんでした。その点を、この論文では、陸上生物で周期性が見えてきたというものです。

 周期性の発見は、まず10個の陸上生物の絶滅事件を取り上げ、そこから周期性を検出する数学的手法として、フーリエ解析をしています。フーリエ解析とは、周期性がありそうな現象に対して、周期関数(三角関数)を近似させていく方法です。三角関数の項には、それぞれに周期性とその強度という離散的な値に変換できます。

 その周期の値を、もとの時系列データとどの程度一致しているかを、統計的に検討した結果、明瞭な(99%の信頼度)2750万年の周期性があることがわかりました。

 10個の陸上生物の絶滅の時代のうち、8個で海洋生物の絶滅事件も同時に起こしています。この8つには、LIPsも起こっており、それが大絶滅を引き起こしている原因になりそうです。

 ところが、8つのうち3つの大絶滅は、直径100km以上の衝突クレーターを形成するような事件と対応しています。つまり衝突事件の3つは、2億6000万年前以降の大絶滅事件と対応しているということです。

 大絶滅と対応したクレーターの存在と、それらが大絶滅の周期性の解析からえられた2750万年周期と関係していることから、大絶滅にも周期性があったと推定します。では、その周期性が何を意味しているのでしょうか。次回としましょう。


・学位授与式・

今週末に、大学で学位授与式(卒業式)が

1年ぶりに開催されます。

ただし、短時間で三密をさけての開催となります。

保護者は出席できず、リモートで見学するだけです。

最後に学生との歓談は、短時間ですが取られるようです。

開催できるありがたさがの方が先に立ってますね。


・フーリエ解析・

周期性があれば、グラフにすれば目で見えます。

ただし、スケールのとり方で、

周期性が見えやすくなったり、見えにくくなったりします。

その点、フーリエ解析は便利で、

データさえあれば、周期性を定量値として計算できます。

その値を、現実のデータに当てはめれば検証できるはずです。

フーリエ解析の問題は、解析の手段なので

現実に周期性のない現象でも、

計算上、周期性が算出されてしまいます。

でも、闇雲な適用には要注意ですね。