2021年12月30日木曜日

4_155 この2年の調査を振り返って

 このエッセイは6つテーマで構成され、そのうち4は「地球地学紀行」というテーマになっています。2020年2月からの2021年にかけては、COVID-19の感染拡大で、更新ができていませんでした。そんな2年間を振り返りました。


 「地球地学紀行」は2019年10月31日に「4_153 2019年残念シリーズ 6:知床」(2019.10.31)を書いたのですが、2020年になるとCOVID-19の感染で、更新が滞りました。それでも、2020年の夏に感染がおさまりつつあるので、自然の中へでかけました。「4_154 支笏の森で昼食を」(2020.09.03)でその様子を紹介しました。しかし、2020年には野外調査には全く出られませんでした。
 2021年になると、感染状況と大学の危機管理レベルに合わせて、調査可能な時期を見極めて、数日ずつでかけました。研究目的で公式に出かけるためには、大学内にある危機管理委員会の事前許可が必要になるためです。
 大学の危機管理レベルは、今年度一杯は遠隔授業が基本となっていますが、対面が必要な授業は許可をもらっておこなえます。研究出張も認められています。しかし、北海道や札幌の警戒ステージが高くなると、すべて遠隔授業になり出張も停止になります。危機管理レベルも、試行錯誤しながら変更され、同じレベルであっても、少しずつ緩和する方向になっていました。
 現在、感染力の強いオミクロン株が、世界的な感染爆発を起こしています。日本では水際対策をしたのですが、甲斐なく国内での感染が広まりつつあります。感染爆発がいつ起こってもおかしくありません。頼みの綱のワクチンの3回目のブースター摂取も、年明け以降になりそうです。
 2020年度に学内の競争的研究資金では野外調査を中心に申請していましたが、遠隔授業と自粛に変更され、野外調査は全くできませんでした。2021年度の競争的研究費の申請では、感染を考慮して、感染爆発が起こっているときは別の研究品目して、感染がおさまっていれば道内の野外調査をするという2段備えにしていました。7月上旬まで緊急事態宣言ででれませんでしたが、7月に一旦解除されましたので、広尾から襟裳岬を周り静内を調査にいきました。しかし、また緊急事態宣言が秋まで出されました。しかし、やむおえない校務出張があったので、それに合わせて研究出張の許可をもらい、釧路から屈斜路、知床を調査しました。その後、緊急事態宣言が終わり、10月に道北と道南に、11月中旬にはまた校務出張が釧路にあったとので、一日私用として阿寒を訪れました。
 2年間のコロナ禍での自粛生活で、街にでたり外で買い物をしたいなどという気持ちが、大きく減衰しました。多くの人も、似た気分になっているのではないでしょうか。私の自粛生活では、常に研究中心に過ごしているので、変わらず生活でき、我慢することはありませんでした。しかし、野外調査に出かけられないのはな、なかりの痛手で苦痛でもありました。2021年は、何度が調査にでましたが、都合にいい時期に、行きたい場所に出かけられず、不満が残りました。
 来年度につても、競争的研究費の申請を考えなければなりません。オミクロン株の感染を考えたら、道内だけでの調査を考えたほうが無難でしょうか。まあ、来年になってから考えましょうか。
 来年こそは、よい年になりますように。

・強い気持ちで・
最近、年末のエッセイでは、1年を振り返っています。
2020年は野外調査ができず、
今年は野外調査ができましたが、
不自由な思いをしてでかけたの不満が残りました。
2022年もコロナ禍が続きそうです。
COVID-19には負けてはいません。
だからまだまだくじけるわけにはいません。
すべは心の持ちようです。
強い気持ちで対抗していきましょう。
来年こそはCOVID-19に打ち勝ちましょう。

・年末の寒波・
北海道は12月中旬から、何度か寒波が襲いました。
年末の寒波は強烈で、室内ではストーブを一日炊いていても、
温かい室内着を重ね着をしても寒い日がありました。
ストーブの火力を上げてしのぎました。
例年のことですが、年末前まで
大学にいつものように出て仕事します。
御用納めの翌日29日以降は、
大学の暖房は入っていますが、弱くされます。
寒いので昼間で大学で過ごすことする予定です。

2021年12月23日木曜日

5_187 系外惑星の多様性 2:白色矮星

 恒星の終末には、特別な現象が起こります。終末を迎えた星を調べることで、周りの惑星の特徴を読み取ることができそうです。系外惑星の化学的特徴を知る方法が考案されました。

 系外惑星の化学組成について、直接調べる方法と間接的に調べる方法があり、それぞれ別の論文で報告されました。いずれも恒星の観測値から推測する方法です。系外惑星の化学組成を、観測値から直接推定するか、相関関係を用いて間接的に推定するかが異なっています。
 まず、直接に推定する方法からみていきましょう。ターゲットとする恒星は、白色矮星です。
 恒星が通常の核融合反応で輝いている状態(主系列星といいます)から、さらに進化していくと、終末に向かっていきます。恒星の終末には、恒星のサイズ(質量とも同じ)によって異なっていきます。大きな恒星は超新星爆発をして、中心部には中性子星かブラックホールができます。
 太陽のような小さい目の恒星は、ゆっくりと膨張しながら、温度が下がっていき、赤色巨星と呼ばれる星になっていきます。赤色巨星は膨張していき、その大きさは、地球など岩石惑星のある軌道よりも大きく膨らみます。膨らんだ中にある惑星は、赤色巨星に飲み込まれていきます。膨張がおさまると、外側にはガスの惑星状星雲が残り、中心部には白色矮星が残ります。
 白色矮星はもともと恒星であったので、水素とヘリウムを主成分としていますが、白色矮星から別の元素が観測で見つかることがあります。これはすでに知られていたことです。カルシウム、ケイ素、マグネシウム、鉄など岩石を構成していた成分も見つかっています。
 白色矮星のそれら元素組成は、主系列星で組成範囲から超えていました。このような元素は、赤色巨星が岩石惑星を飲み込んだ時に、白色矮星に取り込まれた成分が、検出されたのではないかと考えました。
 その仮説を検証するために、650光年以内にある白色矮星で、観測されていたデータ23個をもちいました。そこから恒星の周りの惑星の岩石や鉱物の組成を推定していきました。その結果、多様な岩石がありそうなことがわかってきました。
 その詳細は、次回としましょう。

・冷え込み・
北海道は先週末から
寒波の到来でかなりの積雪がありました。
積雪は苦でもはないのですが、
冷え込みがひどいです。
我が家は、1階と2階にそれぞれストーブがあるのですが、
いつもはひとつを夜も炊いているのですが
寒波のときは両方をつけていても
冷え込みが厳しく、室内が寒くかったです。
厳冬の冷え込みです。

・クリスマスでも・
大学は、25日(土)まで講義日になっています。
今週末はクリスマスですが、
関係なく講義はおこなわれています。
我が家は子どももいないので
何も特別なことはしません。
淡々と日常を過ごします。
我が家では、年末の暮と正月のほうが
いろいろ行事をおこないます。
次男の帰省する予定ですが、
雪による遅延や欠航もそうですが、
新型コロナのオミクロン株の感染も心配です。

2021年12月16日木曜日

5_186 系外惑星の多様性 1:2つのアプローチ

 系外惑星は遠くにあるため、それぞれの特徴を見分けるのが難しいです。小さいとさらに難しくなります。しかし、地球に似た岩石惑星の特徴を見分ける方法が2つも提案されました。


 多数の系外惑星の発見とその多様性が報告される中、詳細な観測に基づく研究も進められています。系外惑星とは、太陽系外にある恒星を回る惑星を、地球、あるいは地球の周回軌道にある望遠鏡などで調べるものです。
 遠くにある恒星の周りの惑星の探査なので、大きな惑星、目立った惑星から見つかります。大きな惑星で恒星の近くを回るものが、多く発見されています。だからといって地球のような岩石惑星が少ないわけではありません。見つかりにくいだけで、存在しています。
 地球に似た惑星は、小さいため、通常の観測では調べにくい天体になります。しかし、地球に似たサイズの惑星も、いくつも発見されてきました。さらに、水が存在できそうな領域(ハビタブルゾーンと呼ばれます)に存在する惑星も、いくつか見つかってきました。
 さて今回、紹介するのは、系外惑星の化学組成に関する研究です。2つの異なった方法論でのアプローチですが、似た時期に報告されました。合わせて紹介していきましょう。
 ひとつは、Nature Communicationというオープンアクセスの雑誌に、2021年11月2日に紹介されたもので、
Polluted white dwarfs reveal exotic mantle rock types on exoplanets in our solar neighborhood
(汚染された白色矮星から太陽系近傍の系外惑星の異質なマントルの岩石タイプを解明)
というタイトルです。PutirkaとXuが著者となっています。これは、白色矮星という恒星が核融合を終えて死を迎えた天体を用いて、間接的に惑星の化学組成を調べる方法です。
 もうひとつは、Scienceという科学誌に2021年10月15日に掲載された
A compositional link between rocky exoplanets and their host stars
(岩石系外惑星と恒星との間の化学的相関)
という論文で、多数の著者(20名)による共同研究です。こちらは、ハワイのすばる望遠鏡など、地上にある天体望遠鏡で観測された系外惑星の内、実測された化学的なデータを用いています。それらの直接観測されたデータを用いて、惑星と恒星との化学的な関係があることを示しています。
 この2つの系外惑星の化学組成に関する話題を、シリーズで紹介していきましょう。

・大荒れ・
北海道は週初めは大荒れという予報でした。
札幌での積もったようですが、
わが町では、風は強かったですが、
少しの積雪で済みました。
しかし、層雲峡など、ところにより
激しい積雪となった地域もありました。
飛行機の欠航便もあったようです。
このままおさまればいいのですが。

・年末年始・
12月の我が大学の講義は、25日(土)までです。
大学だけでなく、公官庁では
クリスマスなどは祝日でもなく配慮もしません。
宗教儀式は、尊重するのでしょうが配慮しないようです。
「行政機関の休日に関する法律」があるそうで
年末年始(12/29-1/3)は休日と決められています。
明治時代にもそう決めた法律があるそうです。
我が大学も年末年始は休みとなります。
年の変わり目なので、いろいろな行事があるのでしょうが、
昔からそうだからという根拠は
少々不思議な気がしますね。

2021年12月9日木曜日

5_185 酸素と自転 6:底生酸素

 自転速度の変化と酸素濃度の変化の相関がありました。その原因は、生物の酸素の生産量ではなく、海底での埋没量によるようです。今後、天文学的変動と生物活動、そして地球環境との結びつきを再考していく必要があるようです。


 この論文では、酸素の形成と地球の自転の関係を見てきました。地球史の中で、自転の変化と酸素濃度の変化の起こった時代が一致していました。では、なぜこのような一致がみられたのでしょうか。その原因を探っていきましょう。
 まず、現在生きているシアノバクテリアで、光合成による酸素の形成効率を測定します。測定値からモデルを作成して、日照時間の関係を調べていきました。シアノバクテリアも生物ですので、常に酸素呼吸をしています。昼は酸素を使用して光合成もしますが、光合成が勝ります。一方、夜は光合成はできず、酸素の消費だけとなります。シアノバクテリアの光合成の効率は、一日が長くなっても変わらず、一日の酸素の総生産量は一定でした。しかし、酸素の供給が増えることがわかりました。
 論文では、"diel benthic oxygen export"と"resultant daylength-driven surplus organic carbon burial"表現されています。訳すと「日周で底生酸素の輸出」と「結果として起こる日周期駆動の余剰の有機炭素の埋没」という意味にりますが、少々ややこしい理屈になります。
 「底生酸素」とは、本来なら海底に保存されるはずの酸素です。「日周で底生酸素の輸出」とは、日周期が長くなると「底生酸素」として海底から酸素が放出されてくることです。観測とモデル計算から、日周期が長くなると、大気中の酸素量が増えていくことがわかってきました。
 「結果として起こる日周期駆動の余剰の有機炭素の埋没」とは、酸素があれば本来なら海底で有機物を分解をしていくのに使われている酸素が、大気中に放出されていくので、堆積物中に埋没される炭素が多くなるということです。
 酸素の放出されると炭素が埋没されることになり、両者は相反する作用となります。このような原理が働いたため、前回紹介した24億年前頃の大規模な酸化イベント(Great Oxidation Event:GOE)と、6億年前(原生代後期)頃の酸素形成イベンド(Neoproterozoic Oxygenation Event:NOE)が起こったと説明しています。
 これまで、自転速度の変化は天文現象として、酸素量の変化は生物活動として捉えられてきました。その関係はあることは想定できますが、十分検討されてきませんでした。それが解明されてきたので、今後、天文学的運動と生物活動、あるいは地球の自転と大気組成変化(二酸化炭素、オゾン量など)の関係なども、考えていく必要がでてきました。
 昼の時間変化は1年でもおこっているはずです。今回の論文の結果では、酸素の生産量も変化しているはずです。二酸化炭素には季節変化が現れているのは知っていたのですが、酸素量は知りませんでした。調べると、酸素量にも季節変化がありました。また二酸化炭素の年々の増加に呼応するように、酸素量も減少していました。なかなか興味深い現象です。

・冬至・
北海道は、繰り返し積雪がありました。
日中にはすぐに溶けるので、
根雪になっていないのですが、
日に日に寒さが募ってきます。
日の出も遅くなり、日没を早くなり、
一日が短くなっていきます。
今年の冬至は12月22日で、もうじきです。

・卒業研究・
このエッセイが配信される頃には、
卒業研究の提出期間が終わっています。
4年生にとって、大学での学びの集大成となります。
大変な思いをして書き進めていくことになりますが、
長文の報告書の書き方を体験することで
研究の一端を身に着けられることを願っています。
そのため、大半の空き時間を
学生の添削に充てています。

2021年12月2日木曜日

5_184 酸素と自転 5:イベント

 地球の自転のモデル計算と、酸素濃度の変化において、重要なイベントが起こった時期がいくつかあります。それをまとめておきましょう。それらの時期が一致するかどうか、一致すとしたら、その意味を考えなければなりません。


 太古代後期は16時間、30億年前より以前は6時間という見積もりもあることは紹介しました。それらの情報をもとに、月と地球の関係から、地球の自転をモデル計算する試みは、以前からおこなれていました。その結果による、「潮汐摩擦」によって、時代を遡るにつれて、一日が短く、自転が速くなっていくことは、わかっていました。この自転の変化は、規則的のですが、7億年前に、一日が21時間となってからは、自転速度は変化しません。その状態が25億年前まで継続します。そして25億年前より以前なると、また一日が短くなっていきます。

 7億から25億年前の自転速度の変化が停止した原因は、「潮汐ロック」だと考えられています。月が地球の周りを回っているといいましたが、実際には、共通の重心を回っています。地球と月が、お互い潮汐力を及ぼしているので、潮汐摩擦によって、ある時、自転周期と公転周期が一致する状態になります。地球の自転はロックされていないのですが、月では自転と公転の周期が一致し(地球を1回公転するとき1回自転する)、潮汐ロックがかかった状態になっています。一旦、この状態になると、運動の変化が起こりにくくなります。

 しかし、それ以前は、潮汐摩擦によって、自転の速度は速い状態とななっています。

 一方、地球史において酸素の増加現象として、いくつかのイベントが見つかっています。

 4億年前ころ、古生代酸化イベント(Palaeozoic oxidation event:POE)と呼ばれ、大オルドビス紀生物多様性イベント(the Great Ordovician Biodiversity Event)に対応していると考えられています。6億年前(原生代後期)ころ、酸素形成イベンド(Neoproterozoic Oxygenation Event:NOE)が起こりました。原生代中期(18億から8億年前)、不毛の10億年(boring billion)と呼ばれる、大陸の再構成と孤立が起こり、気候変動も海洋循環も停滞して、生物進化もほとんど起こらない時期となっています。24億年前ころ、大規模な酸化イベント(Great Oxidation Event:GOE)が起こります。

 これらのイベントを考慮して酸素の量の変化が、モデル計算としてこの論文で見積もられています。このような時間軸上での自転の変化と、酸素の濃度変化を同じ図で表示すると、イベントの時期やパターンが一致します。

 そのメカニズムについては、次回としましょう。


・師走・

いよいよ師走になりました。

我が大学の学科は、卒業研究が

必修になっていますので

4年生は全員、決められた期間に提出し、

報告会で発表しなければなりません。

ですから、現在、ゼミの学生たちは

必死に完成を目指しています。

私も空き時間をすべて添削に充てています。

まさに師走ですね。


・積雪・

北海道は、11月末に寒波が来て

各地で積雪、時には豪雪がありました。

わが町でも、2日続けて少しですが

雪が積もりました。

冷え込みも厳しくなってきました。

天気がよければ昼間のは暖かくなるで

ストーブは止められますが、

ほぼ一日つけっぱなしにしています。