2021年6月24日木曜日

6_188 地球外生命 6:うしかい座タウ星b

 うしかい座タウ星bと呼ばれる太陽系外の惑星から、電波の放射が検出されました。この電波の放射は、知的生命の存在を意味するものでしょうか。まずは、この系外惑星の様子をみていきましょう。


 昨年の暮(2020年12月16日)に、太陽系外の惑星から発せられた電波を検出した、という報告がありました。51光年離れた「うしかい座タウ星(Tau Bootis)」にある天体を観測したものでした。天文の世界では、51光年は近くになるので、暗いところであれば、肉眼で観測できます。詳しい観測のしやいすい天体です。

 うしかい座タウ星は、連星になっています。連星とは、2つの恒星がお互いの重心を公転しているものです。大きい方を主星(タウA)、小さい方を伴星(タウB)と呼んでいます。主星は、一般的な恒星で、黄白色をしています(F型主系列星)。伴星は、赤色矮星です。

 うしかい座には、惑星(うしかい座タウ星b)が見つかっています。近いため、惑星探査のかなり初期(1996年)に見つかっています。このタウ星bは、主星(うしかい座タウ星A)の非常に近いところ(軌道長半径720万km)を、3日(3日7時間29分56秒)という高速で公転しています。また、主星の自転周期と惑星の公転とが一致していることから、潮汐ロックが起こっています。実際の観測で、系外惑星の潮汐ロックが観測されているのは、この惑星のみです。

 この惑星の軌道面は傾いて(45度ほど)おり、さらに地球から見た時、恒星の前を通過するような軌道ではありません。そのため、恒星の減光による観測はできないのですが、反射光が直接観測できてことで確認されました。これは近いためできたものです。

 質量は木星の6倍ほど(5.95倍または5.7倍)と推定されており、惑星としてはかなり大きなものとなります。恒星に近いところを公転しているため、表面温度も1377℃と高温になっています。ホットジュピター(熱い木星)と呼ばれるタイプの惑星になります。

 惑星の反射光の観測によって、大気に一酸化炭素があることがわかっています。この一酸化炭素が、面白い現象を起こすと考えられています。一般にホットジュピターの大気中で、高度が高いほど、大気の温度が高くなるという傾向(温度逆転と呼ばれる)があります。ところが、一酸化炭素があると、高度が上昇するほど大気の温度が下がるという現象が起こっていることがわかりました。

 このしかい座タウ星bから、電波が放射されているという報告がありました。これは何を意味しているのでしょうか。文明をもった知的生命がいるのでしょうか。それは、次回としましょう。


・まん延防止重点措置・

北海道の20日で緊急事態宣言は解除されました。

札幌では来週から7月11日までまん延防止重点措置へとなります。

わが町は、特別措置から経過区域となりました。

大学では、7月4日まで現状維持をして、

それ以降は危機管理レベルが下げらるかもしれません。

いずれにしても、今日から2週間は、

現状維持なので、遠隔授業が続く。


・職域接種・

市内には4つの4年制大学があります。

そのうち1つが職域接種の準備をしてます。

医療系の学部があり、医師や看護師が常勤しているため、

接種を実施できるようです。

大学の学生や教職員だけでなく、

市内の小中校、幼保の教職員にも

接種をしていくそうです。

公共のことを考えたすばらしい対処だ思います。

2021年6月17日木曜日

6_187 地球外生命 5:電波望遠鏡

 ホスフィンの発見は、大きな衝撃がありました。可能性としてですが、金星に生命の存在を示唆しているからです。生物起源ではなくても、新しい化学合成の過程が発見されることになるはずです。


 金星の大気中のホスフィンは、どうして形成されているのかは、まだ不明です。現在知られているホスフィンの合成過程は、地球の生物が関与する合成と巨大ガス惑星での高温高圧条件だけです。

 ホスフィンを合成できる巨大ガス惑星の高温高圧の条件は、金星大気にはありません。考えられる可能性としては、生物起源と未知の過程です。いずれも検証が、今のところは困難ですが。

 未知の化学反応ですが、金星の大気の条件でも合成できる過程があるかもしれません。ただし、金星の大気の特性としては、強酸性の雲があることが知られています。そのような酸性の条件が発生すると、ホスフィンはすぐに分解されてしまいます。そのため金星の大気環境を考えると、ホスフィンが常に供給されなければなりません。合成過程では常に供給されていることが束縛条件となります。

 継続的にホスフィンが形成される条件を考えると、まだ発見されていないのですが、金星には生物が存在しているという可能性もあります。地球と同じように、生物の有機物が分解されることによって、ホスフィンが合成されている可能性です。生物がいれば、常に有機物は形成され、ホスフィンが合成される可能性があります。この可能性では、現在の金星にも生物がいて、それも大量に生息しているかもしれません。今後の、探査機で検証できるかもしれません。

 しかし、そもそもホスフィンの存在は、昔の探査データを解析しなおしたものです。他の証拠はないのでしょうか。

 2017年、ハワイのジェームス・クラーク・マクスウェル電波望遠鏡で金星のガスを調べました。するとホスフィンが検出されていました。つまり、今回紹介した報告以前に、ホスフィンの存在が知られていました。

 2019年にも、チリのアルマ望遠鏡では、電波を使って精度の良い観測がされています。この観測は、金星の赤道付近の高度52~60kmに絞り込んで調べています。ホスフィンが、20ppbの濃度で検出されています。この濃度は、地球で観測されているホスフィンの1000倍もの量になっています。

 ただし、これらの観測データの解釈として、二酸化硫黄の可能性もあるそうなので、検討が必要となっていました。そんな論争中の状態のところに、今回の報告があったのです。探査機のプローブの直接観測のデータという、まったく独立した方法での解析結果が示されたことになります。金星大気中にホスフィンが存在するというデータには、信頼できそうです。

 ホスフィンの存在が確実なら、次なる課題はどうして形成されたのかです。上で述べた2つの可能性を、今後、検討していく必要がありますね。


・検証中かも・

地球外生命、それも太陽系内での証拠が提示されました。

もし、この検証作業が進めば、金星での生命の有無が判明し、

生命がないと判明すれば、

未知のホスフィンの生成過程がわかることになります。

金星の探査機がいくつかあり、今後も予定されているので

そのうち検証されるかもしれませんね。


・晴天の霹靂・

先日、将来の人生設計と研究計画に

大きな変更が起こりそうな条件が提示されました。

無視すれば、関係のない条件となります。

もし、対処すれば大きな変更が起こります。

晴天の霹靂でしょうか。

人生における条件変化は、

好んで受け入れることにしています。

環境変化が、日常に刺激を与え、

ステップアップを図ろうと考えるからです。

現在、条件を受け入れるかどうかを検討中です。

そのために、いろいろリサーチしていく必要があります。

今週中に決断し、申請手続きを進めていくことになります。

まあ、申請後、審査がありますので、

認可されるかどうかは、まだ不明ですが。

2021年6月10日木曜日

6_186 地球外生命 4:ホスフィン

 地球外生命のシリーズですが、太陽系内の惑星に話題が移ります。火星では何度か生命の痕跡に関して議論になったことがありました。今回は、生命の可能性を考えてこなかった惑星、金星での話しです。


 地球外生命のいそうな天体として、太陽系で真っ先に候補にされたのは、火星でした。火星は大気が薄いので、表面地形が見えることも、有利に働いたようです。金星は、厚い雲に覆われていて、表層の様子は全くわっていませんでした。探査が進むにつれて、金星の実態がわかってきました。

 旧ソ連のヴェネラ計画で、いくつかの探査機が送り込まれ、金星の様子が少しずつわかってきました。金星の表層は、過酷な環境でした。NASAのパイオニア・ヴィーナス計画では、軌道に入って長期に渡って観測を続けました。さらに、4つのプローブ(小さな探査装置)を下ろしました。NASAの探査機マゼランは、雲を通すレーダーで金星の表層をマッピングして、正確な地形図を作成しました。ESAのビーナス・エクスプレスは、大気の観測をして、激しい運動が起こっていることがわかってきました。日本のJAXAの金星探査機あかつきは、予定していた軌道への投入は失敗しましたが、再度の金星への軌道投入に成功し、観測を続けています。

 今回、以前のおこなわれたNASAのパイオニア・ヴィーナスのプローブに搭載されていた装置(中性ガス質量分析器)の観測データを、現在の技術で再度検討されました。その検討から、いくつかの化学成分の存在の可能性が報告されました。大気の中層には、ホスフィン、硫化水素、亜硝酸、硝酸、シアン化水素、一酸化炭素、エタンの兆候があることを検出したと報告しています。

 現在、ホスフィンに注目されています。ホスフィン(phosphine)は、分子式がPH3で表され、常温では可燃性の気体で、酸素と反応して自然発火します。吸いこむと意識不明になり死んでしまうような毒性があります。ホスフィンが金星の大気から見つかりました。

 ホスフィンは、木星の大気からも発見されています。木星のような巨大ガス惑星の大気中では、激しい乱気流があり高温になるところで合成されています。そこでは、リン酸塩を強力に還元することで、ホスフィンができます。ホスフィンの形成には、巨大ガス惑星の対流嵐のような高温高圧の条件を必要としています。

 地球でも、ホスフィンが発見されています。もちろん、地球のような薄く穏やかな大気からは、生成されることはありません。地球ではホスフィンは生命体から生成されていると考えられています。

 このホスフィンが、金星の大気から発見されました。金星の大気中には、リン酸塩を還元するような強力な還元を起こす物質は見つかっていません。もし、このホスフィンが、本当に金星大気中に存在するなら、どうしてできたのでしょうか。その仮説は、次回としましょう。


・春の嵐・

3日の夜から、4日の昼間で嵐でした。

3日の夜は家が、ガタガタと揺れて恐ろしかったです。

北海道では、まるで台風のようにでした。

最初は、風の嵐、その後雨の嵐となりました。

街路樹た倒れたり、木々の枝が多数落ちたり、

畑の植物も倒れたりと、かなり被害もありました。

5日の朝は、台風一過のような快晴となりました。

春なのに、こんな嵐は珍しいですね。


・オリンピック・

6月20日まで緊急事態宣言中ですが、

その後はおさまるのでしょうか。

そんな中、オリンピックの準備だけは

着々と進められています。

世論は、中止の意見が多数なのですが、

政府、IOCは、既成事実を作りながら、

世論を無視し決行していくようです。

一部の国だけで、ワクチ摂取は進んでいますが、

多くの国では、ワクチンは行き渡らず

まだパンデミックが続いています。

そんなときに、オリンピックをおこなって、

世界中の国々から選手が集まれるのでしょうか。

もし出場しても選手らは、楽しめるのでしょうか。

選手の気持ちは、どうなのでしょうか。

オリンピックが、政治や商業の道具に

されているように見えて仕方がありません。

2021年6月3日木曜日

6_185 地球外生命 3:プロキシマb

 潮汐ロックのかかった惑星にもハビタブルゾーンがありそうです。これは作業仮説なので、検証が必要です。検証によって、ハビタブルゾーンができなかったり、限定的だったり、広くなることもあるかもしれません。


 地球の気候モデルからメディオクリティの仮定を利用して、未知の惑星の気象を探る方法があることを、前回紹介しました。どのようなものか紹介していきましょう。

 モデルを適用する惑星は、系外惑星のプロキシマbです。前回紹介したように、地球とは全く異なった性質の惑星であることがわかっています。主星のプロキシマ・ケンタウリは、太陽とは異なる赤色矮星で、温度も低い恒星です。恒星のあまりにも近くを公転しているので、潮汐ロックにより惑星の同じ面を恒星に向けて固定されていると推定されます。そんな特異な惑星環境に、地球の気候モデルをどう適用するのでしょうか。

 プロキシマbは、夜側と昼側は固定されていることになります。そうなると、夜側では冷たくて海は永久に氷に覆われていて、昼側では暑く乾燥した大地がむき出しになっていそうです。しかし、夜と昼の境界では、液体の水が存在でき、ハビタブルゾーンがありそうです。これが検証する前の想定になります。これでも期待が持てそうですが、条件の変化によっては、水が存在できないかもしれませんし、できたとしても狭い範囲だけかもしれません。なんらかの検証が必要になります。

 現在の地球の気候変化を予測するモデルとして、大気大循環モデル(Global Circulation Model GCMと略)があります。GCMは、現在の観測データを、ある時刻の初期条件として与え、それ以降を大気の状態の方程式(偏微分方程式)をから計算(数値的な時間積分)していくものです。現在の気象予報は、このGCMを用いています。ただし、一般的に解けない方程式なので、計算可能な近似方程式にして計算機で解いていく方法です。計算を進めていくと誤差がおおきくなっていくので、実用性としては3日程度の予測しかできません。長期予報では、別の条件や方程式を用いる必要があります。

 GCMは実用性があるのですが、地球の条件に沿って気象予報のためにつくられています。GCMを、太陽放射、大気組成、気候強制力などを変更でき、3次元的に計算できるように拡張されたソフトウェア「ROCKE-3D」が開発されています。ROCKE-3Dは、過去の地球の気候変動や、他の惑星にも適用できるように作成されたものです。

 ROCKE-3Dを使って、特異な条件にあるプロキシマbの気候を、シミュレーションしたいくつかの研究がおこなわれました。その結果、液体の水が広く存在する可能性があることがわかってきました。昼側では、雲が傘のように広がり表面の温度を下け、水が存在できる可能性があること、夜側でも暖かいの大気や海洋が循環することで、水が存在できる可能もでてきました。

 シミュレーションの結果ですが、海が恒常的に存在できる可能性を示したことになります。恒常的な海の存在と変動する気候があれば、生物を生み出したり、進化を促すことができるでしょう。


・教育実習・

ゴールデンウィーク開けに、各地でスタートした

4年生の教育実習が終わりました。

教育委員会が、実習生もその学校の教員として

扱ってくださったので

実習を無事終えることができました。

実習生は2週間前からの健康管理や、

早目の帰省などでコロナ対策をしてきました。

大学教員の実習指導は受けない学校もありました。

それぞれの学校の判断になりますが、

多くの実習はできました。

後期に回された学生もいますので、

このまま事態が収まればいいのですが。


・全地球凍結・

ROCKE-3Dは過去の地球の気候の推測にも

利用されています。

地質学的証拠から、7億年前ころの地球では、

非常に寒冷な時期があり、

全地球凍結(スノーボールアース)となったと考えられています。

ROCKE-3Dを適用したところ、赤道付近では、

海が500年も安定し存在できることが計算されました。

すべての海洋が完全に凍る(スノーボールアース)ことが

なかった可能性がでてきました。

この結果は、赤道付近にも氷河あったという

地質学的証拠とは矛盾しています。

両分野で、今後の検討が必要ですね。