2019年11月28日木曜日

5_166 系外惑星 1:TESSへの期待

 太陽系外の惑星の発見は、度々ニュースになり、このエッセイでも何度か取り上げてきました。系外惑星には、多様な惑星、そして異形の惑星、地球に似た惑星などがあることがわかってきました。

 ノーベル物理学賞は、ピーブルズ博士の他に、系外惑星を発見したマイヨール博士とケロー博士に贈られました。その後、太陽系外惑星の探査のためにケプラー衛星が打ち上げられ、大きな成果を上げました。系外惑星の探査の結果は、驚きの連続でした。9年半にもおよぶ観測期間も推進装置のトラブルで、52018年11月15日に終わりました。
 ケプラー衛星は、はくちょう座の方角だけを向くようにして、観測していました。星域は限定されていたのですが、50万個以上の恒星を観測して、2600個以上の太陽系外惑星を発見しています。観測期間が長かったとはいえ、限られた星域でこれだけ多くの系外惑星が発見できたのは、大きな成果となります。多様な惑星、異形の惑星が見つかりました。
 遠くの恒星系まで観測したので、恒星近傍を巡る大きな惑星が見つかりやすく、そのような異形さが目立った結果となったのかもしれません。つまり、少々バイアスのかかった観測結果を見ているかもしれません。多様性は知ることは重要ですが、平均的な姿を知ることも重要です。
 ケプラーの後継機として探査衛星TESSが、2018年7月25日から観測を開始しています。TESSの特徴は、ケプラーとは軌道が違っていることと、観測できる星域が格段に広い点です。期間が限定されているでの、近くて明るい恒星の周りにある太陽系外惑星を探査することになります。最初の1年は南天を、次の1年で北天を観測する予定になっています。
 TESSの観測では、太陽系近傍の恒星で比較的小さな天体、恒星から少し離れた惑星も発見できるはずです。地球に似た惑星がどの程度あるのか、その多様性も調べることができるはずです。そこから、平均的な惑星系を知ることができるのではないでしょうか。
 TESSは、11月18日現在、太陽系外惑星の候補(TESS Object of Interest:TOIと略されています)が1414個あり、その内惑星の半径が地球の4倍以下のもの候補が443個出てきて、270個がすでに惑星でないと分かっています。現在、34個が惑星だと確認されています。4ヶ月あまりで34個の地球に似た惑星を発見しています。大きな成果です。

・バイアス・
最近、論文で系外惑星について調べていました。
多数の惑星の多様な姿をみると、
私たちの太陽系が珍しいもののように感じます。
そこにはバイアスがかかっていることに注意が必要です。
ケプラーでは、恒星近傍の大きな惑星が
発見しやすいというバイアスがありました。
そのバイアスの効果の有無や程度を
今回のTESSは明らかにしてくれるはずです。

・寒暖差・
北海道は、先週末から暖気がおとずれ、
先週初めまでの寒波で降った雪が一気に融けました。
雪が融けるのは助かります。
一度、寒波がくると、体が冬に向けて寒さに備えます。
そこに暖かさが戻ってきました。
気温変化の激しい天気で
体調を壊しそうで心配です。
十分な休息をとれるように心がけたいですね。

2019年11月18日月曜日

6_168 2019年ノーベル物理学賞 3:地球の立ち位置

 ノーベル物理学賞の内容に紹介しています。前回のピーブルズ博士の研究は多岐に渡っていたのですが、マイヨール博士とケロー博士の研究はわかりやすいもので、そのインパクも想像しやすいものです。

 2019年のノーベル物理学賞は、ピーブルズ博士ともう一組、スイスのマイヨール博士とケロー博士が受賞しました。その内容は「太陽と似た恒星の周りを公転する系外惑星の発見」という業績に対して与えられました。この業績は、わかりやすいものです。
 ただし、実際の観測はなかなか困難なものでした。惑星は自ら光を発していません。恒星の光を反射をしているだけです。他の恒星の周りの惑星を、その反射の明かりだけで、遠く地球から、直接、観測するのは不可能です。そこで考案されたのが、恒星の運動が、惑星よってブレるのを観測しようという方法です。
 大きな惑星が回っていれば、恒星も共通の重心を回って動いています。もしその動きが、恒星のブレとして検出でき、周期性がわかれば、惑星の存在が間接的ですが、知ることができます。星のブレは、恒星の発する光の波長の変化を、ドプラー効果として観測するものです。ドプラー効果から、惑星のサイズや公転周期を推定していきます。
 マイヨール博士は、1977年から13年間かけて、291個の恒星を定期的に観測したところ、37個の恒星で周期変化をみつけました。しかし残念ながら、それらすべてが連星でした。連星とは、2つの恒星が共通重心で回っているもので惑星によるブレではありませんでした。
 1995年には、ブリティッシュ・コロンビア大学の研究グループが、21個の恒星を、12年間にわたって定期的に観測したのですが、「15年以下の公転周期を持つ木星の質量(木星質量)の1から3倍の惑星は存在しない」という結果を報告していました。
 ところが、マイヨール博士と当時大学院生であったケローさんが、より高精度の観測機を用い、以前の観測でドプラー効果が検出できなかった142個の恒星を選んで観測しました。すると、約50光年のペガスス座51番星(51Peg)に、太陽系以外ではじめて惑星があることを発見し、1955年に報告しました。この惑星は、51Peg bと命名されました。bとはその恒星系の最初の惑星となり、以降、惑星が見つかったら、c、d、・・・アルファベットがつけられていきます。
 さらに驚くべきことに、この惑星は木星の半分程度(0.47倍)の質量をもったガス惑星なのですが、たった4.2日間で恒星の周りを公転していました。私たちの太陽系では、想像もしていなかった惑星の発見でした。木星のようなガス惑星でありながら、太陽のすぐ近くを、それもものすごい公転速度で巡っていました。このような惑星は、「ホットジュピター(暑い木星)」と呼ばれました。
 その後、次々と系外惑星が見つかり、現在、その数は4000個以上になっています。その中には、異形の惑星も多数見つかってきました。多様な系外惑星の発見で、我々の太陽系が典型的な惑星系とば呼べず、多様な惑星系のひとつにすぎないことがわかってきました。その魁となったのが、マイヨール博士とケロー博士の発見でした。
 その結果、我々の太陽系の形成モデルも変更が迫られ、より普遍性があるモデルが必要になりました。また、その中でなぜホットジュピターの異形の惑星ができるのかも、説明される必要もあります。
 恒星からの距離に応じて水の存在できる領域(ハビタブルゾーン)の惑星、また地球サイズの惑星も見つかりました。もしハビタブルゾーンに地球サイズの惑星があれば、そこには生命が誕生しているのでしょうか。系外惑星の発見は、そのようなことを考えさせるきっかけになりました。

・寒波・
先週末から北海道は寒波に見舞われています。
あちこちで除雪車が動き出したというニュースも流れました。
わが町は、週末に雪が降っていたのですが、
除雪するほどではありませんでした。
ところが、日曜日には嵐となり、すごく冷え込みました。
週の初めには道路が凍ってつるつるになっていました。
転びそうになりながら、早朝の凍てつく道を歩いています。

・執筆中の論文・
このシーリーズの最初に、
現在執筆中の論文で、系外惑星についてまとめている
と書きました。
ところが、論文を書き進めているうちに、
ページ数がオーバーしてしまいました。
しかたなく、その部分を削除しました。
次回の論文では、系外惑星などの多様性も含めた、
地球や私たちの太陽系のテクトニクスを考えるものとなります。
まあ、論文を書き進めていくと、
このようなことはよく起こることなので、
しかたがないでしょう。
締め切りのぎりぎりまで呻吟していましたが、
今週初めにやっと投稿することができました。

2019年11月14日木曜日

6_167 2019年ノーベル物理学賞 2:宇宙の理論化

 今年のノーベル賞物理学賞についてのシリーズです。まず、ピーブルズ博士の業績に関する話題から紹介していきます。専門ではないので、うまく説明できていない点があるかもしれません。ご容赦いただければと思います。

 今年のノーベル賞物理学賞者のピーブルズ博士の業績をいくつか紹介していきましょう。
 まずは、ビックバンについてです。ジョージ・ガモフの科学普及書を読んでいたとき、ビックバンの記憶が強く残りました。ガモフらが提唱したビックバン(ガモフは火の玉宇宙と呼んだ)で宇宙が始まった経緯が、普及書では詳しく解説されていました。その後、ビックバンの状態から温度も予測し、元素が合成されたことも示されていました。ガモフは、それが現時点ではどのような温度(5K)になっているかも予測していました。
 ビックバンの時の温度が、その後の宇宙の膨張で波長がのびていきます。ピーブルズ博士らは、現在ではマイクロ波の波長にまでのびていることを理論的に示しました。
 マイクロ波を測定する技術は、当時はまだありませんでした。ところが、別の分野、別の目的でマイクロ波が観測されました。人工衛星の電波を補足するためのアンテナが、その波長をノイズとして捉えました。そのノイズが、宇宙マイクロ波背景放射に相当するものであることが、認識され報告されました。その観測をした研究者らは、ノーベル賞を受賞しています。予測と観測が一致したことで、ビックバンの有力な証拠となりました。
 電波技術が進むと、地上付近ではマイクロ波の雑音が多くなり、精度を上げることが困難になります。そこで、人工衛星(COBEと呼ばれる)を打ち上げ、地球外で観測することで精度を上げていきました。結果、マイクロ波から見た温度は、均質ではなく、10万分の1程度の揺らき(温度非等方性)があることがわかりました。現在では、宇宙マイクロ波背景放射の精度は、さらに上がっています。ピーブルズ博士は、そのようなゆらぎを定量的に計算する方法論も示しています。
 他にも、宇宙の形成から3分後に起こったとされる元素の合成(ヘリウムの存在量)、38万年後(電子の捕獲)やその後(密度のゆらぎ)、現状の銀河の分布、ダークマターなどを統計的に説明する方法など、現在の宇宙論の基礎になるような重要な定式化を数々おこなってきました。現在の宇宙論のいたるところにピーブルズ博士は貢献しているともいえます。
 今回の受賞理由として、「高度に観念的な分野を精密な科学へと変化させた」としています。確かに、宇宙のはじまりや温度のゆらぎ、銀河の分布など、概念としてはわかりますが、現実とどう結びつけるかはなかなか難しいものがあります。そこに仮説(理論)を投入して、観測と結びつけということになります。観測の精度が上がれば、仮説の信頼度も上がります。逆に仮説から観測の方向性も決めることができます。
 ピーブルズ博士の業績はいずれも優れたものなので、それらが観測で実証されたとき、あるいは観測が理論で説明できた時などに、受賞すると一番わかりやすかったはずです。そんなタイミングがなかったのでしょう。今回の受賞は、それら数多くの業績に対して与えられました。彼の業績はいずれも重要なものなので、素直に受賞を祝いたいと思います。

・ガモフ全集・
12冊+別巻3冊からなる「ガモフ全集」があります。
いくつかの巻では、トムキンス氏が主人公で
いろいろな不思議がことを体験していきます。
そのような興味を惹く展開で、
先端の科学を紹介していきます。
元素合成や相対性理論、宇宙のはじまりなど、
宇宙に関することが中心でした。
他にも、生命や地球に関する専門でない巻もありました。
高校生の頃に全集を購入して読み始めました。
先端の科学を楽しく紹介されていました。
非常にワクワクとして読みました。
ガモフも数々の宇宙論で業績があったのですが、
ノーベル賞を受賞していません。
研究者の中には無冠ですが、偉大な人も多々います。
まあ、彼らはノーベル賞のために
研究しているのではないでしょうが。

・火の玉宇宙・
ガモフ全集の中で、
「わが世界線」という巻があります。
これは、ガモフ自身の自伝となっています。
もともとソビエト連邦の物理学者でしたが、
アメリカに亡命してきたことも記されていました。
命がけの逃避行があったことも知りました。
そんな経歴にかかわらず、
ガモフは明るくジョーク好きでした。
例えば、自分では「火の玉宇宙」として提唱したのですが、
フレッド・ホイルに「ビックバン」と揶揄されたので
その言葉を自身も使いだしたことで、
現在のビックバンが定着しました。

2019年11月7日木曜日

6_166 2019年ノーベル物理学賞 1:理論と観測

 少し前ですが、今年のノーベル賞が発表されました。化学賞を吉野彰さんが受賞されたので日本はわいていますが、私は物理学賞が気になっていました。それは現在執筆してる論文と深い関わりがあるからです。

 2019年度のノーベル物理学賞は、宇宙の理論(1名)と観測(2名)の2つの業績に対した与えられました。受賞理由はそれぞれにあるのですが、両研究によって、
 Contributions to our understanding of the evolution of the universe and Earth's place in the cosmos
 (宇宙の進化と宇宙におけるこの地球の立ち位置に関する人類の理解への貢献)
とされていました。
 現在執筆している論文では、系外惑星についての項目あり、調べているところであったので、内容と大きな関わりがあるので興味がありました。さらに、違和感があったことでも、興味をひきました。両者の研究内容に関係が少ないのと、理論に関しては「数々の業績」を挙げた研究者に対して与えるという、点でした。
 研究内容に関連がない2つの業績が受賞するということが、かつてもあったのかもしれませんが、今回は上述のようにひとつの受賞理由を提示していることに違和感があります。
 また、ノーベル物理学賞は、物理学において飛躍的成果があった分野の中心となった研究者たち、あるいはきっかけをつくった研究者たちに対して贈られるのが筋かと思います。ですから、理論については少々不思議な感じがしまた。理論(本来は仮説というべき)を提唱しただけではだめで、その仮説が証明されて初めて理論と呼べます。ですから、理論がはじめて検証されたときに、あるいはすでに知られていた現象を理論で説明できたとき、理論と検証した人たちが、同時受賞というのがわかりやすいはずです。
 例えば、アインシュタインのノーベル賞は、相対性理論はすでに公開されていたのですが、まだ検証されていかなったので、受賞対象とはなりませんでした。光電効果という現象があり、それを光量子仮説で理論的に解明したことで受賞しています。それも重要な業績ではありますが、相対性理論が証明されたときに、再度受賞してもよかったはずです。相対性理論も非常に大きな科学への貢献だと思います。
 さて、今回の受賞者であるアメリカのピーブルズ博士は、理論物理の大家です。物理学が専門でもない私でも知っているくらいですから、非常に有名な研究者であることは確かです。ノーベル賞を受賞しても問題はない、業績だとは思うのですが、なぜ今なのか?という疑問があります。
 宇宙マイクロ波背景放射が発見された時、その理論的研究グループの一員でした。その研究史を読んでいた時、ピーブルズ博士の名前の聞いたことがありました。他にも宇宙に関する理論で多くの業績を挙げていることも聞いています。その他の業績については、次回にしましょう。

・冬タイヤ・
今週になって、わが町でもアラレが降りました。
一時的ですが、道路が少し白くなりましたが、
後にまた雨に変わりました。
来週は車で出張になりますので、
冬タイヤにしなければなりません。
自身では交換しないので、
近所のいつもお願いしている車屋さんに
お願いすることになります。
初雪が降るとそこも混みだすので、
大変ですが、山の道や朝の凍った道があると
夏タイヤでは走れませんので
なんとか交換してもらうしかありません。

・腰痛・
月曜日の午後に腰痛になりました。
2、3日前から不調ではあったのですが
少しすわって作業していたら、
ぎっくり腰がでました。
年に数度、不調になるので予兆は感じていたので、
無理はしていなかったのですが、
突然、襲われました。
ここ数年でもっともひどい状態でした。
しかし、1日休みましたが、
2日目からは大学で授業をしました。
来週に出張で休講になるので、
連続休講はできないので、無理して大学にでました。
しかし、動いていると同じ動きの繰り返しであれば、
なんとかこなせました。
しかし、無理はできません。