2023年2月23日木曜日

4_172 火星のマントルプルーム 4:プレートがない

 地球にはマントル対流があり、地表付近ではプレートテクトニクスが働いています。火星にもマントル対流はあるのですが、地球とは異なっているようです。火星にはプレートがなく、プルームが直接見えているようです。


 論文タイトルにもあるマントルプルームについて説明していきましょう。
 マントルプルームとは、地球にも起こっているマントル対流の仕組みです。マントルは固体の岩石からできています。ですから、マントルの対流とはいっても、液体が運動しているわけでありません。岩石も、高温状態になっていくと、柔らかさがでてきます。粘性が小さくなり、固体状態のですが、長い年月はかかりますが、割れることなく流動する性質をもつようになります。マントルは、このような流動性をもっています。
 惑星内部には、形成時の熱エネルギーが中心部の核に残ってるます。核に接したマントルの部分は、温められていきます。温かい部分は、密度が小さくなり、周辺の物質との密度のバランスがくずれ、流動性をもったマントルの中を上昇していきます。これがマントル対流になり、対流の上昇している部分を、プルームと呼びます。地球には、大きなプルームが2箇所にあります。
 地球ではマントルプルームは、マントルの物性により上部マントルと下部マントルの境界(深度670kmあたり)で止まってしまいます。しかし、そのプルーム上部からは、小さな流動が上昇していることがわかっています。
 地球では表層が冷たいため、硬いプレート(リソスフェアと呼ばれています)とよばれる岩盤層になっています。上部マントルの最上部は、柔らかく流動性をもっています(アセノスフェア)が、リソスフェアの下側でとまってします。その結果、アセノスフェアの上を、硬い板状プレート(リソスフェア)として運動していきます。これが地球でプレートテクトニクスが起こっているメカニズムです。
 プレートは、年間10数cmから数cm程度の速度で動きます。これが、マントル対流の地表での運動となります。プレートテクトニクスが起こると、特徴的な地形ができます。例えば、海洋プレートのあるところでは、海洋底の地形として、海底山脈(中央海嶺)からはじまり、平坦な海洋底ができ、海溝で、マントルに戻ります。大陸プレートのところでは、衝突しているところに山脈ができます。地球の大きな地形は、このようなプレートテクトニクスで説明できます。
 惑星表面の地形から、プルームテクトニクスが働いているかどうかは、見分けることができます。火星では、プレートテクトニクスによる地形は見当たりません。そのため、別の運動が起こっていると考えられます。それはマントル対流の上昇部のプルームが直接表層に出ているのではないかという可能性でした。詳細は次回としましょう。

・雪解け・
北海道は降雪はいまだに続いていて
夜には氷点下になっています。
でも、だんだんと温かい日がめぐってきます。
昼間はプラスの温度となり、
雪解けが進んでいきます。
春の来るのは楽しみですが、
雪解けの泥水状態が大変になるのですが。

・帰省・
来週から、帰省します。
1月に親族に不幸があったので、
その儀式のために、再度帰省します。
儀式とともに、役所への届け出もしてきます。
そのためにこちらの役所で
事前チェックを2度も受けました。
書類も、様式としての決まりごとが
いろいろなあるので大変です。
まあ、言われた通り進めていくしかありません。

2023年2月16日木曜日

4_171 火星のマントルプルーム 3:エリシウム平原

 火星のエリシウム平原はオリンパス山の近くにあります。何度も探査がおこなわれている地域です。エリシウム平原で活発な活動を示す新しい証拠が見つかりました。それはどのような意味があるのでしょうか。


 前回、火星の火山に関する疑問として、巨大な火山と最近までの活動を示しました。それに関係するような、火星内部の新しい成果を紹介していきます。2022年末、ブロクエ(A. Broquet)とアンドリュー・ハンナ(J. C. Andrews-Hanna)さんの共著で、
Geophysical evidence for an active mantle plume underneath Elysium Planitia on Mars
(火星のエリシウム平原の下にある活発なマントルプルームの地球物理学的証拠)
というタイトルの論文が、科学雑誌Nature Astronomyに掲載されました。
 前回は、オリンパス山を取り上げたのですが、論文の対象としている地域は、火星の北半球のエリシウム平原です。オリンポス山の西側に位置しています。火星の北半球には、低地が広がっているのですが、エリシウム平原では、地表が隆起しているところになります。北半球の中でも標高が高い地域にあたります。
 2012年に火星探査機キュリオシティが着陸し、2018年11月には探査機インサイトが着陸しています。エリシウム平原は、よく探査されているところになります。
 エリシウム平原では、長く火山活動が続いていたと考えられています。アンドリュー・ハンナさんは、別の研究グループで、5万3000年前に小規模ですが火山噴火が起こったと報告しています。非常に最近まで火山活動があった地域となります。
 また、インサイトに搭載されていた地震計が、火星での地震を観測しています。地震のほぼすべてが、ケルベロス地溝帯で発生していることがわかりました。ケルベロス地溝帯は、エリシウム平原の中にある1300kmに渡る割れ目の集まっているものです。このような割れ目が、現在活動しているのかもしれません。これが最近まで活動していることと繋がります。
 もしかすると、深部にはマグマの活動、あるいはマントルなどの運動が継続しているのかもしれません。火星は活動を終えた冷めた天体と考えられていたのですが、内部にはまだ熱が残っているのかもしれません。火山活動が起こっていることを明らかにすることは、火星の現状を明らかにする上で重要な意義があります。
 大きな地球と比べても、火星の火山は、非常に巨大なものになっています。この謎をどう解明するのかは、次回としましょう。

・三寒四温・
北海道は寒さも和らぐ日が訪れるようになりました。
いわゆる三寒四温というものです。
春が近づくと、3日ほど寒い日があり
4日ほど温かい日になるという
1週間周期の繰り返しが起こることです。
これは、高気圧と低気圧が交互に
日本列島の南岸を通り過ぎることで起こります。
最近は南岸低気圧と呼ばれ
関東平野に雪を降らす天気もこの影響です。

・事前準備・
大学は、一般入試が終わり、
後期の採点評価が終わったばかりです。
次は、卒業と新学期に向けての
準備に入りつつあります。
在学生の現2年生と3年生では
教職をとっている人は
教育実習への事前準備がはじまります。
集中講義になるので
学生も教員も大変な労力をかけていきます。
しかし、これを乗り越えないと
教員への道は拓けません。
努力していくしかないですね。