2020年2月27日木曜日

2_174 グアダルピアン世末の絶滅 4:パンゲア超大陸

 ペルム紀は、大陸が一箇所に集まるという特異な時期でした。気候も、寒冷から温暖へと変化していきました。多様な陸上生物や海ではアンモナイトや三葉虫なども多様化して栄えていました。そこに、2度の大絶滅が起こりました。

 ペルム紀ー三畳紀境界(2億5200万年前)の大絶滅は大きなもので、史上最大のものと位置づけられています。ここ30年間ほどで、グアダルピアン世末の調査で、ペルム紀末の大量絶滅とは別の絶滅であることがわかってきました。
 グアダルピアン世末の大絶滅を紹介する前に、ペルム紀の様子を概観しておきましょう。
 ペルム紀の初期に、ユーラメリカ大陸(赤道付近に存在)とゴンドワナ大陸(南半球)、シベリア大陸(北半球)に分かれていたのですが、ペルム紀の終わり頃(2億5000万年前頃)には、衝突合体して、パンゲアと呼ばれる超大陸ができました。
 このペルム紀初期には、極地にも大陸が分布していましたが、衝突により、超大陸パンゲアができた結果、大陸配置は、超大陸パンゲアと超海洋パンサラッサという状態が出現しました。パンゲアは主に熱帯から温帯にも広がっていました。そのような大陸配置が、生物の進化や絶滅に影響があったはずです。
 ペルム紀初期には、ゴンドワナ大陸が南極域にあり、氷床が発達していたため、気候は寒冷であったのですが、北上していくことで氷床が融けて、だんだん温暖化していきました。そして、ペルム紀末には温暖化が起こり、顕生代ではもっとも温暖な時期を迎えることになりました。
 温暖化は生物にとって繁栄できる環境となります。ただし、パンゲア内陸部は乾燥気候の大地が広がっていました。そのため、植物は、シダ類類から、イチョウ類、ソテツ類などの裸子植物が反映してきました。陸上では動物が繁栄していて、特に昆虫が多様化し、巨大な両生類や爬虫類もいました。哺乳類の祖先にあたる単弓類も繁栄しています。海では、フズリナ、三葉虫、腕足類(特にアンモナイト類)、貝類などが多様化していました。海陸とも生物が繁栄していた時代でした。
 ペルム紀は、3つの時代に区分されています。古い方からシスウラリアン世(Cisuralian)、グアダルピアン世(Guadalupian)、ローピンジアン世(Lopingian)に区分されています。グアダルピアン世の末(2億5910万年前)、710万年前のことです。
 その実態や原因は、次回としましょう。

・トラップ・
トラップ(Trap)という用語は、
大規模な溶岩噴出したところ地域で用いています。
トラップのある溶岩地帯は、
階段状の丘ができていることが特徴です。
地質学用語として使われています。
ところが、英語の辞書には
地質学で使われているような意味がありません。
調べてみると、トラップの語源は、
スウェーデン語のtrappaに由来しています。
trappaの意味は、「段」や「階段」となっています。
なるほどと、やっとトラップが納得できました。
調べて見るものですね。

・暖冬・
今シーズンの冬は雪が少ないといっていました。
ところが、2月になって、ドカ雪が何度も降り
例年並みに降雪量となりました。
ところが、やはり気温が高くて、
降った雪が融けて、
降雪量は例年より少ないようです。
やはり暖冬ですね。

2020年2月20日木曜日

2_173 グアダルピアン世末の絶滅 3:シベリア・トラップ

 生物史上最大のペルム紀ー三畳紀境界の大絶滅は、どのような原因で起こったのでしょうか。その当時に起こった、激しい火山活動が原因だと考えられています。陸でも海でも大絶滅を起こすには、連鎖的な影響が必要です。

 史上最大の絶滅は、ペルム紀ー三畳紀境界(2億5200万年前)に起こりました。短い期間に、海の生物でも陸の生物でも大絶滅が起こっています。生物種の回復にも多く時間(1000万年ほど)が必要でした。非常に激しい異変だといえます。
 では、大絶滅の原因はなんだったのでしょうか。激しい火山活動が原因だと考えられています。古生代の終わりに超大陸パンゲアがあり、分裂した時期にあたっています。ですから、巨大な大陸プレートが割れていくので、その時、激しい火山活動が起こったと考えられます。通常の火山と比べて、桁違いの規模の火山噴火になったはずです。
 そのような火山活動の痕跡として、「シベリア・トラップ(Siberian Traps)」と呼ばれる噴火があります。時期も一致ています。シベリア・トラップとは、現在のロシアでいうと、ウラル山脈の東から、中央シベリア高原のほとんどすべてに広がっている、ロシアの東側を半分を覆うほど超巨大な溶岩(300万km3)です。
 このクラスの巨大溶岩の噴出は時々起こっています。「洪水玄武岩」と呼ばれているもので、三畳紀のアフリカ、ドラケンスバーグ山脈に広がる「カルー玄武岩」、白亜紀のブラジルの「パラナ玄武岩」、白亜紀~暁新世のインド、デカン高原の「デカン・トラップ」、中新世のアメリカ合衆国の「コロンビア川台地」などがあります。頻繁ではないのですが、巨大な火山噴火が起こっています。
 大陸プレート上だけでなく海洋プレート上でも、このような火山活動が起こっていることが知られています。合わせて、巨大火成岩岩石区(Large igneous provinces, LIPs)と呼ばれています。白亜紀に活動した南太平洋の「オントンジャワ海台」などは、シベリア・トラップに次ぐ溶岩の噴出量となっています。巨大火山は、環境への影響も大きなものになります。
 シベリア・トラップの火山噴火では、二酸化炭素も大量に放出(14.5兆t)されます。それに加えて、石炭を含んだ地層とも相互作用しメタンなどのガスも発生させたと考えられています。二酸化炭素もメタンも温室効果ガスになりです。ガスが、一気にそして大量に大気中に放出されたため、強烈な温室効果(14~18℃上昇)が起こったと想定されています。その連鎖で、陸上風化の速度も大きくなり、風化によって大気中の酸素が消費され、濃度を下げました。このような急激な環境変化で陸上生物の大絶滅が起こったとされました。陸上の火山噴火ですが、陸上風化によって海洋の酸素濃度も下がり、海も激しい酸欠状態になり、海洋生物も絶滅した、というシナリオです。
 白亜紀ー古第三紀の境界の隕石衝突も絶滅の原因ですが、衝突だけで大絶滅は説明できず、複雑な連鎖がおこっていたはずです。
 この絶滅があまりに巨大だったので、少し前に起こっていた大絶滅が見えなくなっているという指摘があります。それが、今回のテーマのペルム紀グアダルピアン世の終わりの大絶滅です。

・ドカ雪・
2月中旬になって、道路の雪が大半溶けるような
温かい日があったと思ったら、
寒い日もあり、ドカ雪も何度か降りました。
ドカ雪はかなり湿っているので
重くなり除雪などが大変になります。
それでも、今年の冬は暖かさは
今年は、いつもより早く春にが来そうです。

・頭を使う作業・
国公立大学の入試はこれからですが、
私立大学は一段落しています。
ですから、今がもっとも研究に打ち込める時期です。
講義のある時期は、どうしても合間時間に
集中して作業をすることになります。
それでも仕事はできますが、
やはり落ち着いて頭を使う作業に
専念できる時間あるのは助かります。
今、そんな作業をしています。

2020年2月13日木曜日

2_172 グアダルピアン世末の絶滅 2:ビックファイブ

 大規模な絶滅は大きい順から判定していけます。大絶滅になるほどその事象は見つけやすくなります。その原因を特定することは、なかなか困難です。なぜなら、原因となる現象と絶滅との因果関係を示すことが難しいからです。

 前回、大絶滅ほどその信憑性が高くなることを紹介しました。では、顕生代で、大きな絶滅は、どれくらいあったかをみていきましょう。これまでの研究で、5つの大きな絶滅があったことがわかっています。5つの大絶滅は、エッセイでも何度か紹介してきましたが、「ビックファイブ」と呼ばれています。ビックファイブの概要をみていきましょう。
 最初の大絶滅は、オルドビス紀とシルル紀の時代境界(4億4400万年前)の大絶滅です。すべての種の85%が絶滅したと考えられています。サンゴ、三葉虫、腕足動物、コノドント(ヤツメウナギに似た生物)などの海洋生物が、大絶滅を起こしました。
 2番目は、デボン紀後期(3億8300万年から3億5900万年前)には、生物種の約75%が絶滅しました。絶滅は2500万年の長い期間にわたって、種の多様化も少なくなり、造礁性(礁をつくる)の層孔虫やコノドント、アンモナイトの仲間などが絶滅しています。
 3番目は、ペルム紀ー三畳紀絶滅(2億5200万年前)で、短期間(6万年ほど)で、海棲生物の種の96%が、陸棲生物の種の75%が絶滅しています。それまで存在していた森林も消滅しています。生物は1000万年間ほど回復しませんでした。史上最大の絶滅とされています。今回のシリーズで紹介するのは、この時代の絶滅です。
 4番目が三畳紀ージュラ紀の境界(2億100万年前)の大絶滅です。陸と海の全生物種の80%が絶滅しています。陸上生物では、鳥類、翼竜、主竜類などで、特にワニ類が多く絶滅しました。
 5番目は、白亜紀ー古第三紀の境界(6600万年前)、K-Pg境界と呼ばれるもので、恐竜の大絶滅として有名になっています。恐竜の大半の他にも、全生物種の約76%が絶滅しています。この大絶滅は、ユカタン半島沖に落下した径約12キロの隕石が原因だと特定されています。
 大絶滅は化石の出現が途絶えることでわかります。しかし、その原因を特定するのはなかなか難しいものです。絶滅の直前から期間に特徴的な現象が見つかっていることもあります。一番目のオルドビス紀ーシルル紀の大絶滅は急激な寒冷化、2番目デボン紀後期の絶滅は繰り返し起こった海洋無酸素事、4番目は三畳紀ージュラ紀の境界は、大気中の二酸化炭素濃度の上昇(4倍)と温暖化、海洋の酸性化、などが起こっています。これらの現象と絶滅との因果関係は不明です。
 多くの大絶滅が見つかっていますが、その原因はK-Pg境界以外のものでは、確定されていません。生物は、顕生代以降、地球の多くの環境に進出してきました。海洋(深海から浅海、海表付近から海底)から陸地(平地から高山、熱帯から寒冷地)まで、多様な環境に多様な生物種が広がってきました。それらの生物種を大量に絶滅させるのは、なかなか難しいことになります。隕石衝突のような天変地異のようなものがあれば、それを主原因にして考えればいいのですが、隕石の衝突が検証されているのは、K-Pg境界だけです。

・新型ウイルス・
札幌の雪まつりを終わりました。
雪まつりがニュースでも取り上げられることが
少なかったようでした。
新型コロナウイルスのニュースが
主流となっているせいでしょうか。
中国では多くの人が死亡しているようで、
SARSの死者数を越えたようです。
今回のウイルスは、感染力が高いこととと
潜伏期間が長いのが特徴のようです。
その特徴が今回の流行と封じ込めを
難しくしているようです。
3月には夫婦で横浜と京都に出かける予定なので
今後の動向が心配です。

・研究を進める・
大学の後期の成績評価も終わり、
入試の第一陣も終わり、あとは判定作業となります。
2年生、3年生は実習の準備がはじまり、
4年生は卒業の準備です。
実習を担当しているので、落ち着かないところもあります。
時間が一番ある時期でもあるので、
研究を進めていきたいと思っています。

2020年2月6日木曜日

2_171 グアダルピアン世末の絶滅 1:不在の証明

 生物の進化は化石で探るしかありません。しかし、化石から、進化が起こったことを検証するのは、難しいものです。化石の不在からわかることがあります。それは種の絶滅です。絶滅は大きいほど、その確かさが増していきます。

 過去から現在までの生物の進化は、化石の変化をみることで調べていきます。当然、化石が少ない、あるいはない時代では、進化をとらえるのが難しくなります。進化がよくわかるのは、化石が「たくさん」残されてくるカンブリア紀以降、いわゆる「顕生代」になってからです。
 では、「たくさん」残された化石から、生物の進化をどのように探るのでしょうか。そこには科学的な信頼性はあるのでしょうか。まずは、生物の種に注目して、考えていきましょう。
 連続した地層があり、そこからはアンモナイトの多様な種の化石が多産するとします。ある化石種Aに注目しましょう。そのAは、ある地層 H1 より上(新しい時代)の地層からは、見つからなくなったとしましょう。その地層 H1 の直上の地層 H2 から、その種に似ていますが、少し異なった化石Bが見つかり出したとしましょう。
 これらの情報から、化石種Aは、H1 の時代には見つからないということですから、多分、絶滅したと考えられます。ただし、正確にその時代かどうかはわかりませんが、その以降見つからないということは、その地層が形成された時代頃に絶滅したと考えていいでしょう。
 種Bは、絶滅した種Aに似ていることから、Aから新たに生まれた新種として誕生し、Aに取って代わる、種の交代が起こったと考えます。もちろん、古生物学者は、その「似ている」ことを客観的に示すために、いろいろな特徴を観察、計測し、統計処理をしながら、客観性を高めていくことになります。このような化石から得られた情報から、個々の種に関して生物進化を考えていくわけです。
 しかし、論理的には、種Aが別の種Bに変化したかどうかは、検証できません。なぜなら、過去の事象を起こった時代に遡って(出向いて)調べることができません。また、実際に進化という現象を見ることも難しいでしょう。したがって、可能性の大きなものとして、AからBへの進化と考えるのが妥当とだということになります。このような個々の妥当性の事例を多数集めることで、アンモナイトの大きなグループの進化、そして頭足類、動物、生物などの進化を推定していくことになります。しかし、それはあくまでも可能性を高めるだけであって、検証できるわけではありません。
 ここまでの話で確かなことがあります。A種の H2 以降の層準での欠如は、その時代以降での種数の激減、あるいは絶滅を意味している点です。不在の証明はなかなか難しいですが、その層準で多数の種が欠如、あるいは化石の激減していれば、多数の種の絶滅、異変があったことがわかります。絶滅が大きければ大きいほど、大きな異変となります。
 皮肉なことですが、生物にとっての大惨事ほど、信憑性が高まります。大絶滅の認定は、かなり確からしくなります。ただし、何が起こったかは、別の問題ですが。

・大学入試・
大学入試がはじまりました。
大学の講義も終わり、定期試験、成績評価も一段落です。
大学は、卒業生や進級という区切りが進行し
新入生を迎えるための準備も平行して進む時期です。
教員は、授業はないので時間に余裕ができますが、
校務がいろいろ入り、ばたばたする時期でもあります。
校務の合間の時間で、研究を進めていきたいと思っています。

・コロナウイルス・
新型コロナウイルスに関する情報は
日々刻々変化しています。
このエッセイを書いている時点で
内閣府(厚生労働省)の発表(1/31現在)によると、
世界中で感染者合計は9800人で、
内、死亡者は212人となっています。
致死率は2%程度で、高くなさそうです。
ですが、潜伏期間が長いこと、
感染力が強いことが心配です。
札幌では、雪まつりの真っ最中です。
自衛としては、不要不急の人混みへは、
極力出かけないことでしょうか。