2018年6月28日木曜日

1_156 大陸の形成 1:西之島

 日本列島では、火山噴火は各地で繰り返し起こっています。ですから、少し前の噴火は忘れられることになります。西之島もそのひとつでニュースを聞かなくなりました。でも、研究者たちはこのマグマに注目しています。

 西之島(にしのしま)は、本州から南に約1000km、小笠原諸島、父島の西の方、約130kmにあります。小さな島で、火山噴火も度々起こしている無人です。前回の噴火は1973年で、溶岩の島となりました。太平洋の真ん中の孤島ですから、波の侵食の激しいところです。植生も少なく、野鳥だけが営巣するような状態の島でした。しかし、荒々しい自然が手付かずのまま残されている状態です。海鳥にとっては、住みよい島でもあったようです。鳥獣保護区にされていました。
 直径数百mほどの小さい火山島ですが、周りの深海底から盛り上がっていますので、海面下には巨大な火山体がそそり立っています。その高さは、海底から4000mもあり、直径も30kmもあります。
 2013年11月20日から40年ぶりの噴火が起こりました。その噴火は激しく、旧火口よりさらに西の海底で噴火しました。1973年の噴火では、侵食を受けて島は小さくなっていたのですが、それでも浅い深度のところで、溶岩の海底が広がっていたので、この噴火で島が成長やすい状態となっていました。やがて、火山体は海面上に噴出し、顔を出し100m以上の大きさの島にまで成長しました。2013年12月には、もともとあった島と一体化して、西之島となりました。1年以上活発な火山噴火があったのですが、少し落ち着いたかと思われたのですが、2017年4月より再び噴火を再開しました。今回の噴火では前回より溶岩の噴出量が多くなってきました。そのため島も大きく成長しました。
 2018年6月14日現在、160mほどの標高をもった火山体があり、火口内では白い噴気が確認されており、島の周りの海では変色域が広がっています。まだ、活動中の火山となっています。
 この火山で噴出してるマグマは、安山岩質でした。一般に海洋にできる列島(伊豆諸島)や海洋島(ハワイ諸島)では、玄武岩質マグマの活動が多いのですが、なぜか太平洋の真ん中の西之島では、安山岩質マグマの活動が起こっています。2013年からの噴火でも安山岩質マグマが噴出しました。
 この安山岩質マグマの活動には、どのような意味があるのでしょうか。実は今までの常識を覆す研究が報告されました。

・特別な試料・
活動中の火山を調べるのは危険を伴います。
でも、活動が活発な時は危険を感じますが、
少しでも穏やかになると、火山学者ならだれも
上陸して調べたくなります。
しかし、ここは個人ではいけるところではなく、
保護区でもありますので、
特別な許可をもった人だけが調べ、試料を手にできます。
そんな貴重な試料を得た人からの調査報告がありました。

・北国の青空・
北海道は、なかなか気温が上がらず、
曇では肌寒い日が続いていました。
でも季節は夏に向かっています。
晴れれば、強い日差しとなります。
青空は抜けるような青空となります。
この初夏から夏の北国の青空は
なかなかいいものです。

2018年6月14日木曜日

3_171 核の姿 6:二酸化ケイ素の結晶

 核には、鉄に軽い元素として、ケイ素と酸素が含まれているようです。液体の鉄の中で、結晶化することが実験でわかってきました。結晶化が起こす現象が、地球には重要な意味があったようです。

 東京工業大学の廣瀬敬さんとその共同研究者は、2017年2月に、イギリスの科学誌ネイチャーに、
Crystallization of silicon dioxide and compositional evolution of the Earth's core
(二酸化ケイ素の結晶化と地球の核の化学組成の進化)
という論文を報告されました。
 これは、地球の核では二酸化ケイ素の結晶ができるということを、実験的に示し、さらに結晶することで核に何がおこるのかを検討したものです。
 何度も述べてきましたが、核は、金属鉄からできています。隕石などの類推から、鉄を主とし、ニッケルを少し含む(5%ほど)合金となります。ところが、地震波のデータからみると、その密度をもっと軽くする成分が加わっている必要があります。その量は鉄の密度を10%ほど小さくするほどです。軽い元素ですから、その量はかなり多く混じっていることになります。
 軽い成分の候補として、硫黄と酸素、水素、ケイ素などが考えられ、議論されてきましたが、まだ定まっていませんでした。地球の形成史を考えていくと、最初から核があったのではなく、初期に徐々に形成されていったと考えられます。
 材料物質の隕石が、次々と衝突していた時期があり、その材料のから溶けた鉄が深部に向かって沈んでいったはずです。鉄が、高温のマントルを通り抜けるとき、岩石の主成分であるケイ素と酸素が、鉄に取り込まれたと考えられます。そのため、核の軽元素として、ケイ素と酸素が有力だと目されていました。
 廣瀬さんたちは、液体の鉄にケイ素と酸素が溶け混んでいたと想定して実験をおないました。このシリーズで紹介したダイアモンドアンビルセル装置を用いて高圧を発生し、そこにレーザーで加熱することで高温にもしました。その条件は、133~145万気圧と3600~3700℃という高圧高温で、核の条件に近いものでした。そこで、溶けた鉄の中で二酸化ケイ素がどう振る舞うかを調べました。
 その結果、二酸化ケイ素の結晶化ができることがわかりました。そこから重要なことがわかってきました。核の対流の起源と、そこから地球磁場の形成の問題への答えがでてきそうだということです。
 実験によれば、核最上部で、溶けた鉄の中にケイ素と酸素があれば、それが二酸化ケイ素として結晶化していくことになります。二酸化ケイ素の結晶は、溶けた鉄より軽いので、浮いていきます。浮いた二酸化ケイ素は、マントルの一部になっていきます。
 一方、二酸化ケイ素の抜けた液体鉄は、軽い元素を含む液体鉄より重くなります。同じ液体鉄でも、密度の差があれば、重いほうが沈んでいくことになります。そして核で対流が起こることになります。そこで、重要な関わりでてくるのが、前回の内核の形成時期が若いという結果です。
 その関係は、次回としましょう。

・変動する天候・
北海道は、肌寒い日が続いています。
晴れると暑いくらいなのですが、
曇ったり雨だと、一気に肌寒くなります。
夏になったり、春に戻ったり、変動の激しい天候です。
皆様の地域はいかがでしょうか。
体調を崩さないように、
気をつけなければなりませんね。

・恒例のこと・
大学の前期の講義も、折り返しとなりました。
私のいる学科では、4年生では教職の教育実習、
3年生では介護等体験、特別支援の実習、
2年生では保育士の施設実習など
いろいろな実習が次々と行われています。
そして教職の採用試験もあります。
担当の教員は、その対応に追われます。
このような慌ただしい状況が、7月上旬まで続きます。
その後は、教職の1次の合格発表と
2次試験のための対策講座などが続いていきます。
これは、恒例のことなんですが、
風物詩というには、かなり生々しすぎますね。

2018年6月7日木曜日

3_170 核の姿 5:若い内核

 微小な部分を内核の条件にして、そこで電気伝導度を測定してます。ただし、そのためには、微小部分への特殊な技術の導入が必要でした。その技術を開発をすることで、今回の実験が成功しました。

 今回の実験を一言でいうと、レーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセル装置内に収束イオンビーム加工装置で配線をした試料を内核の条件において、電気伝導率をSPring-8で計測した、となります。少々難しいのですが、少し詳しくみていきましょう。
 ダイヤモンドアンビルとは、2つのダイヤモンドのとがった先端を少し平らにして、向かい合わせにして、押し付けると、その先端には高圧が発生します。先端の面積を小さくすればするほど、高圧になっていきます。先端を直径数10μmほどにして、そこに実験する物質を置きます。ダイヤモンドアンビルでは、約360万気圧という地球中心部の圧力まで発生することが可能です。
 なぜ効果なダイヤモンドを使用するかというと、硬いということと、光もレーザー光も通します。レーザー光を用いると、挟んだ物質を加熱することができます。この装置で目的の試料となる鉄を、内核の温度圧力条件にすることが可能となります。さらに、試料を温度圧力条件を保持したまま、SPring-8から出てきたX線マイクロビームを照射します。そこから出てくるX線回折像から、高温高圧条件のまま結晶構造を求めることができます。
 しかし、これまで試料が直径30μm以下の非常に小さな部分で、電気伝導率を測定することはできませんでした。そこで太田さんたちは、収束イオンビーム加工装置というものを用いて、微小な部分での電気配線をする仕組みを開発しました。その装置を用いて電気伝導率を測定できるようにしました。157万気圧、4500Kまでの条件で電気伝導率を測定しました。
 その結果、約90W/m/Kという値をえました。これはシミュレーションによる値と同じになりました。そこから、前に述べた方法で、内核の年齢を計算したら、約7億年前という値になりました。
 もしこの結果が正しければ、地球誕生から約7億年前まで、約30億年間、内核は存在しなかったことになります。これは、地球誕生時に核内に蓄えられた熱が非常に多く、そして冷めるスピードも遅かったことになります。そして内核の成長速度も非常に速くなります。
 これまで地質学的には、約13億年前に磁場強度が増えた時期があり、それは内核の誕生に関係したものだと考えられていました。今回の結果が正しければ、内核以外で、磁場の変化の原因を考えなければなりません。地球の歴史についても、いろいろと再考が必要になりそうです。
 今回の実験は、鉄を用いておこなわれていますが、核には鉄より軽い元素が含まれていることがわかっています。鉄以外の成分が入っていると、熱伝導率が変化するかもしれません。現実の核の成分で、再度実験を行う必要があります。今回の手法は、そのような成分が加わっていても実験可能だとされていますので、より現実に近い核の成分での実験がなされることが期待されます。
 次回は、もうひとつの核の新知見は、核内で石英があるのではないというものです。今回の結果とも関係するものでもあります。

・道南調査3・
先週後半から今週はじめまで道南にいっていました。
少し雨がぱらついたり、風が強かったりしたのですが、
基本的には調査は順調に進みました。
ただし、目的を達成できたどうかは、問題です。
目的を達成できるような露頭が発見できるかどうかです。
今回は沢筋にはいったのですが、
露出がよくなく、風化も進んでいました。
やはり海岸沿いの露頭がいいようです。
今回新たな露頭をいくつか発見し、
これまでの調査で発見した露頭を再調査しました。
まあ、すべてが上手くいったわけではないですが、
それなりの成果を上げられたというところでしょうか。
来月にもう一度、調査に行く予定です。

・YOSAKOIソーラン・
北海道の初夏を象徴する
YOSAKOIソーラン祭りがはじまりました。
大学のチームも、毎年参加しています。
祭りの初日には、大学で出陣式をおこないます。
私も毎年、見学しています。
今年はゼミの学生もいます。
メンバーの学生は、この6月を目指して
日々練習を積んできました。
がんばって踊ってもらいたいと思います。