2021年1月28日木曜日

2_189 恐竜の新知見 4:恐竜から鳥類へ

新しい化石のが発見されると、新たな仮説が生まれてくることがあります。仮説の多くは、検証が難しく、検証できないものもあります。そんなとき、どう対処すればいいのでしょうか。


 進化に関する考え方として、ある時、突然大きな変化が起こるというもの(突然変異)と、小さいな変化を繰り返して、やがては大きな変化になるというものがあります。いずれも、遺伝子の配列変化が起こる必要があります。大きな突然変異(例えば、前足が羽に変わるなど)は、一度の変化が起こればいいわけです。しかし、その突然変異を子孫に残せるかという問題があります。

 一方、小さな変化を繰り返して進化していくものは、少しの変化でよく、その変化がある方向に向かうために、自然淘汰(自然選択)の力(飛べることが有利になる)が強く働けばよくなります。ただし、自然淘汰によって遺伝子の変異が、一定の目的に向かっていく必要があります。そんな都合のいい変化がおこるかという問題があります。

 鳥類は、羽毛や翼だけではなく、比較的体のサイズが小さいことも特徴になります。かつては、鳥類への進化は、大きな突然変異が起こったという考えをとっていました。その時は、100kgもある恐竜類から、スズメほどの鳥類に変化したと考えられていました。どう考えても、乱暴な仮説なので、「希望的な怪物理論(Hopeful Monsters)」と呼ばれていました。支持があまりない仮説でした。

 2019年に、コエルロサウルス類(ジュラ紀中期)の化石の研究から、短期間に恐竜から鳥に進化したわけではないという仮説がでてきました。その仮説では、二足歩行、羽毛、叉骨(さこつ、鎖骨と同じ読みです)、そして翼の獲得という順で進化してきたとするものです。叉骨とは、聞き慣れないものですが、鳥が翼で飛ぶために必要な器官です。鳥類と一部の恐竜にだけ見られる二股状の骨で、鎖骨とその間の骨が癒合したものです。

 しかし、この仮説の問題は、飛ぶため、鳥になるため、という目的があって急激に進化してきたように見える点です。自然淘汰によってそんなに都合よく、飛ぶという目的を達成するように進化が向かうのでしょうか。少々、無理があるように見えます。

 2014年の報告から、始祖鳥の化石より5000万年ほど前の時代から、恐竜が小さくなっていたという仮説が示されました。現在の鳥類は比較的小さいものです。それは飛ぶには、大きなこと、重いことがハンディになるためでしょう。ですから、恐竜が小さくなった時期に、鳥への進化が起これば、有利な条件となります。

 現在では、多くの化石の研究から、二足歩行していた獣脚類の仲間から進化したと考えられています。もっとも鳥類と近縁の獣脚類の体重は、40~200kgにもなり、最小として40kgはかなり重いと考えられています。また、大きな鼻や歯もあり、頭も丸くなく、鳥らしくありませんでした。

 大きな恐竜から鳥へ進化していたような証拠、また進化にはなんらかの方向性を示す条件も必要になるようです。このような課題に対する解決策として、「幼形進化」という考えがあります。その説明は次回としましょう。


・断続平衡説・

化石では、突然、それまでの系統とは

全く異なった種類の化石が見つかることがよくあります。

多くの系統で、化石からは、急激に変化(進化)する期間と

ほとんど変化しない期間があるように見えます。

そのような状況を断続平衡説と呼んでいます。

私が尊敬してやまない故S. J.グールドと

教え子で共同研究者のエルドリッジが唱えた説です。

断続平衡説を前提とすると、進化における大きな変化は、

突然変異によってできたように見えます。

化石から過去を調べるということは、

化石として残りうるものしか見ていないこと

進化の一部しかみていないこと、

などを心しておくことが重要です。


・大学入試・

大学は、いよいよ後期の講義が終わり

本来なら定期試験の時期となります。

講義によっては、リモートでの

試験を実施されるものもあるのでしょう。

多くは、学期中に提示した課題やレポート、

制作したものなどで評価します。

大学は、これからは入試のシーズンとなります。

2021年1月21日木曜日

2_188 恐竜の新知見 3:恐竜と鳥類

 白亜紀末の隕石の衝突によって、恐竜の仲間の大部分は絶滅しました。しかし、鳥類は、大絶滅を生き延びてきました。恐竜の新知見の2つ目の話題は、鳥類への進化についてです。


 近年、恐竜の化石の発見に伴って新しい知見も増えてきたので、恐竜類にも多様性が大きいことがわかってきました。恐竜と鳥類の関係を見ていきましょう。

 鳥類は、爬虫類の祖先(恐竜の仲間)から進化してきたと考えられます。しかし、現在生きている爬虫類と比べて、翼をもっていることが一番の違いですが、他にも羽毛を持ち、恒温性を持っていることなども、大きな違いとなります。しかし、新しい化石の発見で、そのような違いがあまりないことがわかってきました。

 以前から、恐竜の仲間には翼竜の化石が見つかっており、空を飛ぶ恐竜がいたことは知られていました。ただし、翼竜の翼は、羽毛の生えた羽ではなく、膜でした。膜の翼で飛ぶ恐竜だと考えられていました。ですから、鳥類とは、直接、結びつかないと見なされていました。哺乳類でも空を飛べるコウモリと位置づけのようなものです。収斂進化と呼ばれるものです。

 他にも始祖鳥と呼ばれる化石が見つかっていました。羽毛の生えた羽があり、飛ぶ能力をもっていたと考えられました。名前のように、鳥類の特徴をもっていたので、鳥の祖先に当たると考えられていましたが、始祖鳥と鳥類の関係については、多くの議論もありました。羽が偽物説まででてきました。

 新しい恐竜化石の発見があったり、研究に大きな進展があると、恐竜の認識が大きく変わることがあります。1990年代には、恐竜化石から、羽毛の生えているものが発見されました。恐竜にも毛が生えていたことも、化石の証拠からわかってきました。恐竜に羽毛や毛があったことは、確かになってきました。

 恐竜に羽毛や毛があるということは、体を寒さをから守る必要があるということです。そして寒いとき、寒冷地でも通常の動きができたということになります。恐竜には恒温性をもったタイプもいたのではないかということが、いくつかの根拠からわかってきました。これは現在生きている爬虫類にはみられない特徴でした。

 例えば、極地(北極圏)での恐竜の化石の発見があります。白亜紀は温かい時代であったとされています。しかし、極地では冬になると降雪もあります。しかしなんといっても、冬には一日、太陽が登らない「極夜」となります。冬は、変温動物にとては、非常に厳しい環境となります。もちろん長期間、氷点下になることもあるでしょう。そこに恐竜が定住していて、子育てをしていたことが、化石からわかってきました。変温性だと、極地で越冬をすることができないので、傍証ですが、恒温性があったと推定されています。

 恐竜の仲間にも羽毛や翼、恒温性があったとすれば、恐竜と鳥類はそんなにかけ離れたグループではなさそうです。絶滅前から、鳥類の仲間がいたとすれば、絶滅前に恐竜から鳥類が進化していたことになります。では、どのように進化したのでしょうか。次回としましょう。


・共通テスト・

センター試験は長年続けられてきたのですが、

問題点もあり、いろいろ議論されました。

英語の業者試験の導入や記述式などの導入も議論されましたが、

これまでのセンター試験の形式を踏襲すること落ち着きました。

問うべき能力を変更しておこなわれました。

そんな、はじめての大学入学共通テストも終わりました。

我が大学も会場になっていて、全教職員で対応しました。

コロナ対策でいろいろ配慮がありましたが、

大きなトラブルもなく、終えることができました。

稚内の会場では、初日が吹雪で実施ができなかったことや

マスクの着用でのトラブルもニュースになりました。

当事者は大変だったこととだと思いますが、

とりあえずは、初回が終わりました。


・緊急事態宣言・

共通テストが終わりましたが、

各大学での入試が本格的にはじまります。

COVID-19の方も猛威を奮っています。

11の都府県で2月7日まで緊急事態宣言が発出されました。

北海道も、独自に集中対策期間として2月15日まで対応しています。

出口のみえない状況ですが、2月末ころから、

日本でもワクチンの接種がはじまりそうですが、

市民にまわってくるのは、だいぶ先のようです。

多くの市民がワクチン接種をすれば、

市中感染がおさまる可能性が高くなります。

期待したいですが、どうなるでしょうかね。


2021年1月14日木曜日

2_187 恐竜の新知見 2:世界最小の恐竜卵

 恐竜の卵の化石は、あまり聞き慣れないのですが、丹波では多数の発見されてきました。多数の卵の化石があったということから、恐竜たちの営巣地ではないかと考えられます。丹波が世界でも有数の産地となりました。


 丹波では、丹波竜だけでなく、歯だけですが6種類の化石が発見されてきました。丹波には多数で多種の恐竜がいたところだと考えられます。また、大量に見つかってきた卵の殻の化石から、それを生んだ親の推定されていきました。

 卵のサイズの違いから、これまで見つかっていた恐竜と比べると、もっと小型の恐竜であることが推定されました。さらに、卵化石だけのサイズの違いから、6種類に分けられていました。そのうち1つのグループを、2015年に新属新種のニッポノウーリサス・ラモーサスと命名されました。他の卵化石は鳥脚類恐竜が1種と、獣脚類恐竜(鳥類を含見ます)3種類に分けられています。

 その後も卵化石の研究は続けられ、兵庫県立人と自然の博物館の田中康平さんたちの同研究で、2020年7月に論文が報告されました。タイトルは、

Exceptionally small theropod eggs from the Lower Cretaceous Ohyamashimo Formation of Tamba, Hyogo Prefecture, Japan

(兵庫県丹波市、下部白亜系篠山層群大山下層より発見された極めて小さな獣脚類恐竜の卵化石)

というものでした。「極めて小さい」と表記されていますが、ニュースでは、「世界最小の恐竜卵の化石」となっています。卵は、長さ4.5cm、幅2cmほど(ウズラの卵)の細長いものでした。

 なお、卵の化石は、直接、親の恐竜を知ることができないので、卵化石独自の分類がされています。しかし、この卵の殻の化石を詳しく調べることで、親は獣脚類ですが、2kg弱ほどの体重しかなく、鳥に似て羽毛を持ち、翼があったと推定されています。その結果、新種と判定され「ヒメウーリサス・ムラカミイ(Himeoolithus murakamii oogen. et oosp. nov.)」と命名されました。

 他の卵の化石から、新種1種が見つかっており「サブティリオリサス・ヒョウゴエンシス(Subtiliolithus hyogoensis oosp. nov.)」と命名されています。サブティリオリサスは、モンゴルとインドで見つかっていましたが、日本では初めての報告になります。

 大規模な発掘調査で、卵化石が4個、卵殻の化石約1300個を発見されています。この地からは多数の卵の殻が見つかっているため、丹波の篠山層群が堆積したところは、小型恐竜が群れとなり、卵を生む「営巣地」ではないかと考えられていました。

 卵や卵の殻では、すでに記載されていた4種の獣脚類の卵化石に加えて、新種の2種が加わったので、6種の卵の化石が見つかりました。スペインのテルエル州では5種の卵化石が見つかっていて最も多く産出しているところだったのですが、丹波が世界最多の発見地となりました。丹波は、恐竜の化石でも卵や卵から、あるいは営巣地としても、有数の産地となりました。

 小型の恐竜化石は小さいために、残りにくいのですが、卵は条件によっては残りやすい場合もあるようです。営巣地が見つかると、小型恐竜の研究や生態も明らかになってくるでしょう。


・学名・

生物の学名は、その特徴や関わった地域や人に

敬意を表してつけられることがあります。

ヒメウーリサス・ムラカミイは

ヒメが小さくかわいらしいこと、

ウーリサスは卵の石、

ムラカミは丹波竜発見者の村上茂さんに由来しています。

サブティリオリサス・ヒョウゴエンシスの

サブティリオリサスは繊細な卵の石という意味で、

ヒョウゴエンシスはもちろん兵庫県に由来しています。


・大学入学共通テスト・

今後、大学は入試期間に入ります。

今週末には、センター試験に変わり

新しくなった大学入学共通テストが実施されます。

これまでニュースで、記述式を取り入れるとしてはなくまり

業者によるリスニングもなくなりました。

形式的にはこれまでのセンター試験と似たもととなります。

ただし、これまでの知識や技能だけでなく

思考力や判断力、表現力を重視した出題形式になっています。

この方針を受けて、大学の一般入試の内容も変化してきます。

2021年1月7日木曜日

2_186 恐竜の新知見 1:丹波竜

 化石は、地層があるかぎり、次々と新しいものが見つかります。化石は有限ですが、地球は広大で長い時間を経ているので、今後も見つかってくるでしょう。昨年、報告された恐竜の話題を紹介していきます。


 まずは、2020年7月に、日本で発見された恐竜化石とそこから新しい知見が報告されたものを紹介していきます。日本でも、恐竜の化石が各地で見つかるようになり、恐竜化石が見つかりそうなところ、見つかったところは、今後も発掘を進めていくと、さらに見つかる可能性があります。

 そんな恐竜の産地として、兵庫県丹波市があります。この地域は、前期白亜紀の篠山層群があり、もともと生痕化石(巣穴)が見つかっているところでした。この地域で、2006年に化石愛好家の市民2名によって発見され、兵庫県立人と自然の博物館に持ち込まれたものが最初の発見になります。

 化石は、恐竜の肋骨の尾椎であることがわかりました。その結果を受けて、翌年から発掘調査が開始され、6回の発掘が繰り返され、同じ恐竜のものと思われる保存状態のよい歯、背骨、頭蓋骨の一部などを見つかりました。

 発見から、発掘と研究が進められてきました。2014年に新種の恐竜として報告され、丹波竜(タンバティタニス・アミキティアエ Tambatitanis amicitiae)と命名されました。丹波竜は、竜脚類でプティタノサウルスの仲間で新属新種とされました。10数mを越える全長の恐竜で、長い首と長い尾をもった獣脚類です。これまで発見されている獣脚類としては小型になりますが、日本で見つかった恐竜化石では最大級の大きさになります。

 発掘によって他にも恐竜類の歯化石、卵殻化石、カエル類やトカゲ類の小型脊椎動物化石など、多数が発見されています。それらに関して研究が進められ、順次報告されています。

 中でも特徴的なものとして、卵殻の化石が90個ほど発見されていました。いくつかに分類され、そのうち1つ(8枚)が、新属新種(卵の殻なので新卵属新卵種となる)とされ、2015年にニッポノウーリサス・ラモーサス(Nipponoolithus ramosus)と命名されました。他の卵殻には、別種の小型の恐竜だと考えられるもの含まれています。多くの卵殻の発見されることから、恐竜の営巣地ではなかったかと考えられます。

 そして昨年、新たな卵の種類が記載されました。それは次回としましょう。


・新年・

明けまして、おめでとうございます。

年末から正月にかけて、日本中が寒波に見舞われ、

寒い日々を過ごされたことと思います。

我が家は、COVID-19で家族も帰省もできませんした。

電話での新年の挨拶となりました。

夫婦で自宅にこもっていました。

連日、真冬日で酷寒の日が続いたので、

ストーブの火力をかなり強くして

過ごすしかありませんでした。

我が家も初詣と雪かきで少々外に出ましたが

三が日は自宅内で寒い正月を過ごしました。


・寒い研究室・

4日から大学の研究室に来ています。

授業は7日からはじまります。

それまでは、大学は最低限の暖房しかないので

大学全体が冷え切っています。

寒波のせいもあるので寒さも一段と厳しいいです。

耐えきれないほどの寒さではないのですが、

じっとしているので、厚着のみが頼りになります。

大学でないと仕事ができません。

講義がはじまるまでは、

寒さに耐えながら研究を進めることにします。