2019年12月26日木曜日

5_170 系外惑星 5:綿あめ惑星

 年末になって、系外惑星のニュースが、NASAから飛び込んできました。その系外惑星も、これまで知られていない異形なものでした。しかしその特徴には、どこか愛嬌がありました。

 本号が今年最後のエッセイになります。系外惑星のシリーズで終わることになりました。もともとの構想では、前回のエッセイで終わるはずでした。ところが、2019年12月20日にNASAから、系外惑星に関するニュースが配信されました。これを、年末のエッセイの話題にすることにしました。
 ケプラー宇宙望遠鏡が、2012年から2014年にかけて発見した系外惑星を、ハッブル望遠鏡で観測して、詳細がわかったというニュースでした。
 観測された系外惑星は、恒星のKepler-51(太陽系から約2600光年の距離)を回る3つの惑星のKepler-51b、Kepler-51c、Kepler-51dです。
 恒星の前を惑星が通り過ぎるとき、大気を透過したときの光(透過スペクトル)をハッブル望遠鏡で分析しました。すると、主に水素とヘリウムからできていることがわかりました。水は検出できませんでした。大気が厚すぎるので表層の成分しか調べられず、内部の成分はわかりませんでした。ですが、大気の下には、メタンガスがたくさん含まれているのではないか、と推定されています。
 また観測の結果、3つの惑星は木星ほどのサイズがあるのですが、密度が非常に小さいことがわかりました。ガス惑星である木星(1.33 g/cm³)と比べても、いずれも100分の1の0.1 g/cm³ほどしかありませんでした。密度から考えると、内部にも重い物質(鉄や岩石など)はほとんどなく、ガスだけからできた惑星になります。NASAはこのような惑星を"cotton candy"(綿あめ)と呼び、"super-puff"(チョウふわふわ)の表現しました。
 ところが、一番内側にあるKepler-51bは、恒星の熱で大気を大量に飛ばされているようで、10億年ほどで海王星サイズになってしまうと推定されています。まだそうなっていないということは、今の状態がずっと維持されていたのではなく、「最近」このような状態になったと推定できます。もちろん「最近」とはいっても天文学的な表現で、億年単位の話しです。
 どのようにして異形の綿あめ惑星ができたのでしょうか。もともと恒星から遠く離れたところで、メタンや水素化合物が固体になるような距離で(スノーラインと呼ばれる)できた惑星だと考えられます。それが何らかの原因で、恒星の近くに移動したことになります。その結果、水素やメタンが気化して密度の小さい惑星に膨れ上がったということです。
 綿あめ惑星の写真は、
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2019/cotton-candy-planet-mysteries-unravel-in-new-hubble-observations
で見ることができます。背景の天体配置などは正確です。ただしこの画像は、科学的に推定して作られたものです。写真はふわふわとして可愛く見えます。

・ホワイト・クリスマス・
北海道は、根雪と思っていた雪が
暖かさで何度から融けてしまいました。
それでも、北国の冬ですので、
雪が降り寒波がくると根雪の戻ります。
クリスマスもホワイトでした。
今年は、変動の多い気候でした。

・時代の流れ・
最近の若者は、年賀状を
あまり書かなくなっているようです。
SNSで連絡することが当たり前なので、
それで済ましているようです。
テレビも持っていない学生も多いです。
テレビは三種の神器のひとつと
言われていた時代もありました。
しかし若者も映像やニュースはみています。
映像や動画は、パソコン、スマホ、タブレットなどで
YouTubeやネット放送を見ているようです。
ニュースもネットで配信されるものです。
これも時代の流れですね。

・よいお年を・
このエッセイを週の初めに書いているのですが、
まだ講義は続いています。
ですから、エッセイが届いたころから
私は冬休み入り、一段落となります。
今年最後のエッセイとなります。
よいお年をお迎えください。

2019年12月19日木曜日

5_169 系外惑星 4:大気組成

 このシリーズで、系外惑星の軌道と質量以外の情報を調べるのは、難しいといいました。しかし、いくつかの惑星で、大気組成が観測されてきました。そこで、今までの太陽系の常識を覆すものが、見つかってきました。

 系外惑星では、軌道や質量は求められますが、それ以外の性質を求めるのは難しいと紹介しました。これは少し考えればわかります。遠くの天体では、恒星は光を発しているので観測できますが、惑星は光を発していません。ですから、惑星の存在を探ること、そこから軌道や質量は恒星の変動を観測することで可能です。ところが、いくつかの系外惑星で、もっと詳しい情報が得られてきました。2つの系外惑星を紹介しましょう。
 かに座方向に97光年のところある恒星(GJ-3470)でみつかった、GJ-3470bという系外惑星です。この惑星は、質量が地球の12.6倍、公転周期が3.3日となっています。短時間の周期で、恒星の非常に近いところを回っていました。サイズは海王星に似ていて、恒星に近いところを回っているので、「ホット・ネプチューン」に分類されていました。海王星型の惑星なら、大気は水蒸気やメタンがになるはずです。
 公転周期が短いので、太陽の前を通るときの観測(12回)と、後ろを通るときの観測(20回)が繰り返しおこなわれました。この惑星からは、太陽に暖められて大気が飛び出していました。惑星から飛び出した大気に、恒星からの光の波長が吸収されて、大気組成を調べることできました。その結果、水素やヘリウムという、まるで木星のようなガス惑星に似た大気でした。「ホット・ジュピター」と呼ばれる惑星の典型でした。海王星と考えられていのですが、その大気組成とは異なっていました。系外惑星、GJ-3470bも今までの太陽系の常識を覆しました。
 もう一つは、しし座方向に124光年のところにある恒星(K2-18)にあるK2-18bです。この系外惑星は、公転周期が30日ほどでした。この惑星は、ハビタブルゾーンの軌道にありました。質量は約8.9倍で、地球と海王星の中間になります。地球より大きな「スーパー・アース」、あるいは海王星より小さい「サブ・ネプチューン」などに分類されています。
 恒星を横切った時に観測(9回)がなされました。その時、惑星大気の分光分析されて、組成が求められました。この惑星は、ハビタブルゾーンにある系外惑星ではじめて大気組成が明らかになったものでした。大気には、水素とヘリウムの他に、水蒸気も見つかりました。
 ただし、この惑星には、特殊な条件がありました。まず恒星が赤色矮星であることです。赤色矮星は、一般的な恒星(主系列星)と比べて低温で、核融合反応はゆっくりと進んでいます。質量は小さいのですが、寿命が長く(1000億年以上)で、周りに惑星系があれば、安定した条件が長期間維持されると考えられます。またこの系外惑星は、公転と自転が一致し、惑星の同じ面が常に恒星を向いています。地球と月の関係(潮汐固定)と同じです。表面温度は、265K(-8℃)と推定されています。
 大気中の水蒸気の発見は、惑星には表面の条件が整っていれば、水、つまり海の存在が期待されます。自転が固定されているので、恒星に暖められた大気が循環することで、場所によっては、水が安定に存在できる場所が生まれるかもしれません。ただし、このような海王星のようなガスの多い惑星で、地表に硬い大地があり、海洋があるかどうはまだ不明です。
 多数の系外惑星からは、特異性、意外性の報告が目に付きます。これいいことなのかもしれません。地球が宇宙の中心であるという天動説から、地動説へと気づく「コペルニクス的転回」が、系外惑星から生まれつつあります。今後も、もっとたくさんの特異性が発見されるでしょう。どこまでが地球、太陽系の理屈が通じるのか、注意深くチェックしていく必要があると思います。

・コペルニクス的転回・
コペルニクス的転回は、
もちろんコペルニクス自身が、言ったものではありません。
これを言ったのは、哲学者のカントでした。
カントが、自己の認識を180度変更する
という意味として用いた言葉でした。
認識(主観)と対象(客観)の関係が
従来は客観→主観(認識は対象に依存)であったのを
主観→客観と、カントは転回しました。
これは、自分の認識がより中心になっているという意味です。
その意味では「天動説」的ですが。

・寒暖の繰り返し・
北海道は、まだ温かい日と寒い日が繰り返しています。
11月には根雪になったか
と思えるほどの雪になっていたのですが、
雨が降ったり、暖かさで雪が融けたりしました。
例年冬になっても温かい日もあるのですが、
さすがに何度も雨というのはあまり経験がありません。
まあ、これも気候の変動幅のひとつなのでしょうね。

2019年12月12日木曜日

5_168 系外惑星 3:ハビタブルゾーン

 TESSが、地球型惑星を探す理由は、私たちのことを、もっと知りたいという、隠れた意図があるのではないでしょうか。その探査には、ハビタブルゾーンという考えを知ることが、重要になります。

 地球型惑星とは、サイズもさることながら、軌道もある程度遠くを回っている必要があります。それがTESSで、地球型惑星を探す理由ともなっています。地球に似た惑星であれば、生命が存在する可能性があります。もちろん、惑星の存在は観測できますが、生命の存在が直接観測できるわけではありません。ですから、あくまでも「可能性」を探すことになります。では、どのようにして、その可能性を探ることができるのでしょうか。
 地球型惑星と呼ぶには、サイズだけではなく、軌道も恒星から一定以上遠くを回っている必要があります。系外惑星としてサイズも公転軌道も観測できます。ただし、生命が存在する可能性があるのは、小さな地球サイズの惑星で、しかも軌道がある一定の領域になければなりません。その領域の範囲は、「ハビタブルゾーン」と呼ばれています。
 小さな惑星と限定するのは、大きな惑星は表面に大量のガスをもつガス惑星になります。太陽系でいえば、木星や土星のような天体で、そこでは水も生命も存在しそうにあります。小さければ、大気も薄く、硬い表面をもつ惑星、岩石惑星が期待できます。
 また、ハビタブルゾーンとは「生存可能領域」と訳されていますが、液体の水が惑星表面に存在できる領域となります。実際に水を観測することは困難ですが、水が惑星表面に存在するには、薄めの大気があり、平均気温が0℃から100℃の範囲に維持されている必要があります。その位置は、恒星の明るさと距離によって計算できます。恒星が明るければ、ハビタブルゾーンの軌道は遠く離れ、暗いと近くなります。
 ハビタブルゾーンにある地球型惑星は、明るい恒星では見つけにくく、暗い星では見つけやすくなります。もしその領域に地球型惑星が見つかれば、生命や水の存在が観測できなくても、間接的に水があり、生命が存在する可能性を示します。
 しかし注意が必要です。ハビタブルゾーンの地球型惑星には水が存在し、水が存在すれば、生命が存在する可能性があるという論理構造は、実は地球や私たちの太陽系が、宇宙に当たり前に素材する恒星、惑星だという前提にしています。地球を典型的なものとして、地球型惑星を探そうという考えです。さらに水が惑星表面に長時間維持されていれば、生命が発生し継続的に存続し、進化していく可能性もあります。この推論も、私たちの地球や生命を典型ということを前提にしています。
 それらの前提に普遍性があるかどうかには、根拠はありません。私たちの太陽、地球、生命が、唯一無二で、特異な例なのかもしれません。もしそうなら、地球を典型とするわけにはいきません。
 これまで発見された系外惑星の多様性をみていると、私たちの太陽系も、非常に多様な惑星の一つに過ぎないことを知らされました。多様性をもっと調べていく必要がありそうです。それは私たちのことをもっと知ることになるはずです。

・暖気・
北海道では火曜日から2日続いて
暖かい日が続きました。
すると今まで積もっていた雪が溶けていました。
根雪と思っていたのですが。
北海道では根雪になると防寒の冬靴をはきます。
この靴は、防寒と滑り止めを特化しています。
防水機能は少々劣っています。
そのため、ぐしょぐしょの道を歩くと
水が靴に染み込んできます。
雨靴ではすべるので、
この時期に氷が溶けるような天気は
非常に困ってしまいます。

・卒業研究・
今年も学科の4年生が
卒業研究のレポートを執筆し提出をしました。
私のゼミの学生も数名書きました。
学科では卒業研究を必修としているので
卒業するためにはレポートを
必ず提出しなければなりません。
分厚いレポートになるので、
2年間かてで準備していきます。
ゼミにでて指示に従っていれば、
文章を書くのが苦手な学生でも
大部のレポートが書けます。
でも、コツコツと積み上げていく努力が必要です。
それが苦手な学生は苦労しますが。

2019年12月5日木曜日

5_167 系外惑星 2:トランジット法

 TESSの観測方法は、トランジット法と呼ばれるものです。系外惑星を探す方法としては、もっとも一般的なものです。ただし、長所も欠点もあります。TESSは、その欠点を他の観測で補っていきます。

 TESSによる初期的な成果は、前回紹介しました。TESSは、近傍の恒星をターゲットにしています。ターゲットになる恒星は、12等級より明るく、太陽に似た恒星(G型とK型主系列星)、約50万個が対象となっています。1000個の赤色矮星も加わっています。
 TESSの惑星探査法が「トランジット法」と呼ばれるものです。トランジット法とは、恒星の周りを惑星が周ることで、恒星の明るさがわずかですが変化します。この明るさの変化を観測する方法が、トランジット法です。この探査で、地球サイズ以上の惑星、公転周期が60日以内のものが見つかると考えられています。
 今後、多数の地球型惑星を発見していくことと思います。TESSが地球近傍で明るい恒星の探査をしていますので、発見されれば、地球からの別の望遠鏡でより詳しい観測をすることができます。その観測で、惑星の質量や軌道や公転周期、状況などの詳細がわかってくことが期待されます。これが近傍の恒星の探査をする重要な意味です。
 例えば、TESSによって観測された53光年のところにあるHD 21749(レチクル座の方向の8等星)の恒星から、2つの系外惑星が発見されています。それを地上から観測して、惑星「HD 21749 b」は、サイズが地球の約2.7倍、質量は約23倍、表面温度は150℃、公転周期は約36日と推定されました。高温で大きい惑星で、地球とはあまり似ていませんでした。トランジット法では、大きな惑星、恒星近傍の惑星、公転周期の短い惑星の発見がされやすくなります。この惑星の特徴は、今まで発見されたTESSの惑星で、もっとも公転周期の長いものとなっていることでした。
 HD 21749の恒星系からは、もうひとつの惑星「HD 21749 c」が発見されています。この惑星は、サイズが地球の約90%、質量は80%で、地球に似ています。表面が岩石からできている惑星だと考えられています。ただし、公転周期は約8日で恒星に非常に近いところを回っていて、表面温度は約430℃になると推定されています。
 発見された恒星系や惑星のより詳しい観測が、地上の望遠鏡や宇宙望遠鏡でなされることになります。そこで新しい情報が付け加わります。全天を網羅的に観測することが、TESSの役割となります。ご近所の系外惑星のカタログづくりとなるわけです。

・師走・
いよいよ師走となりました。
以前は、いろいろとアセリがあったのですが、
最近はアセリなくなりました。
でも、今も変わらず、師走になると、
1年のたつ速さを噛み締めてしまいます。
年齢のせいでその速さは加速されているようです。
年々すべき仕事が終わることなく続き
日々それに追われているせいでしょうか。
仕事で1年というくくりで、
振り返ることも少なくなりました。
仕事が終わった時が区切りとなるだけです。
そして次なる仕事へと気持ちを切り替えていきます。
そんなとき、エッセイのこのメモは
1年の振り返り役に立っています。
今年のエッセイも残すところ、後3回となりました。

・雨・
北海道はまた、週末から今週はじめにかけて
暖かくなり、雨も降りました。
根雪かと思った雪が、かなり溶けました。
しかし、翌日からはまた冷え込み、雪になりました。
北海道だけでなく、日本の各地で
激しい寒暖の繰り返しが起こっているようです。
体調を壊す人もいることでしょう。
私も少々風邪気味になっていきました。
無理しないで、睡眠と栄養をとるように心がけましょう。