2021年9月9日木曜日

1_196 地球内の月 2:ジャイアント・インパクト説

 原始地球に別の原始惑星が衝突してできた、というジャイアント・インパクト説で、月は形成されたと考えられています。月と地球の類似点と相違点の両者を、うまく説明できることが、この説が支持されている理由です。


 前回紹介したように、微惑星が集まり、原始惑星に成長する段階で、大きな衝突が起こります。太陽に近い軌道域では、惑星の成長が早く、材料も少ないため、原始惑星同士の衝突は、早く終わることになります。地球の公転軌道域では、原始地球に最後に衝突した原始惑星が、月の起源となったと考えられます。これが、ジャイアント・インパクト説となります。原始地球に衝突したこの原始惑星は、ティア(Theia)と命名されています。

 月は地球と比べると、核(コア)が小さく、密度も小さく、揮発成分(気体になりやすい元素)が少ないなどの特徴があります。一方、酸素の同位体組成などの化学組成は、同一の材料からできたことを示しています。まるで別のできかたをしたように見えますが、同じ材料からできたようです。似ている点は、地球のマントル物質が月の材料になれば、解決できることがわかりました。

 そこでジャイアント・インパクト説で地球のマントル物質だけを飛び出させて、それが月の材料になればいいわけです。シミュレーションは、このエッセイでも(1_140~143)紹介しましたが、斜めの衝突であったと考えられています。衝突された地球のマントル物質だけを飛び出させるために、ティアの斜めの衝突が、シミュレーションの結果、適切であることがわかりました。

 斜めに衝で地球のマントル物質だけが飛び出して月になります。月は、原始地球やティアとは少々違った成分を持つことになります。このメカニズムで月が地球とは、似た点と違うことが説明できます。

 一方、ティア側の物質は、原始地球と合体したとすれば、衝突したティアの物質は、すべて原始地球に吸収されたとこになります。では、地球は合体して現在のような均質な姿になったのでしょうか。それとも、ティアの衝突の痕跡は、地球に残されていないのでしょうか。

 今回、地球深部からテイアの痕跡でないかという、新たな説が登場してきました。それは次回、以降としましょう。


・前のところに戻る・

9月の初頭に、いくつか手掛けていた

大きな研究上の仕事で区切りがつきました。

それで新たな研究計画を練り直し、

次の論文の構想を進めています。

その計画は、実は20数年前に、

一度取り組んだテーマと似たものになりました。

予期していなかったのですが、

私の興味は、やはり同じところを巡っているようです。

四半世紀は、科学にとっては長い時間で、

大きな進歩があるはずです。

その違いを感じていきたいと思います。

端緒についたばりですが、

似たところもかなりあるようです。

それは、進歩がないではなく、

普遍性のあるものだったからでしょうか。

そのチェックも、これからですが。


・職域接種・

我が大学でも職域接種がはじまりました。

隣の大学と共同での接種です。

先週末から今週末の4日間に渡って

大学内でワクチン接種がおこなわれます。

学生と教職員に対しての職域接種です。

デルタ変異種の特性をみていると、

これで完全とはいえそうもないですが、

集団免疫がある程度は確立されるはずです。

感染が広がらないとはいえないですが、

おさまればいいのですが。