2022年10月27日木曜日

6_191 多様な系外惑星 2:特異な惑星

 今回発見された系外惑星は、直接撮影という話題だけでなく、特異な特徴をいくつかもっていました。特異性は、これまで惑星形成モデルでは説明できないもので、新たなモデルを考えなければなりません。


 ガイドス(Gaidos)の論文では、スバル望遠鏡を3年かけて使用したデータを用いて、直接撮影された系外惑星であることは、前回紹介しました。この系外惑星は2M0437bと名付けられています。
 観測された惑星が属する恒星(主星といいます)は、おうし座の2M0437で、地球から420光年ほど離れています。この主星は小さな質量(太陽の0.15~0.18倍ほど)しかありません。また、この主星のある領域は、星が形成されているところに位置し、2M0437も形成されたばかりの若いM型矮星だと考えられています。形成後、200 〜 500 万年ほどしかたっていません。ですから、この主星の周辺を回る系外惑星の年齢も、似た若いものになるはずです。
 2M0437bは、できて数100万年ほどの惑星となり、これまで発見された系外惑星の中では、最も若いものになります。2M0437bは、木星の3~5倍ほどの質量があると見積もられ、「スーパージュピター」(大きな木星という意味)と呼ばれる系外惑星のタイプになります。1100~1200℃ほどの高温になっています。恒星からの位置は、118AU(天文単位:太陽と地球の平均公転距離を1としたもの)となり、非常に離れたところで見つかりました。
 この惑星は、特異です。質量の小さい主星であること、遠く離れた位置の軌道であること、さらに短時間で巨大惑星が形成さたこと、がこれまでにない特異性となります。
 巨大惑星が遠く形成されるには、コア降着による惑星形成過程をたどることになり、かなり時間かかると考えられていました。恒星の質量が大きければ、ディスクの不安定性で大きな惑星を短期間で形成できますが、今回の恒星は小さいもので、その効果は働きません。
 非常に若く、非常の低質量の恒星の周りで、遠く離れた位置での巨大惑星(スーパージュピター)の発見は、これまでのモデルでは説明できないことになります。新しい形成モデルを考える必要がでてきたことになります。

・雪・
今週はじめ、北見に校務出張しました。
一気に寒波が来て、寒くなる時期でした。
山は白くなっており、雪も降りそうでした。
幸い、行きも帰りも、
路面が雪や氷になることはありませんでした。
冬道の心配をする時期になりました。
自家用車ででかけたのですが、
新しい冬タイヤにしていました。
それでも、シーズンはじめの雪道は気を使います。

・校務出張・
校務出張が続きます。
来週は青森です。
あと道内4箇所が別日であります。
青森は公共の乗り物と一部レンタカーになります。
不便なところへ行く必要があるので
2泊3日の出張になります。
休みになる講義への対処がなかなか大変です。
11月になっても校務出張が続きます。
コロナ禍が終わったことになるのでしょうかね。

2022年10月13日木曜日

1_201 火星の隕石衝突 3:クレータ

 火星探査機インサイトは、音を記録し、地震も記録していました。両者を合わせることで、隕石の衝突を検証できます。さらに、軌道からの画像と比べることでクレータとも照合できます。


 火星探査機インサイトは、火星の赤道近く(北緯4度、東経136度)に着陸しているのですが、そこはかつてキュリオシティ(南緯4.6度、東経137度)が調査した近くです。現在、パーサヴィアランス(北緯19度、東経78度)が探査をしているところも近くになっています。このように調査されているところが、集中しています。
 インサイトは、音を記録し、地震も記録もしていることから、隕石の衝突を特定できることができると前回しょうかいましました。本当に、このような現象を捉えることができるのでしょうか。インサイトの地震計は、15か月間の観測で、数百回の地震を観測しています。その中で、4回の衝突の振動を記録していました。それらを解析して衝突による振動だと確定しています。さらに、軌道上から観測された画像によって、衝突によって形成されたクレーターも限定されています。
 そのような成果は、フランス、トゥールーズ大学のガルシアと共同研究者による報告で、2022年9月19日のNature Geoscience誌に掲載されました。タイトルは、
Newly formed craters on Mars located using seismic and acoustic wave data from InSight
(インサイトの地震と音波データを用いて位置決定された火星に新しくできたクレータ)
というものです。
 これまで地震計は天体の内部を調べるためのものだと考えられてきました。しかし、同じ装置の同じデータであっても、解析することで、別の意味をもった情報が見つかってきました。
 クレータの位置が確定されたことが重要です。なぜなら、地震計が多数あれば、地震が起こった場所(震源)は特定できますが、ひとつだと場所がよくわかりません。そうなると天体内部を正確に推定することが難しくなります。しかし、今回クレータから震源の位置が確定していますので、より正確に内部を推定することできます。今後、天体観測にも役立ちそうですね。

・初冠雪・
最近、一気に秋めいてきました。
北海道では、先週には初冠雪が各地でみられまた。
通勤中に見える山並も白くなっていました。
我が家でも、朝夕のストーブが当たり前になってきました。
今週末に野外調査にでかけます。
これが、今年最後の野外調査になりそうです。
そろそろ峠道での雪が心配になってきました。
いつ冬タイヤに変えるかが悩みどころです。

・まだらな紅葉・
秋の連休はいかが過ごされたでしょうか。
私はいつもと変わらない生活をしていました。
先日の晴れたい日に少し雪虫が飛んでいました。
まだ少し早い気がします。
今年の紅葉はまだらなので、
秋の深まりも、
いきつもどりつしているのでしょうか。

2022年10月6日木曜日

1_200 火星の隕石衝突 2:地震、月震、火震

 このシリーズは、火星の隕石衝突のテーマです。なかなか話題に入りません。前提となる知識があったほうが、よりよくわかるからです。ということで、今回も、火星の隕石衝突には、まだ入れません。


 探査機は、天体の外側からか、あるいは着陸すれば天体の表層を、直接調べることができます。着陸する予定の探査機には、地震計が搭載されること多いです。なぜなら、地震計は、地震を観測し、地震のデータで天体内部を様子を推定することができるからです。
 地震計は、月にもアポロ計画で5台が置かれ、そのうち4台が長期わたって観測しました。8年10月間で、12558回もの月震を観測しています。地球では地震(earthquake)ですが、月なので月震(moonquake)と呼ばれています。
 地震の観測が重要なのは、地震は地中を伝わってくるので、その波形を測定することで、内部の構造や構成物を知ることができます。多数の地震を観測できれば、より内部を詳しく知ることができます。
 月震は、いくつかの原因で起こることもわかってきました。深発月震(1100~800km)、浅発月震(300km)、熱月震(昼夜の温度差で岩石が破壊された時に起こる)などが主なものとされています。アポロ計画では人工月震も11回起こしています。
 月震の原因として、隕石の衝突ではないかと考えられているものが、100回ほど観測されています。しかし、残念ながら、実際の衝突によってできたクレータは見つかっていません。また、他の証拠がないので、隕石の衝突と検証されていません。
 さて、火星です。火星では、1976年にはバイキング2の地震計が観測して、いくつかの地震を観測しました。その後、いくつかの探査機が着陸、観測をしました。
 現在は、NASAの探査機インサイトが活動中です。2018年11月に到着して約2年(728日)を予定されていました。4年ほどたっているのですが、現在でも、活動中です。いろいろトラブルがあったのですが、ホコリのためソーラーパネルで発電ができなくなりました。一度はアームで砂を吹き付けることで、ホコリを払って対処したことで、少し回復しました。しかし、現在ではホコロが多すぎたので対処できなくなったようです。
 2022年5月には省エネモードになっています。予定では、2022年末までの運用を考えています。省エネモードでは、火震(marsquake)の観測だけをしています。
 また、インサイトでは、音を記録するともできました。地震計と音で、隕石の衝突であることを、検証することができます。その詳細は、次回としましょう。

・地震計・
探査機が、天体に送り込まれるたびに、
新しいデータから
これまでに知られていないことが
次々とわかってきます。
特に映像で示されるニュースは
市民にもその新しさが直感的に理解できます。
地震は、体感しない限り、直感的には理解できません。
見えること、直接体験できることだけが
本質を知るための情報ではありません。
見えないもの、感じないものでも
重要な情報がいろいろあります。
地震計もそのような情報を収集しています。

・秋の足音・
10月になりました。
9月には一旦涼しくなったのですが、
9月下旬から10月の最初も
暖かい日が続きました。
今週から急に涼しくなってくる予報です。
(10/2日曜に、このコラムを書いています)
紅葉も進んでいるのですが、
どうも足並みが揃ってないように見えます。
まあ、本当に紅葉ははじまるのは
10月下旬から、秋が深まってからですから。
雪虫はまだ見かけませんから、
初雪もまだまだ先になりそうです。