2021年2月25日木曜日

6_181 千葉の新鉱物 2:千葉石

 千葉で最初に見つかった新鉱物の「千葉石」の紹介をします。2011年のことでした。千葉石は、不思議な特徴をもった鉱物で、新エネルギーとして注目されているメタンハイドレートと関係があります。


 千葉石(chibaite)は、2011年2月15日に報告され、新鉱物として認められました。もとは、アマチュアの鉱物研究者が発見していたものですが、実際の新鉱物と認定されるのに不十分でした。最大長径が5mmほどの結晶が見つかっていました。目で見えるサイズの結晶だったのですが、変質を受けて別の鉱物(石英)に変わっていました(仮晶といいます)。仮晶だったため、鉱物学的データを出すことができませんでした。その後、別のアマチュア研究者が、変質していない結晶を発見しました。その結晶を研究者が調べることができ、新鉱物であることが確認されました。

 千葉石は、前期中新世(約1800万年前)の保田(ほた)層群の堆積岩の中から見つかりました。保田層群は、大陸斜面でメタンなどの成分が多く含まれていた冷水が湧いているところでできた推定されています。メタンなどを含む冷湧水があったことは、深海の湧水地で特徴的にみられるシロウリガイ類などの化石が見つかっていること、千葉石にはメタンやくエタン、プロパン、イソブタンを含んでいることからわかります。

 千葉石の特徴は、二酸化珪素(SiO2、シリカといいます)が「カゴ」状の構造をもっているところです。「カゴ」の中に、メタンなどのガス分子がひとつ入っています。ひとつのカゴのサイズは、1nm(ナノメール、10億分の1メートル)程度です。

 このようなシリカの構造を「クラスレート(clathrate)」といます。クラスレートは、包摂化合物(包接とも書かれます)という術語があてられています。化合物(この場合はシリカ)が、立体的に三次元の網目構造をつくっており、その中に他の分子や原子が閉じこめている化合物をいいます。

 シリカクラスレートの構造は、メタンハイドレートと似たものでした。メタンハイドレートとは、水の分子に囲まれたメタン(包接水和物ともいいます)が固体になったものです。メタンハイドレートには3つの構造のタイプがあり、I型(等軸晶系)、II型(等軸晶系)、そしてH型(六方晶系)と呼ばれています。

 メタンの起源は、海底堆積物中の微生物によってつくられるものと、有機物の熱による分解によるものがあります。メタンハイドレートのI型は微生物起源で、II型とH型は熱分解によると考えられています。

 メタンは、石油や石炭より二酸化炭素の排出量が半分ほどしかありません。また、メタンハイドレートとして、海底に大量に埋蔵されていることがわかってきて、新エネルギーとして期待されています。

 さて、これまでのシリカクラスレート鉱物は「メラノフロジャイト」と呼ばれるものが見つかっており、I型の結晶構造でした。千葉石は、II型になっています。ですから、通常のI型のメタンハイドレートより、もっと深い堆積場で熱分解作用が起こる条件が想定されます。今後、千葉石とメタンハイドレートとの関係も検討されていくと考えられます。

 次回は、2つ目の結晶の房総石の説明です。


・報道・

新鉱物の発見は、稀なことではなく、

年に100個ずつほど見つかっています。

国内でも、年に1、2個は発見されています。

このような情報は、新鉱物は学界内の出来事で、

ニュースにはなかなかなりません。

一般の市民が知ることがありません。

千葉の新鉱物は首都圏に近いところの発見で、

地層名のチバニアンでも有名になったため

報道されたのでしょうね。

市民向けのニュースの影響は大きいですね。

メディアも横並びに同じものだけでなく、

もう少し多様な報道をしてもらいたいですね。


・三寒四温・

2月も、いよいよ終わります。

三寒四温になっているようで、

寒暖が繰り返されています。

今年は積雪は少なかったようです。

3月になったら、コロナ禍も

少しは治まっているでしょうか。

長い自粛をしてきたのですが、

春とともに自粛も少しは改善すればと思います。

2021年2月18日木曜日

6_180 千葉の新鉱物 1:新鉱物の承認

 千葉から、2020年12月に新鉱物「房総石」が発見されました。これまで、千葉はあまり新鉱物は見つかっていなかったのですが、2011年の「千葉石」に続いて2つ目となりました。


 千葉から新鉱物が発見されました。2020年12月に、房総石(ぼうそうせき Bosoite ボソイトと発音)と命名されました。千葉では、2011年に千葉石(ちばせき chibaite)という鉱物が見つかっていて、それに続いての新鉱物の発見でした。

 新鉱物の説明の前に、新鉱物とは、どのように認定されるのかを、見ていきましょう。

 これまでに知られていない鉱物であることを示すために、記載データを揃える必要があります。しかし、記載データが揃っただけではだめで、その鉱物が新鉱物と承認されるためには、日本の学会の新鉱物に関する委員会(新鉱物・命名・分類委員会)で承認を受けてから、国際的な新鉱物に関する委員会(国際鉱物学連合(IMA)の新鉱物・命名・分類委員会)に申請書を提出して、審議を経た後、承認を受けるという2段階になっています。最後のIMAの委員会では、記載データだけでなく、国代表の委員の投票による審議となります。なぜ、投票をするのでしょうか。科学的事項なのに、投票による決定というのは、少々奇異な気がします。

 それは、新鉱物の記載データには、定量値が含まれているのですが、その定量値が既存の鉱物と微妙な違いしかない場合や、技術的に厳密に決定できない場合などがあるためです。

 例えば、今回の房総石の化学組成は、SiO2の含有量が86.38重量%(wt%と書きます)ですが、測定された範囲は、85.10~87.36wt%の範囲があります。同様に、Al2O3は1.63wt%(1.14~1.96wt%)、Na2Oは0.34(0.32~0.37wt%)、そしてCH4は11.65wt%で、合計が100wt%となっています。ただし、メタンは直接測定できないので、他の測定できる成分を決めてから、足りない量をメタンとみなして組成を決定しています。技術的な限界があることなので、この方法で推定することは、学術方法として認められています。

 房総石の構造式は、Na0.01 (Si0.98 Al0.02)1 O2 0.5O・CH4となっています。本来は、元素の比率は、元素の右下に小文字(下付き文字)で表記されます。この鉱物の一単位の結晶の元素の比率は、Na(ナトリウム)が0.01、Si(ケイ素)が0.98、Al(アルミニウム)が0.02で、SiとAlを合わせて1.00となり、O(酸素)が2、CH4(メタン)が0.5、という比率になっています。ただし、その元素の比率は、測定できない元素でもあるO(酸素)を2として計算した値としています。

 このような化学組成から、鉱物の結晶を構成している元素の比率(鉱物構造式と呼ばれます)が推定されます。元素を実測した数値には幅があり、理想的な構造式にも不正確さができます。

 このような不確かさがあるため、新鉱物としていいかどうかが、採決で決められることになっています。


・地震・

2月13日23時ころ大きな地震がありました。

私は、すでに寝ていたのですが、

揺れには気づき目が覚めめました。

私の地域では震度が3程度で

あまり大きな揺れではありませんでした。

気象庁の2011年の3.11の余震とのことです。

この地震による津波はなかったのですが、

被害が大きいようなので心配です。

今のとこと、数名の東北在住の友人には

被害はないとのことです。


・春を待つ・

北海道は、急激に暖かい日がきて、

一気に雪解けが進みました。

この時期は、春と冬がせめぎ合いをはじめるときです。

北国の人間には、春の待ち遠しさもあるのですが、

ベチョベチョの雪解けの状態の大変さが気になります。

ですから、春は待ち遠しいのですが、

嫌な季節の到来でもあります。

また16日から荒れて雪なりそうです。

(なおこのメールは2/15に配信しています)

2021年2月11日木曜日

2_191 恐竜の新知見 6:ベロキラプトル

 ベロキラプトルは、多くの人が名前を知っている恐竜ではないでしょうか。そのイメージは、映画の影響を受けているようです。化石での研究が進み、実態が明らかになってくると、イメージとはなかり違うことがわかってきました。


 ベロキラプトルは、映画「ジュラシックパーク」で一躍有名でになり、多くの人が知っている恐竜ではないでしょうか。白亜紀後期に現在の東アジアに生息していました。当時の東アジアは、他の大陸とは別れていたと考えられているので、独自の進化をしていった恐竜と考えられています。

 オオカミほどの大きさで、体重が45kgほどで、ほっそりとした体型で、恐竜としては小型になります。獣脚類(ティラノサウルスも属しているグループ)で、頭蓋骨は大きく、多数の歯がありました。肉食に適した歯で、肉を食いちぎっていたのでしょう。後肢に大きな鉤爪(かぎづめ)がありました。鉤爪は、狩りしたり、獲物をつかむのに適していました。後ろ足は、すねが長く、筋肉も発達していたようで、速く走ることができたと推定されています。

 そのような化石の特徴から、ベロキラプトルは「俊敏な略奪者」という意味の学名が与えられました。映画では、群れで狩りをする様子が描かれていましたが、科学的根拠はありませんでした。

 2020年8月には、デイノニクス(ベロキラプトルの仲間)の歯の化石に関する研究が報告されました。大人と子どもの歯を調べることで、食物が年齢とともに変わっていたことがわかりました。群れで暮らしていたとすると、大人も子どもも同じ食べ物を摂るので、化石からの情報とは異なります。群れで狩りをすることはなかったと、考えられます。そこから、同じグループに属するベロキラプトルも、単独で狩りをしていたと推定されています。

 ベロキラプトルの頭は、鳥に似ているように見えますし、叉骨も存在しました。そしてなにより、羽毛が生えていたと考えられます。2007年には、前腕の骨にコブが並んている化石を発見されました。この骨のコブは、鳥類に見られる特徴で、羽を固定する飛羽瘤と呼ばれています。しかし、ベロキラプトルの体型は、前足が短く飛行できたとは考えられず、叉骨も翼を支えられるような形ではありません。ですから、地上生活をしていたと考えられます。

 2011年には、ベロキラプトルの頭骨には、大きな強膜輪(きょうまくりん)が見つかっています。眼球を押さえるための組織として眼球の周囲に強膜板があり、それを支えるために丸く薄い強膜輪と呼ばれる骨があります。強膜輪が大きいということでは、目が大きかったとことがわかります。そのため、ベロキラプトルは、夜行性ではなかったかと考えられます。さらに匂いを感じる嗅球という組織があるのですが、それを支える頭骨のくぼみも大きく、形も、匂いを感じる能力が優れていたと推定されています。

 恐竜は、化石しか残されていない生物種ですが、それらを詳しく調べることで、いろいろな実態がわかってきました。今後も、研究が進むことで、新たな恐竜像が生まれてくるでしょう。


・建国記念の日・

2月11日は「建国記念の日」です。

玄関に国旗を掲揚している家もあります。

法律で定められた祝日なので、

国ができた日という意味に思えまが、そうではありません。

建国されたということを記念するという意味だそうです。

そのため、「の」が入っているとか。

かつては「紀元節」と呼ばれていました。

古事記や日本書紀で、神武天皇の即位日が

この日ということで定められました。

今日は祝日ですから、

たまにはそんな古(いにしえ)のことに

考えを馳せるのもいいかもしれませんね。


・集中対策期間・

北海道は緊急事態宣言は出ていませんが、

2月15日まで「集中対策期間」になっています。

現在、感染者は減少していますが、

感染地域への不要不急は自粛するよう要請されています。

大学もレベル2の状態ですが、後期の授業が終わったのですが

面接授業は全面禁止の状態です。

ただし、資格などで面接が必要な授業では

申請して許可をもらって実施することになっています。

来年度の授業のシラバスを書いているところですが、

一部面接授業可能のレベル1を想定して執筆をしています。

ただし、急なレベル2への切り替えも

考えておくように指示されています。

2021年2月4日木曜日

2_190 恐竜の新知見 5:幼形進化

 恐竜から鳥への進化の難点は、両者のサイズの違いでした。その困難さ克服するための仮説が、幼形進化という考えでした。幼形進化は、生物進化では、時々起こることが知られています。


 鳥にはクチバシがあります。恐竜には一般には見られない特徴です。しかし、恐竜の化石では、前に口が伸びているものや、クチバシを持ったものも見つかってきました。ここまで述べてきた鳥と恐竜の違いは、いろいろな化石の発見で、それほどないことがわかってきました。ただし、両者の大きさの違いだけが、問題としてのこっていました。

 前回、鳥類へは、小さくなった恐竜から進化してきたという説を紹介しました。しかし、小さな恐竜でも、現在の鳥と比べると、かなり大きなもので、そこからの進化は困難でした。

 恐竜は卵から生まれ、卵は恐竜よりかなり小さなものです。そして、その卵から生まれたばかりの恐竜は、卵サイズしかないはずです。そこから、「幼形進化」という考えを取り入れることで、サイズの問題を説明しようとする仮説がでてきました。

 幼形進化とは、ある生物種で、祖先の幼い時にみられる特徴が、成長したときにも現れることをいいます。動物には時々みられるものです。幼形進化は、ネオテニー(幼形成熟や幼態成熟とも呼ばれます)という現象がその典型とされています。幼体の特徴を残しながら、性的な発達が進み、成体となることです。

 例としては、ウパールーパーが有名です。ウーパールーパーはサンショウウオの仲間で、両生類です。両生類は、子ども(幼体)ときは、水中でエラ呼吸をして生活しています。幼体の時に持っているエラを、大人(成体)になっても残っているのがウーパールーパーです。1920年には、人類もネオテニーだという仮説も出されました。チンパンジーの幼形がヒトに似ている点が多いことことから、サルの幼形をもったまま、性的に成熟したということです。

 鳥の頭をみると、恐竜と比べて、頭が丸く、目が大きく、口も小さくなっています。このような特徴は、恐竜の幼体に見られる特徴でもあります。恐竜から鳥への進化、ネオテニーがあったとすれば、鳥の特徴も説明できます。

 実は、恐竜にも幼形の特徴をもったものがいます。小型の恐竜、ベロキラプトルです。ただし、それが鳥の祖先ではないようです。映画の「ジュラシックパーク」で群れで狩りをしていたのが、恐ろしいベロキラプトルでした。最近、ベロキラプトルの認識が、化石の研究から変わってきました。続きは、次回としましょう。


・ジュラシックワールド・

映画「ジュラシックパーク」は続編が、何作もつくられ

全5作になっています。

第4作まで見ていたのですが、

第5作目は2018年に作成されたもので

「ジュラシック・ワールド/炎の王国」というものです。

見ていませんでしたので、このエッセイを書いたことで

興味がわき、先日、見ました。

なかなか面白かったです。

これまでのシリーズでは、

恐竜に対する科学の進歩があるため、

CGでの表現や動きも変わってきてきました。

きっちりと科学的考証をして作成されていますね。

そして、過去のシリーズを彷彿とさせる部分が

各所に盛り込まれていました


・自粛要請・

さて2月になりました。

全国的にCOVID-19の感染はなかなかおさまりそうにありません。

緊急事態宣言の出されている地域では、

その延長も考えられているようです。

大学も後期途中からずっと遠隔授業になったまま

後期が終わりました。

北海道には緊急事態宣言は出されていませんが、

道内独自に、設定してる自粛状態が

11月からずっと継続しています。

札幌、小樽では複数のクラスターが起こっており

より上のレベルになっています。

全道的な自粛要請は2月15日までとなっています。

現在の状況を見ると、その期間の延長もありそうです。