2020年10月29日木曜日

3_191 地磁気逆転 3:非双極子磁場

 連続露頭から、連続的な地磁気の逆転の様子が読み取られてきました。地磁気の逆転は、どのように起こったのでしょうか。そこでは、別の磁気の変動の姿も明らかになってきました。


 チバニアンの4万年間の連続した地層で、古地磁気の測定がおこなわれました。そこの中から、地磁気が逆転していく様子も、連続的にとらえられるようになってきました。チバニアンの古地磁気の逆転は、2万年間のいう時間で起こっています。2万年は、人類にとっては長い期間ですが、地球史ではあっという間に起こっていました。

 連続データだったので、磁気の逆転の様子は、少々変な動きがあってことがわかってきました。それは、磁極が南北を、何度もいったり来たりしながら変化しているようなデータに見えました。しかし、この変動は、磁気の成分が混在してるためだったと考えられています。

 その説明する前に、双極子磁場と非双極子磁場について説明しておく必要があります。双極とは、棒磁石のN極とS極の2つ極があることです。双極子磁場とは、磁場がN極とS極がある状態をいいます。地球も双極子磁場の状態で、ほぼ南極と北極、にNとSの磁極があります。このような双極子磁場は、地球の液体金属の流動しているコア(核)が起源だと考えられています。

 一方、非双極子磁場とは、対にはなっていない磁場のことです。現在の地球でも何箇所かで、弱いですが不規則に発生していることが知られています。南米大陸の東側の海に、南大西洋異常域(South Atlantic Anomaly, SAA)と呼ばれる非双極子磁場があります。これは、地磁気軸と地球の自転の軸がズレてしていること(11度)が原因だとされています。そのズレで磁場が弱くなり、上空のバンアレン帯が、南大西洋上にまで落ち込んでいるため、非双極子磁場が発生していると考えれています。

 さてチバニアンの古地磁気ですが、逆転は、2万年間かけて起こっていたのですが、その間に双極子磁場が弱くなっています。そのため、非双極子磁場の方が強くなっていきます。非双極子磁場は不安定なので、繰り返し出現しては消えています。。非双極子磁場の成分のため、地球全体の磁場の位置が、変動して見えていることになります。

 では、松山-ブリュンヌ逆転の現象は、そもそも何が原因で起こるのでしょうか。そして今回の逆転の現象でわかってきた結果は、私たちに何を教えてくれるでしょうか。次回としましょう。


・函館へ・

今週は校務での出張が入るので、

このエッセイは、先週末に、予約送信しています。

函館への出張なので、久しぶりの遠出となります。

校務は、2時間ほどで済むのですが、

車で、高速道路を使っても、

片道が4、5時間かかることになります。

訪問の時間帯によっては

日帰りをすることになります。

今回は、朝早めの訪問だったので、

前泊が可能になったので

体力的には助かりました。

あとは天候しだいです。


・野外調査・

これまで、野外調査には、道内や道外へ

年に何度も出ていましたが、

今年は、校務以外では出ていません。

地質学者の多くが似た状況になっているのでしょうか。

それとも野外調査だから、通常に戻っているのでしょうか。

海外調査は、現状は不可能でしょう。

まったく研究が進められなく

なっているのではないでしょうか。

私の採択されている研究費は、

国内の野外調査が主たる項目のものでした。

コロナ禍への対処で、幸い項目の変更ができ、

自由な項目で支出できるようになました。

おかげで、野外調査以外の目的で

いろいろな研究を進めることができました。

2020年10月22日木曜日

3_190 地磁気逆転 2:連続露頭

 地磁気の逆転は、人類が経験したことのない異変です。もし現在起こったらどんな事態になるのでしょう。チバニアンはもっとも最近に起こった地磁気の逆転です。その様子がわかれば、対処も考えられるかもしれません。


 今回、チバニアンの地層の研究で成果報告がありました。国立極地研究所の羽田裕貴たちの研究グループが、ドイツの科学雑誌「Progress in Earth and Planetary Science」に報告しました。そのタイトルは、

 A full sequence of the Matuyama-Brunhes geomagnetic reversal in the Chiba composite section, Central Japan

 (中央日本の千葉複合セクションでの松山-ブリュンヌ逆転の全層序)

というものでした。千葉複合セクションとは、4箇所の露頭(養老川セクション、養老田淵セクション、柳川セクション、浦白セクション、小草畑セクション)を合わせたものを一連の地層とみなしているということです。これらの複合セクションは、チバニアンの採択に用いられた重要な露頭群となります。

 もともとこの地では、「松山-ブリュンヌ逆転」を記録した地層が連続して分布していることが、認定の理由になっていました。羽田さんたちは、千葉複合セクションのひとつの養老田淵セクションと養老川セクション上位にあたる地層で掘削して、新たに古地磁気の測定をしています。

 新たに掘削した地層は、逆転の境界の位置が一致しているため、連続した地層と見なせるとのことです。これらの地層に、すでの報告されているデータも加えることで、4万年分の連絡した古地磁気のデータを得られたとこになりました。

 連続した地層のデータが手に入ると、磁気の逆転の様子を、時間経過とともに連続的に読み取れる素材となります。地層ごとに正確に位置(時代)を記録しながら、地層に残された磁性を測定していきます。古地磁気の測定では、単に磁気の逆転の位置だけを調べるわけではなく、古地磁気の方位と強度なども測定しています。

 連続したデータなので、磁気の逆転から現在の状態になるための、磁気の逆転の異変が、磁気強度や方位の変動などとして読み取ることができると考えられています。そこから磁気の逆転という、これまで文明を持った人類が一度も経験したこともない事件を、詳しく探ることができるようになります。そして、新しい事実もわかってきました。

 その様子は、次回としましょう。


・晩秋・

北海道は、足早に秋が深まってきて、

紅葉が一気に進んでいます。

その紅葉も大量に落ちるようになりってきました。

秋風が吹くたびに、落葉が舞い

雨が降るたびに、葉が落ちていきます。

今年の秋は、足早に進むようです。

朝夕にはストーブを焚くようになりました。

先週末に冬布団が打ち直しから戻ってきました。

今週は冷え込んだので、冬物の掛け布団にしました。

それでちょうどいいようになりました。

秋もそろそろ終わりかけています。


・倫理資料集・

現在、執筆のために、文献を読んでいます。

これまで興味をもっていたのですが、

手つかずていた分野、哲学史、地質学史です。

文献も書籍も集めていていくつかの読んでいたのですが、

今回、一気に読んでまとめていく作業をしています。

やりだせば、きりがないですが、

地質学史はほぼ目処がたっていますが、

哲学史がどこまでやればいいのかが不明です。

そこでみつけたのが、高校の倫理の資料集です。

これでは、かなり詳しく、原典資料もあり、

非常に便利であることがわかりました。

この資料手がかりに進めていこうと考えています。

2020年10月15日木曜日

3_189 地磁気逆転 1:チバニアン

 チバニアンは、日本の地層ではじめて国際的な標準地に選ばれて、時代名称になったものです。最近、チバニアンで新しい研究が報告されました。その研究には、どのような経緯があるかをみていきましょう。


 2020年1月17日、国際地質科学連合によって、地質時代の名称に日本を模式地とした「チバニアン」が認定されました。認定される前にも何度もニュースになり、このエッセイでも紹介したことがありました。そのためご存知の方も多いのではないでしょうか。

 チバニアンに関して、なぜ日本で認定されたのか、あるいはそもそもその時代名称にどのような意味があるのか、についてみていきましょう。今回紹介する論文は、この意味に関連しています。

 時代名称を決めるにあたって、その時代の前後の境界が重要になります。時代境界にははじまりと終わりの両側が必要になります。もしどちらか一方が決まっていれば、もう一方を決めればいいわけです。チバニアンの場合は、前の時代との境界を決定することになります。

 チバニアンより前の時代は「カラブリアン」です。この時代境界の決定に関しては、千葉の他にも2箇所、イタリアに候補地があって、3箇所で争っていました。カラブリアンとチバニアンの境界を、根拠をもって正確に決められたことが、チバニアンに決定される重要な根拠になっています。

 新生代第四紀更新世は、4つに区分されているうちの、チバニアンは古い方から3番目に当たります。その期間は、78.1万年前から12.6万年前までとなります。カラブリアンとチバニアンとの境界では、地磁気の逆転が起こったことが、地質学的に重要な事件とされています。

 地磁気の逆転は、地球史上何度も起こっているのがわかっているのですが、もっとも新しい地磁気の事件がチバニアンに関係しています。その事件は、現在の磁場と比べると磁気が逆転していることになるので、その事件の名称も「松山-ブリュンヌ逆転(258万~77万年前)」と呼ばれています。200万年近くの間、現在の磁極とは逆転していました。そして現在の78.1万年前に現在の磁極に変わった事件を、この時代境界にしようと考えられました。

 松山-ブリュンヌ逆転とは、二人の発見者の名称から名付けられています。松山は、日本の地球物理学者である松山基範(まつやま もとのり)さんに由来しています。松山さんは、兵庫県の玄武洞や東アジア各地で古地磁気を調べた結果、地球の磁場が、現在のものとは反転していることに初めて気づき報告しました。

 日本の研究者が日本で地磁気の逆転を発見し、その事件が、時代の境界に当たるわけです。古地磁気で逆転を発見した人も、発見された場所も、千葉とは関係はないのですが、心情的には、そのような由来の時代に、日本が関係する名称になって欲しと思ってしまいます。その結果として、千葉のチバニアンに決定され、大きなニュースになりました。

 その地を舞台に、新たな報告がありました。その内容は次回としましょう。


・冬布団・

北海道は寒くなってきました。

時々ストーブをつけるようになってきました。

長くつけていくと暖かくなりすぎることが多いので、

そんなときは停めてしまいますが、

ストーブが恋しい季節になりました。

現在、冬物の布団を打ち直しに出しています。

夜寝る時、少々寒く感じるようになってきました。

夏過ぎに出したのでどうなっているか気になってきました。

1月以上かかるとは聞いていたのですが、

現在、進行状況を問い合わせ中です。


・季節の巡り・

毎年、この時期、授業で落葉拾いをするのですが、

9月下旬は落葉が少なかったのですが、

10月に入ると、一気に紅葉が進み

落葉もたくさん落ちはじめました。

ところが、紅葉は木の上や端の方から

まだらに進んでいっています。

紅葉のはじまり工合が不順です。

今年は、天気のいい日に雪虫が

少し飛んでいるのをみたのですが、

まだ数が少ししか見かけません。

これからでてくるのかもしれませんが、

季節の移り変わりがいつもとは違うようです。

2020年10月8日木曜日

1_188 初期重爆撃期 5:隕石から地球へ

 HED隕石の母天体ベスタは小惑星帯にあります。HED隕石からベスタの記録が、そこから太陽系の形成初期の環境が復元できます。その記録は、地球形成初期の環境とも関連してくることがわかってきました。


 今回紹介している報告では、5つの隕石以外に、同じ隕石内の別の鉱物での年代値、あるいはベスタ由来の別の隕石の年代値も利用して議論しています。隕石の状態や鉱物の種類によって、これらの年代値の持つ意味が異なってくることは紹介しましたがそこから母天体である小惑星ベスタの形成初期の履歴が復元されていきます。

 もっとも古いのは、角礫化していない隕石や角礫化したものでも頑丈な鉱物(ジルコンなど)から得れた45億年前より以前のもの(44.9から45.5億年前)で、これは母天体で最初にあったマグマの活動になります。玄武岩ユークリットは火成作用でできたことも前に紹介しました。他の論文によって、角礫化されていない他の隕石(NWA 6594)のアパタイトからも、45.03億万年前の年代がえられています。火成作用の条件として、最大圧力は50~60GPaで、温度は1160~1200℃と推定する報告もあります。

 角礫化した隕石からは、44~41.5億万年前の範囲の年代があり、最初のマグマの活動より新しい時期です。この報告の隕石の値は、41.5億万年前より新しい時代のものと、それより明らかに古い年代もあります。これらの隕石でも、後の衝突事件をAr年代を調べると、40億前年より新しい時代(37.5億年前)がえられています。この時代に、ベスタに大量の隕石が衝突したことが分かりました。しかし、このような新しい時代の記録は、これまでの報告を調べても、非常に少なくなっています。

 このような年代値は、角礫化した隕石ブレシア(アパタイトとメリライト)からも42~41億年前の年代が、ベレバ(アパタイト)でも42億年前のものが見つかっています。この時期が、小惑星での後期爆撃のはじまりと解釈されています。ところが、今回の報告も含めて、40億年前よりより古い年代(44~41.5億年前)が多数えられたことになります。

 これまで太陽系では隕石の衝突事件(爆撃、あるいは重爆撃と呼ばれています)で、後期爆撃のピーク年代は39億年前頃だと推測されていました。約39億年前より以前にも、隕石が月や小惑星に衝突した「初期爆撃」があったという仮説がありました。

 42億年前(41億5000万年前)より古い年代は、ベスタではこれまで知られていない年代でしたが、今回の報告で、「初期爆撃期」の年代があったことが明らかになりました。後期重爆撃に相当する年代は、リン酸塩ではえられていません。

 これまで、太陽系の惑星内では、後期爆撃期の影響を激しく受けたと考えらていました。ところが、少なくともベスタでは、後期爆撃期の衝突より前期爆撃期のほうが激しかったことになります。

 では、このベスタからわかってきたこと(初期爆撃が激しかったが、後期爆撃はそうでもなった)は、太陽系全体で起こっていたと考えられます。地球において、約39億年前という時代は、海洋が形成され、その直後には生命が誕生していたかもしれません。その後、生命は進化を続けています。つまり、地球の表層環境は、後期爆撃の影響はあまり受けず、穏やかで安定していたと推定でき、ベスタの事実は地球の初期進化において重要な意味を持っています。

 今回の報告は、太陽系において、初期爆撃期が重大な事件となり、後期爆撃期の影響はあまりなかったということがいえそうです。地球の歴史から推定された太陽系惑星空間の環境が、地球外の隕石からも支持されたことになります。これが、論文の重要な結論ではないでしょうか。


・隕石の所有・

隕石は、だれでもが目にしたことがあるでしょう。

主には博物館などの展示でしょうか。

隕石を所有することもできます。

博物館のショップや鉱物や化石を売っている店では

隕石も販売していることがあります。

博物館も隕石を扱っている業者から購入しています。

もちろん、ありふれた隕石は安価で

珍しいものは高価になります。

でも、太陽系の初期や地球外でできた石を

だれでも簡単に手にすることができます。

私も研究のためでなく、3種類の隕石を購入して、

机の引き出しに入れています。

当然、隕石の種類を代表するものです。


・ストーブ・

10月になり、北海道は涼しくなってきました。

大学の研究室では、9月の下旬にはまだ窓を開けて

空気を入れ替えていたのですが、

最近では、窓を開けることなく、

足元に置く電気ストーブを出して使いはじめました。

少しつけると暖かくなるのですぐに切りますが。

夏と冬の切り替わりの季節になりました。

2020年10月1日木曜日

1_187 初期重爆撃期 4:それぞれの年代値

 母天体のわかっている隕石で、アパタイトの年代が測定されました。5つの隕石のアパライトから、いろいろな年代値がえられました。そこから、何が読み取られるのでしょうか。


 前回、アパタイトを年代測定に利用する意味を紹介しました。記録されている年代が、450℃という中間的な温度で書き換わることが、アパタイトの特徴でした。その温度での出来事は、母天体、そして地球や太陽系の天体の歴史への重要な手がかりとなっていました。

 この報告で用いられたのは、玄武岩質ユークライトという隕石、5種ですが、そのうち3つは角礫状で、他の2つは角礫化していないものでした。

 ひとつの隕石で何個もアパタイトがえられ、いくつもの年代がえられます。同一隕石内の複数の鉱物を測定することで、年代を示す線(アイソクロンと呼ばれます)から年代値を求める方法もあります。アイソクロン法では、同じ隕石内のアパタイトは同じ履歴を記録していると仮定して求めることになります。これはよく使われる手法ですが、もしかすると課題あるかもしれませんが、今回はそれには言及しません。

 それぞれの隕石からえられたいくつかの年代をみていきましょう。

 角礫状玄武岩ユークリットから見てきましょう。ジュビナ(Juvinas)は、アパタイトのアイソクロン年代は45.169億年前とメリライトという鉱物のアイソクロン年代は41.503億年前でした。キャメルドンガ(CamelDonga)は45.7~43.7億年前付近ですが値はばらつきますが、44.914億年前や、そこからはずれたものからは43.72億年前がえられました。スタナーン(Stannern)は、41.430億年前の年代がありますが、44~41.5億年前のいくつもの年代があり、もしかすると、この期間中に複数の熱変成イベントがあった記録かもしれません。

 角礫化していない玄武岩ユークリットでは、アグルト(Agoult)のアイソクロン年代は、45.248億年前と40.5248億年前の年代もえられました。イビティラ(Ibitira)は、45.52億年前でした。

 角礫化した隕石は、これまで天体形成の初期の衝突合体の時期に、激しい衝突(爆撃期)に変形して形成されたと考えられていました。年代はその痕跡を示している可能性があります。一方、角礫化していない隕石は、火成活動など母天体の形成や形成後の天体の大規模な活動の記録を残している可能性があります。

 これらの年代から、母天体である小惑星ベスタの形成初期の履歴が復元されていきます。論文では、これらの結果に加えて、同じ隕石の別の鉱物なので年代、母天体由来の隕石の年代値も利用して議論しています。その話は、少し複雑で長くなりますので、次回としましょう。


・後期の遠隔授業・

わが大学では先週の連休明けから

後期の授業がはじまりました。

半分以上の講義は、まだ遠隔授業となっています。

しかし、ゼミナールや資格課程の授業では

対面授業がおこなわれています。

私の担当の授業の半分以上が対面授業となっています。

遠隔授業もいくつかあるので、

その準備に手間取っています。

先日は音声が途中で切れているという

学生からのクレームもあり、慌てて録音し直しました。

原因は不明です。

これからも、何がおこるかわかりませんので、

緊張が強いられます。


・ストーブの季節・

北海道は9月になってから秋めいてきました。

それでも暖かい日もあったのですが、

先週末あたりからかなり涼しくなってきました。

我が家では、週末に、衣替えをしました。

日曜日の午前中は、日が差さないときは

自宅でも足元が冷たく感じてしまいました。

ストーブの調子をみるためにも一度たきました。

しばらく炊いていると、暖かくなりすぎたので消しましたが、

もうストーブの季節になってきました。