2021年5月6日木曜日

1_193 カーニアン多雨事象 5:年代の一致

 今回の報告では、カーニアン多雨事象の時代を正確に決めるために、層状チャート以外で、コノドントと有機炭素同位体層序を用いていました。それはどのような方法でしょうか。


 カーニアン多雨事象の仮説で重要なのは、事象と火山活動の年代が一致するかどうかでした。それをいくつかの方法で決定しています。その方法としては、コノドントと有機炭素同位体層序でした。その概要を紹介しましょう。

 コノドントとは、リン酸塩鉱物からできた1mm程度の歯の形をした化石で、海で堆積した地層からたくさん見つかっていました。最初のころはどんな生物かは不明でしたが、最近では原始的な脊椎動物の化石であることがわかっています。カンブリア紀から三畳紀末まで見つかっていますが、突然姿を消します。

 リン酸塩鉱物は丈夫なので、化石として残りやすくなります。また、コノドントは、時代ごとの形態の変化が大きいことから、示準化石として年代決定に使えました。どんな生物かわからなくても、利用されていました。今でも、その方法は有効です。坂祝のチャート中のコノドントから求めた年代も、カーニアン多雨事象の時期と一致しました。

 もうひとつの有機炭素同位体層序は、聞き慣れない言葉です。有機炭素とは、生物が作り出した有機物を構成している炭素のことです。炭素の同位体組成とは、同位体比(12C/13C)のことです。最後の層序という言葉は、連続した地層のことです。

 層序ごとの同位体比の変化が、世界各地で調べられており、時代ごとに同じパターンを示すことが知られています。そのパターンを年代測定に利用するという方法です。この方法は、化石のない堆積物の年代を決定するために用いられています。坂祝のチャート中の有機炭素同位体層序でも、時期が一致することがわかりました。

 層状チャートのオスニウム同位体組成から海洋にまで及ぶ火山活動があったこと、カーニアン多雨事象の年代が、層状チャートのいくつかの方法での年代が一致したことがわかってきました。以上のことから、大陸の巨大な火山活動が、カーニアン多雨事象の時期に起こったことになります。カーニアン多雨事象の原因は、巨大火山活動による可能性が高くなってきました。

 火成活動の時期に、パンサラッサやテチス海など全地球の海洋へ及ぶ海洋無酸素事変、生物大絶滅、重要な生物種の誕生とも一致していました。


・LIPs・

今回で、このシリースを終わる予定をしていたのですが、

ランゲリア洪水玄武岩について

詳しく紹介していないかったことに気づきました。

ランゲリア洪水玄武岩は、

巨大火成岩岩石区と呼ばれるもので、

英語のLarge igneous provincesを略して

LIPsと表記されことが多いようです。

次回は、このランゲリア洪水玄武岩の意味することを

考えていくことにしましょう。


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