プレートテクトニクスでは、海洋プレートが沈み込んで、マントル対流が起こると考えられています。その実体は複雑なものです。沈み込んだ海洋プレートの行方はマントルにとどまり、やがてマントルの底にたどり着きます。
前回、核とマントルの境界(CMB)にある不思議な層について紹介しました。その層は、D"(Dダブルプライム)と呼ばれています。D"は、薄い領域(厚さ5~50kmほど)で、境界に連続した層となっているわけではありません。領域として、境界部の部分的に、その存在が分散していると考えられていました。
D"は、地震波速度が異常に小さくなっている領域なので、超低速度帯(Ultra Low velocity zones ULVZと略されています)と呼ばれることがあります。実体としては、沈み込んだ海洋プレートだと考えられています。ただし、その履歴は複雑なものになっています。その履歴をみていきましょう。
海溝で沈み込んだ海洋プレートは、マントルに入っていきますが、密度の釣り合うマントル遷移層に滞留します。海洋プレートがマントル内で滞留したものを、メガリスと呼んでいます。メガリスが、マントルにしばらく滞在していると、周辺のマントルの温度が高いため、温まってきます。温度変化のため、メガリス内の結晶が、より高密の構造に変わっていきます。その結果、メガリス全体の密度が、遷移層や下部マント物質より大きくなり、ある時バランスがくずれ、下部マントルの中を落下していきます。メガリスはやがてCMBに達します。
このメガリス、つまり沈み込んだ海洋プレートが、D"だと考えられています。海洋プレートに由来しているため、上部マントル物質に海洋底堆積物や海洋地殻が混在した岩石となっています。高密度になっていたとしても、下部マントルとは、明らかに異なった物質となります。そして、地震波速度は、非常に小さい値をもつことで、超低速度帯として見分けられています。
このD"が、CMBに長期間滞在することで、温まってくると、やがて周りより密度が小さくなってきます。そのため上昇しやすくなります。上昇するD"が、大きなマントルプルームとなります。
現在、アフリカの大地溝帯をつくっているマントルプームと南太平洋のマントルプルームの2つができています。これが、プルームテクトニクスの重要な要素なっています。
ただし、この上下するプルームは地震波で調べていくのですが、南半球のマントル最下部が、実は、まだ詳しく調べられていませんでした。なぜなら、南半球は陸地が少なく、地震波の測定が詳しくできていないためでした。
アラバマ大学のハンセン(Samantha Hansen)とその共同研究者は、その地域を調べて、2023年4月「Science Advances」誌に報告しました。タイトルは、
Globally distributed subducted materials along the Earth's core-mantle boundary: Implications for ultralow velocity zones
(地球のコア-マントルの境界に沿った全地球的に分布する沈み込み物質:超低速帯との関連)
というものです。
その詳細は次回としましょう。
・月末はバタバタと・
今週は、集中講義があったのですが
無事終わりました。
いくつかの校務があり、
査読論文の返却がありその締切があります。
本の最終修正も終えたいと考えています。
完成後、印刷屋さんと調整に入ります。
医者の検診も入っています。
9月上旬に野外調査を再開します。
1週間の長期になりますので、
その間の校務をすべて調整していき、
今週にすますべきことが多くあります。
少々バタバタしています。
・休みの日に・
週末には停電とネットワークの停止、
医者の診療などで、
土曜の午後から月曜日まで
2日半の間、不在となりました。
その間、自宅で日曜大工をする予定をしています。
壊れたブラインドをカーテンに交換して、
エアコンの室外機に木枠をつくり
その上にビニールシートをまいて
冬越としようと考えています。
さてうまくできるでしょうか。