2024年9月5日木曜日

4_187 フォルンフェルスの付加体

 道南瀬棚の海岸には、花崗岩と付加体の堆積岩が接しているところがあります。その露頭は、新しくできた道路の入口にあります。なかなかの見ごたえがある露頭なので、何度が訪れています。


 北海道の南部、瀬棚町には、海岸を辿る道道740号線があります。この地域には、何度も出かけていいます。以前は、いくつかのトンネルはできていたのですが、一部開通していないところがあり、不通の道路で通り抜けることができませんでした。この間、陸側に国道229号線があるので、日常生活には不自由はなかったのかと思います。
 開通前は、南側が太田神社にあるトンネルの入口まで、北側が鵜泊(うどまり)漁港までで、それぞれバリケードがあり、通行止めになっていました。両地は、バリケード付近まで、昔から生活の場がありました。
 大田神社の本殿は、海を遥か上から望む崖の上にあります。そこにたどり着くためには、急傾斜の石段があり、その踏み面も狭く、足を横にしないと登れないほどです。安全のために何本かのロープがあり、それを掴んで登っていくことになります。この大田神社の本殿周辺はジュラ紀の付加体が分布していますが、海岸にある拝殿の周辺は、白亜紀の花崗岩が分布しています。ちょうと付加体と花崗岩の境界にトンネルがあります。
 興味深いのは、北の鵜泊の方でした。こちら側には、漁港に海岸にジュラ紀の付加体が分布しています。激しく褶曲したタービダイト層が、海岸沿いに分布しています。ここの地層は、すぐ南に広がっている白亜紀の花崗岩類の熱によって接触変成作用を受けています。見かけは堆積岩のままなのですが、固くなったホルンフェルスと呼ばれる接触変成岩になっています。
 付加体のよく見える海岸に出るには、漁港の水産物処理場の裏にでなければなりません。許可をもらって見にいくことになります。残念なことに、こんな見事な、地層がでているのですが、海岸には処理場の廃液が流されているために、ひどく汚く臭う状態になっています。しかし、写真には臭いは映りませんので、画像をたくさん撮影しました。
 海岸沿いは、硬い花崗岩が分布する地域で、海岸まで切り立った崖となっています。大田神社と鵜泊の間は、硬い岩石を掘り進めなければならないので、多数のトンネルが掘削しなければなりません。そのため、工事が遅れていました。
 工事中の区間は、2013年に開通しました。開通後、しばらく瀬棚の方には出かけていなかったのですが、コロナ終了後、瀬棚方面から海岸沿いを訪れました。そのとき、やっと開通区間を通ることができました。ただ、当日は吹雪いていたため、調査はできずに、通り抜けるだけでした。日本海からの季節風がひどかったのですが、トンネルが多かったので、安心して通行することができました。
 その後、2度ほどこのルートを通りました。今年の春にも調査をしました。漁港の海岸にあるフォルンフェルスへも再訪しました。この9月中旬にも通る予定です。トンネルが多くて露頭を見れるところは少ないですが、それでも海岸沿いを進めるのはいいですね。

・予約配信・
本エッセイは、予約配信をしています。
月の初めのエッセイは、
地球地学紀行をテーマとしています。
今年で退職ですので、
北海道を中心に野外調査を進めています。
7、8月は暑いので調査は休んでいました。
9月早々に再開をしました。
5泊6日で道東に調査にでています。
移動距離が長いので、
調査の日程が長めのほうが有効です。
以前、道外に長期の調査にでていたのですが、
最近は北海道中心に進めています。

・いろいろと調整を・
長期の調査にですためには、
出かける前には、不在時の時の分も
研究や校務を計画的に進めて
いかなければなりません。
会議や打合せも調整しておきます。
今年度で退職なので
こんな苦労も最後になりそうです。