人新世という時代を、新たに設定するかどうかについて長い間議論されました。紆余曲折があったのですが、審議の結果、否決されました。どのような経緯で審議されたのでしょうか。
そもそも地質時代の区分は、どこで、どのような手続きを経て、決められているのでしょうか。地質学の時代区分なので、国際地質科学連合(IUGS、Commission for the Management and Application of Geoscience Information)という国際的な学会組織があり、そこで決めます。ただし、専門的な議論は、いくつかの下部組織を経て検討されていきます。
まず、新たな時代に関しては、2009年に「人新世作業部会」を設置して、議論を進められていきました。「人新世作業部会」で議論した後、作業部会が属する「第四紀層序小委員会」で投票して、新しい時代にするかどうかを判断します。「第四紀層序小委員会」で60%以上の賛成があれば、次のステップに進みます。地質時代の全体を統括する「国際層序委員会」で投票していきます。そこで60%以上の賛成があれば、最終のステップに進みます。「国際地質科学連合」で審議して承認となります。
人新世については、いろいろ複雑な経緯がありました。当初、2019年に、第四紀層序小委員会で人新世を正式な地質年代とし、20世紀後半に時代境界がおくことが、賛成多数で可決されました。
この決定には、いろいろと問題があったようで、投票前に委員の少なくとも1人が辞任していました。また、投票も内部規定に違反していたようでした。また、正式発表される前に、メディアで報道されたこともあり、組織内の揉め事を反映していたようです。
投票が無効であるという申し立てがあり、再度、議論されることになりました。そして、2024年2月1日から6週間かけて、「第四紀層序小委員会」での議論が進められて、投票がおこなわれました。18人の委員のうち4人が賛成、12人が反対、2人は棄権となり、否決されました。最初の小委員会の段階で否定されました。
その後、否決に対する異議申し立てはありませんでしたので、次のステップには進むことも、再審議もありませんでした。
これで、「人新世」という時代を新たにつくることはできなくなりました。でも、ここまで議論されたことは、無駄だったのでしょうか。次回としましょう。
・野外調査へ・
今週末から、前期最後の野外調査にでます。
大雪山の山岳地帯を通り日高山脈沿いに進みます。
移動距離も長くなります。
5日間の予定しています。
気候もいい時期ですから、
野外調査でも快適な時期です。
なんといって北海道は花の盛の時期です。
目にも楽しい時期です。
・2編の論文・
現在、論文を書いています。
7月締め切りの論文は書き終わり、
11月締め切りの論文の下書きをしています。
6月中に2編目の粗稿まで完成できればと考えています。
これは、9月に出版する予定の本の
一部にもなっています。
本でその内容を使用するつもりなので、
先行して書いています。
本の粗稿もほぼできているのですが
論文の内容を反映していくつもりです。