2024年6月20日木曜日

6_211 人新世 2:人類の特異な記録

 「人新世」という時代区分が提唱されてきました。その理由は、人類の行為が過去の特異な記録として残されてきたこと、後の時代にその記録が検出できることがわかってきたからです。


 人骨も、他の生物と同様に化石として残されています。人類学として研究対象なりますが、他の生物の化石と同じような役割になります。しかし、人類の生活や活動が、地層中の記録として、ある時期から残されていきます。考古学的遺跡などは、その典型となります。道具として使った石器、食べたあとの貝塚、食料保存や調理用の土器、農業や都市の遺構、あるいは資源として利用した鉱山やその残土、加工品など、考古学的記録として残されています。
 天然には存在しない精錬された鉄や加工品、近年ではプラスティックやビニールの合成物など、これらは少量であっても、人類の特徴的な記録として残っています。しかし、地球に対する記録量や影響は微々たるもので、他の生物の生活痕(足跡、巣穴など)などと似たものではないでしょうか。石炭や石油、天然ガス、サンゴの化石の集合の石灰岩などのほうが、地質学的記録としては物量が大きいのではないでしょう。
 文明や産業が進んでくると、農業・酪農や鉱業、都市開発なども大規模になり、地形の改変も著しくなっていきます。科学技術の進歩によって、他の生物にはなし得ない規模の地球への影響を与えるようになってきました。地形の改変では、巨大な火山噴火やプレートテクトニクスのほうが規模は大きくなりますが、人類の科学技術のほうが短時間での改変が激しくなるという特徴があります。
 また、自然界では生態系として多様な生物種が混在して生きているのですが、農業・酪農となると単一種(数種)が大量に広域に繁茂、繁殖していきます。このような選択的種の増加と多様性の欠如も、人類の特徴でしょう。
 人類の特徴的な営みによる記録としては、人類が出現した第四紀(258万年前から現在)や、第四紀を細分した完新世(1万1700年前から現在)として、すでに地質学区分が存在します。それ以外に新たな「人新世」の導入を考えられたのは、そのような人類の特徴的な営みだけでなく、異質で特異な影響として地球に与えているためです。
 分析技術が進んでいるので、いろいろな現象の記録が読み取られます。近年では二酸化炭素の増加が記録されてきていますが、地質時代にはもっと高かった時代もあります。ですから量については特異性は大きくありません。しかし、その増加が急激であることが問題となっています。
 特異性の記録として、米ソの冷戦において核爆弾の実験が多数なされたことに由来するものがあります。炭素同位体組成による年代測定は、大気中に一定の値を持っていた炭素同位体組成を基準にして進められてきました。ところが、大気中で多数の爆発実験がなされたことで、核爆弾由来の放射性核種が加わったことで、測定値に影響ができてきました。その変化のピークは1964年になります。実験が少なくなってきたので、影響は少なくなってきました。炭素同位体の年代で「〇〇年前」とは、1950年を基準にするようになりました。
 二酸化炭素の増加や同位体組成の変化は、他の生物や人類などの生物種には大きな影響はないでしょう。変化が、人類のためだけの科学技術の使用や、人を殺傷し社会や生活を破壊するための核爆弾という武器に由来することが問題ではないでしょうか。さらに、変化が、他の種が適応できないほどの短期間に起こることも問題です。
 オゾンホールの研究でノーベル賞を受賞したクルッツェン(Paul Jozef Crutzen)が、2000年に「人新世」という新しい時代区分を提案しました。人類の特異な行為への自覚を促すためもあったのでしょうが、それ以降、議論が進められてきました。その結果については、次回以降に。

・一気に夏・
北海道では、5月末には涼しい日があり
ストーブを焚くことがありました。
6月はじめまで涼しいが日が続きました。
ところが、先週から一転、
一気に暑くなってきました。
着るもの夏物、窓も全開する日が
突然、訪れました。
YOSAKOIも北海道神宮祭も終わり、
一気に夏めてきました。
前期の講義も3分の2が終わり終盤に入っていきます。
今年で退職なので、すべての講義が、
これで最後だと思いながら進めています。

・風邪で野外調査・
先々週末から先週頭までは
野外調査にでていたのですが
体調を崩していました。
風邪をひいた状態でしたが、
コロナやインフルエンザではなく
今はやっている風邪だそうで
医者で薬をいただき、呑んで調査していました。
咳が時々激しくでるのですが、
体調自体は大丈夫だったので
調査を継続しました。
現在も少し咳が残っていますが
体調は戻りました。