2024年7月11日木曜日

6_213 人新世 4:時代と場所

 人新世を議論していく過程で、どこかに境界を示す時代と場を決めなければなりません。そこには、人の営みの痕跡が残されている必要があります。そのような実証できるかどうかが、重要な視点になります。


 人為的な環境の改変が起こった人新世として、時代と場所を決めていく必要があります。時代を決めないと、その時代がでている地層の場所が決められません。逆に場所を決めることで、時代を決定することも可能です。最終的には両方を決める必要があります。
 現在の地質年代区分の「更新世」の最後は「メガラヤン期 Meghalayan」(4250年前から現在)になっています。人新世を設定するためには、メガラヤン期を、2つに分けることになります。つまり、メガラヤン期のどこかに時代境界を設けることになります。
 いろいろな時代が人新世の始まりとする主張もありました。例えば、現在も大気中の二酸化炭素濃度の増加は続いていますが、18世紀後半の産業革命のころから増えはじめています。人新世の提唱者のクルッツェンは、この時期を境界と提唱しています。
 あるいは、核爆弾による放射性炭素の濃度の1964年のピーク、二酸化炭素濃度が低い濃度を記録した1610年のピーク(オービス・スパイクと呼ばれています)、金属製錬に由来する鉛が地層に残されている紀元前1000年~0年ころ、農業で大気中のメタン濃度が上昇した紀元前3000年ころ、なども候補となっていました。
 一方、境界をどの地層を代表的なものとするのかも問題となっていました。上下の時代の地層との境界がはっきりと見られ、そして境界として、客観的なデータを示せるところが必要になります。時代境界をまたいだ地層が出ているところは、模式地(GSSP 国際境界模式層断面とポイント)として指定されることになります。その地には、「ゴールデン・スパイク」が打ち込まれます。
 人新世の議論の過程で、GSSPとして、12の候補地が名乗り出てきました。その中には、日本の別府湾もありましたが、2023年7月には、カナダのオンタリオ州のクロフォード湖の湖底堆積物が選ばれました。
 クロフォード湖は、狭い(2.4ヘクタール)で24メートルの堆積物をもっています。ここの堆積物は、特徴的で、堆積物を撹拌する生物も少なく、毎年夏に一層の堆積物がたまるという特異な「年縞」となっています。毎年の記録を正確に残している地層となります。
 クロフォードの湖底堆積物には、いくつか人類の痕跡が残っています。フライアッシュと呼ばれる球状炭化粒子(spherical carbonaceous particles: SCPs)があります。フラッシュアッシュは、ボイラを燃やしたとき、シリカとアルミの融けたガラスの微粒子です。近年では集塵機で集められているので、あまりでなくなっていますが、昔はたくさん排出していました。また、1940年代後半以降、核爆弾によるプルトニウムが増ていき、1950年代から急激な増加も記録しています。1950年代には気候変動も起こっていることも記録されています。そのような変動は、「グレートアクセラレーション」と呼ばれています。
 模式地としては、クロフォード湖の湖底堆積物が設定までされました。しかし、すでに述べたように、紆余曲折を経ましたが、否決されてきました。これまでの議論の意義は、次回としましょう。

・風邪・
先週末から、風邪を引いています。
6月初旬にひいたの同じような症状です。
会話をしだすと、咳がでやすくなります。
前回の風邪が治ったあとから
咳がなかなか止まらなったのですが、
またぶり返したようです。
同じ症状で進んでいるのですが
不思議な気がします。
前回の風邪が治って、
免疫ができているはずなので、
対処できてないのでしょうか。

・個人経営の講義・
2日ほど休んで復帰することになりました。
無理はできませんが、
講義の代替は補講となります。
前回も休講したため、その補講が学期末にあります。
今回も補講にできません。
少々無理をしてでも、
講義は実施するしかありません。
大学教員の講義の実施形態は
まるで個人経営の業態ようで
代替がしにくいものです。