2020年10月8日木曜日

1_188 初期重爆撃期 5:隕石から地球へ

 HED隕石の母天体ベスタは小惑星帯にあります。HED隕石からベスタの記録が、そこから太陽系の形成初期の環境が復元できます。その記録は、地球形成初期の環境とも関連してくることがわかってきました。


 今回紹介している報告では、5つの隕石以外に、同じ隕石内の別の鉱物での年代値、あるいはベスタ由来の別の隕石の年代値も利用して議論しています。隕石の状態や鉱物の種類によって、これらの年代値の持つ意味が異なってくることは紹介しましたがそこから母天体である小惑星ベスタの形成初期の履歴が復元されていきます。

 もっとも古いのは、角礫化していない隕石や角礫化したものでも頑丈な鉱物(ジルコンなど)から得れた45億年前より以前のもの(44.9から45.5億年前)で、これは母天体で最初にあったマグマの活動になります。玄武岩ユークリットは火成作用でできたことも前に紹介しました。他の論文によって、角礫化されていない他の隕石(NWA 6594)のアパタイトからも、45.03億万年前の年代がえられています。火成作用の条件として、最大圧力は50~60GPaで、温度は1160~1200℃と推定する報告もあります。

 角礫化した隕石からは、44~41.5億万年前の範囲の年代があり、最初のマグマの活動より新しい時期です。この報告の隕石の値は、41.5億万年前より新しい時代のものと、それより明らかに古い年代もあります。これらの隕石でも、後の衝突事件をAr年代を調べると、40億前年より新しい時代(37.5億年前)がえられています。この時代に、ベスタに大量の隕石が衝突したことが分かりました。しかし、このような新しい時代の記録は、これまでの報告を調べても、非常に少なくなっています。

 このような年代値は、角礫化した隕石ブレシア(アパタイトとメリライト)からも42~41億年前の年代が、ベレバ(アパタイト)でも42億年前のものが見つかっています。この時期が、小惑星での後期爆撃のはじまりと解釈されています。ところが、今回の報告も含めて、40億年前よりより古い年代(44~41.5億年前)が多数えられたことになります。

 これまで太陽系では隕石の衝突事件(爆撃、あるいは重爆撃と呼ばれています)で、後期爆撃のピーク年代は39億年前頃だと推測されていました。約39億年前より以前にも、隕石が月や小惑星に衝突した「初期爆撃」があったという仮説がありました。

 42億年前(41億5000万年前)より古い年代は、ベスタではこれまで知られていない年代でしたが、今回の報告で、「初期爆撃期」の年代があったことが明らかになりました。後期重爆撃に相当する年代は、リン酸塩ではえられていません。

 これまで、太陽系の惑星内では、後期爆撃期の影響を激しく受けたと考えらていました。ところが、少なくともベスタでは、後期爆撃期の衝突より前期爆撃期のほうが激しかったことになります。

 では、このベスタからわかってきたこと(初期爆撃が激しかったが、後期爆撃はそうでもなった)は、太陽系全体で起こっていたと考えられます。地球において、約39億年前という時代は、海洋が形成され、その直後には生命が誕生していたかもしれません。その後、生命は進化を続けています。つまり、地球の表層環境は、後期爆撃の影響はあまり受けず、穏やかで安定していたと推定でき、ベスタの事実は地球の初期進化において重要な意味を持っています。

 今回の報告は、太陽系において、初期爆撃期が重大な事件となり、後期爆撃期の影響はあまりなかったということがいえそうです。地球の歴史から推定された太陽系惑星空間の環境が、地球外の隕石からも支持されたことになります。これが、論文の重要な結論ではないでしょうか。


・隕石の所有・

隕石は、だれでもが目にしたことがあるでしょう。

主には博物館などの展示でしょうか。

隕石を所有することもできます。

博物館のショップや鉱物や化石を売っている店では

隕石も販売していることがあります。

博物館も隕石を扱っている業者から購入しています。

もちろん、ありふれた隕石は安価で

珍しいものは高価になります。

でも、太陽系の初期や地球外でできた石を

だれでも簡単に手にすることができます。

私も研究のためでなく、3種類の隕石を購入して、

机の引き出しに入れています。

当然、隕石の種類を代表するものです。


・ストーブ・

10月になり、北海道は涼しくなってきました。

大学の研究室では、9月の下旬にはまだ窓を開けて

空気を入れ替えていたのですが、

最近では、窓を開けることなく、

足元に置く電気ストーブを出して使いはじめました。

少しつけると暖かくなるのですぐに切りますが。

夏と冬の切り替わりの季節になりました。