2024年1月25日木曜日

1_208 テクタイト 2:クレータとの対応

 テクタイトには、いろいろな形、色、透明度などのものが見つかります。隕石ごとに、その種類や落ちた場所の特徴が異なっているためです。テクタイトには、隕石の落下位置がわかっていないものもあります。


 隕石が衝突した証拠として、隕石の破片やクレータがあれば、すぐにわかります。他にも、シャッターコーンや衝突石英、そして間接的なものとして高温高圧鉱物、特別な元素や津波堆積物や煤の層なども証拠になることを紹介しました。
 前回残していた、テクタイト(tektite)について紹介していきましょう。隕石が衝突した時、高温高圧状態が発生します。隕石と地球の岩石が溶けて、一緒になった液体が飛び散ります。溶けた液体(マグマ)が、飛んでいるうちに、冷え固まりガラス状になったものが、テクタイトになります。
 テクタイトは、成分によって黒色、緑色、黄色、茶色だったり、透明から不透明なものまで、多様なものがあります。また、液体の粘性と飛翔速度によって、形状も、ボタン型や流線型、滴状など、衝突の条件ごとに異なった見かけのものができます。
 テクタイトは、衝突地点の周辺に飛び散ります。特徴のある見かけをしているので、見つかりやすいものです。一つ見つかれば、同じような見かけをしているので、一気に多数見つかっていきます。
 テクタイトは特徴があるので、それぞれ名前がつけられています。モルダバイト、ベディアサイト、ジョージアアイト、アイボライトなどがあります。
 隕石が衝突した方向に応じて、テクタイトの飛び散る方向も決まってきます。ですから、テクタイトの分布からクレータを探すこともできます。テクタイトと対応するクレータが見つかっているものもあります。モルダバイトは1500万年前に衝突でできたドイツのリース・クレータより飛び散ったものです。ベディアサイトとジョージアアイトは、3400万年前のアメリカのチェサピーク湾クレーターから、アイボライトは100万年前のガーナのボスムツイ湖クレータに由来していることがわかっています。
 テクタイトが形成されるような隕石は、かなり大きなサイズだったはずです。衝突でできたクレータも、大きなものだったはずです。クレータが大きくなるほど、衝突の頻度は稀な現象となります。衝突も古い時代のものになります。
 また、地球は3分の2は海で、大陸でできたクレータしか見つかりません。大陸でできた古い時代の衝突のクレータは、大きくても侵食で消えていくこともあります。
 そのため、テクタイトが見つかっていても、クレータがわからないものもあります。実はもっとも広域に分布するテクタイトで、由来したクレータが見つかっていないものあります。次回としましょう。

・後期終了・
大学の今年度の後期の講義が終わり、
現在定期試験の期間に入っています。
担当の講義、2クラスで試験を実施します。
多数の学生が受けるので
採点も、なかなか大変になります。
定期試験のあとには、大学入試が続きます。
その直後には、後期の成績提出となります。
講義が終わってから、
バタバタと忙しい時期がきます。
いつものことですが。

・帰省・
次男が、現在、帰省しています。
長男は3月に帰省するはずです。
子どもたちも、
それぞれの道を進むようになっていくので、
1家4人がそろうのは、
なかなか難しくなっていきます。
これもが家族の時間変遷でしょう。
最後には、夫婦ふたりの生活が基本となってきます。
それに備えて、生活ルーティンや人生設計を
進めていくしかないでしょうね。

2024年1月18日木曜日

1_207 テクタイト 1:衝突の証拠

 隕石の衝突によって、地球表層では、いろいろな現象や変化が起こります。隕石が見つかる場合もありますが、大きな衝突ほど、隕石は見つかりません。それでも、衝突の証拠は残されています。


 隕石の落下は、そのサイズを問わなければ、常時至る所で起こっています。しかし、大きな隕石ほど衝突でなくなっていったり、古い隕石ほど風化な埋没などで分からなくなっていきます。
 隕石本体が見つかっていなくても、落下した証拠が見つかることがあります。一番わかりやすいものとして、クレータがあります。クレーターが見つかれば、隕石がなくても、衝突があったことがわかります。
 他にも衝突の証拠はあります。テクタイトやシャッターコーン、衝突石英などがあります。他にも、間接的ですが、高温高圧鉱物(コーサイト、スティショバイト、ダイヤモンドなど)、特別な元素(イリジウム)や津波堆積物や煤(すす)の層などもあります。
 聞き慣れないものが、いろいろ出てきましたので、説明していきましょう。テクタイトは、今回のテーマなのであとで説明することにして、それ以外のものについて、紹介しておきましょう。
 シャッターコーン(shatter cone)とは、隕石が衝突した時、周辺の岩石を衝撃波が通り抜けて、その模様が残された岩石のことです。溝は、円錐状の細いスジになっています。衝突の中心から放射状にできます。シャッターコーンのスジから、衝突の位置が推定できます。どのような岩石でも衝撃波は通り抜けますが、細粒で緻密な岩石に残されています。大規模な核爆発の際にも、形成されることがわかっています。
 衝突石英とは、もともとあった岩石中の石英が、衝撃による圧力で結晶構造が変形したものです。特殊な顕微鏡(偏光顕微鏡)てみると、特異な縞模様となって現れます。
 高温高圧鉱物とは、衝突時に瞬間的ですが高温高圧条件が生まれ、その時変成作用が起こります。他の変成作用と比べても、異なっているので、衝突変成作用とも呼ばれます。大きなクレータの内部などで、石英の高温高圧鉱物のコーサイト(1960年にアメリカのバリンジャー・クレーターから発見)やスティショバイト(1962年に同じくバリンジャー・クレータから発見)、石墨の高温高圧鉱物のダイヤモンド(1972年にロシアのポピガイ・クレーターから発見)などができています。
 特別な元素として、イリジウム(Ir)が有名です。白亜紀の終わりに恐竜などの大絶滅が隕石によるものだと知られれています。隕石の衝突の証拠になったのが、イリジウムでした。地球表層には稀な元素ですが、隕石には多く含まれていることから、衝突の証拠となった元素です。
 津波堆積物や煤の層は、隕石の衝突によって起こった巨大津波や大規模火災によって形成されたものが、地層となるほどの量あったことになります。だたし、津波も火災も他でも起こる現象なので、他の証拠がないと隕石衝突と結びつけるのは困難です。
 さて、テクタイトですが、少々長くなってきたので、次回としましょう。

・共通テスト・
多くの大学で実施されていた
大学共通テストは無事終わりました。
監督する側としては一安心です。
一般入試を受ける受験生は、
これからが本番となります。
我が大学も、2月に入試があります。
一年で一番寒い時期の入試は
北国では雪や暴風の危険性が常にあります。
公共の乗り物を基準にしていますので
遅延や運休があると、
配慮しなければなりません。
コロナ罹患や今回の能登地震への対応と同じように
代替の試験準備しておかなければなりません。
なかなか大変ですが、配慮すべき事態なので
致し方がありません。
試験時期が、冬場でなければ、
トラブルは少なくなるのでしょうが。
夏の新学期制度は、すべての教育機関で
進まなければならないので
なかなか難しいでしょうね。

・大学入試・
一般入試までの期間に、
大学での後期の講義が終わります。
その後、定期試験も終わっています。
そして、大学も受験生も
いよいよ入試態勢へとなっていきます。
受験生は、合格すると一過性のイベントになりますが、
大学では、毎年の年中行事になります。
大変ですが、重要な行事なので、
かなり前から準備をしていきます。

2024年1月11日木曜日

2_218 生命誕生の条件 13:多数の試行錯誤で

 いよいよ、長かった本シリーズも最後となりました。今回は2つ目の疑問への解決案を考えていきましょう。冥王代だから、ありえる考え方となっています。そんな解決策に納得できるでしょうか。


 生命誕生の条件における疑問の2つ目です。生命の誕生にかけられる時間が短すぎる点です。これまで述べてきたシリーズの復習にもなります。
 水や大気が形成され、ハビタブルトリニティが整うのは、後期重爆撃が落ち着く42億年前だと考えられます。また、41億年前には生命の痕跡(化学化石)が見つかっています。これらがの年代が正しければ、1、2億年ほどの期間で、生命が誕生することになります。条件が整えば、短期間に生命が誕生していくような時間に思えます。
 これまで述べてきたように、生命に必要な化合物を合成するための条件がわかってきました。その条件は多様で、プロセスも複雑なことがわかってきました。化合物の合成には、非常に多く環境や条件で、多数の試行錯誤が必要だったはずです。その試行錯誤を、長くても2億年ほどの期間で進めていかなければなりません。
 プロセスの複雑さを考えると、短期間に生命合成にたどり着くには、非常に困難に見えます。克服するためには、非常に多くの試行を繰り返す必要があるはずです。生命誕生においては、多数の環境で多様な条件があり、そこに多数の試行がなされなければなりません。多数の環境や条件は、どのようにしてできたのでしょうか。
 天然の原子炉説が、合成場として有効だと紹介していきました。天然の原子炉では、放射性元素の235Uが使われています。235Uは超新星爆発で形成された元素で、太陽系にもともとあった元素で、その後は崩壊していきます。半減期が7億年なので、冥王代には現在よりもっと多く(30倍以上)あったはずです。
 そして、ウランは固相に入りにくい元素なので、マグマオーシャンができて、固化する時に表層の大陸地殻に集まる元素です。また、ウラン鉱物は隕石からも供給されます。そのため、冥王代の表層にはウランが多くあったはずです。
 後期重爆撃で揮発成分が供給され、海ができ、大気、大地で水が循環しだすと、水に溶けやすいウランが移動し、地層中への濃集が起こり、天然の原子炉ができる条件が整います。冥王代には、大陸地殻の地下に多数の原子炉ができたと考えれます。
 原子炉で、多様な化合物が合成されます。地表では、大きな大陸はまだ少なく、多数の列島のサイズの陸地だったと考えられ、火山活動も活発な多様な環境ができていました。そこに間欠泉から吹き出された化学合成された多様な分子を含む溶液が流れ出します。多様な環境に溶液がもたされ、新たに化合物ができ、付け加わっていきます。その一部は、地下水となって、再度、別の原子炉に入ってきます。そんか繰り返しが、陸地周辺で繰り返されます。
 冥王代固有の多数の原子炉と、地表の多様な環境で、化合物の合成と循環が継続され、多数の試行錯誤が、同時並行してなされます。その結果、1、2億年ほどの短期間で、最初の生命が誕生したと考えられます。
 長いシリーズで、生命合成に関する新しい考え方を導入しながら、生命誕の条件を見てきました。天然の原子炉という少々奇異なシステムを想定した仮説を紹介しました。近年の多くの成果が盛り込まれた仮説です。今後も検証、修正作業が続いていくでしょう。

・新しい仮説の評価・
最後にこの仮説の感想を述べておきましょう。
天然の原子炉と間欠泉の仮説をみたときは、
あまりにも荒唐無稽に思えました。
20億年前の天然の原子炉であるオクロの存在は
以前から知っていました。
現在には存在しない天然の原子炉を冥王代に想定して
仮説が組み立てられています。
本当に妥当だろうかという疑問も持ちました。
新しい科学的仮説ですから、
これまでの問題点や課題を克服して
なおかつ利点をもったものになっています。
心理的に受け入れがたくとも
理性的に科学的に判断していくべきでしょう。
この仮説に関する論文を
いくつも精読していくと、
だんだんと納得できるようになってきました。
今後、この仮説の問題点を議論し、
それが仮説内で解決できるかどうかを
繰り返していくことになります。
このような議論を重ねていくことが、
もっとも科学的姿勢でしょう。

・充実した冬休み・
今年の大学の冬期休業の期間は、
月曜日の8日が祝日になっているので、
通常の正月休みより長くなっていました。
9日から講義が再開しました。
正月の三ヶ日は休みましたが、
年末も大晦日まで、正月も4日から、
いつものように大学にでていました。
その間、大学は静かなので、研究がはかどりました。
おかげで、論文の粗稿が、なんとか完成しました。
あとは推敲を重ねていくだけです。

2024年1月4日木曜日

2_217 生命誕生の条件 12:構造侵食

 明けましておめでとうございます。正月早々ですが、昨年まで連載していた、途中であったシリーズ「生命誕生の条件」を続けていきましょう。長くなっているのですが、あと2回で終わる予定です。


 「生命誕生の条件」のシリーズで、生命合成のためには、天然の原子炉と間欠泉というモデルが、現在有力だと紹介してきました。しかし、そこには大きな疑問も2つありました。その1つ目の疑問が、冥王代の年代の砕屑性ジルコンは残っているのに、なぜ岩石が残っていないのか、というものでした。
 鉱物が存在しているということは、冥王代にはマグマができ火成作用が起こって固まり、岩石になった過程があったことになります。間接的ですが、地殻があったことになります。ところが、40億年前より古い岩石は見つかっていません。証拠のない時代「冥王代」との定義通りの時代となります。
 原因のひとつには、古い証拠ほど残りにくくなるという「時間の淘汰」があります。砕屑粒子は残っているのが岩石がないのは、なんらかの作用や原因があったのではないかと考えられます。
 ふたつの要因が考えられています。ひとつは後期重爆撃で、もうひとつが構造侵食です。
 後期重爆撃は、地球に揮発成分をもたらす現象でした。それ以前の地球は、揮発成分がない状態で、硬い地殻が、厚く覆った状態でした(スタグナントリッドテクトニクス stagnant lid tectonics と呼ばれています)。プレートテクトニクスは機能せず、大きな変動はなく、火山が噴出するだけの状態だったと考えられます。
 しかし、43.7~42.0億年前にかけて、大量の隕石の爆撃が起こります。小惑星帯や木星のあたりの軌道から、小天体や隕石が大量に飛んできて、地球に衝突します。厚い地殻が破壊され、揮発成分がマントルへ追加されることで、地球に大きな変化が起こります。
 後期重爆撃で多数のクレータができ、地球の岩石は破壊され飛び散り、時には岩石を溶かしてマグマができます。激しい衝突で、地球の岩石が大半が破壊されたと考えられます。月では、表層はレゴリスと呼ばれる、破砕された礫や砂のようなもので覆われています。レゴリスは、重爆撃で形成されたものがあります。隕石が地球の公転軌道の外側から来ても、地球は自転しているので、表層の岩石が、万遍なく破壊されていきます。表層はレゴリスで覆われ、岩石は破壊され、表面からはなくなっていた状態だと考えらます。ですから、海や大気だできても、堆積作用で移動するのは砕屑性の礫や砂だったのでしょう。
 衝突で揮発成分がマントルにも加わります。するとマントルの流動性が大きくなって、マントル対流が起こります。流動性の増加とともに、対流は大きくなり、やがて破壊された地表付近まで達します。プレートテクトニクスがはじまり、表層でプレート運動が起こります。
 海洋プレートが形成され、沈み込みもはじまります。この時、構造侵食として、地表にあった冥王代の地殻の岩石の大半が、マントルに持ち込まれていきます。その結果、冥王代の岩石の痕跡がなくなったと考えられます。
 残っていたとしても、レゴリスとして砕屑物だったのでしょう。これが、冥王代の岩石が残っておらず、砕屑性ジルコンは残っている理由ではないかと考えられます。

・新鮮な気持ちの正月・
COVID-19の感染対応も消えて
久しぶりに普通の正月を
迎えることができました。
初詣も、正月の買い物も、
マスクなしに、出かけることができます。
4年前には当たり前であったことが
3年間、当たり前ではなくなりました。
そして以前の日常がもってきました。
新鮮な気持ちで正月を迎えられます。

・大学の日常・
大学の1月の講義の再開は、
土日祝日の関係で9日(火)からです。
13、14日は大学入学共通テスト
この日には、行事もあり、飲み会もあり、
忙しい一日になります。
こような忙しさも、大学に日常が
戻ってきた証拠でしょう。
大変ですが、味わっていきましょう。

2023年12月28日木曜日

4_181 自身の思索を巡る旅

 COIVD-19によって、数年間、野外調査が自由にできないときがありました。自粛で調査自体を、自身の地質学、地質哲学への思索を考えさせれることになりました。自粛期間、自身の内面、思索を巡る旅をしていたようです。


 今年の5月には、COVID-19も通常の5類感染症に移行しました。COVID-19がなくなったわけではなく、インフルエンザのように通常の感染症となったわけです。自粛で旅行もできなかったり、旅行するものはばかられたりと、のびのびとはできない旅となっていました。しかし、5類へに移行で、自由に各地を調査で巡ることができるようになりました。これは今年になっての大きな変化となりました。
 今年は、サバティカルで4月から半年間、愛媛県西予市城川に滞在しました。サバティカルと5類への移行が重なったことは、大きなメリットになりました。サバティカルの間、四国全域で宿泊を伴った野外調査や、西予周辺の日帰りの調査もたくさんできました。また、サバティカル終了後も、北海道での宿泊を伴う野外調査もしました。なにより、自由で旅できる喜びが味わえました。
 観光地では、人が多くて、のんびりと巡れない時もありましたが、観光業にとっては喜ばしい状況でしょう。多くの観光客が来ることで、店や旅館、ホテルの設備やサービス全般も充実してきます。これは、出歩く人にとってもメリットになっています。コロナ前の状態よりもっと活気が戻ったようです。
 自粛を経て、自由にどこでも、野外調査にでかけられるという、当たり前にできていたことが、如何に大切なことだったのかを感じることができました。ただ以前の状態に、何も変わらず戻っただけなのでしょうか。何か変わったことはないのでしょうか。少なくとも、自身には大きな違いが生まれていました。
 自粛前にも、地質哲学へと向かっていくとき、野外調査を重視していたのですが、哲学的思索と野外調査の関係について、その結びつきについての視座が定まっていませんでした。自粛中、野外調査に行けない時期、野外調査あるいは露頭や地質学に関する、より深い思索へと入っていきました。
 自身の著書のタイトルを見ても、その変遷を見ることができます。自粛前は、地質学に立脚したタイトルになっていました。内容には哲学的思索を進めていた部分もあったのですが、例えば2018年の「地球物質の多様性形成機構と火成作用の役割」や2019年の「地層の時間記録 規則性のある時間記録の解読」などとなっており、本のタイトルには哲学的思索の色合いは出ていませんでした。
 自粛になってから、思索が深まっていきました。2020年には「弧状シンギュラリティ: 島弧と沈み込み帯の地質学的重要性」として、哲学的思索の部分がタイトルに現れてきました。2021年には「地質哲学方法序説 地質哲学のための Organon を用いた普遍的テクトニクスへの Instauration」として、デカルトとベーコンの著書のタイトルから引用したものを用いていました。哲学的思索への傾倒が深まりました。
 また、地質学や科学教育の実践でも変化が現れてきました。2022年には「地質学的野外調査の解体: 地質学への新しい方法論の導入」として、これまで自身で実施してきた地質学での野外調査で導入し実践してきたいろいろな手法を「方法論」として総括しました。タイトルでは、キースやドーキンスの著作を借りています。2023年には「科学教育の拡張された方法論: 試行錯誤の実践の先へ」として自身の科学教育の「方法論」を総括してきました。これもドーキンスの拡張された表現型という考えを借りました。これら2冊では、自身の長年の各種の研究方法や試行を新しい「方法論」として、哲学的にどう捉えていくかを、実施したものになりました。
 かつては、これまでの地質学で通常に用いたいた手法(野外調査、科学教育)を深く考えずに、そのまま適用していました。しかし、自粛によって、いままで当たり前で進めてきたことを、立ち止まって再考、沈考することができました。これまで通り進めていいもの、もう一度深く考えるべきもの、考え直すべきもの、そんな機会になりました。
 本来であれば、これらの総括や方法論をもとづいて、次なる、そして新たなる地質哲学や方法論へと進んでいくべきでしょう。しかし、来年度一杯で現職が定年となります。次年度1年で、これまでの地質学と地質哲学の総括をしていきたいと考えています。
 それは、過去の研究テーマのやり直しにもなります。20数年前に追い求めた地球の起源と生命の起源を含む「冥王代」に関する地質学的のテーマがあり、一応の決着を見ていました。そのテーマに関して、ここ数年の大きな進展、特にブレークスルーがいくつかありました。それをもとに、20年目にして、再度総括のなり直しをする論文を、ここ数年書き続けています。
 それらをまとめて、さいごの著書にするつもりです。さいごの著書は、自身の「はじまり」をテーマにします。そんな「はじまり」が、さいごでもいいのではないでしょうか。深く考えた末の原点回帰です。
 少々長くなりましたが、ここ数年のCOVID-19から今年のサバティカルを経て、自身の思索を巡る旅の話でした。

・自身の変化・
自粛後、景観や露頭が少々違って見るように感じます。
自粛が空けた結果、観光地での人の多さや混雑、
あるいは訪れる人々の影響などは、
表面的なこと、ささやかなことでしょう。
何かもっと大切なことが起こったよう感じます。
景観や露頭は自然物なので、
COVID-19の前後で変わることはありません。
それを見ている自身の気持ちや見方が
変わってきたためでしょうか。
自身が感じていることに
敏感になっていくべきでしょう。
身近なところに、大切なことがあるのかもしれません。

・思索の旅・
退職後も、研究は進めたいと考えています。
地質学の科学的成果を上げるような手法は
この大学来たときからとっていません。
地質学に関する哲学的思索を進めること、
その思索のインスピレーションを野外からえること、
この手法であれば、野外を巡り、思索ができれば
どこに出かけても、いつまでも、続けられるはずです。
そんな思索の旅をこれからも続けたいと思っています。

2023年12月21日木曜日

2_216 生命誕生の条件 11:2つの疑問

 今回のシリーズは、これまでにない長いものとなっています。現在、取り組んでいる研究論文の主要テーマになっているので、ついつい力が入っているようです。


 このシリーズも長くなったので、これまで述べてきた、地球形成や生命誕生の条件もおさらいしておきましょう。そして地球形成と生命誕生で、それぞれで大きな疑問があるので、それもまとめておきましょう。
 地球は、揮発成分を持たない材料(Eコンドライト)から形成されました。地球ができたときは、ドライで裸の状態でした。また、小天体の集積して合体して、原始地球になっていきます。衝突のエネルギーで、表層の岩石が溶けて、マグマオーシャンができました。マグマオーシャンが、地球最初の海といえるかもしれません。小天体の衝突がおさまっていくると、エネルギー供給も終わり、地球の表層が冷えてきて最初の地殻ができます。
 45.2 億~ 44.4 億年前には、大きな原始惑星が地球に衝突するジャイアント・インパクトが起こり、その結果、月が形成されました。いったん形成された表層の岩石は、地殻からマントル(もしくは地球の核)までが、すべて破壊され、リセットされます。月の形成は短期間に終わり、再度地球にも月にもマグマオーシャンができます。地球表層が冷めていき、また地殻ができます。この時にできる地殻は、月と同じような斜長岩や玄武岩からなる岩石だったと考えられます。
 ジャイアント・インパクトのように大きな天体ではないですが、小天体が多数衝突する後期重爆撃が、43.7~42.0億年前にかけて起こります。この時また地殻は破壊されていくのですが、かろうじて地殻の破片は砕屑性ジルコンとして残されています。しかし、岩石が残されていないことから、激し爆撃で岩石が鉱物までバラバラにされてしまったようです。
 後期重爆撃をした天体は、小惑星帯や外側かわ来たため、水や揮発成分が多く含んでいました。その結果、地球に水と大気がもたらされました。そして、ハビタブルトリニティが整いました。やっと生物の合成過程がスタートし、1億年ほどの短期間で生物が誕生します。
 地球のはじまりは、激しい事件が、何度も起こったことがわかってきました。そんな激しさをくぐり抜けて、ジルコンの破片が残りました。穏やかな環境になったら、すぐに生物の合成がはじまります。このような生命誕生のシナリオは、条件さえ整えは必然的に起こるような現象に思えます。ここに大きな疑問が2つ生じます。
 最初の疑問は、地球初期の2度めの地殻(月の形成後)のうち、砕屑性ジルコンが残っているのに、なぜ岩石が残っていないのか。これが不思議です。砕屑性ですから、後にできた堆積岩(35億年前)の中の鉱物粒子として入っています。その堆積岩ができた時代には、もととのなるジルコンを含んだ岩石があったはずです。あるいは、岩石はすでになくなっていたのですが、砕屑性ジルコンを多く含んだ別の堆積岩があり、その堆積岩から再度、砕屑され、運搬されて新しい堆積岩に入り込んだのかもしれません。しかしこの由来は、可能性は低くなりそうです。
 次に、水や大気が存在しハビタブルトリニティが整わないと、化学進化がスタートしません。そうなると、後期重爆撃が落ち着く42億年前に、やっと環境が整います。ところが、41億年前には生命の痕跡が見つかっています。条件が整えば、短期間にすぐに生命が誕生するということになりそうです。化学合成の条件の多様さ、プロセスの複雑さを考えると、非常に多くの試行錯誤が必要だったはずです。なのに想定されている期間は、あまりに短いものです。
 この2つの疑問を、どう解決すればいいのでしょうか。

・寒波・
先週末から、毎日のように所用があり
夕方に出歩いています。
ちょうど寒波がきていました。
所用で何度も、寒い外と温かい中を
出たり入ったりするので
体が変調をきたしています。
少々、風邪気味になってきました。
年末年始は無理をしないようにしましょう。

・年末まで・
今週は非常に私用や校務があり
忙しい日々を過ごしています。
しかし、来週で、大学の講義が終わります。
週初めには、担当の講義がない日なので
今週で実質的な講義は終わりです。
しかし、学生が残った作業を進めに来ます。
まあ、月末まで毎日大学には来ていますので
対応は問題ないのですが。

2023年12月14日木曜日

2_215 生命誕生の条件 10:時間的束縛

 生命誕生の条件として、時間的な制限もありそうです。後期重爆撃の終わりから、生命の合成がはじまります。最古の生物の痕跡の時期、もしくはその少し前には生命が誕生していることになります。その期間はあまりに短いです。


 大気も海洋もない地球に、水や揮発成分をもたらしたのは、43.7~42.0億年前の後期重爆撃だと考えられています。42億年前ころに爆撃がおさまると、生物の誕生のためのハビタブルトリニティが整います。その時期から、生命の誕生のための化学合成がスタートすることになるはずです。
 化石の証拠は、どこまで遡れるのでしょうか。
 西オーストラリアのビルバラ地域の34億6000万年前以前のチャートから、化石が見つかっています。また、南アフリカの35億年前のオルフェルワクト層のチャートからも化石が報告されています。少なくとも、35億年前には、形がはっきりと地層に化石として残るような生物が存在していたことになります。生命誕生は、35億年前より古い時代となるはずです。
 グリーランドの37億年前より古い地層や38億年前の堆積岩中の黒鉛から、化石ではありませんが、生物の証拠となるような成分が発見されています。カナダのラブラドルの39.5億年前の地層の炭質物からも、生物の化学的痕跡が見つかっています。西オーストラリアのジャックヒルズからは、41億年前の砕屑性ジルコンの中にある鉱物(石墨含有物)から、生物の痕跡があったという可能性が指摘されています。化石のように直接の証拠にはなりませんが、41億年前には生物がいた間接的証拠が見つかったことになります。
 少なくとも35億年前には化石として残るような生物が存在し、41億年前には生物の痕跡がありました。41億年前には生物がいたようです。岩石が残る時代、以前、冥王代に41億年前より前に、生命誕生のプロセスが進んでいたことになります。
 冥王代の42億年前にはハビタブルトリニティが整い、41億年前には生物がいたことになります。1億年ほどの間に、生物合成のプロセスが進んでいくことになります。これらの年代にはいくつかの仮定はありますが、生物合成のために経なければらない複雑な過程を考えると、本当に1億年ほどの期間で、生物誕生まで進めるのでしょうか。

・風呂の修理・
サバティカルで戻ってきてからしばらくは
シャワーを使っていました。
寒くなってきたので、
風呂に入ろうとお湯を入れました。
すると水が激しく漏れていました。
いつもメインテナンスを
頼んでいるところに相談しました。
木の風呂桶なので、水を張ることで木が膨れて
漏れがおさまるかもしれないといわれました。
しかし、漏れがおさまりませんでした。
20年以上使っていた木の風呂が壊れました。
風呂をユニットバスに改修することになりました。

・不便も楽しみに・
木の風呂からユニットバスになります。
気に入っていた木の風呂桶なのですが、
ものには寿命がありますので
しかたがありません。
改修には1週間ほどかかります。
近くに温泉が3箇所あるので、
その間、ローテーションしながら
入っていくことにします。
不便も楽しみにできればいいですね。