2016年9月15日木曜日

1_149 隕石と大気 4:矛盾

 27億年前に大気上層部で反応した隕石の溶融物が見つかりました。そこから推定された大気組成と、今までの知見とは矛盾しているものでした。その矛盾を解くには、特別なモデルを考える必要がありそうです。そのモデルは納得できるものでしょうか。

 地球の大気は、地表付近が一番濃く、上空に行くにしたがって、大気の密度は小さくなります。対流圏(10数kmまで)はなかり大気がありますが、成層圏(10から50km)はかなり少なく、中間圏(50から80km)より上空では大気は千分の1以下になっていきます。
 そんな薄い大気でも、隕石が大気圏に突入すると、大気との摩擦により高温になっていきます。その時、熱によって隕石が融けます。隕石のサイズにより、溶融部分が表面だけの場合と、全体が融けることもあります。いずれにしても、いったん溶けた隕石の部分は、大気と反応しながら再度固まっていきます。
 今回の報告では、現状の大気の状態だと、砂粒ほどの「微小」な鉄隕石は、75から90kmの上空で溶けたと考えています。かなり薄い大気ですが、摩擦で溶けたようです。これは、現在の隕石の観察から推定されています。
 溶けた部分が固まるとき、周りの大気との反応が起こり、反応物に大気の組成を記録しているというのです。溶融物では急激な冷却があったようで、隕石には急冷によってできた樹枝状や羽毛状の組織があります。このような組織は、マグマが海水などで急冷した時によくみられるものであります。急冷は間違いないものです。
 急冷してできた鉱物は、ウスタイト(FeO)と金属を伴った磁鉄鉱(Fe3O4)でした。もともと隕石は、金属鉄からできていたので、このような酸化状態の鉄は、大気との反応でできたことになります。鉱物の酸化状態から考えると、大気の酸素濃度は、現在ものに近かったと推定されます。酸素と一酸化炭素の比率は、一酸化炭素による酸化よりずっと高い状態であったと考えられます。
 一方、海底の堆積物のイオウの化学組成からは、無酸素状態の環境であるデータが出ています。また一般に地表付近の大気も、まだ酸素が少なかったと考えられるので、今回の報告されたデータは、今までの知見と矛盾することになります。
 現在の考えでは、酸素はストロマトライトを形成したシアノバクテリアのような光合成生物が酸素を一気に形成した(24億年前)とされています。その証拠は多数あります。それ以前(27億年前)には、地表付近には酸素はほとんどなかったとはずですが、大気の上層部だけ大量の酸素があったということになります。
 このような矛盾を解決するひとつのモデルとして、太古代には大気の上層と下層の混合が少なかった、と考えれば解決できそうです。このモデルをどう考えるかは、今後の課題です。謎はすぐには解けそうにありません。

・いよいよ講義が・
今年は、北海道には、何度も台風が上陸し
例年とは違った天候でした。
しかし、この1週間ほどで、秋は着実に進んできました。
朝夕は涼しくなってきました。
朝大学に来る時は上着が必要になります。
そろそろ大学の夏休みも終わります。
来週からは授業がはじまります。
また慌ただしい日々がはじまります。

・外壁の塗装・
現在、自宅の周りに足場が組まれています。
外壁の塗装のためです。
10数年に一度の外装工事です。
先日の日曜日に、屋上を見るチャンスなので
その足場をつたって屋上に上がろうと思いました。
今まで自宅の屋上を見たことがありません。
ところが、3階の足場で足がすくみ、上がれませんでした。
屋根までは階段はなく足場をよじ乗る必要があります。
同じ日に2度チャレンジしましたが、だめでした。
でも、足場のあるうちのなんとか
再チャレンジして、屋根の上に出たいのですが、
どうなるでしょうかね。

2016年9月8日木曜日

1_148 隕石と大気 3:27億年前

 隕石と大気、それも過去の大気との関係を調べた報告を紹介します。今回の報告では、27億年前の大気組成を推定したというものです。直接過去の大気組成の測定はできないので、どうしても間接的になりますが、なかなかニュニークな方法です。

 イギリスの科学雑誌「Nature」の5月12日号に、
Ancient micrometeorites suggestive of an oxygen-rich Archaean upper atmosphere
(酸素に富んだ太古代の上部大気を想定させる古い微小隕石)
という表題の論文として、オーストラリアのモナシュ大学のトムキンズと共同研究者たちによって報告されました。
 隕石(宇宙塵)は、オーストラリアのピルバラ地域の27億年前の石灰岩から発見されました。調査した岩石からは、60粒の隕石が見つかりました。隕石の保存状態も良かったようで、落下時の化学組成が残されており、27億年前の情報が読み取ることできました。
 27億年前という時代も、地球の歴史におては重要な意味がありました。というもの、地球に酸素が急激に増えてきたのは、24億年前あたりからで、それ以前は、大気中に酸素はほとんどなく、今とは全く違う大気の組成の時代でした。現在の大気中の酸素と比べると、その量は0.001%以下だったと考えられています。
 そもそも過去の大気組成を、直接分析することは、なかなか困難なことです。残された地層の状況から間接的な情況証拠で示されたり、シミュレーションなどによる推定によるものになっていきます。
 27億年前という時代は、落下した隕石の年代としても最古(これまでの記録より10億年近く遡る)となり、それだけでも価値があります。しかし、報告には、それ以上の意義がありました。隕石から、当時の大気組成を見積もったことです。
 では、どのようにして、過去の隕石から大気組成を見積もることができたのでしょうか。それは、この微小隕石ができる過程に秘密があります。
 もともとは大きな鉄隕石だったものが、地球の大気圏に突入する時、摩擦で溶けて、小さな粒になったというのです。今日と同じような大気の密度であれば、隕石は75から90kmの上空で溶けたと考えられます。溶けた後、冷えて固まった時、大気と反応して、その状態を記録したと考えられるのです。
 その詳細については、次回に。

・野外調査・
和歌山の調査から5日(月)に帰ってきました。
台風の合間の晴れの期間が、調査の日程とピッタリと合いました。
予定していたところは、一通り回ることができました。
非常に幸運でした。
1週間も調査していると、何日かは雨に降られます。
そんな時は、予定通りに、調査は進みません。
重要な場所を見る時は、天気が非常に心配になります。
時には干満の様子も調べていかなければなりません。
干潮でも、海が荒れていたら行けないところもあります。
今回もそんな所があったのですが、
なんとか無事たどり着くことができました。
満足できる調査になりました。

・著書出版・
ライフワークにしている研究のひとつが
この度、成果として実を結びました。
2月から執筆していた著書が、野外調査中に印刷され納品されました。
出勤して、早速、受け取りました。
少部数の印刷ですので、最初は自費出版を考えていたのですが、
公費で賄うことができました。
PDFでも、データを貰う予定ですので、
一般にも配布しようと考えています。
少々、専門的になりますが、
「地質学における分類体系の研究」
というタイトルの本です。
PDFファイルが送られてきたら、アドレスをお知らせします。

2016年9月1日木曜日

1_147 隕石と大気 2:宇宙塵

 隕石の落下は、だれもがどこかであったことを聞いて知っています。映像でみた人も多いでしょう。地球全体とすると、よくある現象に思えます。しかし、地層から見つかる隕石は稀です。この違いは何によるものなのでしょうか。

 隕石がどの程度の頻度で落下しているのかを考えていきましょう。現在の地球での隕石の落下頻度は、かなり多く思えます。もし人の住んでいるところに隕石が落ちてくれば、ニュースになります。ロシアに落ちた隕石は有名ですし、日本にも人家に落ちた隕石が、ニュースになったことは何度かありました。
 ロシアの隕石のように人が住んでいるところに大きな隕石が落ちれば、今では、どこかでだれかが画像や動画を撮影しています。それをメディアが大々的に流がれる時代になりました。そのような状況が、隕石落下の頻度を実際より多く思わせている感があります。
 ひとつの地域に限れば、隕石落下は稀な現象です。しかし、地球全体でみれば、人の住まないところの方が圧倒的に広くなり、比率を考えると、年間にかなりの数の隕石が落ちてきていると推測されます。多分過去も、同程度の頻度で落下していたはずです。
 地球表層全体として考えれば、隕石の落下は稀なことではなさそうです。しかし、地層中から隕石がみつかることは稀なことです。地層中の隕石など聞いたことがある人は、専門家以外にはいないでしょう。現在の地球に落下している隕石の頻度と地層中に見つかる隕石の頻度には、どちらも隕石の落下ですが、どうも違いがありそうです。
 これは少し考えればわかることなのですが、それは私たちがみている地層面積と、現在情報収集できる地表の面積の違いがあるからです。
 地球表層全体として見ると隕石は、毎年多数落ちていると言えるかもしれません。またすでに落ちているものを見つけることもできます。南極のように隕石の集積メカニズムがあるところや、砂漠のように隕石が見つけやすい場所からは、多数の隕石が発見されています。そのため、最近隕石は市場に多数出まわるようになってきました。このようなことから、隕石は珍しいものではあるのですが、個人でも簡単に手にできるほどの存在になってきました。
 またサイズを問わなければ、チリのようなサイズ(宇宙塵と呼ばれる)のものなら、結構多数落ちてきています。人工衛星の観察によれは、年間4万トンも降り注いでいると見積もられています。特に金属製の宇宙塵は比較的簡単に見つけることができます。しかし、宇宙塵は顕微鏡サイズの隕石です。
 一方、地層から見つける場合はそうもいきません。ある地層のある断面を考えてみましょう。現在見えている地層は、風化、侵食作用によって、ある断面が地表に露出しているものです。ですから、隕石が表面に出ている期間は限られています。また、地層の堆積している場(堆積盆といいます)全体の面積で、ある断面に隕石が見つかるかということです。現在の堆積盆に線を引いて、そこを切ってみた時、その断面に隕石が見つかるかどうかです。断面は露頭の長さです。多分そんなに長い断面ではないはずです。なかなか難しいはずです。可能性は、非常に稀なことだと推定できます。ですから地層断面から見つかる隕石は、非常に稀なものといえます。
 ただし、隕石が小さく、宇宙塵のようになれば、見つかる頻度は大きくなっていきそうです。あまりに小さいと今度は引き出せる情報は限られていきます。まあ、それは実際によみとった事例をみていけばいいのでしょう。
 隕石の痕跡は、どの時代まで見つかっているのでしょうか。長々と述べてきましたが、ここまでが今回のシリーズの前置きです。世界最古の微小隕石の発見と、そこから読み取られた報告を紹介するシリーズです。

・森へ行くと・
本エッセイが発行されているいる時は、
私は、和歌山の方で調査をしています。
このエッセイはの発行は予約をしていたものです。
天候が不安なのですが、こればかりはいつものことで
心配してもしょうがありません。
ただいって、そこで臨機応変に、考えていくしかありません。
野外調査にはいくつもの目的を持ってでかけますが、
自然の中に入り気分転換できることも隠れた重要な目的です。
私は、森の中に入りるとホッとします。
先日も短い調査で、森にはいったのですが、
緑の中の林道を車で走っていると
ホッとした気分になり癒やされます。
今回の調査でも。味わえるでしょうか。

・冪乗則・
小さいものは多く、大きいものは少ないという規則性があります。
このような規則は指数関数になっているため
冪乗則(べきじょうそく)と呼ばれています。
隕石の落下の頻度も冪乗則に従っています。
大きな隕石の落下はめったにありません。
小さくなれば頻度は大きくなり、
宇宙塵のようなものになれば
かなり当たり前のことになります。
地震のマグニチュードの頻度、
生物のスケーリング則(アロメトリー)も冪乗則です。
また自然界だけでなく、所得の分布などのように、
人間界にもこのような規則性が当てはまります。
不思議な規則性ですね。

2016年8月25日木曜日

1_146 隕石と大気 1:過去の隕石

 今回から隕石のシリーズになります。古い時代の隕石を見つけて、そこから読み取った情報から、過去の地球の様子を見出そうとするものです。まずは、隕石がどこから、なぜ地球に堕ちてくるのか、からはじめましょう。

 地球は、もともと太陽系に存在していた物質が、凝縮、集合、衝突、合体してできたものです。太陽の形成初期に太陽風が強まる状態になり、その時に気体物質が遠くに吹き払われたと考えられています。固体物質は、吹き飛ばされることなくその軌道に残ります。ただし、ひとつの軌道には大きな惑星があり、その惑星が公転を繰り返していくと、軌道周辺の小さな固体は、引力で吸収されていくか、弾き飛ばされることになります。最終的に、現在の太陽系のように、惑星空間から大きな天体以外は、掃き掃除をしたようにきれいになります。多分、太陽系誕生の数億年のうちに、そのような状態になると考えられます。
 ただし、太陽系の場合、小惑星帯と太陽系の外縁には多数の小天体が存在するゾーンがあります。そこでは多数のさまざまなサイズの天体が、ばらばらの軌道を巡っていて、時々相互作用で軌道が変わることがあります。そして時には弾き飛ばされたものが軌道を変え、太陽の引力に引っ張られて内側に入っていくることがあります。
 そのような天体が、氷でできているものなら彗星(太陽系の外縁)になり、その通ったあとを、地球が横切ると流星群になります。また固体でできているもの(小惑星帯)は、特異小惑星と呼ばれる天体となり、小惑星帯の天体とは区別されるようになります。そのうち、地球の軌道と交差するものは、地球近傍小惑星や地球横断小惑星と呼ばれます。地球の軌道を横切っているとき、たまたま地球がそこにあれば、衝突します。
 天体が十分小さければ、隕石となります。小さな隕石はしょっちゅう落下しています。大きな天体の衝突はめったにありません。例えば10kmを超えるものは、カンブリア紀(5億4100万年前)以降、白亜紀に終わりに一度あっただけです。まあ、1km以下の衝突は何度もあったようですが。
 白亜紀の衝突の場合は、ご存知のように、恐竜などの多くの生物種の絶滅があり、メキシコのユカタン半島にクレーターの存在も明らかになりました。なにより古生物学的証拠として、異変があったことは事前に知られていました。ただし、大絶滅が隕石によるものであることは、1980年代になってからでした。その後、多数の研究者がこの事件に注目して研究をしたので、隕石や衝突の痕跡も多様なものが、地層に残されていることがわかってきました。
 では、もっと古い時代、異変があったかどうかわからない時代に、どこまで隕石の証拠あるのでしょうか。そして見つかった過去の隕石から、何が読み取れるでしょうか。それが今回のシリーズのテーマです。

・台風・
北海道に2つ連続で台風がやってきました。
今週末から月曜日にかけて、台風の上陸の合間に、
台風の近くで調査をしていました。
行きも帰りも大雨の中を移動していました。
幸い調査地では雨が小降りだったり、
一時に晴れ間もありました。
しかし、川は増水し、海は大荒れでした。
今回の調査は天候に恵まれませんでした。

・高湿度の日々・
台風の影響もあるでしょうが、
蒸し暑い日が続きました。
連続して来ているので、
台風一過の爽やかが望めませんでした
ただ夜はなんとか気温が下がるので
高湿度でも耐えれます。
しかし昼間はぐったりしています。
今年の夏は蒸し暑い日がつぎつぎと訪れます。
例年とは少々違っているようです。

2016年8月18日木曜日

5_145 最古の星 4:鉄が決めて

 古い天体を見つけるために、いろいろ工夫がなされています。古い天体を見つけるためには、いくつか手がかり必要です。しかし、一番の問題は年代を決めることです。それが問題です。

 このシリーズのはじめに、最古の星の話題が、今回はふたつあるといいました。前回はひとつ目の報告を紹介して、もともと見つかっていた古いとされてたい星を、観測しなおして計算したら、古い年代になったというものでした。ただし、その誤差は大きものでした。もうひとつは、最も古い天体が見つかったという報告です。これは、イギリスのネイチャー誌に2014年に掲載されものです。
 この星は、SMSS J031300.36-670839.3という標識がつけられているもので、SM0313と略されています。この星の年齢は、約136億年前となりました。宇宙の誕生が138億年前ですから、宇宙の誕生してからたたった2億年程度しかたっていないときに形成された星です。
 宇宙の誕生間もない時期に形成された天体なので、特別な性質をもっているはずです。それは、前回も述べましたが重い元素が少ないというものです。本当に最初の天体は、水素のヘリウムだけから形成されるはずです。これはまだ発見されていない仮説上の星で、前回も紹介した種族IIIとされています。
 種族IIIがあるのなら種族IIも種族Iもあるはずです。種族Iは、私たちの太陽もこれにあたりますが、ごく普通の恒星で、「重い元素」を多く含む天体です。「重い元素」には、ヘリウムより重く鉄よりは軽い「重い元素」という意味と、超新星爆発で形成された金属と呼ばれる元素で、鉄より重い元素が多い「重い元素」の二通りの意味があります。種族Iは、鉄より重い元素が多い「重い元素」を含んでいます。
 種族IIは、IとIIIの中間的な特徴の星になります。重い元素も少し含むのですが、鉄より重い元素はほとんど含まないという星です。ただし、小さな超新星爆発できる鉄より軽い「重い元素」は比較多く含んでいます。また、このタイプの星は、年齢が古いということも特徴となっています。
 古い天体において鉄が重要な元素と考えられます。星が超新星爆発をへて世代交代を繰り返すたびに、鉄の含有量が増えていきます。鉄が少ないほど古い星ということになります。
 さて、SMSS J031300.36-670839.3ことSM0313です。SM0313は、みずへび座にあり、地球からは約6000光年離れている星です。この星を調べると鉄が検出できませんでした。この星には、炭素、マグネシウム、カルシウム、そしてメチリジン(CH)という化合物も検出されました。酸素や窒素は検出されず、鉄も観測装置では検出できないことから、種族IIの星であることがわかります。そしてこれは、古い天体であると推定できます。
 今回調べた装置において、鉄の検出限界は、太陽に含まれる鉄の量のおよそ100万分の1です。この装置で検出できないということは、鉄が太陽の100万分の1以下となります。この量は、今まで見つかっている恒星と比べても、60分の1にも満たない少なさです。そこから年代を推定すると、約136億年前という値を得たわけです。
 でも、天体の年齢の求め方、あるいは精度には、直接求めたもののではなく、いくつかの仮定をおいて求めているため、どうもしっくりこないものがあります。いずれにしても、最古の天体の報告は、精度がまた不確かな部分があるので、宇宙の創生モデルに変更を迫るまでには至っていません。

・スカイマッパー・
今回の発見は、オーストラリアにある
スカイマッパーとよばれる望遠鏡によってなされたものです。
南半球の空を主に調べる装置です。
オーストラリア国立大学の
サイディング・スプリング天文台に設置されています。
スカイマッパーは完全自動化されている装置だそうです。
5年にわたって観測を続けているそうです。
骨の折れる仕事でも、
たんたんと継続しなければならない作業もあります。

・今年のお盆は・
お盆はいかがお過ごしだったでしょうか。
私は、ふだんとかわりなく
いつもの同じような日々を過ごしました。
いや少々、大変でした。
そして、13日には学科の10周年記念式典でした。
卒業生の顔を久しぶりに見ることができました。
懐かしかったです。
この式典は私が主担当だったのですが、
有能な職員が何名も手伝ってくださったので
だいぶ楽でした。
しかし、記念文集は私が編集をするので、
少々大変ですが。

2016年8月11日木曜日

5_144 最古の星 3:メトシェラ恒星

 今回から最古の星の話になります。まずは、一番古い星の話です。その星は昔から見つかっていた星でした。年齢を正確に測定しなおしたら、もっとも古いものになりました。でも、問題もありました。

 最古の星の報告は、2013年にありました。宇宙最古の星は、HD 140283という標識が付いています。しかし、この星は、今回、新たに見つかったものではありません。以前から知られていた星でした。
 HD 140283は、てんびん座に位置する恒星で、地球からは190光年という「近い」ところにあります。主成分はヘリウムと水素からできているので、宇宙の初期にできた天体(種族IIIの星と呼ばれます)であることは確かです。非常に古いと考えられる天体は、「メトシェラ恒星」とも呼ばれています。ちなみに、メトシェラとは、聖書に登場するもっとも長寿の人の名前です。
 HD 140283は、かなり以前から知られていた星だったのですが、最近までその年齢は正確にわかっていませんでした。2000年に、やっと年齢が推定されました。その年齢は、若く見積もっても140億年、古い方の年代では160億年前という値でした。どれほど年齢の幅を考えたとしても、宇宙の誕生の138億年前より古い年代は、明らかに間違いです。それに誤差も大きなものでした。
 ですから、この年齢の見積もりには問題があることは明らかでした。古い星であることは、確かです。正確な測定をすれば、かなり古い年代がでてくるはずです。そこで、正確な観測をするために、ハッブル宇宙望遠鏡を用いて、再度観測をし直しました。
 その方法は一種の三角測量でした。年周視差と呼ばれるもので、「近い」星だけに適用できる方法です。地球が公転しているときの直径を一辺として、それぞれの星の角度を正確に測ります。三角形の一辺とその両側の角度がわかれば、三角形が決定します。両者の角度に違いがあれば、年周視差が見いだせ、その差を利用して、星までの距離も求めることが可能になます。ただし、その角度の違い(年周視差という)は非常に小さいので、「遠く」の星では観測が難しくなります。
 ハッブル望遠鏡を用いた年周視差を測定して再計算した結果、144.6億年±8.0 億年という値になりました。若ければ136.6億年、古ければ152.6億年という幅があります。ハッブル望遠鏡を用いても、なお±8億年という誤差の大きな値でした。この誤差の精度を信じれば、宇宙の誕生が138億年前なので、もっとも古い星の一つであることは確かです。
 しかし、矛盾があります。HD 140283は、最古の星のひとつになりそうなのですが、星の成分を詳しく調べると、問題があります。成分として、水素とヘリウムが主なのですが、量は少ないのですが、金属元素を少し含んでいることがわかっています。金属は超新星爆発で合成される元素です。この星の材料には、超新星爆発した星の元素が混じっていることになります。この星は、本当の第一世代の星、種族IIIではないことになります。
 しかし、本当に種族IIIというものは仮説です。本当に存在するかどうは、わかりません。もしかすると、宇宙創生のシナリオ、あるいは最初の星の誕生のシナリオ、最初の星が水素とヘリウムからできるというモデルなど、今までの仮説を考え直さなければならないかもしれませんね。

・集中できる時間・
北海道は暑い日もあるのですが、
すでにピークは過ぎたようです。
湿度が高いとつらいですが、
湿度が低ければ心地よい夏の日になります。
私は、今週が一番忙しく、いろいろなものに追われています。
ですから、暑いのは一番つらい条件になります。
私の研究室はに向きに窓が全面にあり、
天気のいい日の午後は暑くてたまりません。
早々に逃げ出すしかありません。
ですから、昼過ぎまでが集中できる時間で
大切に使わなければなりません。

・科学の評価・
天文学は、観測技術や装置が日々進歩しており、
宇宙空間からも、地上からも、地下からも
日夜、宇宙の観測努力が続いています。
大きな装置であるので、
底から得られる成果は、
宇宙の神秘や天体の謎を解き明かすことに繋がります。
自分の日常や、社会への貢献とは
まったく関係ない成果が多いと思います。
しかし、だれもがその成果に興味を覚え、
その努力に敬意を払うことができるものではないでしょう。
これが科学の正当な社会的評価ではないでしょうか。

2016年8月4日木曜日

5_143 最古の星 2:宇宙の年齢

 最古の星の年齢が妥当かどうかを知るためには、宇宙の年齢がわからなければなりません。宇宙の年齢は、人工衛星の観測によって、ほぼ確定されました。138億歳、つまり138億年前に宇宙が誕生したのです。

 宇宙の年齢の決め方を紹介してきましょう。まずは、単純に観測で古い天体を見つけます。当然のことながら、最古の天体より宇宙の誕生は以前のはずです。最古の天体の年齢が、宇宙の誕生の下限(もっとも新しい側の年代の限界)を決めることができます。
 天体までの距離が分かれば、天体の正確な明るさが見積もられます。明るさが決まれば、星の内部構造や核融合の理論から、天体の年齢を推定することが可能です。この方法はいろいろな誤差が入ってくる上に、どうして天体までの距離を決めるのかも問題です。もちろん、いろいろな工夫がなされて求められています。
 宇宙の年齢で一番よく用いられるのは、宇宙の膨張の速度から求める方法です。現在銀河同士は、距離に比例して離る速度が大きくなっています。これは宇宙が膨張しているから起こる現象で、宇宙の膨張速度はハッブル定数として表現されます。この膨張のスタート時点が、宇宙の始まりです。ハッブル定数の逆数で求めることができます。ハッブル定数の観測で、精度を上げていけば、宇宙の年齢がより正確にわかってきます。
 もうひとつは、宇宙の密度から求める方法です。宇宙の膨張は、ビックバンのときのエネルギーによるものです。宇宙に内にある物質は万有引力が働くので、宇宙を縮ませる力が働きます。宇宙の全物質量の平均密度がΩとして、Ωが1の時は釣り合い、1より小さければ膨張の力が勝ち、大きければ収縮に転じることになります。ですから、宇宙の物質量を正確に求めれば、Ωの値が決まります。
 ところが、宇宙はもっと複雑な仕組みがあり、宇宙の膨張を加速させる力(宇宙斥力と呼ばれています)があり、その力を生み出すものは、ダークエネルギーと呼ばれ、その実体は未だに不明です。ただし、宇宙の背景放射を正確に観測すること(非等方性)によってダークエネルギーが推定でき、そこから宇宙の年齢を計算できます。現在、背景放射の観測は、COBEやWMAP、Planckなどの人工衛星によって正確に定まってきました。
 まず、COBEは宇宙の背景放射にムラがあることを発見しました。その後、2001年にアメリカ合衆国が打ち上げ、2010年8月まで観測を行ったWMAPによって、137.72±0.59億年という宇宙の年齢が求められました。さらに、欧州宇宙機関(ESA)は、2009年にPlanckを打ち上げ、2013年まで観測した結果、137.98±0.37億年前という値を得ました。138億年前が、現在もっと正確とされる宇宙の年齢となります。
 宇宙の年齢は、かなり正確に決まってきました。これで、準備ができました。では、次回から最古の天体の話題に移っていきましょう。

・予想外・
多数の人工衛星が打ち上げられ、
それぞれが重要な目的、任務をもって運用されています。
それぞれの機体の運用には多数の科学者がかかわり、
得られるデータに一喜一憂しているはずです。
人工衛星のような莫大な費用を投じておこなわれる研究は
成果を得ることが義務付けられています。
これはかなりのプレッシャーになるはずです。
予想に反したデータが出てくればどうなるでしょうか。
人によっては、苦痛に感じることもあるでしょう。
そもそも科学は予想通りにはいかないことも楽しみだったはずです。
予想外だからこそ、新しいものが見つかり、生み出されるはずです。
しかし、巨大科学になってからは
予想外が嫌がられるようになってきたようです。
残念ですね。

・蒸し暑さ・
北海道は蒸し暑い日が続いています。
北海道の人は暑さに弱いので、
暑い上に蒸したりすると
すぐにぐったりとなってしまいます。
私ももう北海道人になりました。
2日ほど蒸し暑い日が続いているので、
ぐったりとしています。
夜も湿度が高いのですが、
気温が下がっているので、
なんとか寝れる状態になっています。
今年は天候が不順で、体調を崩しそうなので
気をつけなければなりませんね。