2016年4月21日木曜日

3_149 マントルの内部構造 2:スーパーホットプルーム

 地球内部にはマントル対流があります。かつては仮説だったのですが、現在ではその実態をみることができるようになってきました。明らかになってきたマントル対流は、私たちが日常目にしている単純な対流ではないことが、わかってきました。

 地球深部を直接掘って調べることはできないので、地震波や合成実験など間接的な方法で探求していことになります。それでも、科学者のたゆみなき努力やさまざまな工夫、地震計、実験装置、解析用のコンピュータなどの技術の向上により、地球深部の実態が少しずつ解明されてきています。
 地球内部の運動として重要な仕組みは、マントル対流です。マントル対流が、プレートテクトニクスの原動力となっています。プレートテクトニクスとは、大地の変動を起こしているもので、10数枚の硬い岩盤からなるプレートが移動することで、大地の営み(地質現象、地形形成など)を起こすメカニズムです。しかし、対流とはいっても、私たちが日ごろ目にしている水が温まるときに起こる対流よりは、もっと長い時間をかけて移動する、そしてより複雑な対流となっていることがわかってきました。
 マントル対流の基本は、中央海嶺で形成された海洋プレートが、海底下で冷やされて重くなり、海溝で沈み込みマントルにどもっていきます。沈み込んだ物質の反動として、下部マントルの底から、温かく、軽いマントル物質が上昇していきます。この物質循環が、対流となります。
 さらに、冷たいマントル物質が地球内部に戻りマントルや核を冷やし、温かいものが地球外部に移動して、熱を地球表層から宇宙空間へと放出していきます。マントル対流は、地球の冷却過程を見ていることにもなります。このような地球内部の熱の放出とマントル物質の循環を、マントル対流と呼んでいることになります。マントル対流の原理は、わかりやすいものです。
 マントル対流の下降流は、沈み込んだ冷たいプレートの集合体として地震波では見えています。同じマントルの岩石でも、温度差があると地震波の速度に違いが現れ、検出できるようになってきました。冷たいプレートは遷移帯でとどまり、しばらくすると落ちていくことが見えています。この冷たいマントル物質の下降流をコールドプルームと呼んでいます。
 また、上昇流も地震波でとらえられています。その上昇流の形は、下部マントル内をキノコ状になって遷移帯まで上がっていきます。そのような上昇流をスーパーホットプルームと呼んでいます。スーパーホットプルームは、地震波の観測により、南太平洋とアフリカ大陸の下に存在することがわかってきています。
 遷移帯から先は、カーテン状や小さいプルームとして、上部マントルからプレート下部まで上昇していきます。それが海嶺やハワイの長期にわたる火山群(ホットスポットと呼ばれています)、あるいは巨大な火山活動(デカン高原やコロンビア川沿い、シベリアなどの大規模な火山活動)の原因となっています。スパーホットプルームのうち海嶺の火山活動が、海洋プレートの始まりとなります。
 コールドプルームもスーパーホットプルームも連続的な対流ではなく、ある時期に間欠的に落下、上昇をし、その影響は長期間にわかって継続するという現象です。地球時間で見ると、これをマントル対流としてとらえることができるわけです。
 しかし、どこから、なぜ上昇流が発生するのか、その上昇流はどのような物質なのか、などの実態は必ずしもよくわかっていませんでした。その解明が現在進められて、新しいこともわかりつつあります。

・熊本地震・
14日から16日を中心に
熊本から大分にかけて発生した地震は、
大きな被害を与えました。
2011年の東日本大震災とくらべる
津波の発生がないのがまだ救いですが、
これから雨や梅雨の季節にむかっているので
水や地すべりなどの災害も心配です。
まだ、発生直後の混乱が続いていると思いますが、
被災された方へお見舞いを申し上げます。

・野外調査のキャンセル・
私は、夜早く寝て、朝もニュースを見ずに大学にでます。
今回のニュースは、15日の昼頃、
ネットのニュースをみて初めて知りました。
その後、いろいろ情報を見るようにしてきました。
実は、私はゴールデンウィークの6日間、
熊本から大分にかけて、野外調査をする予定でいました。
もちろん、すべての手配を終えていました。
今回の地震発生域の断層付近に分布する
地層の中の層状チャートを調査していく予定でした。
ニュースをみて、調査どころでないので、
月曜日にはすべてをキャンセルしました。
一日も早い復興を願っています。

2016年4月14日木曜日

3_148 マントルの内部構造 1:覗く技術

 宇宙の探査は宇宙望遠鏡、地上でも高性能の望遠鏡などが開発され、遠くを、広くを、詳細に観測できるようになっています。その成果はニュースとしてよく目にします。地球内部の成果は地味なのでしょうか、ニュースになる頻度が少ないような気がします。しかし、技術は確実に進歩しています。

 地球内部の構造は、研究が進むとともに、より詳しくわかるようになってきた。地球深部を掘って直接調べるという方法は今でも重要なですが、まだ10kmほどで、地球の6,400kmの半径に比べると、ほんの一部にしか達していません。地球内部を探査するときの主要な手段は地震波です。ほかにも地域ごとの重力の差、地磁気、熱流量、地震の影響による地球自身の振動(地球振動)や、合成実験によるものなど、いろいろな方法で探査されています。それぞれ一長一短があります。
 地震波は、文字通り、地震の振動を利用して探査する方法です。地震は自然現象なので、いつどこで起こるかがわからない現象を利用しているという欠点があります。大きな地震が時々しか起こりませんが、小さな地震は多数起こりますので補えます。地震波の長所は、地球深部を通ってくる経路がわかっているので、他の方法より地球深部を正確に探査することができます。さらに、地震波には、いくつかの波の成分があり、それぞれが地球内部の違う性質の検出に利用できます。
 地震計の感度の向上と、観測データのネットワーク化や地震波解析にコンピュータの導入などにより、マントルの内部構造が3次元的に、より詳しくわかってくるようになってきました。これらの技術は日々進歩していますので、解析精度は向上し、内部構造もより詳しくわかってきています。
 地球内部の概要は、表層5~70km(海洋域で薄く、大陸域で厚い)の岩石でできた地殻が、その下には地殻より密度の大きな岩石からできたマントルがあり、最深部には鉄でできた核(コア)があることがわかりました。また、地震波の性質から、核の鉄には溶けた鉄の外核と固体の鉄の内核に分かれていることもわかってきました。
 マントル内の構造は、410kmより浅い部分が上部マントル、410から660kmまでは遷移帯となり、660kmから核の境界の2900kmまでは下部マントルに区分できることわかってきました。
 マントル内のそれぞれの物質の様子の違いを検証する方法として、高温高圧実験が有効になります。実験室の装置で、想定されるマントルの物質を、調べたいマントルの部分の温度圧力条件を発生させ、その条件での物質合成をします。その結果、どのような結晶か、どんな性質を持っているのかなどを調べるものです。以前は装置から取り出していましたが、今では、高温高圧の条件に置いたまま調べる方法もあります。
 地震波によって限定されたマントルの条件が重要になってきます。また、高温高圧実験の結果が、地震波の解析にフィードバックされ、解析の精度をより向上させることにもなります。
 そのような研究の結果、マントル対流の実態やマントルと核の境界の詳細などもわかるようになってきました。その概要は次回からとしましょう。

・新陳代謝・
いよいよ大学の講義も本格的にはじまりました。
大学の日常になりました。
しかし、学生は、毎年新しく加わり卒業してきます。
新陳代謝をしているのです。
これが大学の一番の特徴です。
そして卒業生は社会へと羽ばたきます。
今は新入生と在学生に集中しています。
教職員の新陳代謝は少ないですが。

・海洋調査船・
海洋調査船「ちきゅう」は最新鋭のものです。
正式には、地球深部探査船というそうです。
実験室も完備されていて、
一流の研究装置、スタッフなど
充実した環境が整えられています。
残念ながら、私は「ちきゅう」には乗ったことがありません。
大学院時代に、別の調査船には1ヶ月ほど乗船したことがあります。
その間は、研究に没頭できますが、
生活のスケジュールはなかなかハードでした。
でも、乗船中は非常に充実した時間となります。
これは、今も変わらないことだと思います。
私は、今では地質研究の最先端からは引退していますので
もう乗れませんがね。

2016年4月7日木曜日

5_137 ケプラー衛星 3:課題

 ケプラー衛星は、姿勢制御装置の故障があったのですが、アイディアで克服しました。その結果、現在も観測を続けています。衛星の成果により、私たちの太陽系形成のモデルの変更が迫まられています。

 ケプラー衛星は、2009年3月6日に打ち上げられました。これまで述べてきたように、太陽系外の惑星系、それも地球型惑星を探すという目的でした。そして、約15万個の恒星を観測し、1000個以上の太陽系外惑星を発見し、地球型惑星や、ハビタブルゾーンにある惑星も発見しました。
 ところが、2013年8月15日には望遠鏡の位置を調整する4つの装置(姿勢制御用ホイール)のうち、2つが壊れてしまいました。いろいろな試みがなされたのですが、修理は不可能でした。しかし、ホイールの故障であって、望遠鏡や本体の故障ではありません。もったいない話です。しかし、観測において、姿勢制御できないのは、致命的な故障でもありました。
 そこで、いろいろなアイディアを募って、「K2ミッション」を行うことが決定されました。K2ミッションとは、太陽光パネルに光をあてることにより、その圧力で3つ目のホイールの代わりに制御用に利用する、というアイディアでした。K2ミッションを行えば、壊れたものが補われることがわかり、なんとか観測が再開されました。運用はうまくいっており、新たな地球型惑星も発見でき、現在もケプラー衛星は働いています。
 ケプラー衛星のミッション以外でも、太陽系外の惑星は、発見されていました。その数は約800個ほどでした。ところが、ケプラー衛星の成果は、約1000個という太陽系外惑星の発見でした。倍以上の惑星の情報が、手に入ったのです。
 その結果、私の太陽系は必ずしも典型的なものではないこと、言い方をかえると、惑星系は多様だということがわかってきました。
 太陽系外惑星の発見までは、私たちの惑星系が典型的なものとして、太陽系形成のモデルが作成されてきました。いろいろなモデルの中で、私たちの太陽系が形成できるモデルだけが、正しいものとして作り上げられてきました。
 現状では、ケプラー衛星の観測結果には、観測限界によるフィルターがかかっているはずです。それにしても、地球型惑星もハビタブルゾーンの惑星も、それほど普遍的なものではないことがわかってきました。想像を越えるような惑星系も多数発見されてきました。
 ケプラー衛星の観測結果は、惑星系の形成モデルを、大きく考え方を変える必要を迫ってきました。この考え方の変更こそが、ケプラー衛星の一番の功績ではないかと、私は思います。ケプラー衛星からの課題ですね。この課題は、いつ解けるでしょうか。

・新入生・
4月1日に新入生を迎えました。
1週間で、何度か顔を合わせ、
挨拶をして、少しずつ面識ができてきました。
1年生同士では、かなり仲良くなってきた学生も
すでにでてきているようです。
なかには、背伸びしている学生、
少々調子に乗りすぎている学生、
自分の居場所を探している学生、
たんたんとマイペースの学生、
あるいはこの機会に再出発を考えている学生もいるでしょう。
リーダーシップを取れそうが学生もいます。
人それぞれ、毎年ごとに、それぞれの個性があります。
それを早く見分けかなればならないのですが。

・4年生・
4月早々、土、日曜日も使って、
新4年生のための集中講義がありました。
実習のための事前の講義でした。
かなりのストレスであったが
全員なんと乗り越えられました。
到達点は、人それぞれだが、
明らかに、この集中講義で成長できました。
目つきや表情をみているだけで
その成長ぶりがわかります。
その変化が、教える側の大きな楽しみです。

2016年3月31日木曜日

5_136 ケプラー衛星 2:成果

 ケプラー衛星は、4年間の探査により、多くの成果を上げました。その成果とは、地球型惑星を発見すること、ハビタブルゾーンの惑星を発見することでした。その成果は達成されました。

 ケプラー衛星は、私たちの太陽系が一般的なものではなく、多様なものがあることを教えてくれました。
 ケプラー衛星が探そうとしていた惑星は、遠い天体で、自らは光を発していません。実際には、母星の恒星の光しか見えません。観測すべき惑星は、直接見ることはできないので、他の方法を使って調べなければなりません。その方法とは、惑星が母星の前を通り過ぎるとき、明るさがほんの少しですが変化します。惑星の影響で恒星の明るさが変化するのであれば、周期的な変化がおこるはずです。その明るさの変動を捉える方法を用いて惑星を発見しようとするものです。トランジット法と呼ばれています。長期にわたってトランジット法で観測することで、仄かな明るさの変化を捉えようとするものです。
 ケプラー衛星は、微弱な明かりの変化を観測しねければなりません。そのため、私たちの太陽の光や、地球からの反射の影響の一番少ない方向で観測しています。また、太陽系内の小天体、火星と木星の間や外縁部にある小惑星帯(エッジワース・カイパーベルトと呼ばれています)の影響がない方向であるべきです。北の空のはくちょう座の方向でした。
 その領域は、狭いもの(105平方度)で、腕を伸ばして握りこぶしをふたつ並べたほどのところを、1.4mの反射鏡を用いて、9460万画素のCCDカメラで観察しています。CCDカメラとはいっても、撮影するためのものではなく、光を集めるために使われています。
 このような装置で、ケプラー衛星は、4年間に約15万個の恒星を観測しました。そこから、4000個以上の惑星候補を発見し、そのうち2015年4月28日の時点で、1019個が惑星であることが確認されています。
 観測当初は、大きな惑星の発見でしたが、後には小さな惑星も見つかってきました。その中には、地球と同程度や地球より小さな惑星もありました。
 ケプラー衛星の成果として、恒星ケプラー37には3つの惑星が見つかり、その内、最も内側で地球の約3分の1のサイズの岩石惑星と考えられるものを発見しました。ケプラー62eとケプラー62f、ケプラー186fでは、それぞれ地球の1.6倍と1.4倍、1.11倍の大きさで、「ハビタブルゾーン」に存在する惑星が見つかりました。地球に似た惑星がいくつか見つかり、生命誕生の条件を持っている惑星があることがわかってきました。
 また、ケプラー444には、地球型惑星が5つり、これは宇宙誕生から30億年ほどしか経ていないのに、岩石惑星が形成されていることを示しました。ただし、これらの惑星は太陽に近いためにハビタブルゾーンにはありませんでした。
 他の恒星にも惑星系が多数あり、それは多様で、異形のものがあることがわかってきました。そして多様性に中には、地球に似た惑星があることもわかってきました。ただし、現在のところその数は少ないのですが。

・注意が必要・
ケプラー衛星の成果の取り扱いは注意が必要です。
15万個の恒星で惑星が確認されているのは1000個とすると
惑星の存在は、非常にまれなものにみえます。
これは、間違った印象です。
なぜなら、地球から観測しているので、
地球からたまたま「見えた」ものしか
判別していないからです。
「見えない」、「見えにくい」ものは
観測結果には反映されていないのです。
例えば、15万個の恒星の内、
惑星をもっているは、1000個ではないのです。
惑星を観測できたのが、1000個であって、
もっと多数の恒星に惑星はあるかもしれないのです。
注意が必要です。

・新年度・
今日で、3月が終わります。
学校はいよいよ新学期を迎えます。
我が大学は、4月1日が入学式です。
私は、新年度そうそう、土、日曜日も使って
担当している集中講義があります。
今年度からはじめて参加する講義なで少々不安ですが、
与えられた担当科目なので、
がんばってできる範囲ですすめるしかありませんね。

2016年3月24日木曜日

5_135 ケプラー衛星 1:地球型惑星

 太陽系外惑星を探査するケプラー衛星は、実は私たちの太陽系や地球のことをよりよく知るために、打ち上げられたものです。その成果によって、私たちの太陽系や地球の見方をどのように変えてきたのでしょうか。

 ケプラー(Kepler)と名付けられた探査機があります。2009年3月6日に打ち上げられた探査機で、地球を追いかけるような軌道で、太陽の周りを回っています。ケプラー衛星は、実は今回がはじめてではなく、3年前(2013.05.16)の「5_109 地球型惑星 2:ケプラー」でも紹介しています。少し重複する部分があるかもしれませんが、紹介していきましょう。
 ケプラー衛星は、宇宙望遠鏡で、太陽系外の惑星を探すために打ち上げられたものです。太陽系外惑星を発見するだけにとどまらず、より正確に惑星を探査し、地球型惑星、あるいはハビタブルゾーンにある惑星が、どの程度、どのようなものがあるかも、調べようという目的もありました。
 ここで、地球型惑星とハビタブルゾーンという聞き慣れない用語が、でてきました。まずはその用語の説明をしておきましょう。
 私たちの太陽系には、いくかの惑星があります。太陽に近い、内側の軌道には、水星、金星、地球、火星まで、硬い地表と、薄い大気をもつ(水星にはない)小さい惑星があります。惑星の本体は、岩石と金属鉄からできています。金属鉄は、コアとよばれ、惑星の中心部にあります。岩石からなる多数の小天体からなる小惑星帯を越えると、木星と土星の巨大なガス惑星(木星型惑星)、天王星と海王星の巨大な氷惑星(天王星型惑星)があります。太陽系の内側の、地球似た惑星を地球型惑星といいます。
 ハビタブルゾーン(habitable zone)とは、惑星空間で、生命が誕生しうる環境をもっている領域のことです。「生命居住可能領域」などと訳されることもありますが、生命が生存、居住可能な惑星空間のことです。主には、母天体(太陽)の明るさと、その距離によって限定されます。わかりやすくいうと、ハビタブルゾーンに惑星があると、惑星表面にH2Oが水として存在しうる条件となります。
 生命が誕生するための前提条件のひとつとなるものです。他にも、そこに惑星が存在すること、惑星が存在したとしても大きさ、環境、経過時間などの条件を満たさなければ、生命誕生はないはずです。
 ただし、ハビタブルゾーンをはずれた生命は存在しえないかというと、そうとは限らないかもしれません。木星や土星の衛星でも、生命の誕生の条件があるのではないか、と考えている研究者もいます。
 さて、これらの惑星の種類とその並び方は、私たちの太陽系の特徴でもあるのですが、かつてはこれらが惑星系の一般的な姿だと考えられていました。ところが、必ずしも一般的なものでないことが、ケプラーの多数の惑星の発見によって確かめられました。
 ケプラーは、宇宙には、非常に多様な惑星があることを教えれくれました。それは次回としましょう。

・行事・
先週の水曜日に、学部の教員の送別会がありました。
金曜日には大学の卒業式がありました。
その後、大学の祝賀会と学科の祝う会が連続してありました。
学生有志との二次会も続きでありました。
その月曜日には、大学で高校生を招いての
オープンキャンパスがありました。
私は、それらのすべての行事で
校務として、司会や挨拶をしました。
少々くたびれましたが、
それぞれ目的や対象者が違っているので、
頭の切り替えがなかなか難しいものでした。
そのため、精神的に疲れました。
家庭内でひどい風邪がはやっているので
無理をしないようにしなければなりません。

・区切りの年・
次男の卒業式も大学と同日に行われ家内が出席しました。
長男はもっと前でしたが、今月に卒業式がありました。
我が家でも、今年は、区切りの年となりました。
それぞれが、新たな目標に向かって
進んでいってくれればと思いますが、
親としては、心配は尽きませんが。

2016年3月17日木曜日

6_136 重力波の観測 5:重力波天文学

 シリーズの最後として、今回の観測の意義を考えていきましょう。最初の観測の成功は、仮説の確かさを示しており、研究は次なるステップに発展していきます。研究実績が積み上げられれば、新しい学問分野が発展していくことになるでしょう。

 重力波を発生し、観測されそうな天文現象には、いくつかの候補がありまひた。それらの現象については、事前にシミュレーションがなされていました。重力波を見れば、それはどの天文現象だということがわかるまで、事前に推定されていました。
 今回の重力波は、2つのブラックホールの合体した現象で発生したものでした。2つのブラックホールが、ぶつかる時の相対速度は、光速度の半分以上にまで達していました。そのブラックホールは、太陽質量の29個分と36個分のものでした。そして最終的に合体してきたブラックホールは、太陽質量の62個分でした。
 ここまで読んで、気づかれたでしょうか。足し算が合わないのです。2つのブラックホールの質量は、29+36=65なのですが、できたブラックホールは62になっています。太陽質量の3個分が消えています。この消えた質量分が、重力波として放出されたのだと考えられています。想像を絶する天体現象です。それが、わずか0.2秒足らずのほんの短い時間に起こったのです。
 今回の観測された現象は、数百年に一度くらいの頻度で起こるものだと考えられています。それほど稀な現象が、よくも観測早々発見できたものだと思います。幸運に恵まれていると思いますが、幸運だけでなく研究者たちの努力があっても賜物です。
 さて、今回の発見には、どんな意義があるのでしょうか。
 重要な意義があります。それは新しい学問分野ができる可能性が生じたことです。最初の発見ができれば、観測できることが証明できたわけです。仮説としては可能であっても、本当に実証されるまでは確かではありません。いったん実証された後は、技術的な向上があれば、感度を上げることができます。理論的に技術開発を進めていって、確実な成果を得られることが証明できたことになります。改良が進めば、計算通りに、より小さい重力波の現象を捉えることが可能となります。たとえば、感度を10倍にすると、1年に数回の重力波の現象が捉えられると考えられています。
 重力波観測装置は、重力波望遠鏡となります。観測が進めば、多数の現象がとらえられ、多様性の把握できるでしょう。重力波現象に基づく天文学が発展することでしょう。
 日本の小柴さんたちがカミオカンデで最初に行ったニュートリノの観測により、望遠鏡として利用できることを示しました。そこから、新しいニュートリノ天文学が生まれました。それと同じような大きな進歩が起こり、重力波天文学が拓かれていくことが期待できそうです。

・別れ・
別れのシーズンです。
大学では、教職員の送別会、卒業式が
今週、立て続けに行われます。
教員で親しい人の退職は、寂しいものです。
学生との別れは、寂しさだけでなく
彼らは期待に満ちた希望があります。
彼らには新しい世界へ旅立つが不安もあるでしょうが
希望に満ちた未来があります。
そんな卒業生たちにエールを送りたいものです。

・時の流れ・
今年度もあと少しです。
学校では、次年度の準備が着々と進んでいます。
一日、一週間、一ヶ月、一年があっという間です。
光陰矢の如しで、時間がまたたく間に過ぎていきます。
校務が忙しくて、研究の時間がとれずにストレスがたまっています。
精神状態にも波があるので、
時間があるから研究できるとは限らないのですが、
時間がないと研究できないのは確かです。
人が感じる時の流れは、
忙しさに比例するのでしょうか、
それとも年齢に比例するのでしょうか。
私の場合は、両者だなのでしょうね。

2016年3月10日木曜日

6_135 重力波の観測 4:そして発表

 信号を観測してからの検証作業は、地道で表には出ないものです。しかし、結果が重大であるため、その時の研究者のストレスは想像以上でしょう。大きなストレスの乗り越えて、今回の発表となりました。

 重力波を観測したLIGOは、2005年から観測をスタートし2010年まで観測しました。しかし、この間の観測では、検出能力が足りなく、信号をキャッチすることはできませんでした。その後、装置に検出感度を高める改良がおこなわれ、2015年から観測が再開されました。
 改良されたLIGOが、2015年9月12日に重力波の観測を開始したところ、わずか2日目の2015年9月14日9時51分(アメリカ東部時間)に、重力波をキャッチしました。LIGOの感度でとらえられる現象は、数百年に一度のものにすぎません。それをとらえることができたのです。これはLIGOの観測のスタート時期が、非常に幸運だったのでしょう。
 今回観測した重力波は、波長が3ヘルツから250ヘルツの間で、波の変動幅は10^-21のレベルでした。信号は、0.2秒足らずほどで終わりました。非常の微小で短時間の信号でした。その信号のS/N比(信号とノイズの比)は、24もあり、他の現象の可能性さえ排除できれば、確実な信号になります。
 データを得たあと発表まで、さまざまな検証がなされました。ありとあらゆる他の信号やノイズの可能性を排除されていきました。なにより異なる場所で観測された重力波の波形がぴたりと一致したことが、一番有力な検証となりました。別の2箇所で波形が一致するような他の現象が起こる可能性は、20万年に1度という確率にすぎないことも確かめられています。ありとあらゆるノイズの可能性を消していき、重力波でしか説明できないという論考がなされました。
 今回は、あまりにも重要な結果なので、極秘裏に検証作業がなされていたそうです。その検証のために、観測後、4ヶ月の時間がかけられました。研究者にとっては、そのストレスは非常に大きかったようです。
 論文は、今年の2月11日に公開されています。論文は物理学では権威のあるPhysical Review Lettersという雑誌の116号で公開されました。
http://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.116.061102
というサイトで、重要な論文なのでオープンにされています。難しい内容ですが、論文のタイトルは、
Observation of Gravitational Waves from a Binary Black Hole Merger.
(2つのブラックホールの合体からの重力波の観測)
です。興味ある方は、直接ご覧になられればと思います。
 論文の著者は、B. P. Abbott et al.(et al.とは「その他」という意味)となっています。通常論文の著者が多人数になっても、全員の名前や所属を明記します。しかし、この論文はあまりに多くの研究者が関わっているので、論文の末尾に著者名が列記されています。同姓の人も多数います。著者名だけで、3ページ弱もあります。何名の共著者がいるかを、数える気にならないのほどの人数です。著者名の後には、著者が所属している施設が示されているのですが、133ヶ所あり、2ページ半になっています。16ページの論文のうち、本文は8ページ余りで、報告の半分にすぎません。他は文献と著者に関するものです。巨大科学による成果はこのような報告になってしまいます。
 さて次回は、重力波の意味するところをみていきましょう。

・情報漏れ・
この論文を見たのですが、分野が違うので、
検証に関する評価はできませんでした。
しかし、その慎重さは、うかがい知ることができました。
そして、この論文でなにより驚いたのは、
本文でも書いたのですが、著者の多さです。
近年の巨大科学のせいでしょうが、
中枢にいた研究者たちは、組織運営、維持だけでも
非常に大きな苦労があったと推測されます。
秘密保持は、非常の難しいものでしょう。
仲間内では漏れていたのかしれませんが、
私は門外漢なので情報は届いていませんでした。
以前、別の重要論文では、論文が投稿された段階で
情報漏れがあり、私にも届いたことが有りました。
その時は、内容は不明でしたが、
その分野に関する重要な発見があった
という情報だけが漏れていました。
今は、ネット時代ですから、
情報漏れが起これば、一気に広がってしまいます。
注意が必要ですね。

・三寒四温・
北海道は、三寒四温でしょうか、
変動の激しい天気が続いています。
ある時は道路がガリガリに凍りついたり、大量の積雪があり、
またある時は、グチョグチョに溶けたり、
乾いた道路が出ていたりしています。
寒暖の変化の著しさは、例年以上ではないでしょうか。
来週はいよいよ卒業式です。
グチョグチョでなければいいのですが。