2011年2月17日木曜日

6_87 観測手法:ケプラー2

 太陽系外惑星を探す方法を紹介します。いくつかの方法があるのですが、ケプラー宇宙望遠鏡が採用した方法は、トランジット法というものです。目的を絞って、効率のよい方法、そして後の研究につながる成果を目指しているようです。

 ケプラー宇宙望遠鏡は、多数の恒星を定期的に観測して、惑星の発見と、その特徴を調べようというものです。ケプラー宇宙望遠鏡をもっててしても、それは、なかなか大変な作業なのです。なぜなら、惑星は光を出していないので、母星からの光の反射を検出しなければならないからです。ですから、母星の影響をどう取り除くかということが重要になります。
 いくつかの方法があります。一番わかりやすいのは、がんばって惑星の光を母星の光から分離して直接観測する方法です。
 2008年9月にこの方法で、やっと発見されました。これは地上の望遠鏡(ハワイのジェミニ天文台)を用いて、見つけられました。惑星ができたてで発光していたためと、母星との距離がはなれていたため、別の観測のときに、たまたま見つかったものです。ついで、ハッブル宇宙望遠鏡が2008年11月に別の惑星を発見しました。数ヶ月違いの差でした。
 コンピュータによる画像処理が進んできているので、昔の画像データを用いれば、新たな惑星の発見ができるかもしれません。
 間接的な方法として、母星の位置変化を観測するという方法があります。これは、大きな惑星が母星の周りを公転していると、母星の位置がぶれます。そのブレを観測する方法です。この方法でも2009年に、地上望遠鏡で発見されています。
 母星の位置変化を、光の波長変化(視線速度法とかドプラー偏移法と呼ばれています)で見つけようというものです。現在、一番採用されている方法です。そしてこの方法で、たくさんの惑星が見つけられています。
 ケプラー宇宙望遠鏡は、トランジット法を用います。トランジット法は、上で述べた方法とは違うものです。惑星が母星の前を通過するとき、明るさの変化があります。その変化を観測しようというものです。この方法は、惑星が母星の前を通過するときしか使えないこと、惑星の公転面が地球から並行でなければならない、などの欠点があります。
 ケプラー宇宙望遠鏡は、この欠点を、大量の天体(10万個)の天体を、長期間観測すること(3年半)でカバーしています。それに、明るさの変化を観測するだけですから、それほど難しい技術を要しません。つまりメインテナンスがそれほど必要ないということです。宇宙での観察ではこの点は重要です。
 さらにトランジット法のメリットは、惑星の質量を正確に決めることができる点です。質量は、惑星の特徴として最も重要なものです。
 大量の天体の探査から、太陽系外惑星カタログができ、次なる観測目標が設定できます。大量のデータが得られますから、統計的な処理ができます。このようなデータは私たち人類、あるいは生命の存在確率を左右するものとなるはずです。
 ケプラー宇宙望遠鏡の最終目標は、地球型惑星の発見と地球外生命の存在の可能性の探査ではないでしょう。それについては、次回としましょう。

・重要事項・
毎日論文に取り組んでいます。
それに専念したいところですが、
なかなかままならないのが実態です。
先日投稿した論文の校正ももどってきました。
これは数日猶予があるので先回しです。
時に重要事項が、優先事項とは一致しないこともあります。
社会人だから仕方がありませんが、
大切なことは、自分にとっての重要事項を忘れないことでしょう。
毎日をなんらかの優先事項に追われて過ごしているのでしょうが、
重要事項を常に頭に置いておくこと大切なのでしょう。
私のとって愛媛での残された時間が
少なくなってきました。
重要事項の忘れないようにしながら、
優先事項もこなしていきましょう。

・春はまだ・
先日、大雪が降りましたが、
ベチョベチョの雪でした。
春が近付いているのでしょうか。
でも晴れた朝はやはりまだ冷え込みます。
春は、まだまだ浅いようですが、
春になれば北海道にもどることになります。
今年の春はいつもの春とは違います。

2011年2月10日木曜日

6_86 宇宙望遠鏡:ケプラー1

 新しい宇宙望遠鏡としてケプラーとよばれるものがあります。この望遠鏡は、地球型惑星を探すという目的に絞られています。しかしその目的あるいは成果は、好奇心を刺激するものです。今回は、その一連の成果を見ていくシリーズとなります。

 今、「ケプラー」が次々と成果を上げています。「ケプラー」というと、天文学者の名前を思い浮かべるでしょうが、今では宇宙望遠鏡として、活躍しています。もちろん、この宇宙望遠鏡は、天文学者のケプラーからとったものです。宇宙望遠鏡として、ハッブルが有名ですが、ケプラーは、ハッブルとは違った目的をもったものです。
 ハッブル宇宙望遠鏡は1990年に打ち上げられ、もう20年以上にわたって使われています。なんども修理、補強が行われ、2009年5月には、スペースシャトルによって、最後のサービスミッションがおこなれました。その結果、「今までで最高の性能」をもつ宇宙望遠鏡となり、少なくとも2014年まで寿命が延びるようになりました。
 2014年以降は、後継機としてジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、2011年の打ち上げ予定でしたが、2014年に延期されました。それまでハッブル宇宙望遠鏡が使われる予定です。ただし、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、高性能ですが、近赤外線・赤外線での観測のみで、なおかつ地球と太陽のラグランジュ点(注)での観測となります。それは地球近傍のホコリの影響を抑え、より高精度が観測をするためにです。
 さて、ケプラー宇宙望遠鏡です。この望遠鏡は、NASAが2009年3月6日に打ち上げて、2009年5月から運用が始まっています。その目的は、「太陽系外惑星の観測」です。太陽系以外の天体で惑星を見つけようというものです。以前から「太陽系外惑星」は報告されてきましたが、今回は、それを精度よく体系的におこなおうというものです。
 ケプラーは3年半にわたって10万個の恒星を定期的に観測して、惑星の有無やその特徴を調べようというものです。従来の観測では、大きな惑星しか見つけることができませんでしたが、ケプラーでは、地球型惑星(太陽近傍の小さい天体)を見つけられると期待されています。
 ケプラー宇宙望遠鏡の目的は、非常に知的好奇心を刺激するプロジェクトです。その目的を考えると、ターゲットは地球に近い天体となります。地球に近い天体を網羅的に調べカタログができたとしたら、次なるステップへと、興味は進んでいくことしょう。地球型惑星が見つかったとすると、次なる期待は、その惑星が生命誕生の条件を満たしているかどうか、そして条件を満たしているなら生命が誕生しているかどうか、誕生しているとするとそこには知的生命がいるかどうか・・・。そのために基礎となる観測になるはずです。
 電力低下による不具合が今も起こっているようですが、順調に観測は進んでいます。今年になって、地球型惑星の発見の報が相次ぎました。それについては次回以降としましょう。

(注)ラグランジュ点とは
 天体力学での安定した位置を意味します。2つの天体(今回の場合は太陽と地球)が重心の周りを円運動しているとき、小さな物体(宇宙望遠鏡)が、2つの天体と位置を変えずに回れる場所(ラグランジュ点)があります。その場所は5つあり、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、地球の夜側、あるいは地球からみて太陽の逆側(L2と呼ばれています)に置かれます。

・NASA・
ハッブル宇宙望遠鏡は、多くの目的をもっていました。
地球の大気の影響のない条件で観測するというのが
第一の目標でもあったいえます。
ハッブルの成果が多大なものであったのは、
いうまでもありません。
そしてNASAが積極的に成果を公開したので
私たちの宇宙のイメージは大変豊かなものになりました。
そして現在では、宇宙望遠鏡は、
もっと目的が絞られたものになりました。
その延長線としてケプラー宇宙望遠鏡もあります。
詳しい情報は、
http://www.nasa.gov/mission_pages/kepler/main/index.html
にあります。
そこでは、最新情報も逐次公開されています。

・大雪の帰省・
京都から帰ってきたら、
城川も暖かくなっていました。
城川を発つ日は、大雪で予定通り出発できませんでした。
一旦は出発を諦めて、翌日の積もりでいました。
友人と連絡をしたら、
翌日だと道路が凍り余計に通行が
困難になるかもしれないということでした。
ですから、交通量が一段落した昼前に出発することにしました。
なんとか宇和のJRの駅までたどり着きました。
雪はありましたが少なく拍子抜けするようでした。
そして瀬戸内海から山陽道にはいると
そこには雪の痕跡も見られないような
穏やかな好天でした。
そして夕方には無事、京都の実家にたどり着くことができました。

2011年2月3日木曜日

2_89 反論:GFAJ-1 その4

 一回間があきましたが、今回がGFAJ-1シリーズの最終回です。このヒ素を利用している生物については、その重要度のせいでしょか、反論も多数出ています。政治的な反論もあるようですが、科学的な反論もあります。科学的な反論に答え対処することは、科学の進歩を促すことになります。

 いつのことでもあるのですが、新しい成果が出て、それがある研究者の成果に影響するようなことがあれば、反論が出ることがあります。あるいは、その成果の重要度が高ければ、多くの研究者がその論文の成否を論じることになります。逆にいうと、学界で話題になるほど、その重要度が高いということになります。
 重要な成果がでれば、その研究の実験方法やデータ、解釈、結果に問題がないかが問われます。当の研究者自身も、いろいろな手法でその信頼度を高める努力をします。その成果を評価する仕組みとして、学界の査読制度があります。査読とは、その内容に詳しい研究者数人が論文を読んで、問題がないか、この雑誌に掲載してよい内容かどうかを検討する制度のことです。
 査読が厳しい雑誌ほど、掲載される研究の評価が高くなります。科学の世界では、イギリスのNature誌、アメリカのScience誌が最高峰に位置しています。今回の研究は、Science誌に掲載されました。また、NASAも後押しをするように、「宇宙に生命体が存在している!」というもったいぶった記者会見までしました。Science誌は間接的にNASAのプロパガンダをサポートすることになりました。NASAがScience誌のネームバリューを利用したとも考えられます。
 そこには、政治的な思惑があるのかもしれませんが、今回の結果が、本当であれば、今回のエッセイのシリーズの述べたように、生物学上重要な成果であることは確かです。
 重要な成果となれば、反論も出てきます。重要なほど、反論も多く激しくなります。研究内容だけでなく、この研究を掲載したScience誌への非難があるようです。これは、もはや科学ではなく学界政治ですので触れないことにして、科学的反論をみていきましょう。
 ウルフ-サイモンたちは、ICP-MSやNanoSIMS、μXANESという放射光分析などの先端分析機器を利用しています。それによる成果です。先端機器だからといって、結果や解釈が正しいとは限りません。また、ヒ素がDNAなどの生体分子と置き換わる仕組みや、その働きはよく分っていなことは、ウルフ-サイモンたちも認めています。ですから、このGFAJ-1には、まだ不確定な部分が多いことも確かです。
 まず反論の一つ目は、ヒ素があると細胞が1.5倍になったことが示されていますが、GFAJ-1は、ヒ素を摂取しているのではなく、ヒ素を細胞内に取り込んで太っているだけなのではないかというものです。これは、ヒ素が細胞内のどこにどのような形であるのかが問題です。ウルフ-サイモンたちそれを放射性ヒ素や先端分析装置で示しています。しかし、実際に正確に生体の内の器官や分子での位置を決めたわけでありません。今後の課題となります。
 また別の反論は、実験ではDNAの洗浄が適切に行われておらず、ヒ素はDNAではなく細胞外のゲルに含まれていた可能性があるというものです。これは、分析方法、分析精度に関する問題です。
 このような反論は、追試や再現実験を、できれば別の研究者が別の研究室で行うことが公正な判断ができます。ウルフ-サイモンたちは、彼らの見つけたGFAJ-1を提供することになったそうです。そして、クレームをつけている研究者が追試をできるようになっているようです。その結果に期待したいものです。
 本当にヒ素を活用する生物がいるかどうかは、地球生命の進化、宇宙生命の可能性において重要な影響をあたえることになります。そして、そんな生物が、いつか、どこかの天体で見つかることがあるかもしれませんから。

・成果と教訓・
私は、生物に関していは、専門ではありません。
しかし、反論が各所にニュースとして
取り上げられているのをみると、
コトの重大さが感じられます。
成否、どちらに決着をみるかはわかりませんが、
より精度の高い分析おこなわれるはずです。
そして、それは、GFAJ-1に関する知見だけにとどまらず、
より高次の成果を残すことに違いありません。
そして、教訓も残すことでしょう。

・京都に・
現在、私は、京都にいます。
実家に里帰りしています。
このメールマガジンは予約配信しています。
これが、四国滞在中では最後の京都への帰省となります。
今まで京都の実家にはあまり帰りませんでしたが、
四国に滞在するようになって、
時間が自由にできるようになり、
料金も安くいけるので、今まで2回帰りました。
でも、今回が最後となります。
寒い時期かと思いますが、
京都をめぐろうと思っています。
そして、なにより年老いた母に
顔を見せる少ないチャンスです。
今まで母を北海道に呼んでいました。
年齢とともにこれからは難しくなるかもしれません。
親族は近くにいるのですが、
独居をしている母は心配になります。
携帯電話やメール、見守りポットなど
いろいろ利用して連絡を絶やさないようにしていますが、
直接会うこと、直接話すことが
大切だと思っています。
でもそれがままならないのが現実でもあります。

2011年1月27日木曜日

4_98 地質課題:西予1月

 月末は西予の話です。継続中のシリーズに、割り込むようなことになりますが、お許しください。今回は、西予市の地質に関する課題をまとめました。いろいろ課題があります。しかし、科学の進歩とは、こんな課題を設定して、解決していくという繰り返しかもしれません。

 以前にも紹介しましたが、講演会にそなえて西予市の地質図を作成していました。現在は、地質図は一段落して、論文を読むことに集中しています。西予市の地質を来年度にまとめて発表をする予定です。それが、私の西予市滞在に対するお礼だと思っています。
 こちらではなかなか手に入らない論文もあるのですが、主だったものは入手しました。西予市は、私の地質学の研究対象ではなく、科学教育の対象として地質情報を利用し整理していました。そのために、主だった岩石や露頭は見ています。研究対象にしていたわけではなかったので、重要な論文は見ていたのですが、あまり系統的、網羅的に読んでいませんでした。
 今回、地質に関するまとめをする必要に迫られて、大量に一気に、そして系統的に論文を読んでいます。すると、西予市は、地質において、進行中の論争が現在もあります。いくつもの課題があり、まだ決着をみていないものもあることがわかってきました。講演会向けの地質図は、その段階で仕上げましたが、どの説をとるかで今後、分帯が変わるかもしれません。
 多数の論文を「ほぼ」読みました。現在も、まだまだ必要な論文があり検索中ですが、入手できれば、また読みふけることになります。最初はメモを取りながら読んでいたのですが、はかどらないで、まずは、読んで頭に入れることを主眼にしました。
 現在、重要論文を読んでいます。大部のもの、書籍などがいくつかあり、精読が必要なので時間がかかります。今月中はこれらの論文に集中しようと思っています。
 まずは一度きちんとまとめて、課題と現状を整理して論文としてまとめる予定です少々専門的になりますが、西予の地質に関して、以下に、課題を箇条書きにしておきましょう。

【黒瀬川帯について】
・付加体(秩父帯)の中に、なぜ大陸要素が入っているのか
・黒瀬川帯の由来(マイクロコンチネント説、ナップ説、横ずれ断層説):日本の構造発達史に関連
・内帯との類似岩類との関係は
・西予市中部でなぜ黒瀬川帯が途切れるのか
・西予市三瓶の真穴帯と八幡浜市大島の変成岩と黒瀬川帯の関係
・九州延長との関連

【秩父帯について】
・西予市中・西部から大洲市にかけて分布する秩父帯の南部と北部の境界
・北部秩父帯の構造(背斜・向斜の繰り返し、北傾斜の構造、逆転の意味)
・魚成スラスト(黒瀬川帯と秩父南帯の境界)の西延長、あるいは北西延長はどこを通るのか
・北部への三波川変成作用の影響
・北部秩父帯と三波川帯の関連
・秩父帯内の玄武岩ブロックの化学組成の違い(起源)の意義

【御荷鉾帯について】
・御荷鉾帯の所属について
・御荷鉾帯の起源
・三瓶から大洲までの分布の連続性について
・ピクライト、角閃岩の意味

などなど。少々専門的になりましたが、挙げればキリがないほど、課題満載です。このうちいくつかは、ある程度説がかたまっているものもありますが、まったく手付かずの課題もあります。
 科学というのは、終わりのない作業です。新しい知見が得られれば、次なる疑問が生まれます。西予市の地質でも同じことが起こっているのでしょう。
 私は、西予を地質調査しているわけではないので、これらの課題に答えを出す立場ではありません。上で述べたような課題の整理と、その現状での到達点を整理して、それを活かした地質図とその解説書を作成することです。それが私の残された時間内での重要「課題」となります。

・町に馴染む・
寒くなってから全く出歩かなくなりました。
大量の論文を読まなければならないということもありましたが、
寒さにすくんでいたというところでしょうか。
買い物も可能なかぎり減らし、
近場で何もかも済ませて
活動の場を最低限にしています。
町の人も似たような生活をしているようです。
半冬眠状態です。
春が待ち遠しいのですが、
春がくると、四国での生活も終わります。
まだ行きたいところがたくさんあるのに。
残された時間が限られています。
本当なら冬眠などすることなく
活発に動けばいいのですが、
町の人と同じような生活をしています。
町に馴染んだのでしょうかね。

・冬と春・
1月の大雪の影響はまだ残っているでしょうか。
北海道は、雪の影響で交通渋滞がかなり続いていたようですが、
もう解消されたのでしょうか。
私いる西予市は、1、2日は、大雪で混乱しましたが、
それ以降は回復しました。
寒い日は続いていますが、先日、天気のいい日に、
市内の石を見に行ったとき、田んぼの脇のひだまりに
菜の花が咲いていました。
まだ1月なのに、もう菜の花と思いました。
近くにあった梅の枝では、
まだ蕾は固く、もう少し時間がかかりそうでした。
さてさて春は近いのでしょうか、遠いのでしょうか。

2011年1月20日木曜日

2_88 ヒ素の利用:GFAJ-1 その3

 GFAJ-1は、普通の生物では毒となるヒ素を、生きるために利用しています。では、どのようにして、確かめられたのでしょうか。そして、ヒ素を利用する生物とは、生物の進化においてどのような意味があるのでしょうか。

 GFAJ-1というバクテリアは、ヒ素を体内に貯めることは知られていました。でも、ヒ素が本当に成長に必要なのかが、不明でした。ヒ素の必要性を調べた結果が、先月報告されました。
 ウルフ-サイモンたちは、湖から採取したGFAJ-1を、研究室で培養しました。培養とは、微生物の研究によく使われる方法で、微生物を育てる条件をいろいろ変えて、どの条件のとき成長(増殖)したかを調べます。増殖の度合いによって、その環境を好むかどうかを判定していきます。
 培養実験でGFAJ-1は、リンだけの環境でも、ヒ素だけの環境でも、成長できませんでした。しかし、リンが極端に少なくても、生きていけ、増殖できました。また、ヒ素がほとんどない環境に比べて、ヒ素がある方が、細胞が1.5倍も大きくなっていました。リンが多い環境と比べると、ヒ素の多いほうが、6日間で20倍も増えました。
 以上の培養実験の結果、GFAJ-1は、リンの代わりにヒ素の多い環境の方を好み、ヒ素を不可欠なものとしていることが明らかになりました。
 研究では、放射線標識されたヒ素(放射性同位体のヒ素を加えたもの)で培養実験されています。これは、放射線を出すヒ素で育たGFAJ-1の細胞の内部を、放射線を感知できる装置で調べることによって、どこにヒ素が分布しているかをたどることができます。
 それによると、ヒ素は、タンパク質、脂質、ATPのような代謝物質、さらにはDNAやRNAからも検出されました。通常の生物であれば、リンが利用されているはずの所に、GFAJ-1ではヒ素が使われていたことがわかりました。ただし、培養実験から、ヒ素は、完全なリンの代替ではなく、程度はわかりませんが、成長には必要不可欠な役割を担っていることがわかります。
 なぜ、今回のGFAJ-1の発見が重要かというと、地球生物の進化、あるいは生物の系統に対する考え方が変わる可能性があるからです。
 モノ湖は、極限的な環境で、生物には住みづらいところなのですが、ヒ素を光合成に利用する生物も住んでいます。似たような生物は、モノ湖以外でも、現在、20種以上も見つかっています。今回のGFAJ-1は、ヒ素を光合成に使う直系の祖先になるかもしれません。
 光合成生物は、普通、水と二酸化炭素から炭水化物を合成し、水の分解によって生じた酸素を大気中に放出しています。このような光合成をする生物は、約25億年前に登場しています。
 それ以前の地球は、酸素のない環境でした。なぜなら大気や海水中の酸素は光合成生物が産み出したものだからです。それ以前の生物は、水の代わりに、硫化水素や鉄の一種、あるいはヒ素を利用して光合成をしていたと考えられます。そこでは、多様な光合成の仕組みが採用されていたはずです。ただし、生存競争に勝ったのは、現在の光合成の仕組みをもつ系統の生物だったのでしょう。
 ヒ素を光合成に利用する生物は、光合成の起源をたどるために重要な役割もっています。そしてGFAJ-1は、ヒ素を光合成に利用する生物の直系の祖先に位置づけられます。
 生物は、地球以外の極限的ともわれるような環境でも、発生できる可能性があることを、GFAJ-1は示してます。この結果を拡張していくと、もしかすると地球生物は、宇宙生物のほんの一部にすぎないかもしれません。つまり、地球環境を前提や先入観にした生命探しは、大きな間違いを生むかのせいがあるかもしれません。
 今回のような先進的な研究には、いろいろ反論もあります。その問題点に答えることが、新たな進歩を生むかもしれません。次回は反論を紹介しましょう。

・西予の地質・
現在、西予市の地質をまとめるために、
毎日、たくさんの論文を読んでいます。
手に入らない論文もあるのですが、
可能な限り手配しています。
西予市は、地質において、
いろいろ論争をあることは漠然と知っていました。
今回論文を多数読んでみて、
いくつもの論争が、現在も進行中であり、
まだ決着をみていないこと、分かってきました。
これは、一度きちんとまとめて
課題と現状を整理しておく必要があると思っています。

・水道凍結・
週末から今週にかけて、冬型が強くなり、
全国で、大雪と低温に見舞われています。
城川も低温と大雪になりました。
各家でも、水道管の凍結が起こっています。
我が家も温水の配管が凍り、湯がでなくなっています。
無理をせず、自然解凍を待つしかありません。
その間、水道管の破裂がなければいいのですが。
水だけは凍らさないように
ちょろちょろと流して対策しています。
幸いなことに、沢水を利用しているので、
水道代がいりません。
ですから、寒い日は水道を流すようにしています。

2011年1月13日木曜日

2_87 極限生物:GFAJ-1 その2

 NASAの発表は地球外生物ではなく、アメリカの湖から発見されたバクテリアでした。しかし、そのバクテリアは、生物学者を驚かすものでした。それは、どのような生物だったのでしょうか。

 前回、NASAが、12月初めに、地球外生命の証拠探しに衝撃を与えるような発見の記者会見を開くというところまで紹介しました。その会見の内容は、残念ながら、地球外生命の発見ではありませんでした。
 アメリカの科学雑誌「サイエンス電子版」の12月2日(米国時間)に掲載された論文のタイトルは、

A Bacterium That Can Grow by Using Arsenic Instead of Phosphorus
(リンの代わりにヒ素を使って成長できるバクテリア)

というものでした。
 発見されたバクテリアは、れっきとした地球上の生物でした。発見場所は、アメリカ、カリフォルニア州のモノ(Mono)湖です。モノ湖は、塩分の濃度が非常に高く、アルカリ性で、通常の生物では、非常に生きづらい環境です。さらに、湖水のヒ素の濃度も高く、生物にとっては極限的な環境となります。ヒ素は通常の生物には猛毒となります。
 ところが、そんな環境でも、生きている生物がいました。このような過酷な環境で生きる生物を極限生物と呼ぶことがあります。
 そのバクテリアは、プロテオバクテリア門ガンマプロテオバクテリア綱オセアノスピリルム目ハロモナス科に分類される真正細菌で、GFAJ-1と呼ばれています。
 このGFAJ-1自体は、2009年にフェリッサ・ウルフ-サイモン(Felisa Wolfe-Simon)博士がすでに発見していました。今回、彼女とその共同研究者が、この生物を培養して、その特徴を明らかにしました。
 その特徴は、論文のタイトルどおり、リン(P)の代わりにヒ素(As)を使って成長できる生物であったということです。
 生物における主要6元素と呼ばれているのは、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)、イオウ(S)、そしてリンです。他の元素も使われていますが、その量は少なくなります。
 これらの元素が、別の元素に置き換わることがあるのは知られていますが、その量は微々たるものでしかありません。6つの元素のどれかを、たくさん入れ替えて生きている生物は、今まで知られていませんでした。
 6元素の中でリンは、DAN(生物の中で遺伝情報を記録しているもの)やタンパク質(生物の体を構成するもの)、ATP(エネルギー代謝を行うもの)などを形成するために、不可欠な成分となっています。ですから、リンがなかったら、生物は成長することも、生きていくこともできないと思われていました。
 ところが、GFAJ-1は、リンの代わりにヒ素を使って生きていき、成長できることがわかったのです。これは、今まで知られている地球上の生物では、想像もできない仕組みでした。地球以外の環境(例えばリンが少ない天体)や、地球生物とは違ったメカニズム(6元素以外の代替元素で)で生命活動をする生物がいる可能性を示しています。それが「宇宙生物学的」に貢献し、「地球外生命の証拠探しに衝撃を与える」ことを意味しているということだったのです。
 そもそもヒ素は、なぜ生物に有害なのでしょうか。それは、周期律表をみるとわかるのですが、ヒ素は、リンの下に位置しているために、化学的にはリンと似た性質をもっています。ですから、リンとヒ素は、簡単に置き換わってしまいます。生物は、リン酸イオンとして使っていますが、その化学的な振る舞いは、ヒ酸イオンと似ています。
 ところが、ヒ素は、多くの生物にとっては毒として作用します。かつてヒ素は、殺鼠剤や暗殺に利用されましたし、森永ヒ素ミルク中毒事件、和歌山毒物カレー事件などはで何人も死人がでています。もちろん微生物のようなものにとっても、毒になります。
 さて、GFAJ-1が、ヒ素を利用しているというのは、どのようにして調べてきたのでしょうか。その内容は、次回としましょう。

・寒波・
正月からしばらくは全国的に寒波が襲い、
寒い思いをされている方も多いと思います。
私も、北海道と愛媛とで
それぞれ違った寒さを味わっています。
先週の6日に愛媛に戻ってきました。
長く空けていた家は冷え冷えとしていて、
ストーブをつけてもなかなか温まりません。
北海道の家は、ストーブをつけっぱなしでので
暖かく快適でした。
まあ、その分エネルギーもたくさん使っていることになります。
今年の冬は、四国で小さなストーブで暖をとりながら、
過ごすことになります。
でも、これも四国での研究生活の一部です。
愛媛の山奥の寒さも、せいぜい楽しみましょう。

・深酒・
先日、友人宅で久しぶりに酒を飲みました。
宴会は長時間に及んだのですが
どうも調子にのって飲み過ぎたようで、
朝8時前に起きたら気分が悪く、
久しぶりに二日酔いになりました。
9時半くらいまでもうひと眠りしたら
やっと酒が抜けました。
でも、飲み過ぎた翌日は、
仕事がなかなか思うようには進みませんね。
やはり、飲み過ぎには注意ですね。

2011年1月6日木曜日

2_86 宇宙生物学:GFAJ-1 その1

(2011.01.06)
 明けましておめでとうございます。新年最初のエッセイは、宇宙生物学上の大発見の話題にしましょう。昨年、12月はじめに、宇宙生物学上の大発見があったというニュースが事前に流れました。そこから話をはじめましょう。

 NASAは、アメリカ東部時間の2010年12月2日午後2時(日本時間3日午前4時)に重要な発表をすると、11月29日にアナウンスしました。このニュースを、科学者たちも固唾を呑んで見守っていました。私もそのニュースを聞いて、いろいろ空想しながら、情報源をあたっていました。
 するとNASAのメディア用のリリースから、次のようなものを見つけました。

 NASA Sets News Conference on Astrobiology Discovery; Science Journal Has Embargoed Details Until 2 p.m. EST On Dec. 2
(NASAは、宇宙生物学上の発見について会見を、Science誌の解禁時にあたる東部標準時12月2日午後2時におこなう)

 研究の成果は、論文に掲載されてはじめて信頼できるものとなります。ですから、どんな重要な発表でも、論文を作成して、学会や科学の雑誌に掲載する努力がなされます。そして、掲載が決まれば、雑誌の解禁時に、その内容はプレス発表として公開されます。
 このニュースのもとになった研究は、すでにアメリカの権威ある科学誌「サイエンス」に投稿され、他の研究者の査読(科学的に信頼性があるかどうかを評価される)受け、12月3日付の号に掲載が決まったものです。「サイエンス」の発行日にあわせて、NASAから重要な発表があるというアナウンスがあというものです。
 メディア用のリリースでは、次のような説明がありました。

 NASA will hold a news conference at 2 p.m. EST on Thursday, Dec. 2, to discuss an astrobiology finding that will impact the search for evidence of extraterrestrial life. Astrobiology is the study of the origin, evolution, distribution and future of life in the universe.
(NASAは東部時間12月2日午後時に地球外生命の証拠探しに衝撃を与えるような宇宙生物学的発見に関する記者会見を開きます。宇宙生物学とは、宇宙の生命の起源、進化、分布、未来に関する研究をするものです。)

 宇宙生物学の大発見といっています。宇宙生物学上の一番の発見は、地球外生物の証拠を発見したというものでしょう。
 NASAの宇宙生物学プログラムディレクター、バクテリアの研究者、火星の生命探査計画している研究者、応用分子生物の研究者、生化学反応の研究者が、記者会見に出席するようです。どうも現在進行中の探査の中心メンバーはいないようです。ですから、惑星探査によって見つけたものではなさそうです。でも、期待は高まります。
 以前にも火星起源の隕石から発見された化石らしかものを見つけたときも、同じような手続きを踏んでいます。そのときは、学界や研究者に大きな衝撃を与えました。今回も、研究者も驚くような発見があったかもしれません。このニュースの発表を、日本の放送局も、地球外生物の発見に備えて準備をして待っていたと聞きました。
 さてさて、その内容は、次回としましょう。

・邁進・
いよいよ新しい年がはじまりました。
毎年思いますが、1年の経過早いですね。
もう、新年か、という感じです。
時間の流れはすべての人に平等に与えられています。
同じ時間を、あるときは長く感じたり
またあるときは短く感じたりします。
そん時間な感覚に頼るのではなく、
時間をどう過ごしたかが重要なはずです。
悔いのない時を過ごすこと。
それに邁進し、実行することでしか
時間の流れには対処できないのかもしれません。

・悔いなく・
西予市城川に来て9ヶ月が過ぎ去りました。
まさにあっという間の出来事のようです。
城川で残された時間は、あと3ヶ月です。
今の私にできることは、
過ぎ去った9ヶ月を懐かしんだり
悔いたりすることではなく、
残された3ヶ月を悔いなく過ごすことでしょう。
そのためいは、目標を見失うことなく、
3ヶ月間、努力をし続けていくことでしょう。
がんばります。