生物種がどれだけの期間継続しているのか、という疑問からスタートしました。昔から現在まで生き続けている生物種を探し、極限環境で長期間生きづけてきたことを、証明してきました。しかし課題もあります。
ここまで紹介してきた論文で、地下の古い地層に生きている微生物の存在が明らかにされてきました。その生物は、そこに住みはじめた時期は不明ですが、過酷な閉鎖環境で生きています。代謝の仕組みはまだよくわかっていませんが、進化速度も遅いようです。古くからそこで生き続けてきたことになりそうで、その期間は長いと20億年に及ぶと考えられています。
そこから、もし火星の生物の生存している可能性を推定しました。火星に水が存在した時期に粘土鉱物ができ、ある時生物が発生していれば、環境が地下保存されていれば、現在でも生物が生きている可能性がありました、
この論文の結論は、どこまで確からしさがあるでしょうか。それは今後の課題でもあるのでしょう。見ていきましょう。
試料への現在の生物の汚染には非常に注意を払われています。そして、現状では、汚染がないように見えます。しかし、これも「不在の証明」と同じ困難さを抱えています。汚染がなかったということを証明するには、その生物群が、周辺の生物、あるいは全生物と異なっている「なにかの特徴」を持っているこを示すといいかもしれません。しかし実態のよくわからない生物群が、地下に大量にいることは知られています。ですから、既知の生物は、現存する生物の一部に過ぎないので、異なっていることを完全に検証することはできません。
また、亀裂は鉱物が充填され閉じていること、長期間安定した地層であることから、その環境に長期間生き続けていると考えました。生物として生きているということは、代謝をしていることになります。代謝とは、生きていくために必要な成分を外から取り入れ、生物内で不要になったものを排出するということです。ですから、その生物の周辺では、物質移動が必然的に起こることになります。
その物質移動を生物群、あるいは生態系内で閉鎖することは、難しいと考えられます。なぜなら、エネルギーの保存、エントロピーの保存など、外部からなんらかの関与がないと、代謝を継続的に営めないはずです。亀裂に生物が生きているということは、エネルギーの注入や物質移動が起こってることになります。外部となんらかのつながっている経路があることにあります。それは、生物が通れる通路ともなっていたかもしれません。
閉鎖系となっているのは、最近になって起こったのか、あるいはうがって考えれば、掘削によって一時的にできた状態という危険性もあります。その可能性を排除できないかもしれません。
しかし、今後の展開も期待できます。一番気になるのは、その微生物群の実態解明です。群集のそれぞれの代謝方法や、DNA解析で、種や系統的位置づけがわかってくれば、古い時代のもなのか、特異な環境で生きていけるタイプのか、それとも全く未知の生物群かもしれません。それらが明らかになってくること期待しましょう。困難な研究となると推定されますが、興味深いテーマです。
・名残惜しさ・
大学では、最後の入試、学位記授与式、
教職員の歓送迎会など、
次々と年度末の行事が進んでいます。
今年度で退職なので、
主役となる場面もありました。
最後の授業の補講も続いていたので、
いくつか参加してきました。
どれも最後となると名残惜しいものです。
自身の目標を忘れることなく、
常に淡々と進めていこうと考えています。
・今後は・
このエッセイは大学教員という身分での
最後のエッセイとなります。
名誉教授という称号をただくことになり、
図書館やメールアドレスなどの継続使用が
許されるたのは、ありがたいです。
今後は大学教員の肩書は使うことはなく
在野の研究者として活動していくことになります。
ただ、研究成果の発表の場としとして
大学の紀要への投稿ができるので助かります。