2014年5月8日木曜日

1_125 最古の認定 5:UとThの年代測定

 ジルコンの年代測定は、放射性核種のウランやトリウムの放射崩壊を利用するものです。ウランとトリウムの年代は、回帰直線によって決めていきます。では、その年代測定の方法や原理とは、どんなものでしょうか。

 前回紹介した2つの論文は、古い時代できた鉱物が、新しい時代の地層の中にある構成の粒子となったものを分析した年代です。44億0400万年前という年代は、地球で最古のものなので、年代決定の信頼性が問題となります。
 多くの研究者は、その年代が多分正しいと思っています。なぜなら、鉱物のジルコンから年代測定する手法は、多くのところで使われていて、すでに確立されている技術であることと、その年代の精度が他の手法とクロスチェックを受けているので、信頼性に足ると思えるからです。
 ただし、年代測定やジルコンに詳しい研究者には、不安が残されています。理由のひとつは、さまざまな遍歴をした鉱物なのに、年代の確かさが、まだ十分検証されていないということです。さらに、ジルコンで年代測定に用いている成分が、鉱物の中を移動しやすいことが知られているからです。まして、地球最古の鉱物ともなると、40億年以上、地球の表層付近でさまざまな風化や変質、変成を受けていることになります。その間、本当にその成分は、ジルコンに中に安定的に、時間記録を保存しているのでしょうか。そのような不安を、検証によって払拭することが重要です。
 ジルコンに用いられる年代測定は、ウラン-鉛同位体年代測定とよばれるものです。いくつかの放射性の時計が組み合わさった複雑な年代測定です。それをできるだけわかりやすく説明しましょう。
 ジルコンに含まれている成分で年代測定に利用されている成分は、放射性をもつウラン(U)とトリウム(Th)です。ウランとトリウムは化学的に挙動が似ているため、ウランを含む鉱物にはトリウムも含まれていることがよくあります。
 陽子の数が同じウランという元素でも、中性子の数(質量数)が違っている原子(核種といいます)があります。それを同位体と呼びます。
 ジルコンの中の、ウランやトリウムが崩壊して、鉛(Pb)になっていきます。自然界に存在するウランには、質量数が234(234Uと表記されます)、235Uそして238Uという同位体があります。いずれの同位体も放射性を持っています。232Thも放射性をもっています。234Uは、238Uが崩壊するときにできるもので、中間生成物となります。ですから、ここでは取り上げません。
 いずれのウランもトリウムも、崩壊して、いろいろな経路をたどるのですが、最終的に鉛になっていきます。鉛は放射性をもたない、安定した核種となります。
 ジルコンの年代測定に利用できる放射性核種には、次のようなものがあります。
  元の核種   半減期  崩壊核種
   232Th   140.1億年  208Pb
   235U   7.038億年  207Pb
   238U   44.68億年  206Pb
 放射性核種の半減期が違っているので、成分さえ選べば、多様な年代測定に利用できることがわかります。
 年代測定をするには、ウランと鉛、あるいはトリウムと鉛の核種の質量数ごとに測定しなければなりません。壊れる前のもとの核種(親核種といいます)と崩壊でできた核種(娘核種)を測定します。さらに、マグマから同時にできた違う鉱物(親核種の含有量の違うもの)を、複数測定して、グラフ上で直線(回帰直線)を引いて、その傾きから年代を求めることになります。この方法は、アイソクロン法と呼ばれています。省略しますが、その成分抽出から測定は、なかなかやっかいなことになります。
 2つのウランの放射性壊変がありますので、もともとのウランの同位体比がわかっていれば、ウランの2つの系列から(235U→207Pb、238U→206Pb)、鉛の同位体(ただし安定核種の204Pbも)だけを測定をすれば、年代を決めることも可能になります。ウラン2つの崩壊系列を、数学的に一種の連立方程式で解くことになります。ただし、こちらもアイソクロン法なので、複数の鉱物が必要になります。
 いずれの方法も、アイソクロン法なので、ジルコンの年代測定には利用できません。ジルコンは、一つの種類の鉱物だからです。しかし、実際には年代が求められています。そのからくりは、次回としましょう。

・反省・
皆さんは、ゴールデンウィークに予定していたことが
できたでしょうか。
家族や夫婦、友達、ひとりで
なにかする、どこかに出かけるなどの予定が
順調にこなせたでしょうか。
我が家では、行楽も出かける予定はなかったので
淡々と休みを自宅で過ごしました。
私は、自分のやりたいことを考えていました。
私は、仕事ができなかったのが、一番の反省です。

・桜の季節・
ゴールデンウィークも終わり、
北海道もやっと桜が満開になりました。
今年は少々遅くまで寒さがあったので、
桜も少々遅れ気味です。
ゴールデンウィーク中にも肌寒い日があり、
我が家ではストーブを焚いた日もありました。
でも、着実に春は深まっています。

2014年5月1日木曜日

1_124 最古の認定 1:最古の信頼性

 地球で最古の物質の年代が決められて、10年以上が経過しています。ただし、その年代の信憑性が検証されたわけではなく、一応の仮説として存在していることになります。この年代をもう一歩進めるためには、年代の信憑性を示すことが必要です。それができれば、同様の手法のデータへの信頼性も増すはずです。

 地球で最古の岩石は、約40億年前のものです。最古のものが、岩石という形になっていて、岩石自体ができた時代を示しています。ですから、岩石から得られた情報は、その時代の情報であることになります。地球の材料である隕石の年代は、約45.6億年前であることがわかっています。その間、約5.6億年間が、資料がない、調べられない、「ミッシングリンク」となります。
 ところが、間を埋める年代をもつ物質はあります。それは、地球以外の天体である月から採取された岩石です。45億年前のものまであります。これはこれで、重要なデータですが、地球の歴史を調べるには、やはり地球で最古の物質探しは続くでしょう。そして報告はそれなりのニュースで伝えられるでしょう。
 技術の進歩によって、非常に小さな鉱物の粒一個でも年代が測定できるようになりました。20世紀終わり頃に出てきた技術で、21世紀にはいる頃になると、その装置(SHRIMPと呼ばれる装置)は普及して、各地で微小な物質の年代測定がなされました。その一環で、最古ハンターたちも動き出しました。その結果、40億年前後の年代の岩石が、いくつかの地域で見つかるようになりました。
 そんなデータラッシュの中でも、2001年は、地球の歴史を探る上で研究史上のひとつのマイルストーンになる時代でした。
 40億年前よりかなり古い時代を示す物質が発見されました。著者も対象地域が違う2つの論文が、同じ雑誌に報告されました。1編は42.8億年前に海の証拠があったいう論文で、他方は44億年前の鉱物の発見の論文でした。両方とも重大な論文でした。
 もともと西オーストラリアには、古い鉱物を含む堆積岩あることが知られていました。マーチソン地方では、約30億年前の堆積岩の中のジルコンという鉱物が古い年代を示すことが知られていました。それまでは42億7600万年前の年代が知られていました。この論文では、42.8億年前の年代で、少し古くなりました。この論文の重要な指摘は、そのジルコンが堆積岩が溶けてできたマグマに由来するということでした。
 もうひとつの論文では、西オーストラリアのジャックヒルというところで、30.6億年前にたまった堆積岩の礫から、44億0400万年前のジルコンという鉱物が発見されました。かなり古い時代を示しました。さらにこちらの論文では、海の痕跡があるという報告がなされていました。
 堆積岩起源のマグマも海の痕跡も興味があるのですが、その話は以前にも何度か紹介した(「1_5 「最古のもの」より古いもの」や「1_12 最初の固体」などを参照ください)ので、ここでは省きましょう。
 いずれの論文の年代を求めたのは、ジルコンという鉱物でした。ジルコンは、頑丈な鉱物で、一度できると風化や変成作用にも、かなり耐えることが知られています。ですから、10億年も新しい時代の堆積岩の中でも、昔の年代を保存していたと考えられています。その年代は、本当に大丈夫でしょうか。
 隕石のように、宇宙空間で、長年風化や変成作用を受けないような状態で保存され、最近地球の落ちてきたのであれば、年代が変化することなく、保存されていると考えられます。
 しかし、地球の表層の岩石は、いろいろな変動を受けるはずです。それも古くなればなるほど、さまざまな変動を受けているはずです。そもそも堆積岩の中にあった砂粒です。そして堆積岩自体も、30億年間も地球にあり、変動を受けてきたものです。そんな堆積岩の中のジルコンで、その中の年代を表す成分が、変化や移動していないという保証はあるのでしょうか。それは重要な問題です。たとえ年代正しいだろうという気持ちがあって、検証されなければ、正しいといえません。その検証に関する報告が、2014年2月下旬になされました。次回、それを紹介しましょう。

・記載・
年代測定は、地球最古や本邦最古などがつくよう値なら
学会や世間でもニュースになります。
ところが、研究者が調べている年代は、
大部分、ニュースになることのない
当たり前の年代値です。
それでも、調べなくてはならないのです。
だいたいこの年代と推定されていても、
その推定を検証する必要があります。
検証や確認作業の積み重ね、つまり記載が、
科学には不可欠なものになります。
そんな記載の蓄積から、
あるとき大発見が生まれるのです。
最古を追っていた人も、
一度は報われたとしても、
2度も3度もホームランを打てる人はいません。
ですから、誰もが淡々と
当たり前の年代を記載していくことになります。
科学の多くの時間は、
記載や確認に費やされているはずです。

・めまぐるしい天気・
ゴールデンウィークの半ばですが、
皆さんは、何か計画がありますか。
私の大学は暦通りの休日ですから、
週末から4連休になります。
しかし、我が家は、特別な計画はなしです。
子ども達がクラブや試合などで毎日でているため、
家族で出かけることはできません。
まあ、合間をみて、食事に行くくらいでしょうか。
これまで北海道は、いい天気が続いています。
雨がほとんど降らない春の天気でした。
週の初めは寒い日がありました。
昨日当たりから暖かい、いや蒸し暑い天気となっています。
めまぐるしく天気が変化しています。

2014年4月24日木曜日

4_112 春の四国へ 3:互層

 宍喰(ししくい)の海岸には、砂岩泥岩の繰り返す互層(ごそう)あります。互層は、このあたりでは、垂直に立った地層になっていので、なかなか壮観なものとなっています。互層の断面に時間と変動を見ることができます。

 宍喰のリップルマークには、波がつくったみごとな模様が残っていました。リップルマークは、砂岩の表面に残された模様です。リップルマークは、ある時間面をみていることになります。
 一方、地層の重なっている断面は、時間の積み重なりを意味します。リップルマークもいいのですが、整然と重なっている地層の断面も、時間を意識してみると、なかなか見応えがあります。宍喰での目的は、リップルマークの他に、同じ地層の断面を観察することでもありました。
 宍喰のリップルマークの露頭の脇からも断面がみえます。しかし、周辺には、きれいな地層の断面が出ているところがいくつかあります。とりあえず近くでは、リップルマークの東、県道では次のヘアピンカーブにあります。そこには、道路脇に連続する地層の断面がよく見えます。
 もうひとつ、きれいな砂岩泥岩の互層が見られるところがあります。県道309号から少しはずれ、竹ヶ島に向かいます。竹ヶ島は陸に近く、狭い海峡を橋で渡ることができます。橋をわたってすぐ左手に海洋博物館マリンジャムという施設があります。この施設の脇から海岸にでることができます。
 その海岸にきれいな地層がみえます。リップルマークのあった地層とは、連続しています。
 私が訪れた時は夕方で、潮が引いていたので連続的に地層を見ることができました。海岸の地層は、侵食を受けて、海食台を形成しています。ですから、潮が引くと海食台の上を歩きながら、地層をみることができます。
 竹ノ島の海食台と地層の断面は、なかなか壮観です。ここの地層も、ほぼ垂直に立っています。10cm前後の砂岩と数cmの泥岩が繰り返しています。砂岩は、の黄土色で出っぱっています。泥岩は、黒っぽくてちりちりにくだけ、侵食を受けてくぼんでいます。そんな砂岩泥岩が繰り返しています。砂岩と泥岩の繰り返しは、互層(ごそう)とよばれています。
 互層は、繰り返すという規則性はあるのですが、砂岩泥岩の厚さや量比に規則性がありません。個々の地層には、同じものはありません。それぞれが別の時代に、別の条件によってつくられたものです。そして、一つ一つの地層に流れた長い時間があります。多様な相違や変動が、繰り返し起こることが、互層を形成しました。地層から、そんな時間や変動を味わえるので、見飽きることはありません。

・ストリートビュー・
今回の露頭の位置を確認するために、
地図のGoogle Mapでみたら、
ストリートビューがこのコースを走っており、
道路脇の露頭をみることができます。
興味のある方は、ご覧になってはいかがでしょうか。
また竹の島の潮の引いた海食台も
ストリートビューでみることができます。
なんと素晴らしい時代になったのでしょうか。
自宅に居ながらにして
このエッセイの場所にいって
見たような気分を味わうことができます。
ただし、満足感は現地に行くのと比べものになりませんが。

・異臭・
マリンジャムから海岸に降りようとしたら、
異臭が漂ってきました。
海岸の岩場にこげ茶色の大きな丸い物体がありました。
よく見るとアザラシ?の死体でした。
腐敗が少し進んでいましたが、
それほど古いものではなさそうです。
その海岸はテトラポッドを隔てて
海岸に降りるルートのすぐ脇でもあります。
岩場にはあまりいかないとしても、
施設の人も異臭に気づいていたはずです。
なぜ死んだのか、どうしてここに打ち上げられたのか。
そして、今はその死体がどうなっているか、
気になるところです。

2014年4月17日木曜日

4_111 春の四国へ 2:リップルマーク

 春の四国の旅の話は、当初、6つほど連続で紹介する予定でした。そうすると、他の新しい話題がとどこおり、同じ話題ばかり長く続くと、読む側も飽きてくるかと思いました。そこで話題を、3つのグループに分けて、詳しく紹介することにしました。今回は、リップルマークを中心とする話題で3回の連載を予定しています。

 徳島県海陽町宍喰は、徳島県でも最も南にあり高知県に隣接しています。宍喰と書いて「ししくい」と読みます。少々難しい読み方になっています。「宍」は、「しし、にく」などと読み、食用の獣肉という意味です。宍喰は、狩猟によって得た肉をたべるという意味で、鎌倉以降につけられた地名だそうです。
 私は、宍喰には何度も来ています。以前にも2回ほど、今回の調査でも日をあらためて、3回訪れました。なぜ、何度もここに来たかというと、国指定の天然記念物の「化石漣痕」があるからです。「化石漣痕」を詳しく調べたいと思っていました。可能であれば、良い光の条件で撮影もできれば思っていました。
 「化石漣痕」の漣痕とは、リップルマークとも呼ばれ、海底にたまった砂が、水流によって波打った模様ができます。古い時代のものなので「化石」とついていますが、生物とは関係ありません。過去のリップルマークという意味合いで使っているのでしょう。
 砂浜などで風によってできる波模様、風紋も、リップルマークとなります。陸地や海底などで、さまざまな場でリップルはできます。リップルマークは、砂の性質と空気や水の流れの性質によって、いろいろな模様ができます。模様から、流れの様子を復元することもなされています。
 宍喰のリップルマークは、海底で形成されたものです。タービダイトとよばれる海底の土砂流が、斜面を流れ下る混濁流によってできたものです。その時の流れや海底にもともとある底層流などによってリップルマークが形成されます。大陸斜面におこった大きな異変の証拠にもなります。
 国道から県道に入り少し行ったところ、道が大きくカーブする山側の切り立った崖がリップルマークのある露頭です。露頭は、ひとつの地層の面が広く見ることができます。その面のリップルマークがきれいに残されています。壁に向かってリップルマークを眺めると、海底の水流が左下から右上にむかって流れていることを感じることができます。
 このリップルマークは四万十帯と呼ばれる地層にあり、約4000万年前に形成されたものです。リップルマークから読み取った流れの方向を、堆積していた時代の海底にもどすと、東北東から西南西に向かった流れになるようです。この方向は、現在の南海トラフにある大陸斜面と同じでもの、4000万年前から似たようなタービダイトが形成される環境があったことになります。つまり、海洋プレートが沈み込むような海溝とそれに続く大陸斜面があったということです。
 列島と海溝のセット(島弧-海溝系と呼ばれています)、つまり付加体形成の場が、ここには古くから存在していたことになります。そんな太古の時間をリップルマークから感じることができます。何度見ても見飽きません。

・露頭のすごさ・
天然記念物のリップルマークは
国道から少し奥まった県道沿いにあります。
地図にもでているのすぐにわかると思います。
でも人里少ない道路なので、
ここでいいのか少々心配になるようなころ、
その露頭が現れます。
露頭をみれば、その大きさや見事さに
きっと圧倒されることでしょう。
リップルマークのある露頭面だけでなく、
横に回ってみると地層の断面がよく見ます。
すばらしいものです。
もし、時間があれば、足を伸ばして
海岸でも断面が出た地層を見ることができます。
その様子は、次回、紹介します。

・ペンション・
今回の宍喰の調査では、
リップルマークのすぐ下にある
ペンションに泊まりしました。
海岸わきにたつ瀟洒なペンションで、
いくつもの棟があります。
なかなかいいところです。
存在は知っていたのですが、
今回はじめて宿泊しました。
この海岸はペンションのものなので、
プライベートビーチになっています。
食事もオリジナルの珍しいものを
出していただけるので
満足いくものとなるはずです。
もし近くでお泊まりの際はおすすめします。

2014年4月10日木曜日

4_110 春の四国へ 1:付加体

 年度末の3月下旬に、四国へ調査に出かけました。5泊6日の旅でした。千歳を発って、羽田を経由して、高知龍馬空港にいき、そこからレンタカーで出かけました。目的地は四国南東部です。春の四国を巡る調査の様子を紹介しましょう。

 本来は秋に調査に出るつもりでいましたが、忙しくて出れず、延ばし延ばしにしていたのですが、校務の隙間をぬって、3月末にやっと調査に出れました。
 今回の調査で初めて行く地域もあったのですが、ほとんどは何度か行っているところでした。今回の目的は、いくつかの地域を再調査して、データを取りなおすことでした。その地質学的な意味を、何度かに分けて紹介していこうと思います。
 3月下旬、北海道は雪も何度も降っていましたし、まだ雪がたくさん残っていました。同じ日に、高知の太平洋沿岸を走っていると、桜が咲いていました。北海道の雪から四国の桜をみると、日本列島の南北の長さを感じました。
 さて、四国の地質についてです。四国の南部は、四万十帯とよばれる地質が広く分布しているところです。南海トラフと並行して東西に地層が並んでいます。四万十帯は、このエッセイでも何度かでてきました。その時も紹介しましたが、四万十帯は付加体とよばれる地質体です。
 付加体とは、海溝から大陸斜面にかけての列島の地下で形成されるものです。列島に海洋プレートが沈み込む時、海洋プレートの上部の岩石や、その上にたまった堆積物が剥ぎ取られて、列島にくっつきます。それはゆっくりとした動きですが、地球の長い時間のよって営まれる作用なので、大規模で雄大な結果となります。時には大きく激しい変化として、断層の形成や地震を起こします。
 付加体の中には、激しく擾乱をうけたものから規則正しく整った地層まで混在しています。これが付加体の特徴となります。
 剥ぎ取られたものは、非常に多様な岩石の様子やつくり(産状といいます)となります。もとの産状が、きれいに残されたものから、まったくわからなくなるほど乱されたもの(メランジュと呼びます)まで混在しています。
 規則正しく整った地層は、タービダイト層とよばれるものからできています。河川からもたらされた堆積物が河口付近にたまり、洪水や地震などのをきっかけに海底地すべり(重力密度流と呼ばれます)として、大陸斜面を流れ下ります。堆積物の流れ場、傾斜のゆるやかな盆地や海溝付近にたまります。これがタービダイト層となります。海溝付近のタービダイト層は、断層によって、メランジュとして巻き込まれることがよくあります。メランジュには、タービダイトに由来する堆積物が多く含まれているのが観察できます。四国南西部は、付加体がさまざまな様相で分布していることろです。
 春の四国は、付加体を巡る旅となりました。何回かに分けて紹介しましょう。

・大地を眺める・
「地球地学紀行」のコーナーは、
久しぶりの配信となります。
久しぶりになったのには、いくつかの理由があります。
私は、「大地を眺める」という
月刊のメールマガジンを発行しています。
そのエッセイを毎月書いているため、
地学紀行のネタがなくなって、
ついつい間が開いてしまいました。
しかし、今回のように、
以前「大地を眺める」で取り上げた地域であれば、
気にせずにこのエッセイで取り上げることができます。
このシリーズも以前「大地を眺める」で紹介したのですが、
気にせずに紹介してきます。
ご期待いただければと思います。

・1年生・
大学では新学期が始まりました。
1年生は、初々しいく、まじめに授業を受けています。
しかし、2年生以上は馴れて
ちょっとくだけた様子で授業を受けています。
もちろん、1年生でもくだけていたり、
2年生以上でもまじめに受けている学生もいます。
いろいろな個性があるということです。
しかし、まだ大学生活に慣れていない1年生が
まじめに大学生をはじめているのが新学期を感じさせます。
新入生が歩くキャンパスは、春を感じさせてくれます。

2014年4月3日木曜日

5_119 だいち 3:2号機

 「だいち」の後継機が製作されています。「だいち2号」と呼ばれています。当初は2013年度の打ち上げでしたが、少々遅れ、5月に打ち上げられることが先日のJAXAからのニュースがありました。それを紹介して、このシリーズを終わりとしましょう。

 「だいち」の膨大なデータは現在も解析され、利用されているのですが、今後、新しいデータをとることができません。今までの災害や資源管理は、定常的にあるいは緊急時にすぐにモニターできることが必要になります。つまり、観測するための衛星が軌道上にあることが、目的を達成するのに重要になります。後継機として「だいち2号」の開発が進めれていました。その「だいち2号」について、新しいニュースが先日、出されました。
 「だいち2号」は、観測衛星の不在の時期が3年ほどありましたが、2014年5月24日に打ち上げられるとアナウンスされました。種子島宇宙センターから、H-II A ロケット 24号機での打ち上げとなります。
 陸域観測技術衛星「だいち2号」(ALOS-2)は、「だいち」の後継機なので、同じ任務をもった利用がされます。国土の最新の地図情報や災害把握、資源の管理などをしていきます。もちろんその観測は日本だけにとどまらず、地球全域に及びます。
 「だいち2号」は、高度638kmで「極軌道」と呼ばれる北極と南極を通る軌道上をまわります。1日で15回ほど周回して、14日で同じ地点にもどってきます。そのため、2週間毎に地表をもれなく観測することができます。
 もちろん「だいち」と比べれば、打ち上げから8年も時間が経過していますから、より高性能のセンサーを搭載しています。「だいち」には、前回紹介したPRISM(パンクロマティック立体視センサ)以外に、AVNIR-2(高性能可視近赤外放射計2型)、PALSAR(フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ)が搭載されていたました。
 「だいち2号」では、PALSAR-2(フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ)のみになっています。ひとつのセンサーでは能力が落ちたと思われそうですが、実はそうではりません。PALSAR-2の特徴として、レーダを利用していますので、昼夜や天候の影響を受けることなく観測できるます。地表観測では非常に効果を発揮します。
 「だいち2号」のPALSAR-2の通常使用の高分解のモードでは、3~10mとなっています。しかし、PALSAR-2には、新たにスポットライトモードが追加されました。スポットライトモードでは、「だいち」のもの(10m)より精度が高く、1~3mの分解能をもつようになっています。これは、「だいち」のPALSARにはない性能で、「だいち」のPRISMに匹敵する分解能をもっています。
 さらに、「だいち2号」では、左右に30度傾けることで、広い範囲を観測できる機能をもたせました。その結果、観測できる範囲が2320kmと、以前の約3倍も広がりました。ひとつのセンサーですが、以前ものと同等以上の性能や機能を持っているのです。
 「だいち2号」は、「だいち」と以上の性能を、よりシンプルな形で達成します。その結果、衛星の設計寿命も3年から5年へ、寿命の目標も5年から7年へと延びています。
 日本では、基礎データとして5mメッシュの数値標高や位置情報をもっています。そのデータとの違いを観測することに重点がおこなれています。つまり、国土の災害や地殻変動などによる変化の観測することが、重要な目的となっているといえます。
 少し先になりますが、打ち上げの成功を祈っていましょう。

・入学式・
いよいよ新年度です。
我が大学では4月1日に
入学式が行なわれました。
外は春の暖かい快晴の日となりました。
道路の雪も溶けて、スーツ姿の新入生と
ユニホーム姿のグラブの勧誘の学生たちが混在しています。
緊張しながらも、
期待に胸をふくらませている新入生の顔を見るのは
すがすがしくて気持ちいいものです。

・待ち遠しい春・
先週は野外調査に出ていました。
その内容はおいおい紹介するとして、
高知は桜がすでに咲いていて、
変える頃には日本で一番最初に
開花宣言が出されたというニュースも流れました。
北海道なまだまだ雪がたくさん残っています。
でも日に日に暖かくなり、
雪解けも進んでます。
春が待ち遠しいです。

2014年3月27日木曜日

5_118 だいち 2:5m数値標高

 陸域観測技術衛星「だいち」は、2011年5月で運用が停止しました。しかし、「だいち」が得た膨大なデータが残されています。その解析は、現在も進行中です。その概要を紹介しましょう。

 陸域観測技術衛星「だいち」には、いろいろなセンサーが搭載されているのですが、PRISM(パンクロマチック立体視センサー)とよばれるセンサーがあります。このセンサーは、一度に幅70kmの範囲を、2.5mの高分解能で観測できます。最小の画素が2.5mの範囲になるということです。630km上空から、2.5mのものを識別できる精度となります。地上でこの距離と精度を例えると、東京から高知市内を走る車の色を見分けるほどの能力を持っている、ということになります。
 さらに凄いのは、平面だけでなく、縦方向のデータもとることができます。このセンサーを衛星の前方、直下、後方の3つ方向で独立した撮影できます。3つの画像から、立体視ととともに、地形の標高データも読み取ることができます。その精度は、標高が5mというすごいものです。5m四方の範囲(5mメッシュと呼びます)の平均的標高を5mの精度で表現することになります。全地球の3方向の画像がありますので、陸域の地形データを5mの精度で得ることができるわけです。
 このデータがあると、全地表の精細な3次元的表示が可能になります。実は、日本に関しては、国土地理院がレーザー測量している5mメッシュ標高が、無料で公開されています。ただし、日本の都市部などの限られた地域のみなので、国土を網羅しているわけではありません。ですから今回のデータに、私は非常に期待しています。
 このデータ処理には、ものすごく時間がかかるようです。膨大なデータを処理するのに、高性能のコンピュータ技術と手間がかかります。そこには大きな投資が必要になります。
 JAXAでは、月100枚程度の処理をして、精度の検証や研究などに利用されてきました。(株)NTTデータは、全自動で大量処理をできるシステムの開発をして、月間15万枚を処理できるようにしました。その技術で「デジタル3D地図」を2014年3月から公開をはじめて、2016年3月には全地球のデータが完成するそうです。「デジタル3D地図」のデータは、有償で提供されるようです。1km2あたり200円からだそうです。有料ですから、私には利用できません。
 これまで全世界的に整備された数値標は、2003年にアメリカ合衆国が公開したスペースシャトルの90mメッシュのデータ、アメリカと日本(ERSDAC)が共同で運用した衛星「ASTER」が30mメッシュのデータが2009年に公開されています。いずれも無償で公開されています。私も、利用しています。
 「だいち」のデータも、精度を落とした30mメッシュの標高データが、無償で公開していくそうです。「だいち」のデータのほうが、精度が上がっているはずですので、期待しています。
 30mメッシュであっても、全地球のデータは膨大になるので、入手するのに時間と手間がかかるはずです。でも、日本だけであれば、通常のパソコンでも扱うことができます。公開に期待したいものです。多分あと2年は待つのでしょうが。

・ギャラリー・
「だいち」のギャラリーとして
多数の画像が公開されています。
いろいろな地域の衛星画像があります。
非常に精細なので驚きます。
興味のある方は、
http://www.sapc.jaxa.jp/gallery/
を御覧になられればと思います。

・調査中・
現在、私は、高知に調査にきています。
とはいっても、それ以前にこのエッセイを書いて、
予約送信で配信しています。
本来なら秋に行きたかったのですが、
校務の関係でこの時期にしか時間がとれませんでした。
少なくとも毎年一回は調査に出たいと思っています。
今年は、研究費があたったので、
2度の調査費用が調達できました。
私は、調査ができないと、研究用のデータ収集ができません。
私にとっては、それは非常に痛いものです。
なんといっても、精神的なリフレッシュもできなくなります。
こちらもなかなか深刻な問題です。
来年度も調査に出れることを期待して、
調査を続けることにします。