2012年8月2日木曜日

2_108 ヒ素では生きていけない 2:反論

ヒ素を利用して生きているらしいGFAJ-1をめぐる議論がありました。実験条件の厳密化とDNAの成分分析からの反論です。そこには、重要な内容が含まれていました。反論も含めて議論が深まることで、生命の本質にかかわる重要な鍵が見つかるかも知れません。

 ヒ素を体内に取り込み生きているバクテリア、GFAJ-1は、以前紹介したウルフ-サイモン(論文の第一著者)らの培養実験で、ヒ素のある環境を好んでいることがわかりました。彼女らの実験では、GFAJ-1は、リンだけ、あるいはヒ素だけの環境では成長できず、リンが極端に少なくヒ素がたくさんある条件でより増殖したというものでした。その結果、GFAJ-1には、リンはある程度は必要ですが、ヒ素が多い環境を好み、不可欠としている生物であることがわかりました。
 以前のエッセイでも書いたのですが、論文の公開前に、NASAが大々的に記者会見までしていたので、そのやり方に少々顰蹙(ひんしゅく)をかっていました。この論文が報告されたあと、同じ条件で実験をしても、同じ結果が得られないという批判がありましたが、公式な反論はこれまでありませんでした。まあ科学ですから、公表の仕方は、論の是非や本質とは関係なく、冷静に論理的に評価、批判しなければなりません。
 正式な反論が、7月8日発行のサイエンス誌(電子版)に公表されました。スイスの工科大学チューリヒ校とアメリカのプリンストン大学の2つの研究グループが、別個に出しました。その2つの論文では、別々に(独立といいます)実験がおこなわれたものなで、その再現性はいいものと考えられます。つまり、信頼できる科学的な反論だということです。
 彼らの実験では、ウルフ-サイモンらの論文と同じ条件でおこなうと、同じ結果を得ました。ここまではいいのですが、リンをもっと減らしていく(ゼロではない)と、GFAJ-1は増殖できなくなりました。さらに問題は、GFAJ-1のDNAを調べたところ、ヒ素が検出されませんでした。あったとしてもごく少量だそうです。ヒ素がDNAのリンの多くを代替しているわけではなかったのです。
 この実験結果は、ウルフ-サイモンらの以前の内容を、否定するものではありません。より厳密に限定していったということです。リンが少量とはいえ、GFAJ-1には必要不可欠であることは、実は、ウルフ-サイモンらも、リンのない条件で培養実験をしているので、知っていたことです。
 問題は、DNAにヒ素がなかったことです。つまり、DNA内でリンの代わりとしてヒ素を使っていたのではないということです。ウルフ-サイモンらDNAにリン酸があることは知っていました。もし、DNAにヒ素はなく、すべてリンであれば、その他多数の普通の生物のDNAと変わらなくなります。
 この反論によって、論点が整理されてきました。
 GFAJ-1が繁殖するためには、ヒ素が必要なことは確かです。ヒ素がGFAJ-1のDNAの主要成分でないことが判明したので、問題は、ヒ素がどこにあり、どのような機能を担っているのかです。
 例えば、DNAをつくるために、あるいはなんらかの代謝をするために、ヒ素が使われているのかも知れません。本質は、GFAJ-1におけるヒ素の役割です。その役割がわかり、他の生物にも普遍化できるかどうかが重要となります。もし生命機能として普遍化できるなら、「第2創世記」があったかもしれません。

・調査行・
もう8月です。
北海道は暑い日が続いています。
今年の講義の後半は、苦しい日々が続きました。
そんな苦しさを解消するためにも
研究調査に出たいのですが、
少々精神的にも疲れて、
動く気力が湧きません。
でも、それではますますストレスがたまるので、
厳しいスケジュールの合間をぬって、
9月上中旬に1週間ほど調査に出ることにしました。
その決意を固めるためにも、
チケットを先日予約しました。
やるということをもう決めてしまいました。
まだ宿はとっていなのですが、
だいたい周るコースを定めつつあります。
久しぶりに四国から離れた調査になります。
ただ、スケジュールが混んでいるので、
体調を崩さないようにしなければ。

・構造浸食・
次の論文のために、新しい論文を
集中して読んでいます。
構造浸食に関する一連の論文です。
重要な意味がありそうです。
いくつか重要な根拠(データ)に基づいていること、
今までの疑問点を解決できそうなことが
素晴らしい点です。
これは、新しい視点を地球科学に導入する可能性があります。
なんといっても重要なのは、
新しい現象を予言している点です。
反証可能性を提示しているのです。
まるで新しいパダライムの提示にみえますが、
パラダイムなるかどうかは、
今後の検証、展開しだいです。
機会があれば、紹介してきたいと思っています。

2012年7月26日木曜日

2_107 ヒ素では生きていけない 1:GFAJ-1

以前、生物には毒となるヒ素を好んで利用する変わった生物がいることを紹介しました。その生物の発見は、メディアをにぎわせながら報告されました。当時もいろいろな反論があったのですが、科学的な根拠のある報告でした。最近、その結果に対して、まとめて反論がだされました。そのあたりの事情を紹介していきましょう。

 以前、GFAJ-1と呼ばれている特殊な生物が発見されたという話をしました(2_86:2011.01.06発行~2_89:2011.02.03発行)。覚えておらえるでしょうか。この生物は、ヒ素(As)を体内に貯めて、ヒ素のある条件を好んで繁殖しているという特異なものでした。最近、再びGFA-1が話題になってきました。その話を紹介しましょう。
 生物にとって、リン(P)は欠くことのできない成分の一つです。他にも、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)、イオウ(S)があります。その中でも、リンは代替のできない不可欠な成分だと考えられていました。
 体内でリンは、DAN(生物の中で遺伝情報を記録しているもの)やタンパク質(生物の体を構成し機能を司るもの)、ATP(エネルギー代謝をおこなうもの)などを形成するために、不可欠な成分となっています。リンがなければ、生物は生きていけないはずです。
 生物にとって不可欠の成分は、化学的に似た性質のもので代替されることがあります。化学的には、リンと似たヒ素(周期律表でリンの下にある)が入れ替わることは可能です。それは理屈の上であって、実際にそんなことをしている生物は存在しないとされていました。
 ところが、GFAJ-1はリンの代わりにヒ素を用いて生きているということが、前回のエッセイの内容でした。単に生きているけるのではなく、リンがなくヒ素がある環境を好んでいるという報告でした。この発見の重要性は、地球外生物の多様性、地球生物の異質な生物群の存在など、生命の可能性を広げることになりました。
 生命の仕組みにおいてリンは不可欠ですが、そのリンが別の元素に置き換えられる可能性がでてきたわけです。地球において、リンは、かなり少ない元素です。ヒ素は、もっと少ない元素なのですが、多様性があることは重要です。少ない資源でも、一つでなく代替があれば、生命の多様性が増えていきます。量ではなく、質の多様性が生まれます。大量の生物量はなくても、多様な生物種、あるいは多様な生態系が可能になります。
 地球でもそのような多様性があるのなら、地球外でも可能となるはずです。これは、リンとヒ素の代替だけでなく、他の成分、他の生命機能も代替できることを示唆します。そんな可能性を広げる発見だったのです。
 多様性の方向性を地球に向けると、地球の生物で全く違った生き方のグループの可能性を示すことになります。現在の地球では、すべての生物は一つの祖先から出発したと考えられています。祖先が一つであるというのは、現在の生物は、すべて共通の仕組みをもっているためです。しかし、全く違った生き方をする風変わりな生物がいれば、もしかすると起源の違う祖先の生物の系統を見つけることができます。このような別の起源の生命群の誕生を、「第2創世記」と呼んだりしています。もしかすると、第3創世記、第4創世記・・・の発見ができるかもしれません。
 GFAJ-1の存在は、そんな可能性を広げたのです。
 ところが、この報告に異論を唱えた論文が、アメリカの権威ある科学誌「サイエンス(電子版)」に7月8日発表されました。その詳細は次回にしましょう。

・正しい情報開示・
大学は最後の講義が終わりつつあります。
いつも一番暑い時期に定期試験なので
そんな日に当たると学生はつらい思いをします。
ただし、今年はそれほど暑くないので、
しのぎやすいのですが、
これからどうなることやら。
そういえば北海道電力も計画停電が
アナウンスされていますが、
本当に足りないのでしょうか?
どのような条件のとき、
どれくらい足りないのでしょうか。
正しい情報開示がなされていないので、
判断のしようがありません。
正確な情報を公開してもらいたいものです。
これが一社独占の弊害なのかも知れませんね。

・勝つこと・
子供たちの学校は、夏休みです。
長男はグラブが引退のはずですが、
予定外に地区の大会に勝ち続けていて
試合が続いています。
あまり強くないクラブなのですが、
今年はそこそこ強いチームなっているようです。
勝つ限り8月7日まで試合が続きます。
今日試合があります。
それより上の大会がないのではないで、
本人もそろそろ引退したいそうです。
しかし、勝つのは、やはり気持ちいいようで、
それなり練習にも力がはいるようです。
毎日真っ黒に日焼けしながら
クラブ活動を続けています。

2012年7月19日木曜日

2_106 大不整合 3:生物鉱化作用

大不整合は、単なる欠損ではなく、地形や圏の境界でもありました。次なる時代への影響も少なからずあったようです。ただし、不整合にはその証拠は残っていません。その後の堆積物の中に、広く薄く残されていました。そこから、カンブリア大爆発への影響の痕跡が読み取られました。

 北アメリカ大陸だけでなく世界中でみられる大不整合は、地球の歴史においてどんな意味を持つでしょうか。
 ペーターとジャイネスは、地質のデータベース(Macrostrat)を活用して、北アメリカ大陸での大不整合の意義を調べました。大不整合は、古い基盤の岩石とカンブリア紀からオルドビス紀初期までたまった地層の間に時代にあります。カンブリア紀以前の地層は、陸地になっていたためたまっていません。地層の欠損となります。
 カンブリア紀以降の地層の堆積岩の化学的特徴から、どのような環境であったかを、彼らは調べています。その結果、大不整合の上に溜まった地層には、他の時代の地層と比べて、いくつかの際立った特徴がみつかりました。不整合の面積が広いこと、海が浅海であること、陸棚の炭酸塩が多いこと、などでした。この結果から、どのような意味が読み取れるでしょうか。
 大不整合の時期、北メリカ大陸は広範囲に陸化していて、大陸では激しい風化が起こっていました。ダーウィンや多くの古生物学者も、大不整合は、地層の欠損を意味していると考えていましたが、別の意味があると主張しています。大不整合は、陸-大気から海洋-大気への地形境界面の変化ともみなすこともできます。陸地の境界面で起こっていた風化作用が、浅海になったときに、海洋環境に大きな影響があったのではないかと考えました。
 広い大陸で激しい風化が起こり、そこに海が侵入してきました。広い大陸に浅海が広がります。浅海の海水では、イオンの濃度が一気に上がり、アルカリ性も強くなりました。それは普通の海の環境とは大きく違っていました。その結果、生物鉱化作用(biomineralization、殻は骨などの形成)が起こり、その後カンブリア紀の大爆発が引き起こされたのではないかとしています。
 従来カンブリア大爆発はカンブリア紀以前(クリジェニ紀からエディアカラ紀)に起こったとされています。もしそうなら、順序が逆で、しかも数千万年ほどの年代差があります。彼らは、すでに誕生していた多様な祖先型動物に、環境変化によって生物鉱化作用が促進され、それがカンブリア大爆発となったのではないかとしています。
 ペーターとジャイネスの仮説は、膨大なデータに基づいています。それなりの説得力もあります。量が質を保証する訳でないですが、量は発言者の自信を生みます。コンピュータの進歩や情報量の増加によって、デジタル情報処理は大きな武器になります。今後も科学は、その手法も取り入れて進むでしょう。
 提唱される説は、これからの検討が答えを出すことになるでしょう。各地の試料の再検討、新しい精度の良い分析などが、根拠となり、決着をみるでしょう。今後も見守って行きたいと思います。

・計画停電・
西日本では激しい集中豪雨で、
各地に被害がでています。
お見舞い申し上げます。
幸い北海道は、夏の快適な天気になっています。
乾燥しているので風があると、
木陰では涼しいくらいの快適な時期です。
我が家では、夜は窓を閉めて寝ています。
7月下旬から8月上旬の暑さはわかりませんが、
2010年夏並に熱くなるようだと、
電力不足が心配されています。
しかし、節電、計画停電ですみ、
それで乗り越えられるのであれば、
北海道には原発は、
要らないことになるはずなのですが・・・・

・一杯一杯・
大学は、まだ講義中です。
7月一杯まで、講義がおこなわれ、
8月に定期テストがあります。
それが終わると、お盆に入りますが、
教員は採点、入力、評価をして
お盆明けに成績提出となります。
その後、夏の集中講義あります。
8月は、一杯一杯です。
もちろん7月もですが。

2012年7月12日木曜日

2_105 大不整合 2:データベース

「大不整合」は北アメリカで広く認められ、その直上には似たような堆積物がたまっています。広い範囲にたまっている地層に対して、地質データベースを用いて、データ解析をして、その特徴を探ろうとしたのが今回の報告でした。

 2012年4月19日のネイチャー誌に報告したのは、ペーターとジャイネス(S. Peter and R. Gaines)でした。不整合とは何かは、前回紹介しました。アメリカ大陸では、広範囲でみつかる「大不整合(Great Unconformity)」として有名なものがあります。その不整合は、グランドキャニオンの谷底に連続的に見つかり、多くの人の目に触れる典型的なものでもあります。それだけでなく、地質学的にも、先カンブリア紀とカンブリア紀の境界にあることで、非常に重要な意味があると考えられます。そのために、わざわざ「大(Great)」がつけれられ、「大不整合」と呼ばれています。
 先カンブリア紀の岩石は、大陸の古いもので変成作用を受けています。その上に不整合として、浅い海でたまった堆積岩が重なっています。その時代には、似た堆積物が、北アメリカの大陸に広く分布しています。その下には不整合があります。同じような不整合と堆積物は、アメリカ大陸だけでなく、世界的に見られるものであることがわかっています。そのため、「大不整合」がどんな意味をもつのかが重要だと考えられます。
 ペーターとジャイネスは、アメリカ大陸の「大不整合」の意義を調べるために、少々変わった方法を用いました。彼らは、地質のデータベース(Macrostrat)を活用しました。
 Macrostratというデータベースは、世界各地の地質について、1475地域から、3万3965の層序的ユニットについて、9万以上の属性について記録されています。属性は、位置や年代区分だけでなく、化石や岩石種、環境、地質構造などのデータがあります。
 北アメリカから、大不整合の直上に堆積したソーク層(Sauk Sequence)と、それに相当する地層をデータベースから選び、特徴を調べました。
 ソーク層のたまった年代は、カンブリア紀からオルドビス紀初期(5億4200万から4億7200万年前)です。それ以前は大不整合なので陸地化しているので、地層は欠損しています。その間、北アメリカは陸地化していたことになります。その陸地化が、カンブリア紀になって海が広がった時(地層の堆積時)にどのような影響を与えたかを、データベースから探っています。
 カンブリア紀のはじまりは、生物に大きな進化が起こった時期です。「カンブリア大爆発」と呼ばれています。それと大不整合とはどんな関係があったのでしょうか。次回、それを紹介しましょう。

・休みなく・
大学の講義も終盤となりました。
15回の講義をしなければならないので、
7月一杯講義をすことになります。
そして、8月の上旬に定期試験となります。
その後、採点、集計、評価をして
お盆明け直後が成績の提出になっています。
その後すぐに、夏の集中講義が続きます。
気の休まることがありません。
その合間をぬって研究もしなければなりません。
今も論文の締め切りに追われています。
大学教員は、夏も休むことなく
働かなけばならないようです。

・Macrostrat・
地質データベースであるMacrostratは
http://macrostrat.org/
というサイトにあります。
私はまだ使ったことのがないのですが、
統計的に処理するには便利なデータベースだと思います。
ただしまだベータ版でバージンも0.3となっています。
一部の機能しか公開していなようなので、
今後、完成すれば公開されることになるようです。
現在北アメリカ、ニュージーランド、深海掘削のデータ、
カリブ海が公開されています。
現在オーストラリアが準備中だそうです。
「数は力(Strength in numbers)」としています。
その証明の一つとして、今回の報告があります。

2012年7月5日木曜日

2_104 大不整合 1:不連続面

科学雑誌ネイチャーに、カンブリア紀の生物の大進化に関する新しい仮説が掲載されました。今回のエッセイでは、その概要を紹介しましょう。まずは、仮説提唱にとって象徴の場となったグランドキャニオンからはじめましょう。

 アメリカ合衆国アリゾナ州のロッキー山脈をぬって流れるコロラド川沿いに、グランドキャニオン国立公園があります。だいぶ昔になりますが、南側(左岸側)から見るポピュラーな観光コースに二度訪れたことがあります。河床まで降りることはなかったのですが、いくつかの観光コースを散策し、ツアーにも参加しました。
 北側(右岸)からコロラド川を眺めるためには、長い距離を走り、ユタ州からいくしかありません。遠いので、一泊してでかけましたが、あまり観光化されていないので、ひなびた感じがして、それなりの味わいがありました。ただし、朝夕はいいのですが、昼間は、谷の北側から眺めることになるので、逆光でみることになります。写真や景色を堪能するには、少々興ざめしてしまいますが。
 今回の話題は、イギリスの2012年4月19日付けのネイチャー(Nature)誌の表紙を飾ったグランドキャニオンからです。表紙となったグランドキャニオンには、大きな不整合が写されています。そして「生命の力(Life Force)」と書かれています。
 そもそも不整合とは、いったいどんなものでしょうか。不整合とは、地層の関係を表す言葉で、「整合」ではないものです。地層は海底にたまった土砂が固まってきたものです。地層が連続的に積み重なったものを「整合」とよびます。不整合は、地層の連続してない、不連続の関係を示す言葉です。
 整合としてたまった地層が、大地の作用によって盛り上がり、陸になることがあります。陸に上った地層には、堆積作用はなくなり、こんどは浸食作用を受けるようになります。浸食によって地層は削られ、浸食の状況によって、不規則な凹凸(山や谷など)ができます。その後、陸にあった地層が、大地の営みによって沈降して海になることがあります。すると、削られた地層の上に新しい時代の地層が、再度堆積することになります。
 このような履歴をもつ地層の境界は、物質的にも不連続で、時間的にも不連続となります。この不連続面を不整合と呼んでいます。年代のギャップが大きいほど、不整合の規模は大きくなります。
 不整合のなかでも、グランドキャニオンでみられる不整合は、「大不整合(Great Unconformity)」と呼ばれて、特別な扱いを受けています。その意味するところは、次回としましょう。

・グランドキャニオン・
5億4200万年前がカンブリア紀の始まりです。
その前後にGreat Unconformity(大不整合)が形成されます。
グランドキャニオンだけの話であれば、
局所的、地域的な話になるのですが、
どうもそうではなく、全地球的な事件になりそうです。
残念ながら今回の大不整合は、
日本ではみることのできない現象です。
日本では、古生代の地層は断片的にしか見つかりません。
アメリカ大陸こそが、今回の事件解明の場として
ふさわしいところとなります。
私は、以前にいったグランドキャニオンを思い出しながら
今回紹介する報告を見ました。

・キャンプ・
はや、7月です。
北海道も夏らしくなって来ました。
曇や雨の日は蒸し暑い日もあります。
次男の小学校では、今週にキャンプがあります。
テントを張り、夕食を自炊して、
夜にはキャンプファイアをします。
グループごとにテントで寝ます。
翌日は昼前に帰宅となります。
親も手伝いにでることになります。
家内は夜の読み聞かせにいくようです。
夜9時半からの行事への参加です。
我が家の朝型の生活とは違っていますが、
まあ特別な日だから、子どもたちは、
興奮してなかなか寝付けないようですが。

2012年6月28日木曜日

3_112 下部マントル 4:二層対流へ

下部マントルが始原的隕石の成分に似ているということは、地球ができてからほとんど変化することなく、現在に至ったことになります。一方、上部マントルは、固有の進化を遂げたことになります。この結果は、地球の歴史を書き換えることになるかもしれません。一つの論文が、主流派に大きな変更を迫ることがあります。今回の結果もそのような役割を果たすかも知れません。

 上部マントルと下部マントルは、地震波の観察で物性に違いのあることがわかっていました。その違いは、結晶構造の違いとするか、成分が違いとするか、の2つの考えありました。趨勢は、成分は一緒で、結晶構造の違いではないかという考えでした。今回、村上元彦さんたちは、成分の違いだという実験結果を報告しました。
 下部マントルは、上部マントルとケイ素の多い点で違っていました。下部マントルは、太陽系の初期にできた隕石がもっていた組成に近いまま、現在に至っていることがわかってきました。一方、上部マントルは、もともとの隕石の成分から、ケイ素が少なくなっているということです。
 上部マントルのケイ素分は、一部は大陸地殻にいったと考えられます。プレートの運動によって、列島では火山活動が起こり、大陸地殻と同じような成分のマグマができ、噴出します。複雑な過程を経ますが、結果として、マグマは、上部マントルからケイ素の多い成分として取り除かれていくことになります。いったんできた大陸地殻は、密度が小さいので、すがた形が変わっても、地表にあり続けます。そのケイ素の分が、大陸地殻と地表に保存されることになります。40億年以上わたって、大陸地殻はつくり続けられています。その結果、ケイ素成分は、上部マントルから抜かれたことになります。
 この説には、問題がいくつかあります。
 まず、上部マントルのケイ素の不足分は、大陸地殻だけでは、足りないようです。上部マントルは、地殻に比べると、圧倒的に体積も質量も多いためです。ですから、不足のケイ素の一部は、地殻だけでなく、外核(とけた鉄でできています)に溶け込んでいるかもしれません。しかし、下部マントルをジャンプしてケイ素だけを運ぶのは可能でしょうか。まだ、十分検証されていないところです。
 次に、マントル対流の問題です。地震波トモグラフィの結果から、従来は、上部と下部マントルを通じて対流している(一層対流)ようにみなされていました。もし今回の結果と推定が正しければ、上下のマントルで対流が別々になっている(二層対流)可能性が強くなります。あるいは一層対流であっても、特別なメカニズムを考えなければなりません。
 もし、上下のマントルが、遷移帯を境にして、混じることがなく二層対流を続けてきたとしたら、長い時間別々の進化をしてきたことになります。これを採用すれば、従来の地球の進化シナリオを書き換える必要がでてきます。面白くなってきました。
 今までの定説が覆ることは、積み上げてきたものが、崩れていくことになります。新しい枠組みのもとで、新しい説が構築されていくことになります。その前に、いろいろな検証が必要となるでしょうが、もし今回の一つの論文によって大きな変化が起こることは、なかなか刺激的です。

・快晴の青空・
北海道はいい気候になって来ました。
例年より涼しいような気がします。
前期の講義も3分の2が終わりました。
近隣の大学では大学祭も終わりました。
初夏の陽気になってきました。
早朝、快晴の青空は
何事にも代えがたいよさがあります。
天候不順でしょうか、残念ながら、
そんな日が今年は少ないようですが。

・後追いの思い・
今年は、なんだか息絶え絶えとなっています。
仕事が重なっているので、
余計に辛いのかも知れませんが、
不況や時代のせいでしょうか。
いろいろなところで一杯一杯の状態で
働いている人が多数いるようです。
我が組織にも、重要なポストについている人で
そんな状態の人が何人かいるようです。
もし倒れれば、組織の犠牲となります。
辛いのなら、そこまで耐えずに
早目に仕事を降りればよかったのにと
多くの人が思ってしまいます。
後追いでのそんな思いは役に立ちませんが。

2012年6月21日木曜日

3_111 下部マントル 3:相違

下部マントルは上部マントルとは違うものでできていることを、村上さんたちは明らかにしました。結果自体は、想定内であったのですが、実証的に示したことが重要です。実証には高度な実験装置がいろいろ使われています。それは、日本の技術を背景にした成果であるといえます。

 村上元彦さんたちは、下部マントルで想定される化学成分の物質を用いて、それを超高温高圧装置を用いて下部マントルの条件を再現して結晶を作成します。その結晶は、下部マントルで存在できる結晶の組み合わせになっているはずです。さらに、結晶をその条件に保ったまま、結晶の性質をSPring-8を用いて測定しました。結晶の性質としては、主に弾性波速度を測定します。弾性波速度とは、地震波速度と同じとみなすことができます。ですから、実験の結果と、地球内部で得られている物性の情報と照合することが可能になります。
 村上さんたちは、上部マントルの化学成分を用いて実験をしたら、弾性波速度が地震波速度の値と一致しないことに気づきました。これは、下部マントルの物質は、上部マントルとは違っていることを意味します。
 実験をすすめた結果、現実の下部マントルの地震波速度の観測値と一番合うのは、93%以上がペロブスカイト型(一部、岩塩型になっている)の結晶の場合でした。ペロブスカイト型は、カンラン岩が遷移層より深部の条件でできる結晶でした。そこに少しの二酸化ケイ素(SiO2)の高温高圧の結晶(スティショバイト型とよばれる)が加わっていました。
 地震波速度に合う成分をもつものは、あるタイプの隕石でした。その隕石は太陽系の素材になったようなもので、始原的隕石ともよばれ、炭素質コンドライト(C1に細分されている)です。
 始原的隕石は、以前から考えられていたマントルの成分の候補の一つでした。時には、マントル全体が始原的隕石からできていると考えられ、主要な候補とともなっていました。しかし、研究が進み、上部マントルや遷移帯の実体がわかってきて、始原的隕石とは違っていることを示されました。ただ、下部マントルが不明のまま残されていました。それが今回、始原的隕石だと判明したわけです。
 上部マントルの成分に比べて、下部マントルは、ケイ素が多いことがわかりました。これは、上部マントルと下部マントルは成分が違うものでした。つまり、結晶構造の違いではなく、「もの」が違っていたのです。マントルは上下2層の構造持っていることになります。
 さて、この本質的に違っている2層構造の持つ意味はどんなものでしょうか。次回としましょう。

・重要性・
マントルの成分については、
私も以前、研究をしていたことがあります。
いろいろなアプローチの方法があるのですが、
私は、同位体組成から調べていました。
同位体を扱っている研究者は、
始原的隕石を前提にいろいろ検討を加えていました。
その発想は、
地球は始原的隕石が集合してできたのだから、
という単純なものでした。
地球は、始原的隕石をスタートにして
時間とともに、化学的分化が起こった
とする考え方です。
したがって、村上さんたちの結論自体は
以前にもあって真新しいことはないのですが、
実証的に示した点が重要です。
以前からあった始原的隕石は仮説や前提であったのですが、
今回、その仮説に根拠を示したことになります。
その点で非常に重要な成果だといえます。

・旭川出張・
北海道も夏めいてきました。
ただし、また肌寒い日がありますが、
気温は確実に上がっています。
そんな中、またまた出張しました。
メールマガジンは事前に予約発行するので、
火曜日に作成して発行手続きをしています。
ですから出かける前に作成しています。
旭川の様子はまだ報告できませんが、
道内の旭川なので、
車で2時間あまりで行くことができます。
講義があるのですが休講です。
補講が必要になるので、少々面倒ですが。