2025年8月21日木曜日

1_241 冥王代の岩石 6:年代確証の課題

 アイソクロンでえられた年代が、火成岩の形成時のものだというためには、いくつかの課題をクリアしなければなりません。この論文では、いくつかはクリアしていますが、クリアできない課題もありました。


 前回、アイソクロン年代の意味を説明して、論文での精度がはっきりしないということまで紹介しました。もう少し詳しく説明して、その課題をみていきましょう。
 アイソクロンを引くためには、同時に形成された「もの」で、なおかつ放射性核種の147Smの量が異なっているもの(岩石や鉱物)が必要です。ここで「もの」とは、岩石や鉱物のことになります。147Smの量は、岩石や鉱物の組成を反映して変化していきます。そのため、一連のマグマから形成された「と考えられる」組成の異なった岩石・鉱物を選んで、147Smの量を測定していきます。その結果、147Smの量が異なっていれば、「直線状に並ぶはず」で、時間とともに直線の傾斜が大きくなります。
 この「と考えられる」と「直線状に並ぶはず」とが問題となります。それらの確証がない限り、求めた年代が岩石の形成されたもの(初成年代)だということができません。
 まず、同じ起源であることを示す必要があります。なぜなら、放射性核種がマグマの中で一様になってから、固化(岩石や鉱物になる)してから、崩壊が進むという条件が必要です。岩石の放射性核種の量が一定(直線状)になってから、崩壊がストップウオッチを押したように、同時にスタートする必要があるからです。
 今回の論文では、組成の変化をえるために、離れた地域の岩石を用いています。そのような状態の試料で、同じ起源であるという前提を置くのは危険です。一連のマグマからできたということが確実なのは、連続した露頭で、組成変化していることが確認できる場合です。
 今回の試料の多くは、数100mから数kmの範囲で、一連に見える岩石です。しかし、もともと海洋地殻だった古い時代の地質体が、陸地に上がっているものでは、一連に見えても、見えない断層(衝上断層やスラストと呼ばれます)が多数存在してことが知られています。そのため、一連のマグマであったという確証がえられません。
 また、岩石ごとに、形成後に異なった変成作用や変質作用を受けると、147Smの量の違いが、本当にマグマ由来(初成)かどうかが、はっきりしなくなります。一番の問題は、ある時期、147Smを含んだ成分が、変成作用などで水に含まれていたり、別の岩石から由来する可能性です。このような可能性を論文では「同位体混合」と呼んで検討しています。
 同位体混合では、混合する成分がわかれば、その混合状態(グラフ上で曲線が描ける)が推定できます。論文ではそのチェックはしており、いくつもの条件で検討してみて、可能性が少ないとしています。
 ですから、課題として残るのは、一連のマグマからできたかどうかです。これは岩石で検討している限り解決できそうもありません。その課題の詳細については、次回としましょう。

・長男の帰省・
先週、1週間ほど、長男が帰省していました。
昨年もこの時期に帰省していました。
その理由は、野外フェスにいくためです。
今年は、1日分しかチケットを取れなかったようですが
幸い、雨にも降られず、見ることができたようです。
連日、ひとりであちこち出歩いていたり
夜も知人の飲みにいったりしていました。
それでも、家族では2回ほど
夕食をともにしました。
一年に一度の面会で、団欒を楽しみました。

・夏が終わりつつある・
北海道の小・中学校は、
来週で夏休みが終わり、学校がはじまります。
昼間は、その日の天気により
暑かったり、蒸したりすることがありますが、
夜は涼しく、窓を閉めて寝れるようになりました。
朝も涼しく、上着をはおるようになりました。
研究室は、午後には西日が当たり暑くなるので
午後には早帰りもしていましたが、
これからは、通常に戻れますかね。

2025年8月14日木曜日

1_240 冥王代の岩石 5:年代の意味

 斑レイ岩の年代を求めめようとした論文ですが、半減期の長いサマリウムを用いてアイソクロン法で年代測定をしています。アイソクロン法には、一筋縄ではいかない困難さがあります。


 年代測定をするとき、冥王代のような古い時代の岩石では、放射性核種でも、半減期の長いものを用いなければなりません。そのような元素として、ジルコンに含まれている放射性核種のウラン238(238Uと表記)の半減期は約45億年、ウラン235(235U)の半減期は約7億年です。
 以前、ウジャラルク・ユニットを貫入している酸性岩(トロニエム岩と呼ばれる)があり、そこにはジルコンが含まれていたので、年代測定されています。その年代は約37億7000万年前となり、冥王代ではありませんでした。ただし、他の根拠から、ウジャラルク・ユニットは、冥王代ではないかと推定されていたのですが、確実な年代値が示されていたわけではありません。
 今回、斑レイ岩で年代測定が試みられたのですが、塩基性の岩石なのでジルコンは含まれていませんでした。そこで、サマリウム(Sm)の放射性核種が用いられました。サマリウムには、年代測定に使えるサマリウム147(以降、147Smと表記)があり、その半減期は約1060億年と極めて長いものです。147Smは崩壊すると、ネオデウム143(143Nd)になります。
 マグマからできた岩石は、結晶化するとき、岩石ごとに化学組成の変化が起こります。岩石ごとに、放射性核種の147Smが量が異なってきます。147Smの量が異なると、改変でできた143Ndの量も、それに比例して変化していきます。ですから、組成の異なった岩石の147Smと143Ndの比率を調べていくと、形成時間に応じて一連の関係(直線)をもってきます。この原理を利用して年代測定する方法が、アイソクロン法と呼ばれています。
 ウジャラルク内で採取された6種類の斑レイ岩と、飛び地になりますが同じ地帯と属すると考えられる2種類の斑レイ岩も加えて分析しました。8個の岩石は、143Nd/144Ndではきれいな直線となりました。そこからえられた年代値は、41.57±1.74億年前となりました。
 各種の岩石で、年代測定をすることになるのですが、アイソクロン法にはいくつか問題があります。それは一連の起源の岩石を用いておこなうのですが、マグマの一連の結晶分化で組成変化したのか、マグマや他の岩石の成分が混合した混合線を示している可能性があります。また、激しい変成作用を受けていると、147Smと143Ndの比がリセットされる可能もあります。古い時代のアイソクロン年代が、火成作用の年代だと決定づけられないことがあります。
 この論文では、別の工夫をして、他の可能性も検討しています。工夫とは、同じサマリウムの放射性各種を用いるのですが、詳細は次回としましょう。

・パソコンまだ不調・
修理に出したパソコンが、新しいものにかわりました。
苦労してアプリケーションやデータを入れてきました。
ところが、現在、非常に不安定な状態です。
アプリケーションのバージョンを下げたり、
スタート時に読み込むアプリケーションを制限したり、
あれこれと調整しながら使っています。
データのバックアップは怠りなくおこなっています。
しかし、週末に、全く動かなくなりました。
諦めかけたのですが、原因は不明ですが、
別のところたシンプルにして立ち上げたら
なんと動き出しました。
熱暴走していたようです。
今後、放熱対策をしていきましょう。

・暑さのピーク・
昼間には暑い日があるのですが、
しばらくエアコンを使っていません。
夜には暑くて窓を開けていても
夜中には閉めないと涼しくなります。
昼間も扇風機でなんとか過ごせます。
まだ暑い日が来るでしょうが
暑さのピーク時は過ぎ去ったのでしょうかね。

2025年8月7日木曜日

1_239 冥王代の岩石 4:花崗岩マグマの起源

 これまで報告されてきた冥王代の年代は、砕屑性ジルコンによるものでした。ジルコンは、花崗岩マグマから由来していました。花崗岩マグマの起源を探ると、今回の緑色岩帯に貫入している斑レイ岩の地質学的な重要性もわかってきます。


 年代測定で岩石最古の年代は、太古代のものでした。それより古いが岩石は見つかっておらず、砕屑性ジルコンでは冥王代のものが見つかっていました。砕屑性ジルコンは、花崗岩(大陸地殻)に由来していると考えられますが、そもそも花崗岩をつくったマグマは、どうしてできたのでしょうか。
 花崗岩マグマの起源には、いくつかあるとわかっています。それは、玄武岩質マグマの結晶分化作用、地殻物質の水の存在下での融解、そして島弧下でのマグマ混合の3つが主なものです。これらは、島弧の地下では、それぞれ独立して働くものではなく、関連して起こっていると考えられています。
 マントル物質が溶融すると玄武岩質マグマができます。深部では温度は高温ですが、マグマは液体のため周りの岩石より密度は小さくなります。その結果、マグマはマントル内を上昇していきます。周りの岩石は冷たいので、マグマの温度が冷えててき、結晶ができてきます。温度とマグマの成分により、出てくる結晶の種類や組成が変化していきます。結晶化(結晶分化)が進むと、マグマの組成は玄武岩質から、安山岩質、そして花崗岩質に変化していきます。玄武岩質マグマが、結晶分化して花崗岩質マグマになっていくのは、量的に少なくなります。花崗岩マグマによる貫入岩などはできますが、地殻を構成するような大規模な花崗岩の起源としては量が足りません。
 次の地殻物質の溶融とは、地殻物質(花崗岩類や堆積岩類など)が、水のある条件で高温になると溶けて、花崗岩質マグマができます。この起源には、高温にするための熱源が必要ですが、熱が十分供給されれば、大量のマグマができます。では、熱源はどうすればもらされるでしょうか。
 それが次の島弧下のマグマ混合と関連してきます。島弧は、海洋プレートが沈み込む陸側にできます。沈み込んだ海洋プレートから、島弧下のマントルへ水分が継続的に供給され、マントルが溶融していきます。マントルの溶融では、上で述べたように玄武岩質マグマができます。沈み込みはプレート運動によるものなので継続的に起こるので、島弧下ではマグマが常に上昇してくるところになります。
 マントルから玄武岩質マグマが島弧地殻下部にまで上昇してくると、それが熱源となって、地殻の溶融が起こり花崗岩質マグマができます。熱源の玄武岩質マグマと溶融でできた花崗岩質マグマは近くにあるので、混合することになります。玄武岩質マグマの量(熱量)や、花崗岩質マグマの形成量、混合機構などの違いによって、多様な組成のマグマができます。マグマ混合で、島弧の多様な火山のマグマ組成を説明できます。
 混合比率によって多様なマグマができますが、平均的には中間組成の安山岩質になります。大陸地殻の平均化学組成は、島弧の安山岩に似ていることが知られているため、島弧のマグマ混合作用で島弧の地殻ができて、やがてそれが大陸地殻を形成しているのではないかと考えられています。
 今回、緑色岩帯の玄武岩(海洋地殻)に貫入した斑レイ岩は、海洋地殻内で起こった現象となります。ただし、緑色岩帯は、大陸地域に残されているため、島弧の一部として取り込まれ、大陸地殻へと変化していったと考えられます。
 また、島弧の地下でのマグマ混合作用で大陸地殻を形成するような大量の花崗岩質マグマの形成は、水が重要な役割を果たしています。砕屑性ジルコンの年代の冥王代には、すでに海洋が形成されプレートテクトニクスが働いていたことも示すことにもなります。
 では、次は、年代測定の方法とその信頼性を見てきましょう。

・北海道らしい夏・
7月下旬からは、北海道らしい夏の気候となっています。
昼間でも、乾燥しているので、
爽やかな風が抜けています。
そのため、しばらくエアコンは使っていません。
夜も涼しく、窓も閉めて寝ています。
これぞ北海道と思えます。
このまま涼しくなっていけばと思っていますが、
そうはいかないでしょうがか。

・パソコン本体のバックアップ・
メインで使用していたパソコンを壊れたので
修理に出したところ、破損箇所は特定されたのですが、
修理ができず、新品との交換となりました。
保証期間でよかったのですが、
再度のアプリケーションのインストールすることを考えると
気が重くなります。
現在、大学に返却予定のパソコンを使用しています。
サバティカルと時と現在自宅で使うようにしているものです。
それを大学に持ってきて使っています。
パソコンで仕事をしているので
壊れることは非常に恐ろしいことです。
データのバックアップは常にしていますが、
パソコン本体のハードウェアとしてのバックアップも
考えておく必要がありますね。