2025年1月23日木曜日

1_226 過去のプレートテクトニクス 6:最古の痕跡

 今回とりあげた論文は、プレートテクトニクスが33億年前まで遡れそうだという報告でした。それが最古でしょうか。もっと古い時代の痕跡はあるのでしょうか。もしあるとすれば、どのようなものでしょうか。


 前回までのエッセイでは、32.7億年前の特殊な火山岩から沈み込んだ海洋プレートの痕跡が見つかったこと、そこから以前にプレートテクトニクスがあったと推定した論文を紹介してきました。
 では、33億年前がプレートテクトニクスのはじまりでしょうか。これより古い証拠がなければ、33億年前が最古になります。過去のプレートテクトニクスの痕跡は、このシリーズの最初にも紹介したように、海洋プレートが沈み込む場で必然的に起こる地質現象がありました。沈み込み帯でみられるプレートテクトニクスの痕跡をおさらいしておきましょう。
 海洋プレート層序の破片のオフィオライト、沈み込みの圧縮の力で陸側に形成される堆積物の付加体やデュープレックス構造、沈み込んだ海洋プレートが低温高圧型の変成作用でできた青色片岩などを挙げました。
 それぞれの最古の年代がどれくらいになるでしょうか。いくつか見ていきましょう。順番は前後しますが、青色片岩からいきましょう。
 青色片岩の年代として、10億年前以降の新しいものしか見つからないので、それ以前にはプレートテクトニクスは作用していないと考えられていました。ところが、その後の研究で、古い時代は青色片岩は形成されないことがわかってきました。マントルの温度が現在よりも高かったはずなので、想定される高温条件では、現在よりずっと浅いところで海洋プレートが溶けてしまいます。青色片岩ができる条件に達する前に、マグマができてしまいます。青色片岩が新しい時代のものしかないのは、それが原因だと考えられます。ですから、最古の青色片岩の年代がプレートテクトニクスの年代とはならないことになります。
 グリーンランドのイスアには、38.0億年前のいろいろな岩石が分布しています。イスアには、38億年前の島弧から大陸の破片が分布しています。大陸を構成していた花崗岩、また島弧を構成していた付加体の岩石、海洋プレートを構成していたオフィオライトも見つかっています。38億年前がプレートテクトニクスが起こっていたことが、かなり以前から判明していました。
 同じような地質体が、カナダのラブラドールにもあります。そこでは、39.5億年前の海洋プレート層序とデュープレックス構造が見つかっています。
 紹介した論文の33億年前のプレートテクトニクスは、最古ではありません。しかしこの論文の重要性は、まったく異なったアプローチ(独立した根拠)で、プレートテクトニクスの根拠が示されてたことになります。限られた岩石しかない時に、この方法論が利用できるかもしれません。
 以上のことから、プレートテクトニクスの証拠となる年代は、39.5億年前まで遡れると考えられます。ここまでは、直接的な証拠になっています。現在見つかっている最古の岩石は、40億年前までなので、プレートテクトニクスのはじまりの探求はここまです。
 これより前の時代にへ、証拠をもとに検証することがここまでしょう。実は、もう少し遡れる可能性があります。次回としましょう。

・共通テスト・
先週末に大学入学共通テストが実施されました。
各地の大学が会場になりました。
我が大学も会場になっており
監督官をしました。
全国の受験生が同じ条件で受けられるように
実施会場の大学では非常に細かく指示されています。
大変ですが、仕方がありません。
この共通テストの業務も今年が最後になります。

・卒業研究・
今週、卒業研究の発表会が実施されます。
4年生にとっては、
もっとも重要な最後の講義になるかと思います。
このメールマガジンは、
発表会前に配信をしているので、
その様子は、まだ体験していません。
すべての人が緊張しているでしょうが
多分、全員無事に終わっていることでしょう。