2023年7月6日木曜日

4_177 西予紀行 4:大野ヶ原

 西予紀行は、前回の明浜の石灰岩に続き、今回は大野ヶ原の石灰岩です。西予市の西(明浜)の海岸と東(大野ヶ原)の山にある石灰岩です。離れたところですが、いずれも石灰岩が景観をつくっています。


 5月下旬、どんよりとした日でしたが、大野ヶ原にいきました。日吉から稜線に登る林道(東津野城川林道)を使いました。舗装されたいい林道ですが、以前と比べると少し荒れてきているようです。その後、6月下旬に、友人がジオミュージアムに来たので、皆で一緒に西予市のジオサイトを周るときに、同行しました。その時、同じルートで大野ヶ原に上がりました。下りは別ルートでしたが。巡検では、各地にお住まいのガイドの方に、案内をしていだきました。
 最初に大野ヶ原にいったとき、林道沿いで造材がされており、そのために拓かれた道沿いに露頭ができていました。そこで蛇紋岩の産状がよくみえるところがありました。以前にも尾根沿いに蛇紋岩の露頭があったのですが、風化が進んでいるので、産状が分かりにくいものでした。今回、新しくできた露頭では、広く新鮮な面がでていました。黒瀬川帯の蛇紋岩となるのでしょうか。造材が終われば、この露頭も、風化、侵食が進んでいくのでしょう。
 ガイドの人から、地質だけでなく、この地の起こりや伝説、歴史、そして現在の生活について伺いました。ガイドの方は、植物にも詳しく、石灰岩の中にある断層の両側で、植物種が異なっているとのことです。
 大野ヶ原は、四国山脈の西方延長に当たります。四国山脈には、石灰岩台地が点々と分布しています。石灰岩が広く分布している大野ヶ原のようなところでは、カルスト台地となっています。石灰岩の侵食地形をいろいろ見ることができます。石灰岩は、秩父帯北帯に属するもので、東に向かってその先20kmには、日本で有数の石灰岩採掘地の鳥形山があります。ガイドさんの話では、源氏ヶ駄場からは、天気がよければ、鳥形山も見えるとのことです。しかし、この日は濃い霧に包まれて、眺望はできませんでした。
 大野ヶ原は、稜線沿いの高原に、牧草地が広がっています。斜面の牧草地はには石灰岩が点々とあり、牛とのコントラストが面白いです。山並みの中に平らな地域に集落があります。カルストの中で石灰岩が溶けてできたくぼみで、ドリーネ、ウバーレ、そしてポリエと成長してきてものです。くぼみなので水がたまりやすく、畑作ができます。ポリエに集落と耕作地があります。また、小松ヶ池という地下水がたまっているところがあります。この池はドリーネにできたものです。池の中には、ミズゴケでできた浮島があり、動くこともあるそうです。
 大野ヶ原に「森の魚」という小さな店があり、そこで2度ともソフトクリームをいただきました。初回には土産にミルクパンを2種買って帰りました。店のご夫婦からいろいろ話しを聞かせていただきました。
 ご主人は、大野ヶ原のジオサイトでガイドをしてくださいました。下は蒸し暑かったのですが、上がると半袖では寒いほどでした。ガイドの人も、まだ上では長袖でないとダメだと仰っていました。
 仕事をしている支所の標高は130mで、自宅では200mになっています。大野ヶ原は、標高が1400mもあります。標高100mで気温が0.6℃下がります。下から大野ヶ原まで上がると、7℃ほど下がります。下界が茹だるような暑さでも、大野ヶ原まで上がれば、一気に涼しくなります。
 7月中旬から8月下旬までは、夏の最中なので、野外調査は休みます。その間に、下界が暑いときは、避暑に大野ヶ原に上がっていくつもりです。

・森の魚・
ソフトクリームをいただいた店の名前の「森の魚」は、
そのテーマで彫刻された作品に由来しています。
石でできた魚の彫刻で、力強い作品です。
作者は、藤部吉人(ふじべ よしと)さんで、
三間町に生まれたのですが、
大野が原で製作をされていました。
「森と魚は表裏一体:
森から水が生まれ、そして海に流れ、
生命を育み、大地に恵みを与える」
というテーマで彫刻されています。
独特の個性と力強さをもった作品です。
愛媛の各地で見かけます。

・作品の記録・
作者の藤部吉人についてお店で聞いたら、
だいぶ前に亡くなられたとのことです。
調べたら、2013年12月3日に
67歳で亡くなられていました。
西予や愛媛各地に森の魚の作品はあるので、
目についたら記録に残しておこうと考えています。