2023年3月2日木曜日

4_173 火星のマントルプルーム 5:活動史の編成

 エリシウム平原は、マントルプルームの直上という特別なところだったのかもしれません。そのため、地震も活発に起こっているのかもしれません。今後の探究の可能性も示してくれます。


 このシリーズも最後になりました。マントルプルームとエリシウム平原との関係をみていきましょう。
 エリシウム平原は、もっとも静かな地域だと考えられていたため、探査がされていました。ところが、前にも述べたように、活動的な地域であったことがわかってきました。
 エリシウム平原では、火山活動が長く続いていて、5万3000年前にも小規模な火山噴火も起こっていたことが報告されていました。最近まで火山活動があった地域となります。地震計で火星の地震も観測していました。エリシウム平原の中にあるケルベロス地溝帯の割れ目に、地震が集中して起こっていました。地溝帯は、現在も運動している可能性があります。
 エリシウム平原は、現在でも火山や地震が起こっている非常に活動的なところであることがわかってきました。しかし、前回述べたように、火星にはプレートテクトニクスを示す地形はありません。この活動の原動力は何でしょうか。
 論文では、エリシウム平原の地形や重力の分布などを分析していくことで、下にマントルプルームがある可能性が示されました。マントルプルームが上昇しているため、エリシウム平原の標高が高くなり、ケルベロス地溝帯ができたのではないかと考えられました。
 では、どれくらいの大きさのプルームが上昇しているのでしょうか。ブロクエさんたちの地球物理学的モデルの解析によると、幅4000kmの大きさのプルームと推定しています。幅4000kmとは、火星の半径3400kmより大きなものとなります。火星のサイズから考えると、このプルームは異常な大きさに見えます。
 エリシウム平原の火山活動もプルームに由来している可能性があります。プルームの上昇させていきた熱が、火星内部に現在でも残っていたことになります。現在も上昇してくるプルームがあるということは、過去にもプルームの上昇が起こっていたはずです。いろいろな時代に、何度も上昇してきたプルームによって、火成活動が継続されてきたかもしれません。
 地球のように活火山があれば、発見できるはずです。火星では、まだ活火山は見つかっていません。活火山があるという視点で探査すれば、見つかってくるかもしれません。また、いろいろな時代の火成活動が見つかってくれば、プルームの上昇履歴を知ることができるかもしれません。火星でのプルームテクトニクスを再現できるかもしれませんね。

・帰省中・
現在帰省中なのでこのエッセイは、
予約して配信しています。
京都に帰省しているので、
息子たちとも会えるのは楽しみです。
今回は、儀式といろいろな手続きをしてきます。
多分、ぐったりしていると思います。
親族のことですが粛々と進めましょう。

・バタバタと・
大学では、来週から、
共同で担当する集中講義がはじまります。
その後には、学位記授与式が続きます。
今年から祝賀会も復活しそうです。
4月からの四国でのサバティカルがあるので
引っ越しの準備もあります。
3月は何かとバタバタします。