2020年12月17日木曜日

5_174 DCO 4:カンラン岩と炭酸塩

 オフィオライトと呼ばれる海洋地殻の断片も、DCOの研究対象になっていました。オフィオライトのカンラン岩や玄武岩は、二酸化炭素の循環とどのような関係があるのでしょうか。


 DCOの成果には、表層の炭素循環として、オフィオライトを用いた研究もありました。オフィオライトは私も研究対象にしていたものです。オフィオライトは、昔の海洋地殻の断片が、プレートテクトニクスの作用で陸地に持ち上げられたものです。いろいろな時代のオフィオライトがあるので、過去の海洋地殻を探るに有効な素材となります。

 海洋地殻は海洋プレートの最上部にあり、大陸の岩石より密度が大きいので、プレートテクトニクスでは、マントルに沈み込んでしまうはずのものです。それが陸地に海洋地殻が、陸側に取り込まれていくメカニズムとして付加作用があります。プレートのぶつかりによる圧縮のために、海洋底堆積物とともに海洋地殻の断片も取り込まれることがあります。また、海嶺が沈み込み時には、海嶺の地形的高まりや高温のマントルなどにより、陸側に激しい付加作用が起こり海洋地殻の上部(マントルのカンラン岩まで)も陸側に取り込まれることにあります。

 オマーンにある「サマイル・オフィオライト」と呼ばれるものがあります。このオフィオライトの岩体は、幅80km、長さ500kmもある世界最大のオフィオライトです。白亜紀末にユーラシア大陸とアフリカ大陸が衝突する前に、間になったテチス海の海洋プレートが持ち上げられたもので、マントルの岩石まで取り込まれています。

 ただし、オフィオライトでは、変成作用や、変質作用、変形作用などを受けているので、もともとの火成岩とはかなり変化していますので注意が必要です。ところが、この変質作用が、二酸化炭素の循環に関係していました。

 サマイル・オフィオライトのカンラン岩で、風化作用と岩石中の微生物によって、空気中の二酸化炭素を取り込んでいることが明らかにされました。また、DCOのプロジェクト「CarbFix」では、玄武岩を用いて、炭素を含んだ流体を注入する実験がなされました。すると、固体の炭酸塩鉱物が短時間で形成されることがわかりました。オフィオライトだけでなく、玄武岩までそのような炭素の固化作用が起こっているとすると、その量はかなりのものになると推定されています。

 この炭素の岩石への吸着作用を利用することで、増加する二酸化炭素の吸収には有効ではないかと考えられています。でも、それは少々、夢物語すぎる気がします。


・ロジンジャイト・

オフィオライト中のカンラン岩は、

水があると蛇紋岩になりやすく、

蛇紋岩として分布していることが多くなります。

蛇紋岩には、ロジンジャイト(Rodingite ロジン岩)と呼ばれる

白っぽい岩石に変わっていることがあります。

ロジンジャイトはカルシウムを多く含む岩石ですが、

炭酸塩鉱物も多く含んでいます。

水に溶けたカルシウムが、カンラン岩や蛇紋岩と反応して

ロジンジャイトができ、炭酸塩鉱物もできます。


・オフィオライト・

サマイル・オフィオライトだけでなく、

世界各地の多くのオフィオライトがあります。

もちろん日本にもあります。

日本では、造山帯の中の大きな構造帯には、

カンラン岩や蛇紋岩が各地に分布していました。

私は北海道と中国から近畿地方のものを研究対象にしていました。

蛇紋岩の一部ではロジンジャイトになっているものもありましたが、

その量は多くなりように思えます。

DCOで注目されてきたのなら、

もしかすると研究が進むかもしれませんが、

でも工業的に二酸化炭素の吸収剤にするには

まだ難しく時間がかかると思います。

それより木を植えたほうが手っ取り早と思います。